オフィス内のどこに置かれているのかわからないものを探すことほどストレスフルなことはありません。時間が無い場合は特にです。
会議室やキッチン、またはプリンターを探すために取られる余計な数分間は「決断疲れ」を呼び、新人はもちろん、すべての従業員の生産性に悪影響を与えてしまいます。その上、ナビゲーションが良くないことはあなたの将来のクライアントやパートナーに間違った印象を与えてしまい、入り口の段階から彼らとの関係性を壊してしまいかねません。
オフィスの道案内用のアプリをデザインする
ナビゲーションの問題は、急成長する会社が遅かれ早かれ直面する問題です。Intelliasも例外ではありませんでした。オフィスの設備と場所が増え続けて、従業員に道を示すための統一されたナビゲーションをつくり上げることが急務でした。これが、私たちが屋内のマッピングと道案内のソリューションをつくり始めた理由です。私たちは、これを2ステップに分けて導入することにしました。
ステップ1
私たちのステップ1には、部屋の看板を用意すること、オフィスを細かいゾーンに分けること、ナビゲーションのための案内図をつくることが含まれていました。
- ゾーン:私たちはオフィスをゾーンに分けて、それぞれに世界の地名を付けました。従業員がわかりやすいように、各ゾーンには特定の色を割り当てました。便宜上、キッチンとバスルームには同じ色を当てました。ここでつくった色のシステムが、私たちのマップにも使われます。
- 看板:矢印とシールです。わかりやすいように、私たちはオフィスの各ゾーン、会議室の名前、それからフロア番号、キッチンとバスルームにはアイコン、方向を示す矢印のために看板を使いました。キッチンでは、それぞれの棚の中身や使い方を示すためにシールを使いました。
- 地図:それぞれのフロアには、全てのゾーンと部屋、行き先への向きを示した大きな地図を壁に貼りました。当初、これはよくある北を上にした単なる1つの地図に過ぎませんでした。しかし一連のユーザビリティテストを経て、この地図で示された向きが多くの従業員を混乱させてしまっていて、意味がわからずに、その地図を使ってなにかを見つけることをあきらめているということが明らかになったのです。そこで、最終的に私たちはそれぞれのゾーンに応じて、4つのバージョンの壁地図を各フロアに貼りました。
ステップ2
次の段階は、クロスプラットフォームのモバイルアプリの開発でした。私たちは、得られた情報をモバイルアプリに統合して、従業員がいつでもアクセスできて、行き先への行き方を知ることができるようにする必要がありました。システムはBluetoothのビーコンを使って、リアルタイムで人と対象物の位置を変更・更新することで機能しました。
私たちの屋内ナビゲーションアプリでは、次のようなことが可能です。
- 設備を種類ごとに閲覧し、検索する
- 設備についての詳細な情報をみる
- 特定の設備を検索する
- 管理者にコメントを送る
- ルートを検索する
- 目的地までナビゲートする
オフィスのナビゲーションシステムをデザインするためのヒント
お粗末な屋内のナビゲーションをつくるくらいなら、まだ無いほうがましです。たとえば、従業員がいままで行ったことのない会議室を探しているとしましょう。よくできたナビゲーションアプリであれば、直ちに正しい場所を教えてくれるでしょう。しかしお粗末なマッピングシステムはフロアを混同し、間違った方向を示し、結果として従業員は会議に遅れ、イライラしてしまうかもしれません。
ユーザーを最優先にする
屋内のナビゲーションは、オフィスからショッピングセンターまで、さまざまな場所で使えるでしょう。当然、それらすべては同一につくられるわけではありません。つまり、空港の道案内のシステムを単純にコピーしてオフィスで使うことはできないのです。それを使うユーザーがまったく違うわけですから。だからこそ、なぜ従業員がマッピングというソリューションを必要としているのかをつねに考えなければならないのです。
