ポップアップには、モーダルウィンドウやダイアログボックス、モーダルポップアップと複数の名称があります。しかし、どのような名称であれ、ポップアップはユーザビリティの面で問題があると言われています。平均的なWebサイトでのポップアップの表示頻度から判断すると、UIデザイナーと開発者はポップアップを好むようです。
しかし、ユーザーはポップアップをあまり好きではないようです。実際、ポップアップは大多数のユーザーやUI専門家には評判が悪いです。では、なぜポップアップはこんなにも広く利用されているのでしょうか。
弊社Justinmindで調査を実施することにしました。ユーザーの意見を詳細に調査し、社内のデザイナーから情報を聞き出しました。以下がポップアップについて、そして代わりの手段について発見したことです。
なぜポップアップが使われるのか?
ポップアップの基本に立ち戻ると、ポップアップの機能自体の魅力は理解できます。グラフィカルな要素として、ポップアップはユーザーに情報を伝えます。
ポップアップはメインページに属しながらも、ユーザーがポップアップ上でクリックや文字入力などの操作をしない限りメインウィンドウへアクセスできないようになっています。一時的にユーザーの一連の操作を中断することを目的にしつつも、ポップアップはシンプルで効果的です。ユーザーとコミュニケーションを図るために、ポップアップを設置し応答を求めるのです。
ポップアップの用途
ポップアップには多くの用途があります。無関係なスパムのポップアップから、内容に関係のある提案や確認まで。UIデザイナーにとってポップアップウィンドウと聞けば、「新しいスペースの恩恵」の代表例として思い浮かぶでしょう。UX MAGによれば、ポップアップは納期ギリギリでの追加や既存ページのコンテンツを再び活用するための手段です。
ポップアップは、UIデザインにおける良いツールだと思いますか? 問題は、ユーザビリティとUXを良くするためのルールからかけ離れていることです。
ポップアップの利点
ポップアップが「もっとも嫌がられるUI要素」なのはなぜか? その理由を考える前に、ポップアップの利点を見逃すべきではありません。
Justinmindがオンライン調査で「ポップアップは存続するべきか」と質問したとき、回答者の21%がポップアップを肯定的に擁護する回答をしました。また56%が中立で、23%がやっかいなデザインパターンだと回答しました。
それではポップアップのUI要素における利点について見てみましょう。
1. コンバージョン率をあげる
まず何よりも重要なのはコンバージョンです。ほぼすべてのオンラインのコンテンツ制作者は、コンバージョンを求めています。このコンバージョンは、Eメールでのサインアップ、ダウンロード、購入などです。
統計をみると、コンバージョンを目的にしたポップアップは、かなり良い結果を残しているようです。Appsumoのポップアップの例を見てみましょう。Appsumoによると、ListBuilderのポップアップのプラグインが、30日で11万313個のEメールアドレスの収集するのに役立ったと主張しています。また、User Testing.comのSteven McDonald氏の主張によると、自身のポップアップを「サイトで3番目のリードジェネレーター」と評しています。
なぜEコマースにおいて、これほどまでポップアップが重要なのでしょうか。ConversionXLのOtt Niggulis氏によると、オンラインの世界では、99%の訪問者が初回の訪問では何も買いませんが、75%が将来的にサイトを再訪する意思があるそうです。ポップアップはフォローアップのためにメールアドレスを収集するための代わりのないツールです。なぜでしょう? それは「説得力」とインタラプションマーケティング(不特定多数に一方的に行う広告)のおかげです。
電話マーケティングやテレビ広告を経験した人なら誰でも知っているように、インタラプションマーケティングは役に立つものです。ユーザーが行っていることを中断させて、表示されるメッセージに対応させます。これはモーダルの場合に特に当てはまります。なぜなら、ポップアップが表示されると、Webページをブラウズし続けるにはメッセージに対してなんらかのアクションをする必要があるからです。これは単に「閉じる」をクリックするだけでもです。
コンバージョンを目的としたポップアップの結果は非常に良いものでしょう。アルバータ大学ではポップアップを導入した際、ニュースレターのサインアップ数が1日に1、2件のサインアップであった状態から、12件~15件まで増加しました。依然として、多くはないサインアップ数ですが、コンバージョン率は非常に上がっています。
2. 直帰率に影響しない
もしポップアップがユーザーの操作を中断しているなら、ユーザーはサイトから離脱するでしょうか? ConversionXLによると、そうではないようです。Niggullis、WPBiginnerとBacklinkoによる2つの事例によると、ポップアップの導入によるサイト直帰率への影響は0でした。0です。
