あなたは「サービスの価値は、そのサービス自体が物語るものだ」と考えていませんか?
映画『フィールド・オブ・ドリームズ』に“build it and they will come”(作ってしまえば、結果は後から付いてくる)という言葉が出てきますが、たいていの人はそのように考えているため、サービス開発に莫大なコストをかけても、そのサービスに関するメールにはほとんどコストをかけません。また、メールを送ってもスパムになってしまうのではないかという不安を抱えていたりもします。
しかし、メールもサービスの一部なのです。メールはユーザーが最初のユーザー登録をした時から生活のあらゆるタイミングで、皆さんとユーザーをタイムリーでなおかつ非同期的に結び付ける、いわば接着剤のような役割を果します。
「メールだからといって、サービスに関係ないと思ってはいけません」と、ライブチャットソフトウェア企業のOlarkのマーケティング部長であるSunir Shah氏は警告します。また、彼は「サービスに関わる重要なメールは、サービス体験の一部なのです」とも言っています。
メールもUXである
「自社のサービスはよくできているので、それ自体がその価値を十分に表している」という考え方は実に自己中心的で視野が狭いと言わざるを得ません。
例えばあなたのサービスをそもそも使ったことがないユーザーはどうなるのでしょうか。ユーザー視点をないがしろにすると、メールのコミュニケーションの重要性に気付けず、メールをあたかもビジネスのおまけのように扱ってしまうのです。あなたの世界は、プログラムやコードを中心にして回るべきではありません。「サービスはウェブやモバイルアプリだけを意味するわけではありません。サービスとは、エンドユーザーが自分の目的を達成するために通る全体的な流れを指しているのです」、とSunir氏は述べます。
UXのどの側面が実際にユーザーの目的達成をサポートするかを明らかにした、Peter Morville氏の有名なUXのハニカム構造について考えてみましょう。あらゆる種類のメールは、ハニカム (蜂の巣) の全ての部屋において有用な効果を発揮することが分かると思います。
・便利さ:あなたのサービスは結局のところ、役立つものですか? 人が何かを成し遂げたり、目的に向かって進むことをサポートしていますか?
・使いやすさ:あなたのサービスは使いやすいですか?
・魅力:あなたのサービスは親しみやすいですか? 好感の持てるものですか?
・発見しやすさ:あなたのサービスは発見しやすいですか?
・利用しやすさ:Morville氏はアクセシビリティを障害を持つ人々の観点から定義づけており、言葉の壁やストレスレベル、安全性や信頼度の低さなど、その他にも利用しやすさに関する考慮事項があります。
・信頼性:あなたのサービスは信頼できるものですか?
・価値:あなたのサービスは価値があり、その使命を果たしていますか?
全てのメールは、ユーザーに何をしてもらいたいかを示すだけでなく、UXを次のステップへと進めるという明確な目的を果たす必要があります。そうすれば、メールはサービスにおけるUXのギャップを埋め、あなたのサイトやアプリを使うことを忘れがちな忙しい人々の日常生活におけるUXにアプローチします。つまり、あなたの事業にとってとても大きく必要不可欠な役割を果たすことになります。
あらゆるCXに対処する
顧客があなたのサービスに出会う時は、いつだってデバイスやウェブサイトの領域の外です。例えば、返金方法を探していたり、質問に対する回答をライブチャットで得たり、オンライン上で注文した商品を追跡したり、または役に立つケーススタディやブログ記事を見るなどといったことです。これこそが、「全体的なCX(カスタマーエクスペリエンス)」なのです。Peep Laja氏はこれに対して、「一つ一つのCXの瞬間が、正念場である」と述べます。
メールは、皆さんのサイトやアプリへの往復券のようなものです。役に立つオンボーディングのメールやニュースレターを使って情報を提供したり、ダイジェスト版のメールで有益なインサイトを提供したり、またはそれ以上のことまで、全体的なCXを改善する機会なのです。
メールは人々にとって、受信トレイを出ることなく関連するアクションを完了できるインターフェースとなっているのです。例えばGmailでは、定期購読の手続きをしたり、イベントへの参加可否を返答したり、キューにアイテムを追加するなどのタスクを行うことができます。
Instacartは、ユーザーは自社のサイトやアプリに長く滞在しない (かつするべきでない) という理解に基づいた、全体的なCXの素晴らしい例です。Instacartはこれを作るために様々なメッセージ (メールやSMS、電話など) を活用しており、ただ食材を配達するというサービスだけではなく、顧客にとって最適なインタラクションの流れを生み出すことを目指しています。もしこのような対策をしていなければ、食材配達サービスがテレビの配線業者を待つようなイライラするものになっていたでしょう。
注文を受けたら、Instacartは以下のようなメールのメッセージを送信します:
・Instacartのご注文確認メール (注文及び配送の詳細、注文の更新が可能)
・Instacartの配送通知 (配送が同日に行われない場合に特に便利です)
・Instacartは只今配送途中です (推定到着時間 — 食材を受け取るために自宅にいなければならないので、これは非常に便利です)
・Instacartでのご注文 (注文の概要と最終的な合計支払い金額が提示されます)
このインタラクションにおける最後のメールに注目してみましょう。受信トレイに「レビュー」ボタンが表示されています。そのボタンをクリックすると、受信トレイを離れることなく、そしてメールを開封することなくサービスのレビューや評価を送信することができます。
注文内容を確認するためにこのメールを開封したとしても、メールクライアントを離れることなくレビューを発信することができます。
冷蔵庫に新鮮な食材が入っていれば、レビューを残すためだけにサイトに再びアクセスする可能性は限りなく低くなります。メールメッセージをユーザーが通るプロセスに組み込むことで、Instacartは顧客と事業双方のメリットを生み出す事ができたのです。
もし全てのメールがUXを改善する機会であるとすれば、あらゆるコミュニケーションにおける顧客の文脈や状況を常に考えざるを得なくなります。これは、人を苛立たせるようなメールや、ユーザーに無関係なターゲティング配信などの撲滅への第一歩となるでしょう。
しかしながら、Econsultancyが行った調査によると、現在でもわずか20%のマーケターしかWeb上のアクティビティに基づいた行動マーケティングを活用していません。あなたの顧客に驚きや喜び、サポートを与える余地はたくさんあります。そしてメールが未配信であろうと逆にスパムのように送りすぎだろうと、必ずあなたのメールを目立たせてくれるはずです。
サービスの珍しさだけでは成功しません。人々が皆さんのアプリの内外において、共感やサービス、価値を経験するかどうかが、皆さんの事業の行く末を決めるのです。
全体的なCXを構築するために、Olarkがメールをどのように活用しているかを学んでみてください。