UXと聞くと難しいイメージがつきもの、専門的な記事を読んだり話を聞いたりすると尚更です。きっちりやろうと思うと体系化されたフローを踏襲するのが一番ですが、UXに対して理解のある企業もまだ少なく、小規模であればあるほど時間も含めた力を入れることは難しいのが現実です。
「うちの規模だとUXについて考えるのはちょっと厳しいかもな…。」
調べれば調べるほどそんなことを思いがちですが、時間を割けなくても少しの意識やプロダクトとの向き合い方で成果物は変わってきます。先日リリースした動画アプリ「Charlie」を例に交えつつ、実体験からUXとの向き合い方について整理してみました。
Charlieとは?
4つの動画が集まると一つになる、新感覚コミュニケーションアプリです。お題や場所からユーザーが作成できる「スポット」に3秒の動画を投稿、4つあつまるとがっちゃんこ(結合)し1つの動画に生まれ変わります。動画が集まることで初めてコンテンツとなるため個人のスキルに依存せず、今まで動画投稿をためらっていた人でも気軽に投稿できるようなサービスとなっています。
そのほか詳しい機能などは、公式サイトを御覧ください。
企画書というUXツール
まずUXと聞くと思い浮かぶのは、使ってもらうエンドユーザーの体験です。ここが最重要であることは言わずもがなですが、その前に忘れていることはありませんか?
そう、チームメンバーの体験です。良いサービス、アプリを作る上で一番欠かせません。まずは作っている本人たちに「おもしろい」「これは必要だ」と思わせられないものは、エンドユーザーも同じ感想になってしまう可能性が高いので、ここで判断できるとも言えるでしょう。開発者も初めて企画を見るときは1人のユーザーですから。
チームメンバーの体験をよくするために僕が意識的にやっていることは、企画書を作りこむことです。内容はもちろんなのですが、見た目にこだわることで伝わりやすくなり思い描いている世界観も伝わりやすくなります。
こちらがCharlieの元となった、実際の企画書です。ある程度のUIイメージやページ数などの見た目の部分、ユーザーサイクルやターゲットなどの当たり前に必要な部分どちらも盛り込んだ上で、読みやすく見た目の良いものを。企画書一つでも周りの意識は変わってきます。
チームでUXを考える上で大事な3つの要素
様々なユーザーの体験をよくするためのUX、1人で完結できるわけがありません。UXチームが単独で存在している場合以外は、自ずとプロジェクトメンバーと一緒に考えていく事になります。ここで注意しなければいけないのが、ただ巻き込むだけでは散らかってしまうだけになる可能性が高いという事です。
意識を合わせる
意識が合っていないと違う集束点を見ている事になり、まとめる事が難しくなります。ユーザーにどんな体験をさせたいか、この部分を最低限合わせていくことが大切です。
Charlieの場合は「スムーズに投稿できて、共同作業でのたのしさや一体感を味わえる。」という体験の共通認識を持つところから始めました。そしてそれだけではなくUXの部分で好きなアプリを各々出し合い、好みの共有も最初からしておいた事でスムーズな議論ができました。
得意分野を把握する
単純にスキルの事を言っているわけではなく、あくまでUXでの意味です。たとえば「この人は遷移部分の動きを含めた流れを作るのがうまい」や、「若者の視点を理解しているな(持っているな)」など、人によって生きてきた環境も違うので持っているものは違います。
得意分野をいち早く見つけ、その部分に関してある程度任せることが重要です。様々なパターンを検証する暇の無い場合は、特に貴重な意見となります。
意見をまとめ、早急に決断する
上記2点を意識しても様々な意見が出る事は変わらず、最終的にどうするかをまとめ決定しなければいけません。個人的な意見になってしまいますが、この決断はたとえ間違っていたとしても早い方が良いと思います。どれだけ考えても間違える事はあるからです。早く決定して、間違いならそれを認めて別の方向へ向かえる時間がある方が良いと考えます。決定速度の考え方は、企業文化や各個人で差が出る部分かもしれません。
Charlieの場合UI変更だけでも、これだけの変化がありました。他にも動画解像度の比率やリアクションボタン、秒数やつながる人数など細かい機能も随時変更しています。意見を集約→決断のサイクルを早くしたからこそ、失敗は多かったものの、限られた時間の中で様々なパターンを試す事ができました。
UX=熱量
UXの考え方は、より良いものをエンドユーザーに届けるという根本から始まっています。改善を重ねるためにはチームとしての熱量は必要不可欠ですし、ただ流れ作業でやっているだけでは本質は見えてきません。
「どれだけ自分の熱量をメンバーに伝染させるか。」
たとえ自分自身が UXの専門家でなくても、知識がなくても、協力を仰げるだけの熱量をもってサービスと向き合う事が、プロデューサーがすべき一番の向き合い方ではないでしょうか。