一般的には、選択肢があることは良いことだと思われています。私達は複数の選択肢を持っていることに慣れており、それを自由に扱えると信じて疑いません。
しかしながら、WebサイトやWebアプリケーションが提供する選択肢を増やせば、それだけインターフェースを全体として把握しにくくなります。選択肢があまりにも多すぎると、往々にして意思決定のブレやストレスにつながることが研究で示されています。一般的な法則としては、人間は製品を実際に使い始める前にその機能の多さを高く評価するだけなのです。使い始めた後になって、よりシンプルな仕組みの方が満足度を上げやすくなるのです。
選択肢と機能に関して
・選択肢が限られていた方が商品が売れやすいという事実は、選択肢の逆説的特性に関する古典的な例の一つです。さらに、選択肢をこういう風にすれば顧客の満足度はより上がるでしょう。―When Choice is Demotivating: Can One Desire Too Much of a Good Thing? (pdf)
・Barry SchwartzのベストセラーThe Paradox of Choice: Why More Is Lessでは、多すぎる選択肢の問題点に関する自身の研究が取り上げられています。TED videoとgood summary of Schwartz’s talk on UI11をご覧ください。
・Feature Fatigue: When Product Capabilities Become Too Much of a Good Thingという研究は以下の結果を出しています。「製品の使用前は、その機能が有用性よりも重視されましたが、使用後は有用性が満足度の上昇に貢献しました。結果としてはよりシンプルな製品の方が満足度は高く、機能を多く備えた物はほとんどの人に拒絶されました」
・神経心理学者のSusan Weinschenkはこう促します:「顧客にできる限り多くの選択肢を与えたいという衝動は抑えてください。これは覚えておいてもらいたいのですが、顧客は多くの選択肢が欲しい時はそう言いますから、そうして初めて豊富な選択肢が良いことだと考えるのです(なぜならあなた方開発者側も好んでいるからです)。しかし選択肢があまりに多いと、商品はまったく売れないでしょう」― You Want More Choices and Information Than You Can Actually Process
・ヒックの法則によれば、選択肢が多くて複雑であるほど意思決定には時間がかかります。そして意思決定に時間がかかれば、それだけユーザー体験にも悪影響が出るのです。
・製品を改善し続けていると、その機能の数はすぐ増えて製品の目的を失い、コンセプトが膨れ上がってしまいます。そして結果的にユーザー体験を傷つけてしまいます。なぜなら「単純に、ユーザーの理解することが多すぎる」からです。開発者は自ら進んで製品の機能を潰していくべきなのです。
・Joshua Brewerはこう論じています:「デザイナーは自らの製品に共通する課題に注目し、1つの明白な機能を際立たせるために多くある選択肢をどのタイミングで潰せばよいか知ることによって、ユーザー体験にかなりの影響を与えることが出来ます。Appleに、最もよい例の一つがあります。Appleはこれまで一貫として、最小限主義を取り入れて目的を絞り、かつその性質に矛盾もない製品を作り続けてきました。iPodやiPhone、最近で言うとiPadなどは全て、このことを最もよく体現しており、携帯機器のデザインの制限がもたらした結果であることは明白です」
・Bill Buxtonは自著Sketching user experienceにおいて、n+1プロダクトの開発を中心とするビジネスモデルは長期的には持続しないことを指摘しています。機能の追加を繰り替えすと、顧客が判断する新しい機能の価値よりも改善にかかるコストの方が高くついてしまいます。
・また、複雑すぎて機能しなくなってしまう恐れがあるサービス機能を追加する時にも、気を付けてください。Netflixは、ややこしくて使えないと判断した機能の削除を試みましたが、ユーザーはそれに強く反発しました。そして最終的に、Netflixはその特徴的な機能を保持しました。―Features are a one-way street
・37signalsのJason Friedは、複数ある機能は編集しなければならないと述べています。―Is it really the number of features that matter?
・37signalsのGetting realでは、必要な機能だけを加え、必要最低限の機能を持った製品しか出荷しないという彼らの考え方が書かれています。
・たくさんの機能をシンプルであるかのように見せるために効果的な戦略は、スマートデフォルトを使うことです。Smart Defaults in Travel Booking Formsの例をご参照ください。