皆さんは「UXデザイナー」の活躍場面はどこだと思いますか? UIデザイナー=UXデザイナーでしょうか? IA=UXデザイナーでしょうか?
「デザイン」という名がつくため、初学者はクリエイティブな仕事で、そういった人のみが携わる業務なのかな? という印象を受けがちかもしれませんが、必ずしもそうではありません。UXデザイナーの仕事の範囲については議論が分かれます。
米国デンバーにあるMeasuringU代表 Jeff Sauro(ジェフ・サウロ)氏はブログで「UX組織の成長」についてデータを交えて語っています。UXの重要性は年々増していて、UXに携わる人はここ数年で20%〜30%も増加しているそうです。そのブログの結びにこんなことを綴っています。
誰がUX専門家を名乗るべきなのか、また、どこからどこまでの範囲をユーザーエクスペリエンス関連の職業とするのか――これは長年続いている議論です。調査への回答によると、一般的にUX関連のスタッフとは、ユーザーリサーチャー、ユーザビリティエンジニア、ヒューマンファクター・エンジニア、デザイナー、インフォメーションアーキテクトおよびサポーティング・プロダクトマネジャー、プロジェクトマネジャーを含みます。
— MeasuringU代表 Jeff Sauro氏「UX組織の成長」より引用
そう、UXはUIデザイナーだけのものではない。プロジェクトの全てにおいて必要になる考え方や姿勢といってもよいのかもしれません。
あなたの組織のUXデザイナーの活躍場所はどこですか?
「UXデザイン」というとカスタマージャーニーマップやペルソナ、行動シナリオといったキーワードが目につきがちです。いずれもプロジェクトの初期段階の設計フェーズによく出てくる手法ですね。
一般的なプロジェクトでは要件定義→設計→デザイン→開発と進み、要件定義・設計・デザインのフェーズで関わるUXデザイナーが多いのではないでしょうか?
ただし、一度リリースした後の改変が難しいプロダクトならまだしも、ウェブやソフトウェア、アプリケーションの世界においては改善こそが命。リリースして、ユーザーの反応を見て、最初に作ったUX設計と照らし合わせながら、場合によってはUX設計から見直して、サービスを成長させていく。そして最終的には、事業価値を高めていく。この改善フェーズにUXデザイナーが関わらなくてよいのでしょうか? 私はむしろこのフェーズこそがUXデザイナーの力の発揮どころだと考えます。
データを通してリアルなユーザーを見つめ、設計時にたてた仮説を証明していくプロセスです。設計したUXに関して、サービスがリリースした後は無関係になるのではなく、リアルなデータを見つめながら、成長に関わり続ける。
ユーザーの行動を数値的に表し有効性や効率、満足度を計測し、意思決定につなげる。重要な決定であればあるほど、数値データの持つ意味は大きくなります。UXを重視すればするほど、データとの関係は切っても切れないのです。
このUXの計量化や測定のことを「UXメトリクス」といいます。これまで別々の道を歩んでいたUXデザイナーとデータアナリストの融合が徐々に注目を集め始めているのです。
「UXメトリクス」を究める
UXは決して計量化できないものではありません。むしろ綿密なデータに基づいて設計・実現されていくものとも言えるでしょう。計測することで、より仮説の精度が高まることもあるでしょうし、より正しい意思決定を行うことができるようになるでしょう。また、組織にUXの重要性を浸透させる意味でも、UXと計測化は結びつけて考えていたほうがよいでしょう。
UXメトリクスに携わり続け、世界的な第一人者になった人物がいます。それが冒頭でブログを紹介したMeasuringU代表のJeff Sauro氏です。UXメトリクスに関わる様々なリサーチ記事、そして書籍を著してきています。日本語に翻訳されている記事もソシオメディア社のウェブサイトに何点か公開されているので、ぜひ記事を読んで、UXメトリクスについて理解を深めてくださいね。
・「ユーザビリティが良くなれば顧客ロイヤルティは向上するか?」
・「UX組織の成長」
UX MILK編集部補足
MeasuringUのJeff Sauro氏は10月7日〜8日に開催されるUX戦略フォーラムにて来日し、両日ともキーノート講演予定です。UXメトリクスに興味ある方はこの貴重な機会をお見逃しなく!