昨年もUXデザインの世界では数々のトレンドがありました。このトレンドは少しずつ定着しつつあり、今年も引き続きそれらを追いかけることになるでしょう。
もしこの業界でより優位に立ちたいと思うなら、ユーザーの体験について、より充実させる必要があるでしょう。最近多くの組織が、ただ製品やサービスを売るだけでなく、体験を売るという考えになりつつあります。それは誰もが体験を売るということの重要性に気付いているからにほかなりません。
最高のWebサイトやアプリをデザインすると同時に、最高のユーザー体験を提供することがブランディングの強みになります。デザインは狙ったユーザーを惹きつけるだけではなく、ユーザーにとってより使いやすくするためのものでもあります。つまり、ユーザーがサイトやアプリにアクセスしている間、素晴らしい時間を過ごしているかどうかを、真剣に考える必要があります。
UXデザインのトレンドは、組織の発展に繋がるイノベーションを育てるのです。
では、2016年に流行っているUXデザインのトレンドはどのようなものでしょうか? 6つの人気のトレンドを見てみましょう。
1. 予期的なデザイン
予期的デザイン(Anticipatory Design)とは、ユーザーの判断を予測し、ユーザーがこれから行うであろうプロセスをよりスムーズに簡略化してあげることを指します。厳密には今に始まったことではないのですが、近年はその進化により、新たなUXデザインの手法として注目されています。実際、予期的なデザインは、既存のWebサイトやアプリケーションに組み込まれ始めています。
例えばこれまで、サイトやアプリのフォームを選択したとき、オートフィル機能によって、住所、氏名、その他の情報が表示されるのを見たことがあると思います。これは予期的デザインによって、なんの問題もなく簡単にフォームの入力を進めることができます。実際、私たちはアプリ内通知や位置情報、ポップアップやおすすめなどの基本的な予期的デザインにはよく慣れ親しんでいます。しかし、これらは非常に単純なものでしかありません。
今日(こんにち)では、予期的デザインはユーザーの代わりに意思決定を代行し(もちろんユーザーの同意のもとです)、ユーザーの負担を最小限にすることを意味しています。
大まかに言うと、過去にどのような選択をしたか、どのような語句を検索したか、何を購入したかなどのユーザーのデータにシステムがアクセスできるようになっています。これだけのデータに絶えずアクセスできるシステムは今や、ユーザーの代わりに意思決定をすることもできるほどに有能となっています。ここでのポイントはシステムが「サジェスト(提案)」するのではなく、実際に「意思決定」するということです。したがって、このようなシステムは、上記のデータからユーザーが興味を持ちなさそうなデータをフィルターする(むしろ、ユーザーが興味を持ちそうなものだけ提案する)ために使われる傾向にあります。
この記事の中で、Zack Rutherford氏は Digit.coを予期的デザインをうまく活用したアプリとしています。簡単に言うと、この財務アプリは収入や支出の履歴を分析し、自動的に節約のチャンスを見極めます。その後、「余剰金」を「Digit」口座に移行します。ユーザーは、節約のためにいくら引き出す必要があるのか理解する必要がありません。なぜなら、アプリが自動的に計算してくれるからです。さらに、このアプリはユーザーが節約できる余裕のある額以上のお金を引き出さないことを保証しています。
2. ストーリーテリング
ストーリーテリングを取り入れたデザインは、興味を引くためには最も効率的なデザイン手法のひとつであります。もし、顧客や投資者、有権者に短いプレゼンをする必要がある場合、2分程度のユーザー主体のストーリーは効果的です。
ユーザー主体のストーリーは顧客に最新のコンセプトをよりよく理解させるのに役に立ちます。あなたのブランドや製品、サービス、コンセプトなどに関する説得力のあるストーリーをつくるためには、細かいところに注意を払ったり、クリエイティブなスキルを発揮する必要があります。
ユーザー体験を高めるために以下のストーリーテリングの手法を組み込みましょう。
- ユーザーをストーリーの中で描くこと
- ユーザーが反応しやすいビジュアルを作ること
- 馴染みのあるインタラクションを加える
- ストーリーの起承転結を構成する全体像を見失わないこと
例えばデザイン会社、Humaanの「About Us」をチェックしてみると、写真の上にカーソルをあてるだけでチームメンバーの物語があることに気付くでしょう。これがWebサイトのユーザーを引き込み、よりよくチームメンバーのことを理解してもらえる方法です。
3. ヒーローイメージ
ユーザー体験を向上させる最近出てきた手法が、芸術的で美しいヒーローイメージ(HD画質の巨大なトップ画像)を組み込むことです。
