あなたは「本物」のUXデザイナーになれるか?

Paul Boag

Paul Boag氏はDigital Adaptationの著者で、デジタルとUX戦略の分野で20年以上のキャリアを持つリーダー的存在です。コンサルタント講演執筆トレーニング及びメンタリング活動を通して、彼は熱心にデジタルによる最良の実践方法を宣伝しています。

この記事はWebdesigner Depotからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

COULD YOU REALLY BE A UX DESIGNER?

あなたは、自分がUXデザイナーだと思いますか?

自信を持って言えるでしょうか? 肩書きこそUXデザイナーかもしれませんが、実際にユーザーの体験を設計できていますか? もしかして設計していると思っているそれは、「UI」だったりしませんか?

UX vs. UI

ユーザーの体験を設計することなどできないと言う人もいます。確かに、どうにもできない部分も多いかもしれません。しかし私が主張したいのはそういうことではなく、ここで言いたいのは、多くの人がUIを設計しながら、自分たちはUXを設計していると主張しているということです。UIはUXのほんの一部に過ぎず、全てではありません。

例えば、ディズニーランドでアトラクションに乗るとします。アトラクションはディズニーランドでのUXの重要な要素ですが、UXの全てではありません。ディズニーランドもこの点を理解していて、だからこそ来場者がチケットを買う時から、ディズニーランドを出る際にスタッフが手を振って見送る時まで、あらゆる場面のユーザーの体験を念入りに作っているのです。

UIデザイナーであることに問題があるわけではありません。しかし、もしあなたがUXデザインを始めたいと考えているのなら、自分の慣れ親しんだUIの領域から抜け出してみましょう。 

考え方を変えてみる

UXデザイナーになる最初のステップは、まず考え方を変えることです。

デザイナーとして、私たちは自分の役割は何かというところに注目しがちです。しかし、自分たちのことをUXデザイナーと呼ぶのであれば、自分の「役割」や「領域」という考え方を改める必要があります。

コンテンツを例に挙げてみましょう。私たちはクライアントがコンテンツをきちんとデリバリーしなかったり、コンテンツのクオリティが低かったりすると、すぐに不満を言います。しかし、私たちはそのような状況に介入し、改善しようとはしません。なぜなら、それは私たちの仕事ではないからです。例えばコピーライティングなどは私達の給料に含まれません。

ですがもしそうだとしても、UXデザイナーというものは、UXに関わる全ての分野に対して責任を負う必要があります。たとえ他の誰かがその分野の責任は自分たちにあると考えているとしてもです。

UXデザイナーは「一匹狼」でなければなりません。つまり、従来のビジネス構造や役割に異議を唱える人です。あなたは、壁にぶつかってもより良いUXを探求し続けるような人になる必要があるのです。

例えば特定のデザインアプローチがブランドのガイドラインに抵触するとして使えなくなってしまったとします。あなたはどうしますか?

UIデザイナーは、このような制約を受け入れるでしょう。結局のところ、ブランディングは彼らの責任範囲ではないからです。しかしUXデザイナーはそうではありません。UXデザイナーは、誰がブランドガイドラインを所有しているのかを特定し、その人とともに正しい解決方法を見つけようとするでしょう。

UXデザインは他者と協力して最良のUXを作り上げることなのです。

良いUXを生み出すカギは「コラボレーション」

一人では良いUXを生み出すことはできません。UXにはあまりにたくさんの要素が含まれていて、またあまりにたくさんの訓練が必要だからです。

UXデザイナーになるためには、様々な分野の専門家とのコラボレーションが必要不可欠です。UXデザイナーは、以下のような人たちと協力する必要があります:

・UIデザイナー

・コンテンツスペシャリスト

・開発者

・事業戦略家

・小売業者

・モバイル専門家

などなど、良い体験を生み出すための人材なら誰でも、です。

UXデザイナーは、コンテンツ作成やサイトパフォーマンス、SEO、ソーシャルメディアなどの様々な分野において他者とコラボレーションしなければなりません。それぞれの分野がUXの効率化に役立つのです。これはマルチチャネルの場合、特に重要なことです。

UIデザインが近年のデバイスの多様化に伴い、複雑化の一途をたどっているのは周知の事実です。しかしUXデザイナーにとって、これは氷山の一角でしかありません。なぜならデバイス間のユーザーの動きだけでなく、ユーザーがチャネル間をどのように動いているかを考える必要があるからです。例えばユーザーはFacebookを閲覧する所から始め、特定のWebサイトへと移動し、最終的にはYouTubeに辿り着くするかもしれません。

大企業においては、ユーザーの動きがいろんな部署の担当領域に及ぶので、さらに物事が複雑になります。多くの場合、複数の部署が、一つのWebサイトの異なる部分を担当していたり、それぞれ違うメーリングリストを管理していたりします。これはユーザーにとって不快な体験をもたらす可能性があります。

例えば、私は以前とあるチャリティー団体と仕事したことがあるのですが、そこでは最も献身的なドナーに対して週に8通以上のメールを送っていました。そのチャリティー団体は、どういった発信が行われているか追っていなかったため、自分たちの大事なドナーにスパムメールを送ってしまっていたのです。

しかし、UXはデバイスやチャネルだけの話ではありません。私たちはUXがデバイスの画面だけにとどまらないということを理解していなければいけないのです。

画面外のUXに注目する

もし自分のことをUXデザイナーと呼びたいのであれば、ユーザーのデジタル体験の状況を考える必要があります。デジタルインタラクションは単独で生じるわけではなく、広い意味での顧客体験の一部なのです。世界一のWebサイトを持つことはできるでしょう。しかし、もし他の顧客体験が悪ければ、何も達成することはできません。

Zappos.comの成功は、UIによるものではありません。彼らの返品や配送の規約によって生み出された素晴らしいUXによるものだったのです。

私は以前、冷凍のインスタント食品を高齢者に配達するECサイトで仕事をしていました。高齢者ゆえに、ここでのユーザーはECというもの自体に少し懐疑的です。私たちは、不快な思いをさせないような体験を作るため、できる限りのことをするべきです。そこで私たちは主にオンラインでの購入の簡略化に重点を置きました。また、ユーザーに対してのセキュリティやプライバシーの保証も重視しました。しかし、UXの大事な要素の1つは、UI以外の場所にあるのです。私たちのご年配のお客様の多くは、知らない人が自分たちの玄関に商品を配達することを不安に思っていました。これは、商品をお客様の自宅に配達して梱包を解く場合に特に当てはまります。UIデザイナーとして、Webサイト上にユーザーを安心させるようなメッセージをのせ、「これが私たちのできる全てのことです」と締めくくるのも悪くはありません。しかし私たちはそうする代わりに、お客様を安心させる手段として、クライアントとともに配達スタッフ全員の犯罪経歴を調べることにしました。

デジタルツールは顧客体験のほんの一部である、ということを常に肝に銘じておくことは大切です。カスタマーサービスや顧客満足度、ガバナンス、戦略といった他の分野も、顧客体験にとって必要不可欠な要素です。

あなたはどこまで行けますか?

Webサイトやアプリの失敗はもうこりごりですか? 自分の管轄外のUXが不足して失敗していませんか? もしそうであれば、皆さんの役割の範囲を広げる時かもしれません。

従来のやり方に問題意識を持ち、様々な人と協力してより良いUXを生み出す時が来ました。自分が全ての答えを知っていると思い込んではいけません。そうではなく、現状に疑問を持つのです。難題を投げかけてみてください。UXをより良くするのに必要な事は、何でもやってみましょう。


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