モバイルUXデザイン6つの「お約束」+α

Brad Orego

Brad Oregoはエクスペリエンス・デザイナー、ウェブ開発者、起業家兼ダンサーであり、現在米国ウィスコンシン州のマディソンに在住しています。ビジュアルと物理的世界の融合に魅了され、日常生活をより豊かなものにするために、新たなテクノロジーの開発に尽力しています。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

A Loose Heuristic for Mobile Design

2012年7月、ウィスコンシン州のマディソンという美しい街で開催されるUXMadと呼ばれる会議に出席するために、熱心なUXの専門家集団が集結しました。講演者の1人であるHampton Catlin氏は、「モバイルデザインの6つのお約束」についての講演を行いました。今回、私は彼の6つのお約束と、私が改良を加えた自由なヒューリスティック・アプローチについて、皆さんと情報を共有したいと思います。

Hampton氏が提唱しているモバイルデザインのお約束は、彼が手がけたウィキペディアモバイルのデザインや、Moovwebにおけるデザインでの経験に基づいています。以下に彼の法則についてまとめました。

I. シンプルであること

画面のサイズや帯域、処理速度などのモバイルデバイスの制約を考慮すると、読みづらい複雑なページは問題外です。要素、画像、または選択肢が増えるほど、1つのページで読み込まなければならない情報が追加され、ユーザーが対処しなければならないことが増えるのです。

II. 理解を妨げない程度の簡潔さ

「不必要な要素を全て排除する」ということに対する直感的反応は、しばしば「全てを排除する」という行動に変換されることがあります。ここで明らかに問題なのは、理解に必要なコンテキストが欠けているということです。シンプルさとは、不必要なものを取り除いた繊細な美のようなものですが、そのコンテキストの理解に必要なだけの要素は残す必要があります。Hampton氏がデザインを手掛けたウィキペディアモバイルを例として挙げてみると、このコンセプトを見事に表現していることがわかります。

上から「包括性」「簡潔さ」「シンプルさ」

上から「理解力」「簡潔さ」「シンプルさ」


III. 顧客提供価値を理解してから最適化する

私たちのユーザーを理解すればするほど、機能やコンテンツへのより良いアクセス方法をユーザーに提供することができます。しかし、モバイルユーザーはデスクトップユーザーに比べて、異なる機能やコンテンツを望む可能性があります。例えば、Hampton氏がウィキペディアモバイルの仕事を進めていた時、データ復元についてモバイル用に最適化しました。彼は、デスクトップ用のサイトで利用可能となっているコンテンツの編集・作成機能を、モバイル版では削除したのです。

IV. 「どこ」は「だれ」よりも重要

環境心理学の研究は、私たちが身の回りの環境にどれほど(強く)影響されるかについて調査を行っています。これはモバイルデザインにとっては、言うまでもないほどに真実です。ユーザー自身に対してデザインを合わせるのではなく、ユーザーが今何をしようとしていて、そのユーザーの目的達成のために私たちにできることは何かといった、ユーザーのコンテキストに焦点を当てたほうが良いのです。

V. ユーザーは不器用である

小さい要素を寄せ集めたようなデザインインターフェースは、悲劇のもとです。そのようなインターフェースを若者や酔っ払い、高齢者に提供したらどうなるかを想像してください。AppleのHCIガイドラインは、指でタッチするターゲットの最小サイズを44×44ピクセルと定めています。

VI. フッターはデッドゾーン

あなたが最後にモバイルサイトの一番下までスクロールしたのはいつでしょうか。サイトの下のほうに、何か有益な情報はありましたか。もしあなたの回答が「覚えていない」や「いや、なかった」であれば、それは喜ばしいことです。Hampton氏はこのような理由から、フッターにコンテンツを掲載することに異議を唱えています。誰も見ないような所に、無駄な時間を費やさないようにしましょう。

私なりの応用・追記

Hampton氏の講演がインスピレーションを与えてくれたので、ここ数か月間様々なアイデアが私の中に浮かんできています。私の見解としては、モバイルデザインには常に他とは異なる点があると思います。以下が私の意見です。

法則IとIIを組み合わせる

Hampton氏のIIの法則 (簡潔さVS理解力) は、法則とは言えないような内容です。法則Iではシンプルさをデザインの要件としてとらえているのに対して、法則IIではデザインの原理として説明しています。これらを2つの異なる法則に分ける必要はないのではと思います。

モバイルユーザーは1つのものを欲している

私たちの顧客提供価値を強調することで、より良いエクスペリエンスを実現できると思いますが、私はここにもう一歩踏み込んだステップを追加したいと思います。モバイルユーザーは大抵の場合、ある1つの「もの」を今すぐに手に入れたいと考えています。私が法則IIIに付け加えたいことは、そのある1つのものを獲得するまでの道を、ユーザーが時間を節約できるようにできる限り明確かつ効率的なものにするということです。

注意散漫、または邪魔されることによる断続的な使用を想定する

モバイルユーザーは1日におよそ70分をモバイルサイトの閲覧に費やしています。Hampton氏は、ユーザーは1回に3~5分という断続的な利用をしていると主張しています。ユーザーは常に他のことをしながらモバイルデバイスを使用しているため、すぐに注意散漫になり、また他の緊急な出来事がいつでもモバイルデバイスの使用を妨げる可能性があります。私たちはこのようなことを考慮に入れて、全ての要素が容易に認識できるようなデザインを心がける必要があります。

drive

私たちのサイトやアプリケーションの状態が、即時に認識できなければなりません。またセッションの変換などの接続の問題に左右されるような要素に、サイトやアプリケーションの運営をまかせてはいけません。

パフォーマンス=優れたUX

パフォーマンス(性能)は、優れたユーザーエクスペリエンスにとって間違いなく重要な要素です。最も素晴らしいデザインのサイトでも、ユーザーがページの読み込みに数秒間待たなければならないのであれば、全く役に立ちません。モバイルサイトのパフォーマンスの向上の詳細については、これらの記事を参照してください。

デスクトップ版のサイトへの「アクセス」を提供する

私たちがどんなにモバイル用のデザイン構築に何時間も費やしたとしても、ユーザーの中にはお決まりの反応しか見せない人もいれば、従来の (モバイル用に最適化されていない) ソリューションを使用して、目的の情報を迅速に見つけているユーザーもいるのです。モバイル版サイト上で、デスクトップ版サイトへアクセスするリンクを提供しなければ、ユーザーの不満を引き起こしかねません。

できるだけ多くのデバイスでテストする

残念ながら、モバイルデバイス市場は変動が激しく、非常に脆い状態にあります。私の経験上、全てのモバイルデバイスは何かしら癖があり、それを嫌って使用しなくなるユーザーもいます。もちろん、デザインのテストに使用できるデバイスの数には限りがありますが、多ければ多いほど良いものです。市場データを活用して、テストの方向性を決めていきましょう。

結論

さて、これでモバイルデザインの「お約束」はあなたのものです。ヒューリスティック評価のように、これらのガイドラインを検討してみてください。あなたのデザインとこれらのガイドラインを見比べて、それぞれの「お約束」の長点と弱点を考えてみましょう。しかし、これが絶対的な基準であると思わないでください。モバイルウェブの世界は多様であり、興味深い事例がたくさんあるのです。優れたユーザーエクスペリエンスに適合するように、随時応用、変更、改善、そして破壊を行っていきましょう。


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