これからデザイナーのキャリアをどう考える?活躍するデザイナー3人に聞いてきた

三瓶 亮

1983年東京生まれアメリカ育ち。ガラケー時代からモバイルコンテンツの企画・デザインなどに従事。現在はUX MILK編集長/プロデューサーとしてメディア、イベント、関連サービスなどの企画やデザインをしている。パンクロックとゲームが好き。Facebookはこちら

UX MILK編集長兼デザイナーの三瓶です。

「デザイン」というと、一昔前まではグラフィックやアートの意味合いが強かったですが、今ではサービスデザインや体験のデザインなども注目されるようになりました。そんな中、私たちは「デザイナー」として、今後どのようなキャリアの歩み方をしていけば良いのでしょうか?

今回はデザイナーの転職サービス「デザイナードラフト」の提供のもと、現在活躍されている3名のデザイナーにそれぞれのキャリア感をお伺いしてきました。

登場人物
広野 萌 株式会社FOLIO CDO
倉光美和 株式会社クックパッド デザイナー
割石裕太 株式会社Fablic / OH アートディレクター / デザイナー

左から倉光さん、割石さん、広野さん

FOLIO 広野 萌さん

まずは、FOLIOの創業者兼CDOであり、ブログ「hajipion.com」の記事がバズったことで知っている人もいそうな広野さんへのインタビューです。

アウトプットの回数が自信につながる

三瓶:まずは広野さんの経歴を簡単に教えてください。

広野:2014年にデザイナーとしてヤフー株式会社に入社しました。1年半くらいアプリ開発や新規事業、全社戦略、アプリのUX推進などを中心にやってました。

その後、2015年12月に株式会社FOLIOを創業して、CDO(Chief Design Officer)をしています。

三瓶:ヤフーを辞めて起業するときは、あまり悩まずに決断したのですか?

広野:いえ、けっこう悩みましたね。いつか辞めて起業することは考えていたのですが、まだまだ学ぶことも多くて、挑戦は早いんじゃないかなと思いました。

その一方で、すぐにスタートしなければ日本は世界のFinTechの波に乗り遅れてしまうという危機感のようなものもありました。僕がここで起業しなければ、多くの日本人の投資に対する「怖い」「難しそう」という考えはずっと長い間変わらないままだなと思って、日本のために起業しました

三瓶:日本のために! かっこいいですね(笑)。

広野:もちろん、CEOやCOOなどチームメンバーも良かったし、FinTechの課題をデザインの力、つまり僕の力で解決できるという自信もありました。人、スキル、タイミングが全部合った瞬間だったので、挑戦しろと神様が言っているんだろうなと思って。

三瓶:起業する前、スキルアップのためのインプットなどはしていたのですか?

広野:本を読んだり勉強するといった純粋なインプットより、「アウトプットすることによるインプット」が多かったですね。特に学生時代からFOLIOを創業するまではハッカソンやアプリコンテストにめちゃめちゃ出場していました

ハッカソンには、スタートアップのすべてが詰まっているんです。限られたリソースとお金、時間の中で、最速でアイデアを形にするのはまさにスタートアップです。それを何回も何回もやってきたから、FOLIOを創業するときの自信にもつながりましたね。

三瓶:実践で身につけていくタイプなんですね。

肩書きではなく自分自身として認知される

三瓶:ちょっと話を変えて、デザイナーのキャリアについて聞きたいのですが、広野さんにとってロールモデルとなる人はいますか?

広野:ロールモデルとは違うかもしれないですが、尊敬している人はOnedot株式会社CCOである坪田朋さんです。

ブログがきっかけでお会いしたのですが、僕の中では憧れですね。自分で手を動かせて、作るプロダクトのクオリティも高い。それでいてきちんと組織やサービス全体を見れる経営者的なスキルも持っていて、さらに人に伝えることがすごく上手いと思っています。

三瓶:では、坪田さんのような経営目線も持ち合わせたデザイナーが、思い描くひとつのキャリアですか?

広野:そうですね。けれど、自分のキャリアとしてずっとデザイナーを名乗るとは考えていません。というのも、ヤフーを辞めるときに自分の肩書きをどうするか上司に相談したんです。そしたら、上司に「ホリエモンって何?」と聞かれたのです。「実業家、投資家など色々出てくるけど、何とかのホリエモンとは言われない。だから肩書きではなく広野萌で認知されるようになると良いよ。」という言葉を最後にいただきました。なので、僕はデザイナーの広野萌ではなく、広野萌として何でもやっていきたいと思っています。

物理的に声が大きいので芸人とか政治家に向いていると周りからは言われますが(笑)。

三瓶:芸人の広野さんはぜひ見てみたいですね(笑)。では10年後は何をしていると思いますか?

