UXレビューを実践するための9つのステップ

Ryan O Connor

Ryan O Connor氏は 、Goby Savvyの共同設立者です。ワクワクするようなUXを作成することで、企業のビジネスに関する課題へ対処するサポートを行い、ゴールを達成することを自身の指名としています。

この記事はUXPinからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

How to Conduct a UX Review That Won’t Get Thrown Out

この記事は、UXレビューなどを得意とするUXデザイン企業「GobySavvy」の創業者Ryan O'Connorによる記事です。

UXのレビューを行う場合は、実用的なインサイトを得ることに集中しなければなりません。

UXレビューとは、ただユーザビリティに関する問題をまとめるだけのものではありません。ステークホルダーやクライアントにこれからすべきことを示す役割も果たします。また、問題を解決するだけではなく、さらなるコンバージョンやエンゲージメントにつながる新しいビジネスチャンスを提示するためのものでもあります。

明確なプランを提示できなければ、そのレビューは単にTo Doリストに鎮座するだけのタスクとなってしまいます。

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UXデザインを専門とするGobySavvy社では、9つのステップに沿ってUXレビューを行っています。我々の経験では、このプロセスはUXレビューからソリューションを提案するのに確実に役に立つものです。

ではこのプロセスがどういうものか、ECサイトSkyMallのプロジェクトを用いて、説明していきます。

1. ビジネスゴールとユーザーニーズを明確にする

ビジネスゴールとユーザーニーズを明確にするためには、レビューのプロセスは簡潔なものか(シンプルなアンケートと1時間の分析)、徹底的なもの(ユーザーへのインタビュー、カスタマーサポートの詳細なフィードバック、ステークホルダーへのインタビュー)のどちらかにします。

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SkyMallのプロジェクトでは、タイトな予算と時間の制約に合わせて、シンプルな手法を選択しました。その時、彼らはWebサイトの改良の途中で、どのようにすべきか方向性を固めたいと考えていました。

特に、サイトのUX、UIデザイン、コンテンツ戦略などにおける現在の欠点について知りたがっており、どのようにリブランディングが出来るか選択肢を提示してくれるように依頼してきました。最終目標は、コンバージョン率を改善し収益を増やすことです。

上記の点がまとまってから、私たちはアンケートを作成し、彼らのプロジェクトリーダーにこれらの項目について確認しました。

  1. 最も重要なユーザーグループとそれに準ずるユーザーグループ
  2. コンバージョンとエンゲージメントに関する具体的なビジネス指標
  3. フローの中でユーザーに行って欲しい行動・タスク
  4. 最も重要な販売チャネル
  5. ブランド価値
  6. サイトにおいて特に重要なページ
  7. 一番の競合サイト

レビューをするにあたり、これら全ての情報をシンプルなペルソナ分析とユーザーフローに落としこみました。

もっと詳しく知りたい場合は:
http://uxmilk.jp/49768

2. アナリティクス

アナリティクスに直接アクセスできない場合は、特定の期間内やセグメントに関してのレポートをもらえるか聞いてみましょう。

SkyMallの場合は、私たち自身でアナリティクスにはアクセスできませんでした。そこで、最もアクセスの多いランディングページの離脱率、滞在時間、ECのコンバージョン率、モバイルとWebサイトの分析、ユーザーフロー(Google Analyticsの行動フロー)をレポートにまとめてもらいました。

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Google Analyticsによる分析:アクセスが多い順にページの滞在時間、離脱率、ページ価値が表示されている。

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Google Analyticsによる分析:ECの目標達成に関する分析。一つだけの目標がここでは表示されているが、ニュースレターの購読登録、ユーザーからの問い合わせ、フリーコンテンツのダウンロードなど、他にも目標が存在する。

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Google Analyticsによる分析:ランディングページから購入までの行動フロー

