UXという言葉が一人歩きする時代:私がUXを学ぶ理由

三瓶 亮

UX MILK編集長/プロデューサー。ガラケーの時代から様々な形でモバイルコンテンツ制作に関わる。パンクロックとゲームが好き。[Facebook]。

皆さんは「UX」(ユーザーエクスペリエンス)という言葉に対してどんな印象を持っていますか? 私はつい一年前くらいまでは、UXという言葉に対して正直、胡散臭いという印象を持っていました。なんかUXって語ったらめっちゃネットで叩かれるイメージがありました。いわば食わず嫌いのような状態で、もちろんそれをろくに説明することも出来ないですし、なんで嫌っているのかもよくわかりませんでした。それっぽく言う人達に対してジェラシーを感じていたのかもしれません。

食わず嫌いからの卒業

そんな私にも、UXを意識をせざるを得ない時が訪れます。早い話が、サービス開発が上手く行かなかったのです。企画は思い込み、ターゲットは不明確、デザインは独りよがり。モノづくり自体に集中し、楽しむあまり、使う人のことなんてろくに考えていませんでした。もちろん、そういった議論は常にあるものですが、結局は考えているふりをしているだけでした。結果、誰得なプロダクトを堂々ロールアウトしてしまうわけです。ここいらで耳が痛い人はいませんでしょうか?

UXという言葉を使わなくても、私たちはそういった議論は常にしていると思います。「ユーザーニーズはなんだ?」「誰かに使ってもらったのか?」「これはどういう場面で使われるものか?」。どこの制作現場で問われてもおかしくない問いですが、私たちはその答えをはぐらかしたり、すり替えたりしてしまうものです。失敗を通して、それにようやく気づき始めました。


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今会議で話したこれ全部、俺らの思い込みじゃね?

私はその頃からブラックボックスだったUXという言葉にアプローチするようになりました。ユーザーのことで頭をいっぱいにしているつもりでも、全く整理がつかず、どう考えてよいか全くわからなくて藁にもすがるような気持ちだったのかもしれません。なんせ、嫌いでしたからね、UX。意味もなく。

UI/UXは間違っている戦争

UXに関心を持った人が、高い確率で出くわすのがUIとUXは違う、という記事です。これ、知っている人にはもう耳タコな話題ですけど、私の中ではUXのブラックボックスが半分くらい解消するくらいわかりやすい話だと思います。

早い話が、UIはUXの一部なんですね。私が調べていた時に一番分かりやすかったのはhcdvalueさんで公開されているUX白書の図でした。


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これをアプリとかで置き換えると

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と解釈して、「なるほど、UXってのはアプリを使用する前後のユーザー体験も含めた事をいうんだな!」と納得しました。冒頭で書いたようなサービス開発で起こるあるあるとして、基本UIの話しかしないというのがあります。この図を見た時の自分がまさにそれで、「俺本当にUIのことしか考えてなかったんだなガックシ」みたいな絶望感と同時に、「何だUXって、案外いいやつじゃん」的な親近感が湧いたのを覚えています。

手法よりも大枠の考え方が重要

とまあ、そういった感じでいわゆるUXの基礎的な所はGoogle先生に教わりつつ、勉強会などにも出るようになったわけですが、私自身はどんどんそれを面白いと感じるようになります。

当時、もう一つ面白いと思ったきっかけは、海外のUXメディア記事との出会いです。国内ではUI/UXと表記され、UI中心の話や、UXの手法(ペルソナ、カスタマージャーニーなど)の話が多い印象でしたが、向こうの記事はそれに加え、本質的にユーザー体験を捉えるためにどうするかなど、もう少しふわっとした記事も多く見られた印象でした(あくまで個人の体感です)。UX MILKでいうと例えば「トーク番組制作から学ぶ、実践的なUXリサーチ」や「削ぎ落とすことだけがシンプルじゃない」などです。他業種からの例で説明されて納得するケースが多かった気がします。

私は手法とかフレームワークにいきなり入ると、そこばかりを気にしてしまうのをわかっていたので、もう少し根本からユーザー体験を考える良いきっかけになりました。

そこで概念自体は難しい話ではないことに気づきました。ユーザーが本当に欲しがっているものは何かを、ちゃんと知ったり共有したりして、モノづくりしましょうよと。それを仕事として扱うのが難しいのでアレコレ議論されているわけで。確かにユーザー体験の良し悪しをビジネス成果として測るのは難しいし、ユーザー体験の向上が必ずしもビジネスの数値目標と連動するわけでもない。

でも間違いなく今後のサービスはそれが必要。だって世の中サービスに溢れかえってるし、ユーザーの時間の取り合いなわけです。そんな時にユーザーの生活のスキマを狙い撃ちにして、「これがほしかったんだろ? え? ほれほれ」とドヤ顔で自サービスを差し出したいわけです。

[PR] ユーザーの欲しがっているものが何かを知る簡単な方法の一つがユーザーテスト。ユーザーテストを実施する方法や意義について語った記事はこちら。 「ユーザーテストを現場で当たり前にしたい」ポップインサイト池田氏の想いとは

UXという言葉が一人歩きしている

そんなわけで今や私自身はUXという言葉にもはや懐疑心はありません。とは言え、UXという言葉の曖昧さは、未だ世の中を混乱させている気がします。よくわからないけどとりあえず使っとけ的な便利ワードになっているのも事実です。また、最近では目をキラキラさせて「UXを勉強したいです」というの学生も目にします。

私なりの定義をさせてもらうと、UXデザインはユーザーが本当に欲しがっているモノを作るための考え方でしかなく、UXを理解することがゴールでは無いと思っています。どんなにハサミがうまく使えても、切るものがなければ意味が無いのと似ていて、やはりそこにはいいモノづくりがしたい! ユーザーに届けたい! という気持ちが必要だと思います。

UXという言葉に翻弄されないために私が意識していることなのですが、UXという言葉を「ユーザー体験」という言葉に置き換えていくと良いと思います。そうすると例えば「ユーザー体験を勉強したい」というのは本来少しおかしくなってきます。これは正しくは「UXデザインを勉強したい」という言葉になります。ここらへんの言葉の遣い方の曖昧さもUXが怪しいものとなってしまう一要因かもしれません。

そもそも私のように思い込みでモノづくりをするのではなく、みんながはじめからユーザー目線でモノづくりができたならば、そもそもUXなんて言葉は要らないわけですね。そんな世の中を目指して、UXを学んで実践していければと思っています。


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