デザインとは問題解決であり、美しいデザインは美学だけではなく機能性からも生じます。
デジタルマーケティングはより理解されるようになり、マーケティング、営業そしてその他の「ビジネス」部門でも、デザインやUXの観点が重要視されるようになってきました。今日(こんにち)潜在的顧客を把握し、狙いを定め、実際に届けるまで、マーケティングやデータ、デザインそして開発部門の協働が必要となります。
ですが、多くの企業において、そもそも誰が何の役割を持っているか分からなくなってきているため、ここで問題が生まれています。
例えば、マーケティングチームがメールアドレスを収集するため、サイトにポップアップを出したいとなれば、UXデザインチームは、「それはユーザー体験的に良くない」と言うでしょう。この場合、誰の言い分が通るのでしょうか。難しい質問ですし、正解はありません。
私は、ユーザーファーストな手堅いデザインが一番だと思っています。ですが、同時にメールアドレスを収集したり、注目を集めるためのマーケティング戦略も有用だということもわかります。全ての証拠はデータにあります。ですから、つまるところマーケティングは今現在、デザインの制約を受けてはいますが、その制約を乗り越えてこそ、よりよいデザインが待っているのです。
デザイナーとして私たちが直面している最も大きな困難は、不格好で不愉快なものをより美しく、より使いやすく、そしてより利益が出るようなデザインにしなければならないということです。
長期を見越すということ
私たちは若い、先進的な企業を見習い、全てを考えなおさらなければなりません。
現代のマーケティングの至る所でタッチポイントが必要なのは当然のことです。タッチポイントが必要だからといってマーケティング偏重のダメなサイトのお仲間になるわけではありません。Webは常に進化しており、ユーザーにフレンドリーな形でマーケティングの目標を達成していく領域は特に進化が求められています。
例:ポップアップ
Webサイトに突如として現れるポップアップを好きな人はいません。
Twitterのリンクからサイトへ飛び、サイトの内容が表示され、3単語ほど読むやいなや、メールアドレス登録を促すポップアップが全面に表示される、なんて経験はありませんか(編注:海外のサイトでは特に多くあります)。登録する人はもしかしたらいるのかもしれませんが、この状態では何に登録するのかもわかりません。
ここの体験には明らかに間違いがありますが、それでも「メールアドレスを取得する」という目的のためには、デザイナーも最善を尽くさなければなりません。
スクリーンの下部に目立ちすぎないようにバーを入れると良いかもしれません。適切なタイミングで横からスライドしてくるか、ユーザーがスクロールしたときに特定の位置に収まるのでもいいかもしれません。もしくは、サイトに来訪した瞬間のポップアップではなく、ページの2/3をスクロールするか2記事連続で読んだ場合のみ、モーダルを表示すると良いかもしれません(この記事の翻訳元のUXPin上で行われています)
GoodUIはコンテンツ消費とリード獲得のバランスをうまく取っています。
GoodUIは多くの方法を試しており、このCTAもいずれ変わるかもしれませんが、現在ではメール登録のボタンは上の画像にあるようにリストの3番目と4番目のアイテムの間に表示されます。それはコンテンツを見づらくするようなものではなく、色を使って強調されています。さらに、ユーザーにメールの頻度、メールの内容、そして他に何が得れるかをきちんと伝えるという、コンテンツ戦略をとっています。
ユーザーはまず最初にあるものを読み、次に2番目、3番目と読んでハマっていき、ようやく購読を決めるということは想像に難しくないでしょう。
でもそれを誰が証明できましょうか? 推測が正しいかどうか知るための唯一の方法はデータを見ることです。もしデータがユーザーがクリックしていないと示したならば、デザイナーはユーザーがそれをクリックするまで新しいことを試し続けなければなりません。
バランスのとれた体験を作る
もし期日が迫っていたり、想定したデータが取れず、解決策を遂行するのが難しいのであれば、できるところから良いデザインを取り入れ、ユーザーフレンドリーにしていきましょう。
「閉じる」ボタンを大きくしてみましょう。広告をコンテンツと見分けがつくようにしましょう。ユーザーが閉じたり退けてしまったコンテンツは、cookieを使い、二度と見せないようにしましょう。内容がより良く見えるように工夫しましょう。ユーザーはそれに感謝するでしょう。そしてビジネス側も自分たちがどう進化していければいいのか自ずと理解していくでしょう。
