私たちは過去数年の間、ブランドが顧客と触れ合う方法において、とてつもない変化を目の当たりにしてきました。
従来はトップダウンにも近い、一方的なコミュニケーションスタイルが主流でしたが、それが今では顧客との継続的な対話を重視するようになりました。ブランディングにおける現代のコンセプトは、これまで以上に体験のデザインと絡み合っています。
ユーザーの心理において、ブランドの「アイデンティティ」はブランドの「体験」と切り離せません。今日(こんにち)では、ブランドというのはその独自の価値とその背後にあるストーリーの複雑な絡み合いで成り立っています。それぞれのブランドの持つ空気は非常に流動的ですが、そこで生まれるコンテキスト(文脈)がプロダクトやサービスのデザインに影響を与えます。
企業は、自社のブランドのファンやフォロワーとの安定した関係を築き、維持するための方法を模索します。そしてこれには、コンテキスト、印象、インタラクション、そして将来性において一貫性を示す必要があるのです。
エクスペリエンスデザインのチームはあらゆるインタラクションの接点において、ブランドのアイデンティティやバリューがどう伝わっているのかを意識する必要があります。そうなると、UX/UIパターンの役割が大事となってきます。
最低限のパターンに従う
私たちはオンラインでコンテンツに触れるとき、大小何かしらのパターンに出くわします。研究によると、私たちの脳は複数の価値の間に関係性を探すようにできていて、パターンを認識して分析するための優れたツールです。パターンは、この関係性を拡大します。
デザインパターンの大半は技術が進歩するにつれて変化していきますが、不変で広く普及するものもあり、それは基準点としてだけでなく、一般的なデザインの問題を解決するための有効な手段にもなります。
今日(こんにち)では、完全にオリジナルのものを作ることはほぼ不可能です。ですが同時に、デザインを模倣する道をたどるのもよくありません。
ユーザーは頭を使わなくて済む、一般的なパターンが快適と感じるのです。ユーザーは、パターンによって期待すべきことやどのような機能かを把握します。ですが、それは必ずしもパターンを盲目的にコピーしてくれば良いという意味ではありません。選択肢を狭め、パターンに厳密に従ってしまうと、プロダクトがつまらなくなってしまったり、アイデンティティの欠如につながる可能性があります。
これは、ちょうど自社のブランドを構築し始めたスタートアップ企業に特に関連します。既存のパターンからインスピレーションを得て、あくまでパターンを自分たちの基盤として使用することで、親しみやすさと創造性とを融合することができるのです。
この二つのバランスを取ることが、独自なデザインとブランドエクスペリエンスにおける一貫性への鍵です。
ここで、皆さんのデザインパターンにオリジナリティをもたらし、個性の欠如したデザインを回避するいくつかのアイデアをご紹介します。
デザインパターンに組み合わせたい要素
マイクロインタラクション
マイクロインタラクションは、UX全体を強化し、ブランドを差別化させる重要な力を持っています。デザインを通してユーザーの体験をスムーズにし、インターフェイスをより軽快に、そして人間らしくします。また同時に、必要なタスクを完遂し、進行中のプロセスについてユーザーに知らせます。
統一されたテーマでデザインされている場合は、すべてのインタラクションがブランドアイデンティティの個性の部分となり得ます。ユーザーがこのWebサイト(アプリ)を好きになるか、それとも嫌いになるかは、これらの細部によって決まるということを心に留めておいて下さい。
そのため、マイクロインタラクションはうっとうしいもののではなく、むしろ繊細で洗練され、親しみやすい必要があります。
アニメーションやトランジション
アニメーションはさまざまな目的のために使用されます。純粋に装飾的な役割を持ったり、機能性を伝えたり、またストーリーテリングのための付加的なツールとしても使えます。
アニメーションについて考えるとき、私たちはよく極端な使用例を想像してしまいますが、ちょうどデザートと同じように、優れたアニメーションは適度だからこそ素晴らしいのです。センス良く行えば、アニメーション要素はWebサイトやアプリに対する認識を完全に変え、全体のブランドストーリーにユニークなタッチを加えることが可能です。
完璧に配置されたアニメーション要素は、Webサイトやアプリ全体を実際に活性化する隠し味であり、全体のユーザー体験にも貢献します。
ブランドカラーとユニークなタイポグラフィ
ロゴだけではなく、フォントや色、ひょっとしたら声のトーンに至るまで、どの要素も世界観をブランドに一貫性を持たせ、つなぎ合わせるためにつかいます。
ただし、重要なのはブランドのアイデンティティの要素を賢く使用することです。デザインを支配したり、またはUIを混乱させたりするべきではありません。適切かつバランスの取れた方法でこれらの要素を使用すると、効率的かつ強力で、エレガントなUIが生まれます。コンテンツの中で一番良いところをハイライトし、ユーザーを引き込むレベルを押し上げる効果があります。
独自のUIコントロールデザイン
ボタン、リンク、チェックボックス、グラフ、ウィンドウ―これらは、UIコントロールにおけるいくつかの例です。私たちは気づかないうちに、毎日これより多くのUIコントロールを使っています。そのいくつかのコントロールに少しのセンスを与えることで、デザインを差別化し、目立たせることができます。
バランス
パターンの要素とその配置の比重のバランスをとることで、デザイン力強さと透明性を与えます。したがって、パターンを新たに考案したり、ユニークなブランドタッチを追加したりしたくなる際は、ビジュアルの散らかりとユーザーの体験の混乱には気をつけましょう。
ビジュアル要素、タイポグラフィ、配色などの組み合わせや構造は、ユーザーが情報をどう感知し、どう解釈するかに影響を与えます。奇抜なデザインのカルーセルなどを作っても、ブランドの価値には何のプラスにもならず、ユーザーに頭痛と吐き気をもたらすだけです!
テストを繰り返す
デザイナーのエゴを満たすためのデザインは、時間と労力の無駄です。私個人としては、どんなデザインも常に改善できると思っています。デザインの基礎であるパターンは、常に特定の目的を果たすと共に、一定のコンテキストに適用することができます。
一般的なデザインパターンを覆すような素晴らしいコンセプトを考えついたと思ったときは、ユーザーの前に差し出し、他にどのように改善できるか調べてみると良いでしょう。
まとめ
パターンがあれば、間違いなく機能的な成果物をあげることができますが、必ずしも似たような何千もの中から目に留まるものになるとは限りません。
ここで最も大変なのは、あなたのスタイリッシュなクリエイティブと普遍的で親しみやすいパターンの両方を組み合わせてバランスをとり、ブランドイメージとその精神を維持することです。皆さんのブランドのことを、皆さんより理解している人はいません。ですから、パターンから外れて考えることを恐れないで下さい。
パターンを分析し、どんな解決方法を与えてくれるのか、そしてどのユーザーコンテキストがふさわしいのかを理解した上で、アイデアを試してみましょう。細かい部分に取り組み、デザインパターンを組み合わせて、新しい可能性を探る―これは、差別化できるプロダクト、そして一貫性のあるブランドエクスペリエンスを作るための、確かな方法なのです。