SkyMallのデータを見て、ユーザーの大半が、主に2つの行動パターンをとることが分かりました。

  1. 様々なサイトなどを参照してから、特定の製品ページにたどり着く
  2. Google検索からサイトにアクセスする

1のパターンのユーザーは、高い確率でコンバージョン(売上)につながり、離脱率は低く、行動フローもシンプルです。

それに対して、最大の問題は検索から直接くるユーザーでした。大多数のユーザーがサイト上の製品をクリックして、その製品を見てから他の製品を見て回ってから離脱していました。

これで、最適化すべきユーザーフローが分かりました。サイトに辿り着いたユーザーは、特別になにか欲しいものがあるわけでもなく製品をクリックして回って立ち去ります。ユーザーは欲しい製品をなかなか見つけられず、また製品自体もユーザーの興味を惹けていませんでした。

3. シンプルなペルソナ設定とユーザーフロー

どこに着目すべきかが明確になったので、残りのUXレビューに向けて、シンプルなペルソナとユーザーフローを設定しましょう。

ペルソナ

SkyMallの場合、最初のステークホルダーに関する質問票の調査から、4つの大きなペルソナを設定しました。

  1. 一般ユーザー(目的があるわけでなくサイトを閲覧してまわるユーザー)
  2. 良い装飾品を探している、持ち家があるような中〜上流階級の人
  3. ユニークな贈り物を探しているタイプの人
  4. なにか面白いもの探す衝動買いの人

これらのペルソナから、合計20通りのユーザーフローを作成しましたが、最終的にはSkyMallのビジネスに特に関連している5つのフローに絞りました。実用的なUXレビューでは、条件を絞って、優先順位をつけることが重要です。

ユーザーフロー

アナリティクスとSkyMallのプロジェクトリーダーとの話し合いにより、主に2つのフローを設定しました。

  1. Googleで「母親へのユニークなプレゼント」という条件で商品を検索して、特定の商品ページ、または「母親へのプレゼント」というカテゴリーページに到着。色々な商品を閲覧してから、1つか複数の商品をカートに入れて支払いに進む。
  2. SkyMallのサイトに到着し、人気アイテムのページを閲覧して色々な商品を見てから、商品をいくつかカートに入れて支払いに進む。

先ほど述べた通り、合計で5つのフローを作成していました。上の2つに加えて、メインのナビゲーションに従って閲覧する、メールから製品やカテゴリーのページに到達する、他の商品との抱き合わせ販売でアクセスするというフローも作成しました。

しかし、最初の2つのフローの中の、2番目のフローにおいて(以下、フロー2)、大部分の人がカートに商品を入れる前にサイトを去ってしまうことを示していたので、特に私たちはフロー2に着目することにしました。このフローに関しては、購入に至るまでの導線すべてをデザインしました。

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フロー2に関するキーページと、UXレビューを行うにあたって達成するべきユーザーストーリー

4. 課題を認識する

コンバージョンやエンゲージメントに影響する問題となる部分を見つけるために、私たちは各ページにおけるユーザーストーリーをひとつひとつ追っていきました。

ユーザーフローを辿るときは、それぞれのページにおけるユーザーの目的について考えましょう(このページにきたら、すぐに探すものはなんだろうか?など)。

専門家たちは、レポートの作成においてそれぞれの手法や視点をもっています。ここでは、Google Slidesをお勧めします。それぞれのレポートを簡単にまとめられて、どこからでもアクセス可能で、またURLやPDFによって共有することができます。

Google Slidesでは、私たちはページやフローを、「ホーム」「ナビゲーション」「製品ページ」「カート」「チェックアウト」などのセクションごとに区切っています。レビューを行う際には、課題や機会、解決策などについて詳細にまとめる方が、後から長いリストを作ってまとめるよりも効果的です。

ネットで検索すると、実に様々な種類のUXチェックリストや、UXの原則、UXに関するリサーチなどが見られますが、課題を明らかにする過程において、Jakob Nielsen氏の優先順位付けにおける4つのポイントを、ここで提示します。