広野:デザインという切り口で革命が起こせる領域がある限りは、デザインをやっていたいなと思っています。いまは金融業界にいますが、医療やGovTech(Government Technology)などまだまだ課題があるところに対して、世の中を便利にすることをしていきたいですね。

まずは自分がいま困っている問題をデザインの力で解決できるのであれば全部したい。世の中の不便利を便利にしていきたいですね。

デザイナーは設計をする人

三瓶:広野さんの仕事内容はデザイナーではなく、プロデューサーみたいな感じだと思ったのですが。

広野:プロデューサーやプランナーみたいな感じだよねと言われることもありますね。でも、僕はアイデアを出すだけでなく、それを自らの手で形にしたいと思っています。アイデアやビジネスを形に落とし込むスキルをデザインスキルと呼ぶのであれば、僕はそれが世界最速でできるようなデザイナーになりたいので、デザイナーと名乗っています。

三瓶:日本だとデザイナーはビジュアルを作る人というイメージがあるから、勘違いされやすいですよね。本来、デザイナーは設計をする人なのに。

広野:誤解されがちですよね。たとえば最近デザイナー界隈でCXOという肩書きが流行ってますが、肩書きなんてなんでもいいと思いつつ、CDOではなくCXO(Chief Experience Officer)を選んだ理由が、「デザインという言葉だけだと体験まで見られないから」だとしたら、その理由はデザインという言葉の価値を貶めてしまっているなとちょっと思います。本来は「設計する」という意味なので、CDOでも体験の設計はできますよね。

三瓶:認識のズレみたいなものはありますよね。広野さんはデザインという言葉に思い入れがありそうですね。

広野:そうですね。さっきも話しましたが肩書きを何にしようって思ったときに、やっぱりデザインという言葉に僕は感謝してるし、デザインという言葉が日本でも価値を持たなければいけないっていうのを強く思ったんです。

なので、CDOと敢えて名乗りました。当時はCDOなんてほとんどいなかったし、アップルのCDOのジョナサン・アイブかよってすごい笑われたんですが。

三瓶:ジョナサン・アイブがいるのにそんな感じだったんですね。

広野:やっぱり馴染みがない言葉だったんでしょうね。僕は日本にデザインの価値を広めたいから、堂々とCDOと名乗ってきました。なので、最近CDOが増えているのはすごく嬉しいですね。

デザイナーはキャッチコピーをつけるべき

三瓶:それでは、最後の質問になりますがデザイナーのキャリアについてどう思いますか?

広野:数年前から、UXデザイナーやサービスデザイナーなどさまざまなデザイナーがでてきて、デザインという言葉が広がったなと思っています。

デザイナーがやることは増えていると思うのですが、できないことや弱みをなくしていくことよりも、自分が得意とするところをものすごく鋭利にすることが大事だと僕は思っています。

三瓶:強みを伸ばしていくほうがいいということですね。何かに特化してしまうということは、それはそれで不安もありそうですが。

広野:自分の例でいうと、CDOだからグラフィックやイラストもある程度できたほうが良いのではと葛藤することもありますね。でも、自分をデザイナーたらしめているのはそこではないと思うんですよね。たとえば、いまあるスキルをすごい時間をかけて3倍まで伸ばすと考えるとき、弱みをなくそうと考えて10を30にするよりも、強みである100を300にした方がインパクトはでかいと思うんです。

だから、自分の得意なことを表すキャッチコピーを決めたほうが良いと思います。僕だったら「世界最速の0→1デザイナー」をキャッチコピーとしてるんです。まず自分の強みを言語化してキャッチコピーを作るっていうのがすごく重要かなと思ってます。そうすると、どこで誰と一緒にいたら自分がいまより輝けるかが分かってくると思うんです。

三瓶:キャッチコピーを考えることが、キャリアを考えることにもつながりそうですね。

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この記事は、デザイナードラフトの提供でお送りしています。デザイナードラフトは、企業が年収つきでユーザーに競争入札するのが特徴の転職サービスです。次回は、2018年4月11日に開催予定。

