オンラインの世界は常に変わりゆき、技術の進歩とともに新しいトレンドが現れては消えます。Webサイトもまた然り、ユーザーの期待に応えるために変化していかなければなりませんが、必ずしも変化が良い改善に繋がるとは限りません。新しいデザインにするタイミングは必ずやってきますが、その過程でUXが損なわれるケースが多いのです。
例えば2013年、Gmailのデザインに触発されたのか、Yahoo! Mailがミニマルなデザインに変更されました。ユーザーを最も怒らせた変更の一つは、メールをソートし、分類するのに役立っていたタブ機能の廃止です。多くのユーザーにとってはYahoo! Mailのタブ機能こそが、Yahoo!のサービスを選ぶ決定的なセールスポイントだったのです。ユーザーの不満で掲示板は炎上し、ニューヨーク・タイムズが「オンライン暴動」と呼ぶほど、何万人ものユーザーを怒らせてしまいました。そして皮肉にもGmailは既に、FacebookやTwitter、他数多くの企業と同様、デザイン変更後にUXの問題を抱え、十分にユーザーの怒りを買っていたのです。
炎上など誰しも避けたいものですが、デザイン変更の利点も見過ごすことはできません。例えばサイトが3秒以内にロード完了するこのご時世に、未だに長いフラッシュのイントロがあるようなウェブサイトは論外です。ビジネスでは、ユーザー基盤を拡大し、現存のユーザーを満足させ続けるために、紙一重の所を行くことが求められます。ここでは、Webサイトのデザイン変更とUX維持のためのガイドをご紹介します。
変更するだけではなく、UXを改善するためにリデザインする
プロフェッショナルの世界でビジネスとして多く行われているのは、テクノロジーの進歩やデザイントレンドがサイトのカンフル剤になるという考えを前提とした、間違ったサイトリニューアルです。
FLASHアニメーションをまた非難するつもりはないのですが、FLASHイントロを多様した時代などは、新しいことは良いことだ、いつでも革新的なものでいこう、といったメンタリティから来ているのです。新しさは通常かっこいいものではありますが、必ずしも良いものになるわけではありません。サイトのリニューアルはただ新しくするためだけでなく、UXの問題点を本質的に改善するために行われるべきです。目新しさではなく、必要性を考えましょう。
2014年に行われたSpotifyのデザイン変更は、適切な理由によってなされたサイトのデザイン変更の好例です。音楽のストリーミングは人気があるので、変更を施してもユーザーを失いにくいというところはあります。しかし、当時もアップルのiTunesラジオの立ち上げなど、競争は激しく、Spotifyは適切な変更をする必要がありました。
Spotifyの新デザインで最も目立った変更は、ウルトラ・ブラックのデザインでした。以前のグレーを使ったデザインと比べ上品になりましたが、デザイン変更が派手だったせいか、劇的に改善されたUXの部分は目立ちませんでした。
Spotifyの初期のイテレーションでは、Tumblrの検索結果ページのように、アルバムカバーが整然とした配置になっていませんでした。その結果、アートがゴチャゴチャになり、混乱を招くUXとなっていました。グリッドにあわせた配置でアルバムのアートをレイアウトする変更は統一感を与えただけでなく、ユーザーのニーズに応えるものになりました。Spotifyの新しい「保存」と「再生」ボタンも同様で、過去のイテレーションでユーザーをイライラさせていたプレイアビリティの問題に対処したわけです。
インバウンド・トラフィックの重要性
ビジネスを成長させるのに確実な方法の一つは、検索のインバウンド・トラフィックを最適化することです。見込み客を直接サイトに連れてきてくれる検索流入は、極めて重要なソースです。
UXの役割は、そうしたサイト訪問者が探しているものを見つけやすくすることです。何のために来訪したかを調べる際、ユーザーが途切れなくインタラクションが行えていることを確認しましょう。このユーザビリティを調べるテストは問題点を分析するのに最適です。サイト訪問者が探しているものと、あなたのサイトで一番アクセスしやすいもののギャップがあればそれを埋めるようにしましょう。
評価は3回、デザイン変更は1回
Yahoo! Mailが多くのユーザーを激昂させたデザイン変更を行ったとき、ある程度はこれをやり過ごすことができました。なんといっても、Yahoo!ですから。ユーザーがどんなに怒っていたとしても、ユーザー基盤の規模や、メールアドレス変更の面倒さは、Yahoo!が生き残るには十分すぎる要素でした。
しかしながら、世の中には名の知られていないビジネスもたくさんあり、規模が小さければ、サイトのデザイン変更のせいで二度と立ち上がれないこともあります。
このような悲劇的な運命を逃れるためには、どんなサイトもまずは新しいデザインをテストする必要があります。幸運にも、テストは簡単なだけでなく、比較的安価なものもあれば、中には無料のものもあります。
最初の非公式な身内でのテスト、そしてそれに続くオンラインのテストの後に検討できる、クラウドソーシングのテストサービスがあります。Try My UIやFive Second TestなどのサイトはUXテストをかつてないほどより簡単に、より大衆向けにしてくれています。もしこれらが不十分な場合は、UXのテストツールが30個載っているまとめ等もありますから、チェックしてみてください。
こういったサイトは世界中のユーザーのネットワークにあなたのサイトの試作版を使ってもらい、彼ら自身のユーザビリティ体験について報告してもらうことができます。もし時間に余裕があって、何かお返しをと思うなら、あなた自身もクラウドソーシングのテスターの一員となることもできます。身内だけのチームや閉ざされた空間でのテストには限界がありますし、どこかの時点でチーム外部の人間にテストしてもらって、その落とし穴に陥らないようにしましょう。外部テスターがあなたの未来のユーザーになる可能性すらあります。
生まれ変わったサイトに期待すること
新しいサイトが稼動したら、新デザインがポジティブなインパクトを与えているかどうかをどうやって知りますか?
本質的なニーズに基づいたUX変更を行って新デザインをテストしたのであれば、最近Facebookがやったホームページのデザイン変更で起こったような反発はないでしょう。
もちろん、その後、モニターすべきUX統計は数多くあります。
Googleが最近GmailのUI変更後にやったように、フィードバックをお願いする控えめなボタンを取り付けてもいいでしょう。しかし、デザイン変更が成功だったことの一番確かな証拠は、新しい来訪者の数の多さです。これらのステップに従ってサイトのデザインを行えば、新しい来訪者はきっとやって来ます。