課題を書き表す時には、課題を3つか4つほど重要な順にランク付けして、あとは簡単にまとめるとよいでしょう。

  1. 見た目だけなどの表面的な問題:時間に余裕のある時にだけ、対処をする
  2. ユーザビリティに関する小さな問題:対処にあたる優先順位が低く、そこまで重要ではない
  3. ユーザビリティに関する重大な問題:優先順位が高く、対処する必要がある
  4. ユーザビリティに関する致命的欠陥:製品をリリースする前に、直ちに対処せねばならない
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フロー2に関する、商品ページの問題点に関して詳述したスライド。これら一連の問題を「3. ユーザビリティに関する重大な問題」とランク付けた(右上の赤い丸が、優先順位のマーク)。最大の問題点は、商品レビューの機能がユーザーに活用されていないこととした。

5. 行動可能なソリューションと機会を提供する

課題を発見するのは、難しくはありません。クライアントや会社がお金を払うのはソリューションに対してです。

課題を見つけたように、私たちは最適なソリューションについて、他のWebサイトのスクリーンショットを用いるなどしながら説明します。何が最適なソリューションかを見極めるのが難しければ、UXレビュー後に次の段階として、ユーザーによるテストを行ってもらうことをお勧めします。

何よりも、私たちは可能な限り原則に忠実であるべきです。フローの各段階における全てを分解して考えます。またユーザーに対する正しくない仮説をつくるリスクを冒すよりも、ユーザーとコミュニケーションしすぎなくらいの方がうまくいきます。

駄目な例:
ブランドを強調してユーザー獲得するために、より強烈な色合いに変更する。

良い例:
3つのブランドカラーを加えてデザインする。紫は、メインバナーの背景とヘッダーと、アイコンの内のいくつかに使用。ほとんどの背景は白にする。黒は、紫を強調するコントラストとして使用し、またコールトゥアクション(CTA)のためのボタンに使う。

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1つ前のスライドでの問題点に対する、詳細なソリューションのスライド

コンバージョンやエンゲージメントを改善するための機会を見つけることは、最も難しい作業であると同時に、大きな利益を得ることができる可能性を秘めています。もしあなたが実務経験3年未満のデザイナーなら、これから時間と経験を重ねることでこのスキルを見つけることができるでしょう。

例えば、ユーザーがページから離脱するときに表示されるポップアップ(exit-intent pop-up offer)を用いて、もう一度ユーザーに購入を促すようなサイトを見ることがあるでしょう。また、数量や販売期間の限定を強調して、より高価な商品を買ってもらえるようにしている例もあるでしょう。これらは、「課題」の解決ではなく、ビジネスゴールを達成するための「機会」と言えます。

SkyMallのときに行ったことは、彼らの絶大なブランド力をオンラインでの購買につなげることでした。SkyMallのサイトデザインやレイアウトは、飛行機の機内向けカタログというユニークさが伝わりにくいものでした。

編注:SkyMallはアメリカの飛行機に置いてあるカタログで、ユニークな商品が有名です

私たちは特定の顧客層を向けにコンテンツを作ることにしました。私たちのケースでは、「専門家のおすすめ」や「昔人気だったレトロなコレクション」といったユニークなメッセージを用いました。

SkyMallのサイトで、面白くて購入につながるような方法で製品を紹介する機会を増やすことで、押し付けがましくない売り込みによるコンバージョンを増やすことを目指しました。

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高いブランド力による機会の提供を提案し、ミーティングで詳細に説明した時に資料。

6. 課題やソリューションを見つけるためのヒント

課題やソリューションが何であるか、確信がもてないことがあると思います。そのような時、私たちはUXの原則について集めた資料と同じくらいGoogle検索を使います。

検索する際に、どのような点に焦点を当てていけばよいかコツを紹介します。

根本的な原則だと思うものをGoogleで検索しようとしても、そこまでGoogleも上手く設計されていません。「eコマース チェックアウト サインアップ UX」などと、やみくもに検索しても出てこないでしょう。

UXの原則や、的確なキーワード(ツールチップ、ポップオーバー、モーダルなど)が分からない場合は、まずGoogleのQ&Aのリンクを検索して、他の人が投稿した質問を見ましょう。検索の際に用いるとよい、一般的な用語があります。「UX」「原則」「良い実践例」「利用性」「パターン」「最適化」などです。

