人の決断は常に合理的であるとは限りません。人の決定は論理的、意識的な思考よりも感情に左右されることが研究で明らかにされています。
とは言っても、私達の非合理性は予測することができ、優れたデザイナーは人間の意思決定について学び、ユーザビリティだけにとらわれずに効果的に人間の行動に影響を与える製品を作り出すことが出来るのです。
神経科学者のJonah Lehrerによると、人間が非合理的なのは、理詰めの思考に時間がかかるうえに、脳の合理的思考をする役割はまだまだ新しく、容量が非常に限られているからだということです。つまりそれは、彼の言葉を借りれば「間に合わせで作られた、不完全なPCのOS」のようなものなのです。その反面、脳の感情的な分野は非常に力強く、良い意思決定をすることから、ほとんどの決定は感情的な基準で行われるのです。
人の非合理性を証明する8つの実験
― Predictably IrrationalとHow We Decideより
・人は、絶対的な方法で物事を比較するのが苦手である
ある実験で、被験者は二つの異なる価格の品のどちらかを選ぶように言われました。その結果、同じくらいの価格で質が劣るものをもう一つ加えるだけで、高価な方を選ぶ率が二倍に跳ね上がったのです。これはいわゆる「おとり」であり、最初の品を買わせるように仕向けるためだけの物です。
・人は相対的な思考をする
別の実験では、被験者は18ドルの価値を持つ品のうち7ドルを節約するために15分間歩きましたが、同じ条件で品を455ドルのものにしたら15分間歩こうとはしませんでした。彼らがもし合理的なのだとしたら、品の価格は重要ではないでしょう。15分間歩いたことで節約されるのは、どちらの場合でも7ドルに変わりないのです。
・はじめての経験は強く印象に残る
ある実験で、被験者はあらかじめつけられた値段で特定の商品を購入するかどうかを尋ねられました。その後、今度は同じ商品に自分で値段をつけるように要求されました。その結果、彼らがつけた値段は最初の値段の影響を強く受けたものでした。最初に見た値段が高いほど、高い値段がつけられたのです。これは、アンカリング効果と呼ばれています。
・人は、よりお買い得な特価品よりも無料の方を好む
人は、7ドルで20ドルのAmazonの商品券を買うよりも無料で10ドルのAmazon商品券をもらう方を選びます。Amazonのフランス支部がわずか20セントの船の送料を無料にするだけで、売り上げは劇的に向上しました。
―これについては power of freeをご参照ください。
・人間は自分が所持しているものにより大きな価値を見出す
私達は、自分たちが所持しているもののほうがより価値があると考えます。ある実験では、バスケットボールのファンが試合の自分のチケットを売るのに2400ドルという金額を提示しましたが、買う側が提示した金額の平均はわずか170ドルでした。
・はじめにある期待は、その後の経験に大きな影響を及ぼす
コカ・コーラのファンがコーラをより好んでいるのは、味が良いからではなく、そのブランド力の影響なのです。実験により、安い鎮痛剤や割引された鎮痛剤よりも、高価なものの方がよく効くことが明らかになっています(プラシーボ効果)。
・人は、同じ内容の質問でも異なる言葉で尋ねられれば異なる回答をする
人の選択は、最初の回答が何であるか、また言い方が良いことを強調しているか悪いことを強調しているかによって変わります。これはフレーミング効果と呼ばれます。
・人は忍耐力がない
Lawrence Ausubelは実在するクレジットカード会社の販売促進を分析し、長いスパンでの利子が非常に高い場合でも、大多数の人が低い利子率に惹かれることを証明しました。他の実験では、被験者は大きな額のAmazon商品券を2〜4週間待って手に入れるよりも、より小さい額の商品券をすぐに手に入れる方を選んでいます。