全てはバランス次第で、今日(こんにち)のWebを作る要素に当てはめて再構築していくだけなのです。ユーザーを理解し、ユーザーの体験をよりパーソナライズすることが大事です。しかし同時に、具体的なリードや売り上げを生み出すことも、良いデザインを作るためにも重要です。
DanielleLaporte.comはリードを取り、リテンションを得るために非常にたくさんの施策を打っています。ですが、Laporte氏は良質なデザインと賢い戦略でそのたくさんの情報をまとめあげ、快適な体験へと昇華しています。メールフォームのモーダルは約20秒〜30秒後に現れたりと、うまくデザインされています。
・モーダルはサイトの景観に合っており、うまく人目につくようになっている
・モーダルの透明度はページにおけるユーザーの現在の位置をわかりやすくしている
・「閉じる」ボタンが見やすい
・単に「今すぐ登録」よりも、工夫した文言がより興味を引きつける
Danielle Laporteは、オートメーション化されたマーケティングとリードジェネレーションをLaporte氏のブランドを強化する体験に昇華させ、ユーザーを楽しませるものにしました。これはWin-Winですし、(従来のマーケティングのように)刹那的なものではありません。全ての企業はこのようなクリエイティブなデザイン思考で利益を得るべきです。
デザインへの制約は常にあり、変わり続ける
クライアントやステークホルダーが持つブランドのデザインをするときがあります。私たちは彼らのテイストに合うように応じ、様々なユースケースに備えてユーザー体験を作り上げます。
このようなブランドのデザインにおける制約は、通常のデザインの制約と何が違うのでしょうか。ブランドのデザインの場合、主に視覚的な話が中心となるので、デザイナーはこちらのほうが比較的慣れている、くらいの違いしかありません。
ですが、前述からの通り、ネットマーケティングやソーシャルメディア、シェアされやすいコンテンツや相互リンクなどはWebにおいて存在感を高める重要な要素ですし、ブランドも例外ではありません。
そしてここがポイントなのです。デザインにおける制約は常に変わっています。デザイナーとしてデザインと使いやすさ、それとビジネスニーズのバランスをとり、新たなチャレンジを受け入れましょう。
The Guide to UX Design Process & Documentationから2つのヒントを抜粋します。
デザインプロジェクトの冒頭で、全員が思っていることを吐き出させるようにしましょう。全員にビジネスの目標、現在の推測、直近の課題に対する質問について尋ねてみましょう。
最初に課題に焦点を置き、考えをさらけ出すことで、制約に対して対処すべき本質的な課題を明らかにすることができます。全体像を見えたとき、ビジネス的な実利をとるか、些細なユーザーの体験の解決をとるかを判断することができます。
手っ取り早い解決策を提案したくなるのが人間ですが、ポップアップもマイクロコピーも失敗して終わってしまうだけです。先に問題と向き合い、そこから逆算することにより、よりバランスのとれた解決策を得られるようになります。
現代のデザイナーの役割とは
私は長年、マーケティング戦略のためにデザインすることを拒んできました。
私は本当に良いユーザー体験はそれだけで、「羊を集められる」と証明されている戦略に匹敵すると思っていました。私はそのような戦略が嫌いでクライアントのブランド力を損なうと考えていました。
私は多かれ少なかれ、現実から目をそらしていました。理由をつけて行動に移さないことこそが、ブランドを傷つけられる唯一のものだったのです。
デザイナーにとって、ネットマーケティングやトラッキングなどは気にも留めない邪魔なものだったのです。でもそうではありません。例えそうだったとしても、誰がそれを整理して、意味あるものにするのでしょうか。誰がその便利でビジネス的にも成果を上げそうなものを、ユーザーに届く形で作り変えていくのでしょうか。
それができるのはデザイナーです。
要は、より多くの料理人が厨房に立つかのごとく、経営層や政治めいたメンバーがプロジェクトに入ってきても、そこに抗うのは非生産的であるということです。このトレンドに抗ったからといって、デザイナーのあなたの味方が増えるわけではありません。
代わりにデザイナーに課せられた新しい責任を利用し、会社やクライアントと共に働き、役に立ち、便利で美しいものを作り上げていくようにするべきです。素晴らしいデザイナーは素晴らしいデザインのまとめ役で、自分たちのエゴを超えて、他人とビジネス問題を協力して解決していかなければならないのです。
UXデザインや商品開発プロセスに関するさらなる情報はGuide to UX Design Process & Documentationで読むことができます。