情報を可視化するためには、可視化されたデータのユーザーの目に見える形、あるいは耳に聴こえる形でマッピングする必要があります。これは困難である場合があります。なぜなら、データの中には空間的な関係性を内包しているもの(国内各都市の気温など)もあり、また多くのデータには伝統的な空間的な関係性(ある企業における給与額など)があるからです。
1920年代にアメリカ国立標準局のメンバーであったHenry D Hubbard氏は次のように言いました。
「グラフには魔法がある。曲線の様子があらゆる状況をひと目で知らせてくれるのだ。感染症の歴史、混乱、繁栄の時代、すべての状況を。この曲線が精神に情報を与え、想像力や決意を呼び覚ますのである」
つまりインフォメーションビジュアライゼーション(情報の可視化)のデザイナーは、自分たちがどのようにデータを表現したいのか、慎重に考える必要があるのです。また、Henryの言う「魔法」を実現するための表現を支えるための仕組みをつくらなければなりません。
情報の可視化を決定づけるのは3つの要素であると、『Readings in Information Visualization: Using Vision to Think』の中で言っています。
- 空間の基質
- グラフの要素
- グラフの特性
ここで言う空間の基質は2次元であり、グラフの要素は点と線、グラフの特性は点のサイズ、線の長さと方向、そして青い色です。
情報の可視化のためのビジュアルマッピングの3要素
ビジュアルマッピングの中で私たちが使う3要素を定義することで、情報の可視化全体を支える強固な仕組みが出来上がります。またこれのおかげで、私たちインフォメーションビジュアライゼーションのデザイナーは投影したいデータについてより深く理解することができ、ユーザーにとって価値あるものにするためにはどのように使えばいいかを知ることができます。
空間の基質
空間の基質とは、私たちが可視化を行おうとしている空間のことです。情報の可視化のほとんどは、x軸とy軸を使った2次元空間で行われます。ですが、3次元空間、あるいは3次元以上の超次元空間での表現も可能です。
自分がどの軸を使うか、そしてそれぞれの軸にどのようなデータをマッピングするかを考えることが重要です。データには次のようなものがあります。
- 量のデータ:データセットを数値で計測したもの
- 順序のデータ:数値との関係はないが、ある種の順序を示すもの(1年間の中の月など)
- 名前のデータ:数値ではなく、順序もないデータの集合(集団にいるメンバーの名前など)
グラフの要素
グラフの要素とは、空間の基質に現れる視覚的な要素です。この要素には次の4種類があります。
- 点
- 線
- 面
- 立体
グラフの要素はデータを表す際のわかりやすさで選ばなければなりません。もちろん、ユーザーを意図的に混乱させて、データが表していないなにかを信じ込ませようとするのであれば、その限りではありません。倫理的に正しいことではありませんが、そんなことは有り得ないと考えるのはお人好しすぎます。特に企業と政治家はこの悪どいやり方をしているのですから。
グラフの特性
グラフの特性とは、グラフの要素がもっと目で見やすい(またはその逆)、あるいは作成者にとって有益なものになるように、要素に適用されるものです。グラフの要素に使われる特性にはさまざまなものが考えられますが、もっとも一般に使われているのは次のようなものです。
- サイズ:点、面、ボリュームのサイズであり、重要性や重みの情報を伝えます。
- 方向:空間における線や立体の方向によって、それらの目的がわかりやすくなります。
- 色:色は、データに視覚的な印を付けたり、あるいは行動喚起を与えたりするために使われます。
- テクスチャー:テクスチャーはデータに視覚的な印を付けるために使われます。
- 形:六角形、円、三角形などは、データに視覚的な印を付けるために使われます。
Cleveland氏とMcGill氏は、彼らが発表した『Graphical perception: Theory, experimentation, and application to the development of graphical methods』の中で、グラフの特性の中には、情報を伝えるに当たって他のものよりも効果的なものがあることを示しました。
彼らは、特性をその精密さに応じて次のようなリストにしています。(1がもっとも精密で、6がもっとも精密でない)
- 軸における位置
- 線の長さ
- 線またはオブジェクトの方向
- 図形の面積
- 図形の体積
- 色とテクスチャー
特に色は、インフォメーションビジュアライゼーションに使うには扱いにくい要素です。
まず、特定の社会においては特定の色がその使われ方において特別な意味や読み替え方をもっているので、色を使うときに付いて回る文化的、言語的な要素があります(たとえば、文化の例で言えば、中国では赤色は「幸運」の色とされますが、西側諸国では「警告」の色とされます。言語の例で言えば、ニューギニアの高地では、色については「明るい」と「暗い」の2つの言葉しかありません。また、アマゾンの部族のピラハ語には、色を表す言葉はまったく無く、たとえば「血のように見える」のように他の物との対比で色が特定されます。一方で、英語には多くの色を表すための豊富で多彩な言葉の組み合わせがあります)。
さらに、男性の12%、女性の200人に1人が影響を受けている色覚異常の問題もあります。赤と緑の識別が困難なケースがもっとも一般的な色覚異常の症例ですが、他にも症例はあります。
これらのことを考えれば、色は他の手段がすべて検討しつくされた場合にのみ、情報を伝える手段として使うべきだということになります。
まとめ
情報の可視化のためにビジュアルマッピングを行う場合、私たちはまず空間の基質を定めなければなりません。それから、その基質の中で使うグラフの要素のことを考え、最後に、これらの要素が可能な限りの意味をユーザーに伝えられるように使う、特性について考えるのです。