未来は多くの人々の手によりつくられています。その中でも、UI/UXデザイナーは、まだ見ぬ世界を設計する存在と言えるでしょう。彼らは、リッチなVRのデザインから、拡張された「現実空間」まで設計します。
この記事では、すべてのUI/UXデザイナーが画面の世界を超えて、SFのようなVR(仮想現実)とAR(拡張現実)の未来について考えるべき4つの理由を紹介します。
1. VRやARは過去の流行ではない
UI/UXデザイナーの中には、VRやARの技術はただの一時的な流行であったのではないか、とその技術に深入りしない人も多くいるかと思います。たしかに見た目がダサいOculus RiftやSamsung Gear VRのヘッドセットを使っている人を見てしまうと、これが頭につけるためのアクセサリーとして流行するとは思えないでしょう。
拡張世界について言うと、期待されていた製品の多くが失敗しています。Google Glassがその良い例です。今まで、かっこいいサングラスと言えばRay-Banでしたが、Google Glassは最先端技術を使った商品でありながら、VRヘッドセットと違い見た目も悪くなかったため、多くの人々はこの先進的なサングラスと常時稼働のヘッドアップディスプレイをつけて未来の町を歩く姿を想像し、夢のようなサイバーパンクの未来へと引き込まれました。
ただGoogle Glassはアンドロイドの夢のようなものでした。バグの発生、消耗の激しいバッテリー、幾度となく行われたキャンペーンやPR活動もめちゃくちゃで、GoogleのARウェアブルは最初から失敗していました。ウェブサイトには「旅はここで終わらない」という次を想像させるような謎のフレーズが残されていますが…。
パラダイムシフトの構造
しかし、1つ(もしくは複数)の失敗作が技術発展の終わりを意味しているわけではありません。今となっては寝る前のネットサーフィン、ビジネス会議や小売りの現場などは、iPadなしには考えらえませんが、20年前にはそれは存在しなかったのです。パラダイムシフトが起こるとき、どの産業でも数え切れないほどの失敗作や人知れず消えていくデバイスが生まれるものです。
VRを見てみましょう。90年代に子ども時代を過ごした人はVRの失敗の数々を覚えているでしょう。恐らくもっともひどかったのは、任天堂で2番目に売り上げが低かったVirtual Boyです。これは1995年に子どもたちの夢を壊すような商品でした。子ども(や大人たち)がお気に入りのテレビゲームの世界の中で羽を伸ばすにはほど遠く、Virtual Boyの赤一色の画面は偏頭痛が起きそうなほどで、数分ゲームをプレーするだけで頭や腹部に違和感を感じるようなものでした。
90年代におけるVRの大失敗の後遺症は、2012年にOculus VRが開発者用キットの提供を始めたころもまだ完全には治ってはいませんでした。しかし、このヘッドセットは当時まだベータ版であったにも関わらず期待を上回る高成果を出し、VR製品の製作者が三次元に入り込む道を切り開いたのです。
Oculus Riftは、「快適」と言うにはほど遠かったですが、従来品よりとても素晴らしいものでした。グラフィックスはとても素晴らしく、めまいに悩まされることなく長時間バーチャル環境を楽しむことができます。
VRとARの次は何か?
Oculusが未来のVRの道を切り開きました。そして、Samsung(Gear VR)、Sony(Play Station VR)、HTC(Vive)、Google Cardboardがそれに続きました。ARは、Google Glassの人気上昇・急降下があったものの結果的に持ち直しました。Nintendo 3DSのARゲームやディズニーキャラクターが飛び出るAR塗り絵など、ARアプリはヘッドセットなしでファンタジーの楽しさを日常の世界に加えました。そのほかにも、Snapchatのリアルタイム顔入れ替えやYelpのARレストランレビューなどの例があります。
ARのアプリはすでにスマートフォンやタブレットのAndroidやiOSで発展してきていますが、ARはサイエンスフィクションの域に入ろうとしています。ここに書くには早すぎるかもしれませんが、Proto.ioで働く私たちのように新しく生み出される最先端技術(特にユーザーインターフェースの可能性を広げるもの)に目がない人にとっては、MicrosoftのHoloLensは本当に魅力的です。
Windows 10 UIに関してどう思うか分かりませんが、キッチンキャビネットの前で何かが空中静止していたら無視はできないですよね(特に古いキャビネットを買い換えようと探している場合なんて)。
このようなテクノロジーの持つ潜在的な力と、UXデザイナーのデザインプロセスがあれば、可能性は無限大なのです。昨今の勢いをかんがみるとVRとARについての知識を深めることこそが「将来有望」な UI/UXデザイナーの鍵となるかもしれません。VRとARのデザイナーは、UXツールについて学ぶだけではなく、いかに人々とデバイスとの関わり方が変化しているかも学ぶべきでしょう。
