ユーザーシナリオは、自社のペルソナが実行に移すストーリーのことです。基本的に、ユーザーシナリオは(視覚的に表現されますが)思考力を働かせることであり、自社のペルソナによって表現された特定のユーザータイプが、ある目的をある状況の下で達成するために、どのようにウェブサイトとやり取りするのかを予測します。
ユーザーシナリオは、未来のユーザーがサイト上でタスクを遂行しようとする際に、何を探し求めるかについて理解を深めさせてくれます。たとえ自社のペルソナがタスクに「失敗」したとしても、少なくとも問題点を明らかにしてその問題に立ち返り、早急に解決することができます。ユーザーシナリオによって、サイトが完全に開発される前にサイトの構造をテストすることができ、かつ問題が表面化する前にその問題を分離することができるのです。
ユーザーシナリオの作成方法
ユーザーシナリオの作成においてまず理解したいことは、ウェブサイトを使用する人に対する目標です。目標(またはタスク)を設定したら、あとは論理的なパズルのようなものです。自社のペルソナに対して何ができるか、またペルソナが自社サイトでどのような行動を起こすかについて、段階的に知るということです。この時に、徹底的に詳細化され、かつ 丹念に考案されたペルソナが役に立つのです。
私たちは最も基本的な形態におけるユーザーシナリオについて話していきますが、もしより上級レベルの概念に興味がある場合は、こちらのusability.govの記事を参照してください。
ペルソナをまとめた後、ユーザーシナリオはシステムがどのように解釈され、体験され、かつ使用されるかについて詳細に焦点を当てていきます。Web Design From ScratchのクリエイターであるBen Hunt氏は、シナリオが「誰」の背後にある「なぜ」に応えることで、ペルソナに順応性を加えてくれると考えています。ユーザーシナリオを作成する際に、彼は以下の要因を考慮に入れることを推奨しています。
・ペルソナの環境—職場、自宅、またはコーヒーショップなど、ペルソナが自社のウェブサイトにアクセスしている場所を特定します。
・ペルソナの精神性—場面を思い浮かべて、ペルソナの心に何がよぎるかを特定します。これは、ユーザーが自社サイトとやり取りする際にどのように感じているのかを理解する良い機会になります。
・推進力及び動機—ペルソナは自社サイトにいる理由を知る必要があります。ペルソナにウェブサイトとのやりとりを促すある目的に留意し、そしてなぜ今なのか、または何がシナリオの引き金となっているのかを理解します。
・利用に影響を与えている外的要因—これらの外的要因は、インターネットの速度からユーザーの任意の利用時間、または外で行われている工事の騒音による妨害にいたるまで、様々な要素が考えられます。
ユーザーシナリオの作成プロセスにチームワークを導入するには、以下の13のステップガイドに従ってください。
ユーザーシナリオの例
ロンドンを拠点とする国際的なアートデザイン事務所であるLUXは、自社のウェブサイトのために素晴らしいユーザーシナリオの例を実践しています。 LUXのウェブサイトの中心となる目的は、(動画アーティストに対する開発支援も行っていますが)日常的に利用しているユーザーに様々な種類の動画へのアクセスを提供することです。
例えば、LUXのペルソナである、地元のアートイベントの開催・運営者であるHarrietさんは、ある問題を抱えていました。彼女は12月に開催するイベントのために素晴らしい映画を探す必要があるのです。彼女の心の中に入ってみると、Harrietさんは特に冬をテーマとした映画を探していることがわかります。彼女は前回の上映時の小さな失敗を埋め合わせするために、平均よりも多い観衆を誘致する必要があり、それが動機となっているようです。
Harrietさんは、 LUXのホームページから、早速検索を始めます。彼女は検索と閲覧に少し時間を割き、あちこちの動画クリップを視聴し、そして最終的に自分が興味を持った映画に落ち着きます。彼女は、 LUXやその他の調査社からのレビューや今後の上映作品に対して、当該映画の制作に携わったアーティストがブックマークしたものなど、その映画の詳細について読み進めていきます。最後に、彼女はその映画を買い物かごに入れ、決済する段階で、その映画に携わったアーティストを雇います。Harrietさんは彼女は12月に開催されるイベント用の冬をテーマとした映画を見つけ、自分の目的を達成したのです。
上記からわかるように、ユーザーシナリオは彼女の動機と思考プロセスを示しています。
特徴の優先順位をつける
ユーザーシナリオから学べる素晴らしいものは、どの項目に優先権を与え、そしてどの項目が相対的に見て重要ではないかを見極められることです。ユーザーシナリオに応じてUIを再設計するには、何を最初に修正する必要があるかを知るという工程が必要です。
Measuring Usability LLCの創設者であるJeff Sauro氏は、全てのデザイナーが直面している脅威を感じるほど大量のタスクを、どのように処理するかについて説明しています。彼のアプローチは奇抜でありながら、効果的なものでした。ユーザーにタスクの優先順位をつけてもらうという、元々Gerry McGovern氏が自身の著書「見知らぬ人の長い首」の中で提案したアイデアに基づいています。
1. タスクをリスト化する—自社のサイトの興味を持っているユーザーを表現するために、特徴やコンテンツ、機能などのタスクを、ランダムな順番で提示します。
2. ユーザーに5つのタスクを選択してもらう—ユーザーにタスクの一覧表を見て、キーワードにざっと目を通し、そしてユーザーにとって最も重要なタスクを5つ選択してもらいます。
3. 図表化と分析—投票結果を集計し、ユーザー数によって結果を分けます。最も頻繁に見受けられた「長い首(ロング・ネック)」のような形状は、 McGovern氏の著書のタイトルにインスピレーションを与えました。
自社の最優先事項は何かを知るだけでなく、自社のユーザーによってその優先事項が承認されるというのが重要な点です。Sauro氏は別の記事の中で、この問題のロング・ネック組織は、パレートの法則と同時に起こっていると説明しています。
80-20規則という名前でも知られているパレートの法則は、元々1906年にイタリアの経済学者であるVilfredo Pareto氏によって提唱されたもので、彼は国の富と土地の80パーセントは20パーセントの人によって所有されていることに気がつきました。
興味深いことに、この法則上で継続されているのは国の富だけではありません。Microsoftは、報告された上位20パーセントのバグを修正することによって、エラーやクラッシュの80パーセントが除去されることになると指摘しています。これの意味するところは、自社のロング・ネックグラフにおける上位のタスクに最初に対処することで、直ちに大部分の問題を対処することができるということです。
しかし、タスクの優先順位づけの方法はひとつではありませんし、McGovern氏の方法は、狩野手法や QFD手法、特性要因図などのその他の複数の代替方法に取って代わられたり、補強することができます。
計画とともに突き進む
ペルソナとユーザーシナリオは、効果的なUIのために必要であると信じて、自分自身をごまかしてはいけません。これは始まりに過ぎないのです。大きな物事の成り立ちから見れば、これらの要素を理解することは単にステップ0の位置であり、本当の仕事はこれから先にあるのです。なのに、なぜ私たちはゲームが始まる前段階にこれほどまでに重点を置いているのでしょうか。それは適切な位置から開始することが、その先の工程全体を容易なものにしてくれるからです。皆さんが誰のために自社のWebインターフェースを作成しているのか、そしてユーザーがインターフェースを使って何をするのかを承知している限り、方法はそれほど重要な問題ではありません。