純粋なコンバージョンの観点から、ポップアップは役に立つようです。
ポップアップの欠点
1. 大きな数字、しかしエンゲージできていない。
コンバージョンの統計についてだけ見ると、ポップアップはとても素晴らしいものです。しかし、たびたび数字は誤解を招きます。ニュースレターの「ものすごい」サインアップ率を、より正確に見てみましょう。Mauro D’Andrea氏はポップアップ経由でサインアップしたユーザーのエンゲージメントは、自主的にサインアップしたユーザーよりも低いことを見つけました。つまり、ポップアップによりサインアップユーザー数を増やすことはできますが、ポップアップ経由のユーザーたちはマーケティングメールを開くことはなく、クリックすることもありません。
2. ブランドイメージを損なう可能性
ポップアップはコンバージョンを増加させるが、ブランドイメージを損なうかもしれません。
Nielsen Normanグループは、「行かないでください」というメッセージのようなイグジットポップアップ(ユーザーがWebページを去る前に何らかのアクションをさせようとするポップアップ)は、Webサイトのプロフェッショナルな、信用あるイメージを損なっているということを明らかにしました。これは、ユーザーのブランドへの信用を損うことにもなります。
Jon Reed氏はこう指摘します。ユーザーへのコールトゥアクションをポップアップだけに頼ろうとしないでください。ユーザーにとっては時間の無駄です。もしあなたのサイトで「私たちのポップアップは嫌いですか?」というボックスが表示されたら、はい、とクリックするでしょう。
ポップアップ、そしてインタラプションマーケティングは終焉の時代を迎えつつあるのかもしれません。インバウンドマーケティングはデジタル時代には依然として重要です。競争が激しいオンライン市場では、ユーザーはどのブランドのユーザーになるか選択する自由度が増しました。Reed氏がポップアップへの批判で言うように、BtoBのユーザーは「信頼できる専門家との長期的な関係を探している」のです。もしあなたの製品やコンテンツが良いものなら、ポップアップがなくてもユーザーが自ら見つけることでしょう。
3. UXとユーザビリティへの影響
基本に立ち戻りましょう。ユーザーはポップアップをどのように感じているのか。一般的な状態で、ポップアップを経験するというのはどのように感じるのでしょうか? ポップアップの後ろに控えるコンテンツを前に、どうしようもない苛立ちを感じているのでしょうか?
JustinmindのUX担当者であるSergi Arvalo氏は、その問いへの回答は想像よりもっと複雑だと指摘します。
「ポップアップにはさまざまな機能があり、使用するのが適切なコンテキストもあります。にもかかわらず、ポップアップは強引なものです」
私たちは「コンテキストに沿った」ポップアップから「やっかいなデザインパターン」まで、さまざまなポップアップに遭遇したユーザーに対してオンライン調査を実施しました。役に立たないポップアップに遭遇した際のユーザーは、複雑で微妙な感情を抱いていると数々のオンライン調査で証明されています。
ポップアップにとって、コンテキストは重要なようです。広告の分野では、統計が説得力を持ちます。アメリカのユーザーのうち70%がポップアップの広告に苛立っています。
SearchEngineLandによると、サイトを離脱する主な理由は苛立たしい広告です。もちろん、すべてのポップアップが広告ではありませんし、いくつかのポップアップには価値があります。
Arvalo氏はこう指摘します。
「同じページでユーザーに関連するコンテンツを見せたいと望むなら、ポップアップは理想的です。デザイナーにとっては限られた場所に付加価値を追加できるすばらしい方法でしょう」
ポップアップは、複雑なものなのです。
4. モバイルへの適応が難しい
ポップアップが好ましくないものだという1つの明確な例があります。ポップアップが最初にインターフェースに登場した頃、ほとんどの場合、私たちはデスクトップ端末をマウスで利用していました。マウスを用いて苛立たしいポップアップを閉じることは簡単でした。
しかし、私たちはモバイル時代に生きています。ポップアップはモバイル端末に合わせた形に変化するのに失敗しました。
ポップアップはモバイルUIのデザイナーにとって扱いが難しいものです。異なるOSで、異なるデザインが要求されます。通常のポップアップの右上にある「閉じる」ボタンは、親指で届くエリアの外にあるので正確にタップするのが難しいです。また、モバイルでのポップアップは適切に縮小しないことも多く、ユーザーは必死に「閉じる」ボタンを探すためにスクロールしなければなりません。基本的に、UX Magが指摘するように、ポップアップは「タブレットやモバイル端末でうまく機能していない」のです。
ポップアップは良いUXとなりえるか?
