企業とは、社会的かつ文化的な組織です。そして、組織のあらゆる物理的な要素は、組織内部の人間を反映したものと言えます。
リーダーとして成功するためには、ほかの人に対して、心から関心をもたなければなりません。
以下の記事は、Guide to UX Leadershipからの抜粋です。
適切な人物に質問をする
最初のステップは、組織内で影響力を持つ5人の人物を見つけることです。
その人物は、幹部クラスの人かも知れないですし、そうでないかも知れません。彼らに実際に会って、1時間程度、質問する時間を持ちましょう。
これが終わったら、1~3カ月間の間に少なくとも10人のほかの人と同様のインタビューの時間を持ちましょう。(組織の規模に応じて実際の人数は決めてください)この10人の中には、自分の同僚や部長(上司)、上司の同僚を含むようにします。
本来の業務に支障がないよう、自分の能力に応じてこのインタビューを実施する人数は多くしても少なくしても構いません。
それぞれの人物に対しては、以下の5つの質問をするようにします。
1. どうしてこの会社を選んだのですか?
「どうしてこの会社を選んだのですか?」という質問により、企業カルチャーや企業信念など組織に関する話を膨らませます。
私が、Rackspace社のプロダクトデザイン部のシニアマネージャーとして働いていたときは、幹部クラスの人から「弊社には実に大きな機会があふれています」というフレーズを幾度となく耳にしました。誰もが機会がたくさんある環境に行きたいと思いますよね?
しかし、「実に大きな」というキーワードが、ひっかかりました。なぜ機会を「実に大きな」と形容するのでしょうか?
詳しく聞くと、幹部クラスの人(特に新しく雇用された人)は、彼ら自身の期待も込めて、このように表現していることが明らかになりました。これは必ずしも悪いことではありません。しかし、これによって私はUXプロジェクトへの期待をリセットしました。
2.もっとも価値のあるプロダクトは何ですか? 顧客に対する価値提供について知る手段と最大の障壁は?
これらの質問は、顧客に価値提供をするにあたって必要な企業組織内の合意形成が、上手くできているかを明らかにするのに有効です。
たとえばRackspaceでは、異なるプロダクトチームがそれぞれ価値を提供していました。しかし、私が行ったインタビューでは、すべてのチームで顧客への貢献についての認識や回答がバラバラでした。
合意形成の不足が、大企業の中では共通の議題であるのはわかるでしょう。通常、企業規模が大きくなるほど、部門間の溝に橋渡しをする役割がリーダーに求められます。
3.入社したばかりだとしたら、会社について何を知りたいですか? 理由も一緒に5つ挙げてください。
この質問を何人かの人にしてみて、その回答から、見通しや意思決定に関してのいくつかのパターンがあることがすぐに気付きました。
- パターン:「四半期以上の期間を要するプロジェクトは、恐らく上手くいかない。」
教訓:短いスパンごとに分けて考えるようにしました。そうでないと、チーム全体が行き詰まって、結果的に燃え尽きてしまうでしょう。 - パターン:「Rackspaceは信頼関係にもとづいた組織である。」
教訓:「なぜ」を掘り下げる。最初、私はこの言葉が何を意味しているかわかっているつもりでした。しかし実際には、6カ月が経つまで、Rackspaceが従業員育成に関して力を置いていることを、理解してはいなかったのです。最初からすべてを学ぶことはできません。 - パターン:「Rackspaceでは、物事の決定はチームの合意にもとづき行われる。」
教訓:自分自身の影響力を自覚し行使するようにしましょう。チーム内で真に影響力を発揮している人が誰か明らかにするために、会議や作業プロセス、連絡の取り合いなどの状況をよく観察します。その人に注目しましょう。私の場合は、影響力のある人を見つけたとき、次の段階として、どうやってその人とつながりを築くかに注力しました。1対1でミーティングを行うこともありましたし、コーヒーを飲みに行くこともありました。これも組織を円滑に動かすための活動です。
4.あなたや組織にとって、次のチャンスは何ですか?
この質問で、インタビュー相手が未来志向があるかどうかを理解することができます。
これによって、成長志向の人たちを、単に仕事好きな人たちとは別に考えることができます。
5.組織がどのように機能しているか理解するために、誰と話せばよいと思いますか?
この質問からわかることは、誰が特別な人物であるか、誰がチームと距離を置いて仕事をしているかです。
「特別な」人物とは、インタビューでよく名前が挙がる人のことです。たとえば、プロダクト部門のリーダーやCMO、制作チームの部長クラスなどの人たちは皆、プロジェクトマネジメント部門の統括リーダーについて、話の中で触れていました。
これに対して、チームと距離を置いている人間とは、わずかな人が名前を挙げる人物のことです。たとえば、プロダクト部門のリーダーは、特定のデザイナーやサポート役の人の名前を口にしました。しかし、彼らの名前はほかの人とのインタビューでは出てきませんでした。
しかし、決してこの人物を解雇してはいけません。こういうアウトサイダーな人物こそ、仕事のプロセスで力を発揮している可能性があるからです。
インタビュー結果をまとめる
インタビュー後は、デザイナーのツールの中でもっとも役立つツールを使うのがおすすめです。それはポストイットです。
まず中心となるコンセプトを抽出し、親和図の中に足していきます。私が行うときは、図で表して、インタビュー相手とその内容について話し合います。
図で表したアイデアをほかの人に見せるとき、相手の反応は単純な「イエス・ノー」だけではありません。相手は「はい、それで…」や「いえ、しかし…」とも答えます。両方とも、組織の隠れた本質を明らかにするための重要な手がかりです。
私の場合、インタビュー相手のアイデアをマインドマップに描く作業を何回も実施しました。彼らの回答のほとんどが、組織内の人々や作業プロセス、組織体系のつながりに関わるものだったからです。マインドマップでは、それぞれのアイデアを図で囲んで線でつなぎ、Rackspaceにおける組織体系を図で表しました。
結果、Rackspaceは上下関係にもとづく階層構造で成り立っているのではないと、しっかり確認できました。
入社後30日間でリサーチを行うことで、所属企業や勤務している社員の目的を確認し、世の中へ貢献性の高い利益をどのようにもたらすか、明確なビジョンをもつことができるでしょう。
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