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クックパッド 倉光美和さん

次は、クックパッドのデザイナーである倉光さんに、インハウスのデザイン部署のマネージャーとしてのキャリアについて聞いて来ました。

UIとの出会い、そしてサービスデザインへ

三瓶:まずは倉光さんの経歴を簡単に教えてください。

倉光:最初のキャリアは家庭用ゲーム業界のグラフィックデザイナーとしてスタートしました。ゲーム業界ではアクションやアドベンチャーゲームなどいくつかの開発プロジェクトを経験したのですが、その後に現職のクックパッドに入社して今に至ります。

クックパッドでの入社当初はデザイナーとして新規サービスの体験設計やUIを担当し、後にクックパッドアプリのUX改善や新機能開発を中心に仕事をしていました。今はデザイナー統括マネージャーとして、横串で複数チームのデザイン相談やデザイナーアサインに対応したりもするようになりました。

三瓶:グラフィックをやっていた倉光さんが、UIやUXに興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか?

倉光:ゲーム業界では画面上に表示されるイラストやアイコンなどのグラフィックを手がけていたのですが、もともと大学でエディトリアルデザインを学んでいたので徐々に画面のメニューデザインなどもやるようになったのがUIデザイナーとしてのきっかけです。

当時、ニンテンドー3DSやiPhoneなどのゲーム開発に携わっていたのですが、同じゲームなのにコントローラーや傾きセンサーで操作したり、人指し指で操作したり、プラットフォームごとの操作方法がぜんぜん違うんですよね。そういった側面から、今度は単体のUIからそれぞれのデバイスでの体験に興味が沸いてきて、徐々にUXデザインの勉強をしていきました。

マネージャーとして部下に伝えていること

三瓶:デザイナーのキャリア形成について、倉光さんにはマネージャー目線でお話をお伺いしたいと思います。倉光さんが部下の方に日々伝えていることなどはありますか?

倉光:デザイナーは毎日やらなければいけないことが無限にありますし、やらないとどんどん増えていくので、自分の中で2つ意識していることがあります。

デザインの価値や影響力を考える

倉光:意識しているのは「このデザインはユーザーさんにちゃんと価値が届く仕事なのか」ということと、「このデザインをリリースしたとき世の中にどのくらい影響があるのか」ということです。このような軸をおいて、日々仕事に臨むようにしていますし、これは後輩などにも伝えていることです。

三瓶:忙しいと、タスクを終わらせるのが目的になってしまったりしますね。

倉光:そうなんです。どんな細かい作業でも意識するようにしています。これをやらないと、ユーザーさんに届かないような小さな雑務で手を動かしてしまって、なんとなく自己満足で1日の仕事が終わってしまいます。

三瓶:この2軸の判断が難しいときはどうしているのでしょうか? 特に部下の方などは判断が難しそうです。

倉光:「ユーザーさんの世界はこう変わるに違いない」と思うのはある意味デザイナーが思い描く理想でしかないですし、そこで悩んでしまうこともあります。

そう言った場合は課題の粒度を切り分け、一部分でもユーザーさんに出して、反応を見極めるなどして判断できるようにするとよいと伝えています。「壮大に考えすぎない」とも言えるかもしれません。

恥じらいは捨てる

三瓶:他には部下の方に伝えていることはありますか?

倉光:デザイナー以外の人でもそうですが、プロダクトデザインをする上で自分の作るものに対して、どれだけ早く恥じらいを捨てて、周囲に見せられるかということが大事ということは伝えています。

デザイナーになったばかりのときや、新しい分野を始めるときなど、スキルや自信がなくて、自分の思う完成度までなるべく100%に近づけないと見せられないということがあると思います。

三瓶:わかります。すごく恥ずかしいんですよね。

倉光:それはすごくもったいなくて、アイデアを形にしてチームメンバーとか、ユーザーの反応を見て客観的な視点を得るというのが、何よりの成長につながるんだと思います。私も若手の頃、「まだ自分をさらけ出してないだろう?」みたいなことをチームメンバーなどに言われたりしました(笑)。

三瓶:さらけ出さなかったのは何故でしょう?

倉光:単純に恥ずかしかったのと、案を否定されたら、自分が否定されると勘違いしていたというか……。そこはまずさらけ出すというのが先だとあとから学びました。

なので、後輩などにはまず綺麗な内容を出す前に、手書きでもいいから、隣の席のチームメンバーに自分の考えてることをまとめてみようね、と伝えています。

知識は持っているだけではダメ 

三瓶:部下の方のお話から派生して、もう一つ。デザイナーがキャリアアップするにあたって、どのようなスキルを磨けばよいなどありますか?

