私が最初にワイヤーフレーミングおよびプロトタイピングアプリのUXPinで働き始めたとき、私たちは「初公開を盛大にする」製品開発アプローチの大ファンでした。チームとともに本腰を入れ、素晴らしい機能のセットをつくることに2、3か月を費やし、それを一般に公開するというものです。私たちがすぐに学んだのは、これがヒットするものと失敗するものに、極端に分かれるということでした。このアプローチが上手く働いたとき、トライアルユーザーから料金を払って利用している顧客まで、コンバージョン率が急激に上昇しました。それが失敗したとき、私たちは労働力とお金と正気を口では言い表せないほど犠牲にして、瀕死の状態になっていました。すぐに私たちは、よりスマートな、そしてもっと小規模なものを配信する必要があるということを知りました。
MVPから始めてください。MVPとは 「Minimum Viable Product」の略であり、会社が最小限の努力で顧客に関する自分たちの仮定を検証するのをサポートするものです。近年では以前の方法から学び、より頻繁に、より小さい機能を配信することに方向転換していきました。これらのより小さい機能は、MVPとしての役割を果たします。完全な電子書籍を発売しようとしているならば、私たちはまず関心を測定するために単純なランディングページを開設するでしょう。PhotoshopとSketchで最近行ったように、他のソフトウェアの組合せと一体化しようとするならば、完全に統合を続行する前にまず2、3つの機能を最も単純なプラットホーム(この場合、Sketch)と統合させ、それからベータテストと統合します。
本記事では、ミニマリズム、実行可能性と製品品質のバランスをとるためにMVPについての誤解を解き、UXデザイナーが調査できる様々な方法を特定します。
MVPの定義づけ: 「V」または「P」を忘れないようにする
SyncDevのCEOであるFrank Robinson氏によって作られ、そしてIMVU創設者であるEric Ries氏によって広められたMinimum Viable Productすなわち実用最小限の製品という言葉は、それが物理的な製品または仮説を確認するための単なるランディングページであるどうかにかかわらず、何かを迅速に配信することを指しています。しかし、私たちが「実用可能な製品」を持っていることを確実にするという考えなしに、MVPをつくるという「最小限の」面を美化することは簡単です。その魅力は、最少の資源から最大限の価値をを絞り出すことからくるものです。
MVPは、一般に考えられているのとは逆に、成果を出す製品を作成するのに必要な機能の最小限のセットでありません。また、製品自体でもありません。プロセスを指しているのです。MVPは、ビジネスアイデアについての仮設を証明するか、またはそれに対する反証をあげる最小の実験です。急速な発展が最も重要ですが、それは私たちが迅速に学び、そして研究目的を得るのを助ける範囲においてのみ、それは真実となります。
MVPのプロセスは、以下の4つの段階を踏みます:
①解決する価値のある問題を見つける。
②最小の可能なソリューションを決定する(MVP)。
③最小の規模でMVPを構築し、テストする(その固有の価値を示す)。
④アーリーアダプター(熱狂的な顧客)を引き込み、興味を促す。
MVPの適切な時期はいつか?