たとえば、会議室の場合を考えてみましょう。従業員が会議室を探すのは、純粋な好奇心からではありません。まず間違いなく、そこで会議をするためであり、あるいはブレストを実施する必要があるからでしょう。ですから、目的の部屋の正確な場所だけでなく、その部屋が空いているのか、必要な設備がすべてあるのか、十分に大きいのか、というようなことも従業員は知りたいのです。これらのことをすべて考慮しなければなりません。だからこそ私たちは、開発段階に進む前にユーザーリサーチを行なったのです。リサーチの結果、私たちは「新人」「ベテラン」「出張者」「サポートスタッフ」という4つのペルソナを特定しました。ユーザーを知らなければ、使えるプロダクトをつくることは干し草の山から針を見つけることよりも難しいでしょう。
パターンを守る
直感的な道案内のシステムをつくるためのもっとも確実な方法は、特定のパターンを守ることです。私たちが空間をゾーンと色で分割したように、看板、アイコン、マップ、そしてそれらの配置場所は、あなたのオフィス全体を通して一貫させてください。オフィスの建物を歩き回って、それらがすべて同じパターンに従っており、予測可能なものであるようにしましょう。また、モバイルアプリのUXデザインをつくる際にも頭の中に一貫性をもつようにします。
オフィスのナビゲーションが必要となるのは、誰かが忙しくて何かがどこにあるかを確かめる時間がないときです。ですから、オフィスの従業員が複雑なマップやスキームに手を取られることなく素早く動けるように、デザイナーはナビゲーションをシンプルで直感的、そして見やすいものにしなければなりません。
オフィスの物理的なデザインを念頭に置く
道案内のソリューションをできるだけユーザーフレンドリーにすることは大事ですが、オフィスのデザインや建物の構造にマッチするものでなければいけません。まず、将来新しくするときに苦労します。それから実際のところオフィスのデザインは、従業員の生産性に影響します。良くデザインされたオフィスで働けば人々は自由に、クリエイティブに発想することができますが、デザインが悪ければ従業員は窮屈な思いをするでしょう。同じように、壁にたくさんの矢印や表示があったら、ユーザーはイライラしてしまってパフォーマンスに悪影響が出るかもしれません。
色にだけ頼ってはいけない
色は、道案内のために役立つ指標であるように思えますが、ゾーンの看板をデザインするにしても、アプリのモバイルUXをデザインするにしても、色だけに頼ってはいけません。屋内の道案内システムはアクセシビリティを考えた上で開発する必要があるので、特定の色を認識するのが難しいユーザーのことを考えて、たとえば音声案内を使うことも重要です。また、赤とオレンジ、ローズとピンクなど、紛らわしい色の組み合わせも使わない方がよいでしょう。私たちはシンプルに、従業員がそれらの色をどう受け取るかテストし、彼らの好みを聞き出すことでこの問題を解決しました。
客観的にテストする
私たちがその場所に詳しいということがバイアスにならないように、私たちは全ての決断を数段階のユーザビリティテストによって行い、必要に応じてアップデートしました。従業員の意見を聞く、データを分析する、テストを行う第三者を雇うなどすれば、あなたのプロダクトのどこがうまくいっていて、どこに改善の余地があるのかを確かめる役に立つでしょう。
定期的にアップデートする
上に挙げたすべてのポイントを押さえて道案内のソリューションをつくったとしても、定期的にアップデートしなければあなたの努力は水の泡となるでしょう。キッチン、会議室、テーブルの配置や、果てはキッチンの棚の中身まで、あらゆるものは変わっていくのです。道案内のシステムはつねに最新であるようにして、アップデートがあったらユーザーにそれを知らせましょう。
結論
屋内のナビゲーションシステムがあれば、従業員はもっと生産的に働くことができ、道を探すことに伴う決断疲れや余計なストレスを減らすことができます。しかし、効果的な道案内のソリューションをつくることは簡単ではありません。あらゆるモバイル・アプリのデザインと同じように、ユーザーを第一に考え、文脈をきちんと頭に置いて、パターンを守り、アクセシビリティを考慮し、精力的にテストをし、定期的にアップデートすることが必要なのです。