倉光:クックパッドのデザイナーでも持ってるスキルは体験設計/グラフィック/エンジニアリングと結構バラバラですし、どのスキルを磨けばよいとは特に決まっていません。強いて言うならユーザーのことを考えて、体験設計をするという部分にどれだけ粘れる姿勢があるかというところでしょうか。

スキルや手法、ツールなどの知識は、携わるプロダクトの成長に対してどれだけ還元できたかどうかが重要です。そういったところを証明できれば、キャリアも必然的に上がっていくと思います。

三瓶:知識だけじゃなくて、実践してなんぼという。

倉光:知識を持っているだけではダメですね。万能な手法なんてものはなくて、自分の持っている手法だったりツールだったりを自分の環境に合わせて変化させていくことが大事ですね。

たとえば「カスタマージャーニーマップ」。私も知識としては持っていますが、実はあまり使っていません。クックパッドだと各チームは2〜10人くらいの開発規模で動いているので、まず30分程度で書けるコンパクトな「ユーザーストーリー」という簡易書式でユーザーシナリオを書いてみるところから始めています。

三瓶:持っている知識を基に現場で試行錯誤をして、チームの成果にコミットできる人材は確かに重宝されそうです。

デザイナーとしての危機感

三瓶:倉光さんはマネージャーでもあり、ご自身でもバリバリ手を動かすデザイナーでもありますが、デザイナーとして大事にしていることなどはありますか?

倉光:今ってデザイナーじゃなくても、世の中の様々なデザインプロセスを導入すればプロダクトの成功の打率を上げることって可能なんですよね。これはデザイナーとして危機感を持っているところなんですけど。

三瓶:確かに今やテンプレートやデザインシステムなりを活用して、非デザイナーでもデザインができる、みたいなトレンドはありますね。

倉光:そうなんです。だけど、デザインには最後の最後で言語化できない、「何かいいよね」と言うのが絶対あると思っていて。その簡単に真似ができない部分というのは、これから磨いていきたいなと思っています。

三瓶:なるほど。それは詰まるところなんなんでしょうか、センスでしょうか?

倉光:なんなんでしょうね(笑)。たとえばそのチームに自分がいなかったらこの表現は出てこなかったよね、みたいなものなんですけど。自分にしかできないところというのをちゃんと持っていたいというか。

三瓶:テイストとか世界観とかですかね。

倉光:かもしれないです。私がゲーム業界出身だからかもしれないですけど、良いプロダクトって作った人のオーラとか空気だったりとか、譲れない部分とか、節々から感じられると思っているんですよね。決して表層で主張しているわけではないんですけれども。そういった部分はデザイナーとして大事にしたいです。

三瓶:これからデザイナーとしてやってみたいことなどはありますか?

倉光:やってみたいのは、公共のデザインですね。この前区役所に行ったら、沢山のチラシが壁に貼ってあって、そこら中に「いらすとや」のイラストが散りばめられていて……(笑)。「いらすとや」が悪いわけではないのですが、情報のわかりやすさを「いらすとや」だけに委ねてて良いのかと。ちょうどエストニアのデザインシステムを見たあとで、日本ももっと頑張りたい! となって(笑)。

三瓶:北欧は掲示物までいちいちかっこいいですもんね。

倉光:貼り紙は一例で、たとえばマイナンバーの運用であるとか、まだまだ紙運用だったり、不便だなと感じる部分は、おそらく水面下で多くの制約や課題が存在しているのだと思っています。そういったあまりITがうまく作用していないところとかまだまだやれる範囲はあるのかなと思います。

私はあまり世界の人々を幸せにするという考えが及ばなくて、半径数十メートル以内の人が幸せになったらいいなと思ってます。

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この記事は、デザイナードラフトの提供でお送りしています。デザイナードラフトは、企業が年収つきでユーザーに競争入札するのが特徴の転職サービスです。次回は、2018年4月11日に開催予定。

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Fablic / OH 割石 裕太(わりえもん)さん

最後のインタビューは、Fablicに在籍しつつ、OHという名前でも活動をされている割石さんです。いちデザイナーとして仕事を受ける上で大事にしていること、これからの活動について聞いてきました。

自分の名前に紐付いた実績をつくる

三瓶:まずは簡単な経歴紹介をお願いします。

割石:新卒で面白法人カヤックに入社して、いまは株式会社Fablicでアートディレクターとデザイナーをしています。最近だとラクマのデザインやデザイナーチームのマネジメントなどをしています。

あとは新卒2年目からOHという名前で活動していて、個人でCI(Corporate Identity)・ロゴからUIまでなど幅広くデザインさせてもらっています。

三瓶:新卒で会社を選ぶときに、何か重視していたことはありましたか?

