モバイルサイト vs PCサイト、ユーザビリティの評価と比較

Jeff Sauro

Jeff Sauro氏は、Fortune 1000企業に対して統計やユーザビリティのコンサルティング業務を行っているMeasuringUの創立者です。彼は統計学やユーザーエクスペリエンスに関する20以上の記事や書籍を5冊ほど執筆しています。

この記事はMeasuring Uからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Are mobile websites truly less usable than desktop websites?

スマホサイトが使いづらいと感じることはありませんか? 誰でも一度はそう思ったことはあるんじゃないかと思います。

スマホにおけるUXの悪い例は簡単に見つかりますが、機能的にもPC用よりひどいものなのでしょうか。

インターネット利用者の8割がスマートフォンを所有している今、これは重要な問題です。

スマホ用のサイトは、PC用サイトの簡易版のように見えることが多く、スマホの方がUXが乏しいと憶測しがちですが、こうした機能制限されたサイトは、モバイル向けソリューションのための一時しのぎであったり、そうでなければ意図的な必要最低限の「モバイルファースト」の結果であったりします。もちろん、小さな画面はコンテンツが読みにくく、見づらくなるというケースもありますが、同時にスペースの広いPC用サイトによく使われる、バナー広告やヒーローイメージ(ページのトップの一番大きい画像)、宣伝画像やカルーセルなどのデザイン要素の余地がないということでもあります。

画面スペースという制約のために、ユーザーはPCよりもスマホでの買い物の方がしにくいのではないかと思い込んでしまうのも当然です。それでは、スマホでのUXは、実際にどの程度劣るのでしょうか。

最近の調査で、私達のクライアントのスマホ用サイトが、多くのタスクとテスト測定でPC用サイトよりも高い得点をあげました。これは偶然でしょうか、それともスマホサイトの方が、PC用よりもより良いUXを提供しているということができるでしょうか。

制約がより多いデザインに驚かされるのは今回が初めてではありません。フルサイトでのナビゲーションや検索をする場合に比べて、スマホのナビゲーション構造だけの方がユーザーが商品を見つけやすいという結果がツリーテストでも複数見られています。つまり制約のないデザインの方が、商品を見つけやすいのではなく、見つけにくいということなのかもしれません。

スマホとPCのエクスペリエンスのデータ比較

私たちは自分たちのデータセットを、UXの比較検討ができそうな小売店と自動車情報の領域にまで広げてみました。これらのスマホ、あるいはPCからのデータを一斉に、もしくは1〜2週間くらいの間くらいしか空かないように取得しました。スマホ向けとPC向けで異なるモニターを使い、全員にそれぞれのサイトにしばらく時間をかけて操作してみてもらった後、タスクに関する同じ質問とエクスペリエンス全体について答えてもらいました。

7件のサイトでスマホ用とPC用を調べ、3,740人のモニターから、サイト1件当たり平均312人分のデータを集めました。スマホ用で1件のみ20人という例外がありましたが。

スマホとPCで同じタスクを試みてもらいましたが、タスクはこの2つです:(a)モニターが特定の製品または情報を探す、(b)モニターに条件を与え、その条件に合う製品を探す、というものです。タスク完了率タスクの難易度タスクに要した時間などをデータとして集め、最後に、モニターにSUPR-Q(Standardized UX Percentile Rank-Questionnaire=指標が標準化されたUXを測るアンケート)に答えてもらい、全体のクオリティ、ユーザビリティ、信用性、外観、ロイヤルティ、NPS(ネット・プロモーター・スコア)を測定しました。

認識力での評価

実際、42件のSUPR-Qスコアのうち、スマホ用の方が高得点を叩きだしたケースが23件(55%)もありました。ただし、この差は統計学的に有意ではありません。(p 値 = 0.64)

ところが、SUPR-Qでユーザビリティ要件のみに絞ると、7件中6件でスマホでのエクスペリエンスの方が高得点を得ていました。これは統計学的に有意水準α=10%で有意差(p値 = 0.08)があるということです。下の図1を見てください。