これらのヒーローイメージはユーザーにインパクトを与え、一時期人気のあったカルーセルやバナーに置き換わっています。(カルーセルやバナーは宣伝のように見えるため潜在意識的にユーザーから無視されます)。
下のスクリーンショットはヒーローイメージを取り入れているトップ画面です。また、このWebサイトは背景に補助的な動画も取り入れています。
例えば外食産業に関係するサイトの場合なら、いかにも美味しそうな食品のヒーローイメージはインパクトもあり、一目でサイトやアプリが何についてのものなのかをユーザーに認知させるでしょう。短いキャッチコピーやコール・トゥ・アクションをヒーローイメージに追加することもできます。また、ヒーローイメージを取り込むことは、ユーザーにより長い時間Webサイトに滞在してもらうことにも有用です。
さらに、ヘッダーに動画を取り入れているWebサイトもあります。この例に関しては上で引用されている「Ditto Dc」の例にも見ることができます。ほかにも、従業員がどれほど仕事に専念しているのか、どのような設備があるのかといったオフィス環境をWebサイトに掲載している企業もあります。
4. 説得力のあるデザイン
サイトの訪問者に「行動しないと損だ」、と思わせるような説得力のあるデザインが重要です。このためには心理学を理解していないといけません。一度これを理解すると、顧客の注意を引き付け続けられるようになるでしょう。
このトレンドは特に大きな顧客ベースを築きたい方に必須のものとなります。例えば、ECサイトの場合、無料配送キャンペーンをサイトで強調することで訪問者に購入を促したり、再来訪を促したりできます。
ConversionXL(コンバージョン最適化を請け負うマーケティング会社)の設立者でもあるPeep Laja氏によると説得力のあるデザインにするためには5つの法則に則る必要があるとしています。
- サイトの目的をはっきりさせる
- 魅力的なビジュアルを用意する
- 階層構造やヒエラルキーを明確にする
- どんなことをしても興味を引き続ける
- 1画面につき1つの操作に制限する(ユーザーがアクションを起こすとき)
5. 新しいデバイスにおけるデザイン
ウェアラブルデバイスのような新しい端末でスムーズなユーザー体験を提供できるようにすることは、次への大きな一歩となります。Forbes誌によると、2019年までに世界で245万個のウェアラブルデバイスが購入されるそうです。そのため、Webサイトやアプリをウェアラブルデバイスから使える、またはウェアラブルデバイスで動作するものとしなければなりません。
しかし、この話はそこで終わりません。デザインが時代遅れではないかを確かめなければなりません。2016年であなたを最も苦しめるかもしれないトレンドは、この増え続ける新しいデバイスに対応したユーザー体験を提供し続けなければいけないことです。(「新しい」とは、デバイスの種類、スペック、ハードウェア、ソフトウェア、インタラクションやこれらのいずれかの組み合わせに関してを意味します)
先にも述べたように、テクノロジーは早いペースで進化しています。そのため、今ではこれほどまでに発達したハードウェアやソフトウェアを利用できているのです。人工知能(AI)やバーチャルリアリティ(VR)が新しいインタラクションの可能性として注目されているのもこの流れのうちの一つです。
また、音声認識技術の発展により、SiriやCortanaやGoogle Nowのような音声認識も、ジェスチャーにとってかわってより自然で簡単な端末への入力方法として注目されつつあります。
6. モーションデザインや機能的なアニメーション
モーションデザインなどのアニメーションを使うことで、アプリやサイトを使っているユーザーに気づいてもらいたいメッセージに注目してもらうことができます。
例えば、「WhatsApp」ではチャットしているときに「◯◯ is typing…(◯◯が入力中です)」というアニメーションが表示されます。
これがあることで、あなたはもう少しそのまま待てばよいと判断でき、無駄な時間を使わずに済みます。また、要所要所のインタラクションにもアニメーションを取り込めば、ユーザーが飽きないようにすることもできるでしょう。
最後に
これらのUXデザイントレンドは、今年流行っているものだけでなく、今後近い将来に広まっていくものもあるでしょう。つまり、以下のトレンドは今後さらに注目しリサーチを必要とする分野や法則です。
- 予期的デザイン
- ストーリーテリング
- ヒーローイメージ
- 説得力のあるデザイン
- 新しいデバイスにおけるデザイン
- モーションデザインや機能的なアニメーション
アプリやWebサイトをデザインするとき、この記事がこれまでの技術をどのように適応する方法を探す原動力になれば幸いです。言うまでもなく、これは私たちの意見にすぎませんので、同じように重要なトレンドがほかにも存在していることでしょう。
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