なぜUXデザインにおいて「共感力」が大事なのか

Dustin Cartwright

Dustin Cartwright氏は、 メリーランド州ボルチモア出身のUI及びウェブデザイナー兼フロントエンド開発者です。同氏はユーザーエクスペリエンスの研究に多くの時間を費やしており、ウェブのためのあらゆるものを構築することに情熱を注いでいます。

この記事はWebdesigner Depotからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

WHY YOU MUST USE EMPATHY EFFECTIVELY IN UX DESIGN

「共感力」は、UXにおいて他のどんな要素よりも大切であると言えるでしょう。ユーザーへの共感がなければ、私たちの製品を使ってユーザーが何をしたいのか、または何を必要としているかを知る手がかりをつかめず、基本的に勘で動かざるを得ません。

ユーザーに共感できるようになると、ユーザーの立場で物ごとを想像できるようになり、私たちの製品を好んで (または嫌って) いる理由をより理解しやすくなります。しかし、私たちが理解しようとしているのはユーザーの思考プロセスではなく、感情なのです。

感情をうまく扱うことで、ユーザーに私たちが求めているような決断をさせたり、促したりすることができます。ユーザーの決断を後押ししている要因を見抜くスキルを身につけることは、ユーザーにとっての良い製品をデザインすることにもつながるのです。

デザイナーが持つ他のスキルと違って、UXデザインは何が良い方法なのかがはっきりしていない分野です。他人を理解しようとすることは漠然としか行えないことが多く、せいぜい過去のユーザーアナリティクスに基づいた予想の平均を導き出すのが関の山でしょう。未だにデザイナーのスキルの中で一番不安定な要素であるにもかかわらず、UXデザインはずば抜けて役に立つスキルとなっています。UXデザインのように、アイデア出しから最終的なマーケティングの決定まで、製作工程のあらゆる分野で役に立つスキルはなかなか無いでしょう。

ユーザーがなぜ私たちの製品を楽しいと感じているのか、そしてどのように製品を使用しているのかを知ることは、もともと価値のある製品をさらに良いものにして、ユーザーの満足度をあげることにもつながります。

UXデザインはユーザーの立場に立って、ひたすら顧客に共感するだけの、つかみどころのないスキルなのです — Jerome Choo

なぜ感情を重視するのか?

感情がユーザーインタラクションにおいて大切な理由は、広告業界を見てみれば分かるでしょう。人々の感情を動かすことで利益を得ている、重要かつ巨大な業界だからです。

広告業は、ブランドや製品に対する信頼や同情から欲望、羨望まで、人間の様々な感情を大いに利用しています。

ユーザーの感情を利用してブランドを構築する

ユーザーの興味・関心に応え続けている企業が、一般的に高い業績を残していることは当たり前です。このような企業は、そうでない企業に比べてより多くの製品を販売し、より満足度の高い顧客を持ち、そして最終的に、企業のアイデンティティを表した良いイメージを人々に持ってもらうことができます。これらの企業は、ちょっとした決断や簡単な方法でここまでたどり着いたわけではありません。むしろ彼らは、自社のアイデアや製品、そして決断が顧客にどんな影響を与えるかを想像することに多くの時間をかけてきたのです。

Appleは、UXを大事にする根強い文化を持った企業の代表例です。自社を客観的に見るためにユーザーの気持ちになってみることは、その企業とエンドユーザー両方にとって良いエクスペリエンスを作ることにつながります。

ユーザーが私たちの製品を「なぜ」好んで使っているのかという疑問に対しては、ユーザーへの共感を把握することでたくさん知ることができるでしょう。しかし、彼らが製品に対してどんな感想を抱き、そして「どのように」使っているかを知ることはさらに強力なヒントになります。ユーザーが私たちの製品とどのように関わっているかを知ることで、より的確にユーザーのニーズに応えることができ、過去のデザインに基づいてデザインを改良し、かつマーケティングにおいてもそのニーズに焦点を当てることができます。ユーザーの感情的な反応を理解するために彼らに共感することによって、創造的なイノベーションを生み出す足がかりになる情報がたくさん得られるでしょう。