図1 デスクトップとモバイルそれぞれのサイト間でのユーザビリティ得点比較。7件中6件のウェブサイトでモバイルのエクスペリエンスの方がユーザビリティ得点が高い。

図1 デスクトップとモバイルそれぞれのサイト間でのユーザビリティ得点比較。7件中6件のウェブサイトでモバイルのエクスペリエンスの方がユーザビリティ得点が高い。

言い換えると、ユーザーのユーザビリティにおける認識度は、多くの場合、スマホでのエクスペリエンスがPCでのエクスペリエンスに優れているということです。スマホでのエクスペリエンスの方が優れていた6件のサイトの平均差は7%、PCのエクスペリエンスの方が優れていたサイト(サンプル20件)では、平均差は20%でした。

パフォーマンスでの評価

認識力におけるユーザビリティは、パフォーマンスにおけるユーザビリティとは異なります。通常、人間の考えと行動には確かな相関性がありますが、考え方が行動の代わりになるほどではありません。ですので、テストを行う際は考えと行動、どちらの記録をおすすめします。

50個のタスク測定のうち、40%にあたる20個でスマホサイトの得点が高くなりましたが、この割合は統計的な有意差が見られません。(p値 = 0.21)

タスク時間のデータがある14個のタスクのうち11個で、スマホサイトの方が時間がかかっていました。これは統計学的な有意差がある(p値 = 0.04)ばかりでなく、同じタスクにスマホの方が平均81%も時間が長くかかっていました。つまり、PCで100秒かかったものが、スマホでは約181秒かかっていたということです。しかし、これらの時間差の大部分は海辺での休暇用の商品を探すなどの自由回答タスクのものです。回答が一つだけのタスク(調査は1件のみのデータですが)、例えば40$未満のブレンダーを探す、というものなどでは、4個のタスクのうち3個で、スマホよりもPCの方が10%長く時間がかかっています。

技術注記:タスク測定データは独立したものではなく、統計的仮説検定の条件の一つに反することになります。故にタスクベースのp値は不正確な可能性があります。(本来あるべき数値よりも低い可能性があります)しかし、ユーザビリティのスコア比較は各調査につき一測定で、独立したものです。

結論?

スマホサイトがPCサイトに比べて実際に使いにくいのかという問題に厳密に答えるには、サイトやタスク、業種の様々なタイプのものから、より大きなデータが必要になります。しかし、この限られたデータでも、さらに興味深いパターンが見られます。

1. 上記と違い、スマホサイトの方がタスク・パフォーマンスが優れているというエビデンスもあるようです。

2. 常にというわけではありませんが、スマホサイトの方が一般的にタスク完了に時間がかかっています。ピンチやスクロールなどの操作で時間がかかるようです。全てのタスクでというわけではありませんが、多くのタスクでスマホでは約2倍の時間がかかっています。

3. 全般的に、サイトのユーザビリティにおける認識度は7件のサイト中6件でスマホの方が高いものでした。数値的なタスク・パフォーマンス(特に時間)の低さに反して、ユーザーがスマホを使う時の期待値が低いためにレートが高くなるというケースかもしれません。

今後の研究では、スマホサイトにおけるより大きなデータセットの調査に加え、モニターのタイプに応じた追加制限などにも目を向けていくことになるかもしれません。というのは、スマホ使用の増加にかかわらず、スマホのモニターはPCのモニターとは定性的に異なる可能性があるということです。例えば、スマホ使用者は若年層に偏りがちで、それが認識やパフォーマンスに影響するかもしれません。ここでの結果は、そういった異なるモニター(おそらく年齢層)で測定していることから生まれる差でしょう。

将来的には、サンプルの同一化、又はモニター内アプローチ(同じモニターがスマホとPCでテストする)、更により多くのサイトを調査することによって、このようなばらつきをコントロールできるようになるでしょう。今のところはとりあえず、スマホのUXは一般的に劣っているという従来の見識を見直す必要があるのかもしれない、というくらいにしておきましょう。

今後もっと調査を重ねる予定なので、お楽しみに!


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