コラボレーションツールの発展と課題
UXに携わる方であれば、UXデザインないしはサービスデザインに関するコラボレーションツールの1つや2つをこれまでに利用した経験があるのではないでしょうか?
UXデザインやサービスデザインのプロセスが多様化し、複雑化する中で我々UXデザインに関わる人間の負荷を軽減してくれる大変便利なツールがオンライン、オフライン問わず次々と登場しています。著者はこれまでにプロトタイプを強みとしたオンラインツール「UXPin」や紙上のテンプレートを無償で公開している「Service Design Toolkit」などを利用してきました。
ところが、どれも長くは続きませんでした。なぜか?
それは、これまでのオンラインツールやコラボレーションツールはUXデザインまたはサービスデザインプロセスの一部のみに特化していたためです。結果、UXデザインはワイヤーフレームを作成することである、サービスデザインはカスタマージャーニーを作成することである、といった誤解を招いてしまい本来の創造活動である広義のデザインが広まぬまま、我々の活動範囲を狭めてしまっているように思えて仕方がありません。本来であれば下記の図のように永続的に行われるべきです。
(上記は2015年2月に無料動画のオンライン学習サイト「schoo」で担当させていただいた授業でお話しさせていただいた資料を一部抜粋したものです)
前述の広義のデザイン活動を支援してくれるオンラインコラボレーションツールはないものかと探していたところ、(個人の感想ですが)現時点で最強と呼ぶに相応しいオンラインコラボレーションツールが最近発表されました。その名も「RealtimeBoard」です。
RealtimeBoardとは?
RealtimeBoard とは米国ラスベガスに本社を構える小さな会社が提供する、UXデザインやサービスデザインに特化したオンラインコラボレーションツールです。
地理的不利の解消をコンセプトとした RealtimeBoard はその名の通り、リアルタイムでオンライン上で様々なツールを作成・公開・共有することができます。また、デザインや開発のみならずプロジェクトマネジメントに必要なガントチャードなどのツールも提供されています。そのため、RealtimeBoard が優れているポイントは、デザインに特化しないツールも同環境で作成・公開・共有が可能であることです。
基本は有料制となっていますが、作成できるボード(後述)が3つ以内であれば無料アカウントで試験的に利用することができるため、試しにやってみました。
ボードの作成と管理
アカウント開設後のトップページには既に作成しているボードがあれば作成済みボードへのショートカットが表示されます。
その下にはデモボードとして RealtimeBoard の活用事例が紹介されており、そのまま複製して利用することが可能です。
Lean UX Workshop Demo と記されているこのサンプルボードでは Lean UX の基本要素をすぐにマッピングできるよう、いくつかの箱が既に用意されています。付箋のようなポストイットを貼ることができるため、複数人でブレストを同環境で行えるだけではなく、コメントなども残すことができ文字通り共創(コラボレーション)が可能です。
新規作成ボードのテンプレートを選択
管理画面の「+」アイコンをクリックすると上記のように新規ボードを作成することができます。再掲しますが、RealtimeBoard が優れているポイントは、デザインに特化しないツールも同環境で作成可能であることです。この画面をご覧いただければわかりますが、デザインの上流工程から設計や実装、開発までに必要なステップと参考ツールがすでに用意されています。
あまり馴染みのない方もいらっしゃると思いますが、Lean UX やアジャイル開発の発展に伴い、職種や役職を横断したコラボレーションの実現に向けた企業文化の醸成が求められるようになりました。そしてそのコラボレーションを可能にしてくれるツールとしてビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスなどが登場し、職種や役職を横断した共通言語の構築がこれまで以上に可能になりました。
サービスブループリントの試験的利用
著者は試しにサービスの全体像を描くためのツール、サービスブループリントを利用してみました。配置できる要素はパワーポイント上の機能とあまり差がないためはじめてでも直感的に利用することができます。
上記はテンプレートが用意されているので30分で出来上がりです。全体の見栄えを確認するためにまずは英語で書いてみましたが、日本語も問題なく表示されます。作成したアウトプットはそのままオンライン上でメールなどで関係者へ展開することができると共に、プレゼンテーションを想定してデスクトップやタブレット表示に最適なサイズに調整してくれます。
RealtimeBoard のメリット
当コラボレーションツールのこの後の利用イメージとしては、これを各ステークホルダーに展開し精度を向上させると共に、同僚とカスタマーサイドのジャーニーを拡張させて作成する、といった流れを想定しています。ボードごとに共有できるユーザーを選択することができるため、(見られては困るボードはないと思いますが)必要最低限のボードを各関係者に展開しフィードバックをもらえると同時に、同じ空間内で作業するため、これまでの各種アウトプットの内容を踏まえた構想や設計、評価ができることがメリットだと思います。
UXデザインやサービスデザインのプロセスは中長期に渡るケースがほとんどです。RealtimeBoard があれば、はるか昔に作成したペルソナや対象サービスのバリュープロポジション(提供価値)を見失うことなく、一貫性のある広義のデザインが可能になるはずです。
最後に、もし追加要望を挙げるとすれば、会議のアジェンダや議事録も同空間内で作成・参照することができればプロジェクトマネジメント上なお良いと思いました。