答えにくい質問をすることの大事さ

Neil Turner

Neilは、イギリスのAstraZenecaで働くUXデザイナーです。現在さまざまなUXデザインのプロジェクトを率いています。

この記事はUX for the Massesからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The importance of asking awkward questions

私には2人の幼い子どもがいるので、彼らからたくさんの質問をされます。私の家の中では、ありふれたとりとめのないQ&Aが何度も何度も繰り返されています。「晩ご飯はなに?」とか「今日はなにをしようか?」というのがお気に入りで、「まだ着かないの」や、それからもちろんこちらに挑むような「どうして?」(そうと言ったらそうなんだ)もあります。

子どもたちは生来の知りたがりであって、生来の知りたがりであるがゆえに、たくさんの質問をします。質問の中には、答えにくい質問も多く入っています。答えにくい質問とは、たとえば次のようなものです。

  • 人は死ぬとどうなるの?
  • 赤ちゃんはどこから来るの?
  • なんで泣いているの?
  • 世界には何百万もの子どもたちがいるのに、サンタさんはどうやってたった一晩でプレゼントを届けるの?

知りたがりなハイハイ歩きのちびっこから知ったかぶりの10代に進化するにつれて、子どもたちは答えにくい質問をあまりしなくなることが多いです。私たちは、答えにくい質問をすると結構気まずくなってしまうということを知り、質問するよりも口にチャックをして、代わりに自分で思い込むようになるのです。これは残念なことです。なぜなら、私たちの思い込みは往々にして間違っているばかりでなく、答えにくい質問をすることこそが重要だからです。精神的に健康な会話のためにも、健全な関係のためにも重要ですし、実に、UXとプロダクトデザインにとっても重要なのです。答えにくい質問がされないとどんなことになるか、お話ししましょう。

答えにくい質問をしないとどうなるのか

私はあるデジタルエージェンシーに勤めていました。その会社には仕事の大部分、つまりは売り上げの大部分を占めていた少数の重要なクライアントがいました。当然ながら会社は、これらのクライアントを喜ばせることに躍起になっていました。そのために彼らは、そうしたクライアントとのあらゆる連絡はすべてアカウントマネージャーを通して行うという、見当違いの決定を下していました。あらゆるメールは、まるで囚人が恋人に宛てて書いた手紙を厳しく検閲する看守のようなアカウントマネージャーによって、検査されて修正されていたのです。クライアントとの会合はアカウントマネージャーによって絶対的に仕切られ、チームのメンバーはクライアントが困りかねないような質問は一切してはならないという指示に従っていました。

お察しの通り、この事態はいくつかの不具合を引き起こしました。まるで悲惨な伝言ゲーム(おかしなことに、イギリスではチャイニーズウィスパーと呼ばれています)のように、アカウントマネージャーがメッセージを右から左に伝えるうちに、往々にして元々の意味が失われていたのです。もっと重要なことには、クライアントに対して次のような答えにくい質問がまったく投げかけられなかったのです。

  • なぜこの仕事を頼んだのですか?
  • どんなリスクを予測しているのですか?
  • なぜこのソリューションが提案されたのですか?
  • この納期はどの程度動かせるでしょうか?
  • これはひどいアイデアだと思いませんか?(言葉は少し違ったかもしれません)

デザインの素案が(アカウントマネージャー経由で)入ってくると、チームは非常に多くの仮定を置いて、何の質問もなしに作品が出来上がります。10回に9回はクライアントがその作品に満足するのが普通でしたが、期待されたほどのインパクトはありませんでした。答えにくい質問をできなかったことで、素案自体に迫ることができなかったのです。チームはクライアントが望むことをしていたのですが、必ずしもクライアントが求めていることをしていたわけではありませんでした(詳しくはユーザーがいつも正しいわけではない理由 を参照してください)。

答えにくい質問をしよう

私はかつて、ソリューションをデザインする前に問題を理解することの重要性について書いたことがあります(なぜデザインは問題から出発しなければならないか参照)。問題や素案をより良く理解するために早い段階で答えにくい質問をすることも重要ですが、デザイン・プロセス全体を通してそうした質問を問い続けることも重要なのです。

UXに従事する人は、ステークホルダーに答えにくい質問を投げかける必要があります。同僚に対しても、他のデザイナーにも、あるいはユーザーにだって答えにくい質問をしなければなりません。答えにくい質問は、(難しくならないように気をつけるべきであって)わざと難しくするものではなく、調べるためのもの、掘り下げるためのもの、問いかけるためのものであり、結局のところ、より良く理解するためのものです。答えにくい質問とは次のようなものです。

  • 私たちはなぜこれをしているんでしょう?
  • これを補強するためのエビデンスは何かあるでしょうか?
  • これをするなら、できないことはないのではないですか?
  • これはユーザーにとってどんな価値をもたらすんでしょう?
  • もっといいアプローチはないでしょうか?
  • 本当に技術的な問題ですか?
  • なぜあなたはそのソリューションにそんなにこだわるのですか?
  • これはユーザーにリリースすべきでしょうか?

UXに従事する人にとっては、答えにくい質問を知りたがりのちびっこのように気軽に投げかけることが重要なのです。もちろん、そうした質問に対して答える時にも同じくらい気軽でなければなりません。決まりの悪さを受け入れましょう。たくさんの答えにくい質問をしていない(そして答えていない)としたら、仕事をきちんと果たしていないということになるのですから。実際にはその方が決まりが悪いですよ。


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