割石:そこまで明確な理由はないのですが、ひとつだけ重視していたのは、作った実績が自分の名前に紐づくことです。自分が仕事をしたという実績を増やしたいと思い、最初の頃はクライアントワークをメインにやっていました。

きっかけは危機感

三瓶:個人で活動されているOHをはじめたきっかけはあるのですか?

割石:きっかけとしては危機感ですね。イベントなどによく行くようになったとき、どこに行っても名刺を渡すと「あ、カヤックの人なんですね」となるんです。カヤックという名前があまりにも大きくて、カヤックの人以上の何者にもなれなかったんです。それで危機感を持ちました。

三瓶:ひとりのデザイナーとして覚えてもらえないという危機感ですか。

割石:グラフィック寄りの学校出身だったので、ロールモデルは自然とグラフィックデザイナーの方々で。自分の名前で仕事をとり、自分の関わった仕事として世に出す。その姿に憧れていました。

なので、将来は自分の名前で仕事をしたいと思っていて、ひとりのデザイナーとして覚えてもらわないと話にならないなと。だから最初のゴールとしては「カヤックの〇〇さん」じゃなくて、「割石裕太がカヤックにいる」と言ってもらえるようになることでした。

UIデザイナーからデザイナーへ

三瓶:割石さんは「UIデザイナー」というイメージがあるのですが、UIデザイナーと名乗り始めたのは何故ですか?

割石:単純に自分が何者かを証明できていない状況でしたので自分を的確に伝える方法を考えていました。

そこで、当時UIデザインにフォーカスして制作・アウトプットを行なっていたので、それを端的に伝えられるため、UIデザイナーと名乗りはじめました。

三瓶:なるほど。UIデザイナーと言うとけっこう人によってイメージするものが違うと思うのですが、割石さんの中でUIデザイナーの定義はありますか?

割石:ユーザーがサービスに触れるとき、何かきっかけがあって、サービスを知って、実際に体験して帰って行くという流れだと思うのですが、そのユーザーと直接関わる体験をつくるひとだと考えていました。最近だと、UXデザイナーとUIデザイナーは別の職種と扱われることが多いですが、僕はUIデザイナーでもUXのことを理解せずに仕事することはできないと思っています。

三瓶:では、別にUIデザインだけをやるわけではないのですね。

割石:そうですね。UIデザイナーと名乗ることで覚えてもらえたのですが、ほかの人からするとUIデザインをやる人なんだという認識になってしまい、自然とほかの仕事との距離が離れてしまいました。

なので、最近はUIデザイナーと名乗っていないんですよ。いまは、CIやUIも全部トータルで見たときに、ブランドの体験としてどういうものを作るべきかを考えたいので。

三瓶:いま名刺を見たら「デザイナー」ってなっていますね。

割石:そうです。そもそも「何をする人なんだ」っていうのが証明できていない状態だと、「私はこれをできる人間です」っていうのを伝える必要があると思うんですけど、いまでは多少なりとでも覚えていただけたので。

いまは何かを名乗ることによって、何かの固定のイメージがつくことの方が弊害が大きいと思ったので改めてデザイナーに戻りました。

捨てるという選択

三瓶:話を聞くと自分が何者かをとても意識されている印象がありますね。

割石:僕も新卒のときは自分が何者かわからなかったし、目の前のことで精一杯でした。ただ、周りを見れば自分より出来る人がいっぱいいたので、自分はどうやって戦うべきかをずっと意識していました

自分より出来る人と同じ戦い方しても追いつけないので、それで捨てるという選択肢も大事だなと気づきました。僕の場合、プログラミングは捨てて、まずはデザインに注力することに決めました。

三瓶:スキルの取捨選択は大事ですよね。

割石:身の回りに優秀な人が多かったので、常に危機感がありましたし、負けないように頑張ろうといつも思っていました。改めて振り返ると、そういう仲間や比較対象となる人が身の回りにいるのがすごく重要だなって思います。

純粋に楽しいと思える仕事をしたい

三瓶:今後どのようなことをしていきたいかを聞いてみたいと思うのですが。

割石:もっと長く変わらない部分に注力したいですね。領域に関わらず、もっといろんなサービスや場所・モノのブランドづくりにフォーカスしたいと考えています。

これは、純粋にこの1年で、自分が幸せを感じられる領域がそこだと感じたからです。

三瓶:何かそう思うきっかけがあったのですか?