根拠のある仮説を持つ

努力することよりも、経験的な感覚がUXデザインにおいてモノを言うことも多いです。ある物事に対して豊富な経験がある場合、その経験に頼ってしまうことは、ごく自然なことです。もし過去にブログサイトのデザインを100手掛けたことがある場合、次のデザインも過去に使ったパターンを参考にするでしょう。そうだとしても、適度に勉強し、また常にデータに基づいた私たちの決断の根拠を示すことは大事です。たいていの場合、あまり重要でない決定を下すために使える情報はすでにたくさん用意されています (例えば、「緑色の『重大なエラー』のメッセージはちゃんと機能しない」といったものです)。しかし、特殊な状況では、私たちが予想した結果が実際の結果と一致せず、自身で行った調査や計画、テストしか手がかりが無い場合もあります。

私たちが自分たちの業務に頼らなければならない場合、アナリティクスはとても役に立つツールです。サイトの様々な側面を定量化したりリンクさせたりできるということは、新たな情報をもたらす可能性があります。あるブランドや製品において、ユーザーが一般的に認められている理論や予想されている結果を拒否するといった状況を見ることがありませんか? このような例の1つがBetty Crockerにあります。同企業はホールケーキの作成工程を (簡単にエッグパウダーを追加するのではなく、わざわざ卵を2つ追加させるといった) より複雑なものにすることによって、顧客が「ズルをしている」という罪悪感を感じなくなり、よりその製品を楽しめるようになる、ということに気づきました。これは、感情が製品に対する反応をいかに大きく左右するかということも示しています。

私たちはユーザーに対して、さも良い製品であるかのように改善点を示すことはいつでもできますが、時には自社よりも優れた企業に対して、それが価値のある試みであることを証明しなければなりません。このような状況では、アナリティクスと調査が役に立つでしょう。予想される利益がはっきり分かるデータを示せるかどうかがユーザーの決断を左右します。UXはユーザーに対する定量的な効果があるため、全体で見ると近年UXは多岐にわたっており、投資する価値のあるものであると認識されてきています。たとえ分析データの中に抜きん出た部分がないとしても、更なる調査が必要となった時に見直せる分析データを持っているに越したことは無いでしょう。

ひたすらテストを行う

仮説をテストすることもとても重要です。実際に変更を発表する前に、限られたユーザーを対象にテストを行うことで、自分たちが予想していなかった事態や、計画の段階では分からなかったことが明らかになります。全ユーザーに公開する前にこれらのことを把握しておけるかどうかが、製品が成功するかどうかの命運を分けるのです。

Betty Crocker のチームがもし自社の新製品の業績が良くない原因をきちんと調査しなかったら、チームメンバーは未だにそれが単に自社のケーキが他社より劣っていたからと考えていたかもしれません。

状況によっては、ユーザービリティテストまたはA/Bテストを行うことが選択肢に入らない場合もありますが、それでも可能であれば自身の調査や予想がテストの結果と一致しているかどうかをチェックするべきです。

最適なソリューションも、時には失敗する

精一杯努力しても、時には最適なソリューションだと思ったものが失敗に終わることもあります。ユーザーが変更に対して予想外の反応を示した場合、何ヶ月にもわたる計画や調査、準備が一瞬にして水の泡になる可能性もあるのです。しかし、このような事態が起きたとしても、くりかえし行うことが最良のソリューションであると言えるでしょう。

包括的かつ徹底した調査に基づいてUXを作り上げることは簡単なことではありませんし、初めての試みでこのようなUXが出来上がることは、そうそうあることではありません。他のデザイン工程と同じく、過去の結果に基づいて段階的に繰り返し、UXを作り上げていくことが、長い目で見て一番良い結果を生み出すことが多いです。

まとめ

自分の製品においてユーザー中心のエクスペリエンスを作ることに時間をかければ、従来よりはるかに良い結果と満足度の高いユーザーを得ることができます。

「私たちはユーザーに寄り添う」と言うことは、単にマーケティングのための謳い文句ではなく、自分たちが本当にユーザーの期待を理解し、かつその期待に応えるために最前を尽くす努力をしている、ということを意味しているのです。


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