もしJon Reed氏の主張に耳を傾けるなら、この問いに対する答えは完全に「いいえ」でしょう。「自明のこととして、ポップアップはUXを毀損します」。しかし、前述のようなネガティヴな側面にかかわらず、特定のWebアプリやデスクトップインターフェースでポップアップは歓迎される機能です。
私たちJustinmindの調査で、回答者はポップアップは複雑なプロセスにおけるユーザーのガイドや、必要な情報を提供するのに役立つと答えました。UX magはユーザーの承認や特定の行動が必要なプログラムやアプリで、ポップアップはやり直しがきかない操作の前にユーザーの注意喚起を行うためのすばらしい方法であると指摘します。
もしこのようなソフトウェアをデザインしている場合、ユーザーとどのようにコミュニケーションするのがもっとも良いのか、A/Bテストを実施することをJustinmindのUX担当者Arevalo氏はすすめています。ユーザーが行動を中断させるポップアップの真実の価値を知ったとき、ポップアップのプロトタイプは受けが良いかもしれません。
しかし、2種類のポップアップでのA/Bテストはただ2つの選択肢の内の最善でしかないということを忘れないでください。ポップアップなしでも操作をユーザーに実行してもらい、ユーザーがどのような体験を真に価値があると判断するのかも観察してみましょう。
どのようにポップアップを正しく使うか
ポップアップをUIに利用するとなった際は、ベストプラクティスに則りましょう。調査でポップアップは以下の状況であればユーザーに受け入れられると明らかになりました。
1. 操作における重要なタイミングで行動や決断の確認をするとき
2. 役に立つフィードバックやアドバイスを提供するとき
3. コンテンツに関連性ある内容に絞られているとき(この場合関連性が重要です)
上記のベストプラクティスに沿ったものでも、ユーザーはおそらくポップアップに夢中にはならないでしょう。しかし、サイトを二度と訪問しないくらいブランドを嫌ったりはしないでしょう。
以下はJustinmindのデザインチームからのアドバイスです。
- キャッチコピーに関して、利口ぶりたいという誘惑を抑えましょう。誰も見下してくるコピーを好みません。代わりに、あなたのブランドではなくユーザーに心から価値を与えるような、肯定的なコールトゥアクションとキャッチコピーが重要です。
- 同じユーザーに繰り返しポップアップを表示しないように、ポップアップはCookieを利用して追跡しましょう。これは、同じユーザーが同じデバイスの同じブラウザでいつもサイトにアクセスすると仮定したものです。ちなみに、HubSpotはこれを実践すべきです。私がHubspotのブログを見に行くと、数ヶ月前に済んでいるアップデートをするように促すポップアップが表示されます。
- ユーザーの役に立つコンテンツとインセンティブをポップアップで提示しましょう。クズのようなコンテンツではだめです。また、連絡先のみを聞くだけいけません。それはひどいUXです。無意味なことを聞かない代わりに、ユーザーにとって役に立つ無料情報を送るポップアップはどうでしょう? 多くのユーザーにとってはうれしい中断(ポップアップによる中断)でしょう。
- タイミングと状況をよく考えましょう。SumoMeはポップアップを提供するもっとも良い(つまりもっともコンバージョンフレンドリーな)タイミングはユーザーがサイトに5秒間滞在したあとだと発見しました。しかし、UXの観点では、これはおそらく誤りです。ユーザーがコンテンツを評価する十分な時間がないのに、そのブランドやコンテンツに関わりたいと思うのでしょうか。ユーザーをコンバージョンの犠牲にしてはいけません。
- モバイル向けにデザインしているのであれば、UX Magのアドバイスに従い、画面操作シナリオ(親指のエリア)に基づいて、ユーザーがタッチできるモバイル画面の範囲を設定しましょう。閉じるボタンを画面の右下に設け、ユーザーにポップアップをスクロールさせてはいけません。
- もっとも重要なのは、ポップアップをデザインするときは常に、「ユーザーは本当にポップアップによる中断を必要としているのか?」と問うことです。ほとんどの場合必要ないでしょう。私たちが実施した調査の回答者の1人が言うように、「金槌は必要なときにだけ利用する」べきなのです。
まとめ
ポップアップのUXへの影響を評価することは、記事で紹介したように複雑で難しい案件です。ポップアップがWebやモバイルアプリのユーザビリティを毀損することが直感で想定できる一方、統計ではユーザーがコンテキストの重要性を暗に理解しているということが明らかになりました。
ユーザーは、フルスクリーンの「今すぐ登録」ポップアップや、横柄なキャッチコピーを伴ったインターフェースのデザインを好みません。
ポップアップをデザインするときは、コンバージョンではなく、ユーザのニーズに応えることを優先しましょう。ポップアップが面倒なものではなく、役に立つものであればユーザーから感謝されるかもしれません。これには、長い時間がかかるかもしれませんが、ポップアップを適切に使用し、常にユーザービリティに焦点を当てることで、ユーザーはブランドを信頼するようになります。そして、最後にはブランドのファンになることでしょう。