割石:去年は正直、停滞の一年でした。一昨年のフリルのリニューアルという大きな実績もでき、知識も技術も得たものが多かった代わりに、おもしろいモノをつくる能力が薄れている感覚があって。それで、アウトプットすることに自信が持てなくなり、どこに自分の価値があるのかわからなくなってしまったんです。そのときは、海辺で体育座りして昼から夕方までボーっとするみたいなこともしました(笑)。

三瓶:スランプの時期があったんですね。

割石:そんな時期があったのですが、ある人が「北海道の農場のブランディング案件があるんだけど、相談にのってくれないか」って声をかけてくれたんです。期間がとても短い案件だったので、この状況を抜け出すきっかけになればと思って受けさせていただいたのです。

そのときは、映像などのクリエイティブディレクションといった内容で、ロゴは求められていなかったのですが、ブランドとしてのあり方の提案、ロゴも提案してみたんですよ。そしたら社長さんが本当に気に入ってくれて、その日のうちから「今日からこれでいこう」と言ってくれて。その後も、サプライズでオリジナル刺繍をしたジャケットを作ってくださったり、積極的にいろんなところに使ってくれてても嬉しかったです。

三瓶:それは嬉しいですね。

割石:そこで初めてデザインに救われた感じがあったんですよ。デザインをやっていて苦しいことが続いていた中で、デザイナーで良かったと思える案件で。それがあったおかげで、こういう仕事をしないと自分の人生が無駄だなって思ったんです。

アウトプットをもって語るべき

三瓶:活躍されているのを知っていただけに、負の時期があったのは少し意外でした。

割石:いやいや。去年は本当に壁にぶつかっていて、アウトプットもできていなかったんです。だからTwitterとかも控えるようになって完全に身を潜めてたんです。僕は本質的にモノを作ってない人間がモノを作ることについて語るべきではないと思っているので。

三瓶:アウトプットをもって語るべきだと。

割石:そうですね。モノをつくる上での思想というのは、アウトプットをもって証明されると思っています。そして、その考えやプロセスが正しかったかどうかもアウトプットをもって判断すべきだと。

たとえば、僕の場合はラクマのロゴを作るということを半年かけてやっていたんです。そのときは、フリルを使ってる人たちが混乱しないように、フリルのロゴを継承しつつ新しいロゴを通じてプロダクトの本質は変わらないと伝えたいと思っていました。その結果、ネガティブな反応もあったのですが、その想いに共感してくれる人も確かにいたんですね。なので、やっぱり行動をもって思想が正しかったかどうかを見るべきかなと。本質的に成長するためにはモノをつくる以外にないと思うんです。

ずっと変わらない部分を作りたい

三瓶:今後、デザイナーとしてこだわっていきたいことはありますか?

割石:今後のことで言うと、WebかWebでないかで絞る気は全くないです。紙やWebは媒体でしかなくて、媒体は常に変わり続けるものだと思うんですよね。なので、そこは臨機応変に対応して、変わらない部分を作っていきたいと思っています。

三瓶:10年後20年後で考えると、どの媒体が使われるのかわからないですよね。

割石:そうなんです。けれど、媒体が変わってもブランドが本質的に大事にするべき想いは変わらないはずなんですよ。それをWebで表現するのか、印刷物で表現するのか、ロゴで表現するのかっていう違いなだけであって。

三瓶:媒体にこだわらず、デザインを通してブランドのメッセージを伝えていくということですね。

割石:ブランドの根幹である「どういう世界を作りたい」、「何を大事にしたい」といったことにもっと関わっていきたいです。なので、最近はビジョンやコアバリューを考えた上でデザインさせていただくことが増えています。

今後は、OHとして残り続けるものを作っていきたいと考えています。

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今回は、デザイナードラフトの提供で活躍されている3名のデザイナーにインタビューをしてきました。

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次回は、2018年4月11日に開催予定なので、それまでに登録すれば企業から年収つきで入札を受けることができます。

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提供:株式会社リブセンス
企画制作:UX MILK編集部
撮影協力:KNOCK CUCINA BUONA ITALIANA ebisu、 dot. Eatery & Bar