モバイルアプリのためのリモートリサーチ手法

Interaction Design Foundation

Interaction Design Foundationはグローバルにデザインレベルの向上を目指す、デンマーク発の非営利団体です。

この記事はInteraction Design Foundationからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Remote Research Methods for Mobile Applications

ラボで行うモバイルアプリのユーザーリサーチは、リモートリサーチほど効果的ではありません。モバイルアプリのユーザーは自分のスマートフォンを使っているとき、いつでも気を取られるものですし、そうした気を散らす状況を再現するには普段の環境にいるユーザーをモニタリングするのが最良なのです。

モバイルアプリのためのリモートリサーチについては有用なケーススタディがありますので、デザイナーがよりよいモバイルのユーザー体験をデザインするために役立つはずです。

作者/著作権者: Intel Free Press. 著作権番号: CC BY-SA 2.0

リモートリサーチを行うことでリサーチャーはプロダクトの「自然に使われる環境」での使われ方について多くを知ることができるので、この手法は多くのUXプロジェクトで使われています。

昨今のモバイル時代において、スマートフォンのユーザーは「とても忙しく」、またさまざまなものに気を取られながらモバイルアプリを使っているのですから、このようなリサーチの分野の重要性はますます高まってきています。モバイルアプリが使われる流れがわかれば、そのアプリの使われ方もわかります。

何も、リモートリサーチがモバイルのUXリサーチの中で必ず追い求めるべき唯一の極致であると言うわけではありません。もっとも価値のある気づきを得るために、UXリサーチャーは可能な限りリモートや他の手法を組み合わせて、モバイルアプリの使い方とユーザビリティについての完全な見通しを手に入れなければならないのです。

技術に依存しないリモートリサーチ

日記調査

すべてのリモートリサーチにソフトウェアやハードウェアへの投資が必要なわけではありません。実際、古き良きペンと紙を使うリモートリサーチもあります。それが、日記調査(ジャーナル調査)です。

日記調査は、ユーザーがいつプロダクトを使ったか、どのように使ったか、どのようなフラストレーションがあったかを彼らに書いてもらう、長期的な調査です。リサーチャーは統計学的に有意な結果を得るために十分なサイズのサンプルを選ぶ必要があります。そうすれば、途中で日記を書くのを止めてしまう参加者や、調査を続行できない参加者などの避けようが無い「脱落者」が出ても対応できます。

作者/著作権者: Ildar Sagdejev. 著作権番号: CC BY-SA 4.0

そもそも、日記調査はユーザーが彼ら自身が置かれている環境の中でどのようにアプリを使っているかという事例を提供するものです。ですが、もっとも熱心な日記の書き手でさえも、たまたま1つか2つのインタラクションを書き忘れてしまうことがあっては台無しです。日記調査の大きな利点の1つは、ユーザー各自があらゆるイベントに対して詳細なフィードバックをすることができるので、非常に正直で個人的なフィードバックが得られるということです。

日記調査を行うプロジェクトチームは、この調査をサポートするために積極的な役割を果たす必要があります。そうすれば、脱落者を防ぐことにもなりますし、参加者が自分の日記を更新するための便利なリマインドにもなるでしょう。

技術に依存するリモートリサーチ

オンラインアンケート

オンラインアンケート(サーベイ)は、アプリの一部として、あるいはメールを使って、そのアプリがまさに稼働しているデバイスで行うことができます。すべてのアンケートと同様、参加者をリサーチャーが求める結論に誘導することがないように、また得られるデータが簡単に分析でき、デザインチームの結論を意思決定者に納得してもらうためにそのデータを使えるように、慎重にデザインする必要があります。

アンケートは、極めて短い時間で多くのデータを集めるための優れたツールです。アンケートで得られたサンプルのサイズが統計的に有意である限り、そこから得られたデータはプロジェクトにとって非常に示唆に富むものになるでしょう。割安な(あるいは無償の)アンケート作成・配布ツールがネット上に数多くありますから、コスト的にもお得です。

アンケート結果は注意して扱わなければなりませんが、結果の中でユーザーが実際にしていることと、していると言っていることがきちんと区別できない場合があります。

アンケートはまた物事の理由を説明することなしに、興味のある分野を特定することもできるでしょう。そのことによって、追加のユーザーリサーチのためのケースをつくることができます。

行動分析

作者/著作権者: Photo.iep. 著作権番号: CC BY 3.0

行動分析と組み合わせるのも非常によい考えであると言えます。行動分析でソフトウェアを使ってデバイス上でのユーザーの行動を追跡すれば、アンケートと合わせて用いることで、「ユーザーが実際にしていること」と「ユーザーがしていると言っていること」を明確に区別することができます。

行動分析にはいくつか課題があります。まず、これによってリサーチャーがユーザーの行動のモチベーションを調べることができるわけではない、ということです。リサーチャーが知ることができるのはなにが起こっているかということであり、ユーザーがその行動を選択した理由や、どのように決断を下したかはわからないのです。

また、行動分析のパッケージでは使用前後の流れを調べることも難しいです。行動分析による調査を行なったあとに、前後の流れについての質問に答えてもらうような小規模なフィールド調査や観察を行うとよいかもしれません。

自動ログ

自動ログは、モバイルデバイスによって生まれた、あるいはデバイスが検知したイベントを単純に自動的に記録するものです。このためには、参加者がなにかする必要はありません(秘密裏に行うわけにはいかないので、ユーザーにはリサーチを行うことに同意してもらうことが重要です)。

これを使えば、リサーチャーはモバイルアプリでのインタラクションの起こり方について正確な見通しを立てることができます。行動分析と同じく、ユーザーのモチベーションや使用前後の流れを理解するという点に関しては欠点があります。

経験サンプリング法

ESM(経験サンプリング法)は基本的に簡単な、普通は1問の質問(多くても3、4問)によるアンケートで、インタラクションの瞬間にユーザーが使っているデバイスに送られます。このおかげで、リサーチャーはユーザーの頭の中で体験がフレッシュなうちにデータを集めることができるのです。

ESMのサンプリングは、認知バイアスが結果を歪めないように慎重にデザインする必要があります。

まとめ

リモートリサーチはモバイルアプリの使われ方を「ありのままの姿」で発見するための優れた方法です。リサーチをデザインする際には一定の注意が必要ですが、一般に費用対効果が高く、予算に優しいですし、モバイルプロダクトのユーザー体験を検証する方法としては最善かもしれません。


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