検索にはあまり時間を使いすぎてはいけません。良い原則やソリューションが見つからなければ、コミュニティで質問を投稿しておいて、あとでその課題を対処しましょう。次のようなコミュニティーに質問するとすぐに回答がもらえます。

また、良いサンプルがないか常に目を光らせておき、Evernoteでタグをつけると良いでしょう。

人気サイトやアプリを参考にすることを悪いことや恥ずかしいことと思わず、どのようにそれらが設計されているか見てみましょう。UI-Patternsawwwardssiteinspireなどのギャラリーは、効果的なデザインパターンを見つけるのにとても優れています。

もっと詳しく知りたい場合、無料のe-bookを入手しましょう:UX Design Process Best Practices

7. サイトは依頼主のものであることを最優先に

UXレビューは、普通だとデジタル製品に詳しい人に読まれるものです。創業者、CEO、プロダクトマネージャー、デザイナー、開発者などです。

それぞれに悪い点が見えても、良い点で補完してバランスのとれた状態にするようにしましょう。よいデザインのフィードバックに関する原則を忘れないことが大事です。

問題点だけでなく、うまくいっている事柄についても説明に含めましょう。会議の雰囲気を冷静にするだけでなく、チームの成果を褒められることでやる気を持続させる効果が期待できます。

組織内の力関係は、こちらの提案がどのように受け取られるかに影響を及ぼします。UXレビューで悪い点ばかりあげて、クライアント企業の担当者が上司に出来損ないだと思われるような印象を持たせないよう十分配慮をしましょう。

8. ユーザーレビュー

この項目は必須ではありませんが、実践することを強くおすすめします。

何時間もインターフェースを見続けていると考え方にバイアスが生じ、明らかな問題や機会となることも見逃しかねません。

30分でよいので、外部のUXの専門家にレビューを見てもらいましょう。ビジネスゴールやユーザーニーズを再確認させてくれるでしょう。また、メインとなる課題やソリューションに関してアドバイスを得られます。

さらに勧めたいのが、一般の人にテストをしてもらうことです。一般消費者を対象にしたデザインであれば、Amazonのギフトカードを5つ購入し(1枚10~20ドルがベスト)、一番近いスターバックスに行きましょう。そこで5人の人に、最終的なデザインについてフィードバックをもらうのが良い方法です。

UserTesting5 Second Testsなどのサービスは、ユーザーテストをすぐに実行するのにとても便利です。

9. 次のステップ

UXレビューは、時間を要さずにビジネスゴールを達成するために作成されます。

提示されたデータを用いて、アクションプランを作成することから始めましょう。このとき、クライアントが理解できる言葉や用語を使って話し合いをするようにしましょう。

SkyMallの場合、私たちはざっくりしたロードマップを作成することでレポートを終えました。次の話し合いに向けて、今度はより詳細なロードマップを作成しようと思っています。

  1. 既存のブランドと現在のトレンドの活用から、新たなブランドを構築することを模索する(スタイル、トーン、個性、イメージ、色彩や形状など)
  2. コンテンツ戦略:ユニークな製品のバズを生み出し繰り返し実行できる全体的な戦略を立てる。
  3. ユーザビリティテスト:ユーザーとのディスカッションを通して、彼らの特徴や背景などを理解し、継続的な信頼関係を構築する。ニーズに対応できるようにする。
  4. UXデザインとUXレビュー:GobySavvyのチームを、偏見がなく、組織内部の営業努力をサポートするための外部見識として利用してもらう。ビジネスを目標に導き、将来的なデザインに対してレビューを行い、あらゆる種類のプロダクト戦略の調整を可能にする。

ここまでお読み頂いたら、UXレビューの提案を実行する時です。うまくいきますように!

この記事が役に立つと思ったら、UX Design Process Best Practicesをダウンロードしてより詳しいUXのアドバイスを入手しましょう。実践に役に立つ活動や戦略を立てる際に有用な記事について説明しています。

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