2. VRとARはアプリに新たな次元をもたらす
私たちはプロトタイプの会社であり、イノベーションが大好きです。VRとARはスマホアプリの技術の中でもっともクールで、今もさらにクールになり続けています。
たとえば、この記事ではFitbitなどを使い現実世界での運動量を測り、World of WarcraftやStar War:Knights of the Old RepublicのようなMMORPGの中でレベルアップできればどれだけ素晴らしいかと言うことについて書いています。ですが、これがVRとARがゲーマーたちの運動を楽しいものにする唯一の方法ではありません。
もし、全身を使う運動の方が好きであまりお金を払いたくなければ、このVRのシュミレーターはカビくさいジムを美しい水域もしくは水の空間にさえも変えてくれます。さらにコストを抑えるのであれば、ヘッドギアも必要ないAR型ゲームのPokémon GOがあります。
Pokémon GOがもらたした90年代のノスタルジア
Pokémon GOは、『ポケットモンスター 赤・緑・青・ピカチュウ』をベースとしたもので、名作の世界に自分たちを重ね合わせることができました。Pokémon GOはIngress(ここで少し書いています)、と非常に似ているゲームで、ユーザーは外に行き現実世界のさまざまな場所に隠れているポケモンを探すために探検をします。スマホを片手に、ポケモントレーナーはポケモンを追い詰め、戦い、そして集めます。
Pokémon GOはポケモンにとって、初めての現実世界とゲームの中のデジタル世界の融合ではありません。2011年にさかのぼると『ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー』のプレーヤーは、ポケウォーカーという歩数計で実世界で歩数を稼ぎ、ポケモンのレベルアップをすることができました。
視野を広げ、柔軟に考える
しかし、VRとARが使われているアプリは、フィットネスアプリだけではありません。カレンダーやメモ帳などのシンプルなものからラジオやオーディオなど、あなたが思いつくほぼすべてのアプリにおいて、VRとARは立体的な体験を可能にします。。Netflixさえも一度ヘッドセットをつければSamsungのスマホを大きなテレビスクリーンへ、そしてあなたの部屋を素晴らしいホームシアターへ変え、『Orange is the New Black』 や『Jessica Jones』を一気に見ることができます。
たとえば教育もしくはトレーニング用のアプリを作るとしましょう。VRとARは次世代の教育において多大なる可能性を秘めています。Anatomyou VRで3次元の人体について研究し学べるのに、なぜ解剖学や生理学の教科書を読むために徹夜しないといけないのでしょう。望遠鏡を使って子どもたちに太陽系について教えることもできますが、子どもたちはTitans of Space 2.0で天の川の中を飛びまわり、壮大なスケールの宇宙を感じることができます。
もう1つわくわくするのは、どのようにVRとARがソーシャルネットーワークを変えられるかです。実際、Oculus SocialやAltspace VRのようなアプリは「チャットルーム」に新しい視点を取り込んでいます。ビデオやインターネットを閲覧するときの3Dアバターを選んだり、バーチャル空間を動いたり、またほかのユーザーと交流したりすることもできます。
3. VRとARの企業はUXデザイナーを欲している
VRやARのプラットフォーマーは、UXデザイナーや開発者がこのテクノロジーについて勉強することを望んでいます。なぜなら、空っぽのエコシステムでは誰も楽しくないからです。
Microsoft HoloLensのデザインや開発をしたくなりましたか? 開発者ツールキットや資料のダウンロードはここからアクセスできます。Oculus Riftのゲームや新しい体験を作りたくてウズウズしているのであれば、開発者ページを読んで、UdemyのOculus Riftの開発を受講し、そして空いた時間でOculus subredditを読み込みんでみてください。もし、Viveがあなたの調子を上げれば、VR開発者サイトのSteam VR Developers siteで勉強しましょう。
4. VRと拡大現実は楽しい
VRとARがそんなに遠くない未来のパラダイムである、もしくはUXデザイナーが3D音声とビジュアルデザインに没頭する必要が出てくるという考えに納得できない場合は、VRのヘッドセットを使いほかのデザイナーが作っている革新的なサービスを体験することから始めましょう。もしこれが初めての機会なら、きっと幼い子どもに返ったように感じるはずです。
VRで、オフィスの椅子をAston Martinの運転席や、宇宙船のコックピットに変えることもできます。あなたは30代かもしれないし、40代、50代、もしくはそれ以上の年齢だとしても、それはあなたが遊んではいけないという理由にはなりませんし、VRとARの可能性はそれらを望むUXデザイナーの想像力に託されています。