MVPが名案であるかどうか、そしてどのようにそれらを改善するべきかに関しては様々な意見があります。誤解に基づく見解を切り離すためには、毎日有言実行している実践者の話を聞くことが最善な方法です。
ランディングページのMVP
Bufferの創設者であるJoel Gascoigneは、サービスを始めるときソリューションをイメージしていましたが、彼は誰も使用したくない製品を構築することで行き詰りたくありませんでした。そこで彼は、ユーザーが本当にTwitterの記事のスケジューリングおよび管理において問題を抱えているかどうかを確認するために、シンプルなランディングページを構築しました。
Bufferの最初の最小限の実行可能な製品は、Bufferが何であり、そしてそれがどのように働くか説明して、人々が登録するのを促し、そして彼らが興味を持っていたかどうかを知らせるためにクリックできるように、「計画と価格設定」ボタンを人々に対して提供しました。クリックした人々には、Bufferがまだ準備ができておらず、最新版の登録をしなければならないことを説明しているショートメッセージが提示されました。Gascoigneはアプリの潜在的ユーザーと連絡を取り、彼らが望むものに対する価値あるフィードバックと洞察を得るために、アプリを開始する際のサインアップフォームから受け取ったEメールアドレスを使用しました。
私たちの自動車の例のように、Gascoigneは、人々が実際にそれに対する支払いをするかどうかという新しい仮説を検証するためにMVPを繰り返し使用していました。 同社はランディングページとサインアップフォームの間に価格の表を加えて、仮説が正しく、ユーザーはサービスの料金を払うことを学びました。 完全にランディングページだけに頼ることによって、Gascoigne は少ないコストで、実際の製品なしで2つの仮説を検証することができました。
Bufferの初のMVPは、アイデアに対する需要があるかどうか調べるためだけにテストされたということを、ここに記載しておくことは重要です。Gascoigneが、 Bufferが有益な考えであるということを知ると、同社のチームは最小限の実行可能なソリューションを構築しました。
デジタル無しのデジタルMVP
UXPinの現在の製品がウェブベースのワイヤーフレーミングおよびプロトタイピングアプリケーションである一方、同社のMVPは紙のプロトタイピングノートパッド以外の何物でもありませんでした。Marcin Treder氏は、UXデザインプロセスが混乱し、乱雑なように感じられる可能性があることを知っていました。デザインプロセスを改善することは単純な妙技ではないので、彼はワイヤーフレーミングおよびプロトタイピングの段階だけを単純化することに集中することに決めました。
「明らかに、紙製品は、まず最初に製造するのにはコストがより安いものでした」、Treder氏はこのように認めました。「しかし正直なところ、私たちには製品の次のバージョンがテクニカルなものになるという考えを持ち合わせていませんでした。というのも、私たちは同僚をより良いデザイナーにするためにサポートする、ほんの数人のデザイナーだったからです。」最初の紙ノートパッドのセットは、2011年に遡る発売の際に、48時間以内に完売しました。そしてそれは、デザイナーがワイヤーフレーミングとプロトタイピングをより簡単にするためのツールを確かに必要としているという仮説を実証しました。
しかしTreder氏はすぐに、既存のデジタルソリューションが欠けていることに気がつきました。Balsamiqはハイファイを提供しておらず、またAxureは非常に扱いにくいものでした。紙ノートパッドはデジタルソリューションではなかったので、彼は仮説を修正し、新しいのMVPを構築しました: 初期のデジタルプロトタイプです。完璧な製品のために努力する代わりに、Treder氏の開発チームはもう一つのUXプログラムのコードベースからUXPinを構築し、単に更なるワイヤーフレーミングとプロトタイピングの性能を追加することで、異なる環境で同じ価値提案を行いました。既存のコードベースを用いて、製品を実行可能なソリューションにするような機能を提供する一方、このMVPは少ない予算を維持しました。
「私たちにとって、MVPは最も迅速、または最も完璧な製品ではありません」彼はこのように述べています。「それは、最小限の開発作業を必要としますが、最大の価値を生み出す製品です。」彼は、最初の紙のプロトタイピングノートパッド製品が最大の価値を提供しなかったことを認めていますが、それは彼が価値ある洞察を得るのをサポートした最小限の努力でした: 顧客はノートパッドを望みましたが、彼らはより良いデジタルソリューションを必要としました。その意味では、初期のMVPは成功したのです。
「P」がないMVP
UXPinが有形の製品から開始した一方、 Dropboxは製品から開始しませんでした。クラウドベースのファイル記憶の複雑さを考えると、単純なプロトタイプさえ信頼できるオンラインサービスを提供するために大きな技術的な困難を克服することを必要とします。
人々が望まないかもしれない製品の開発に(何年とまではいきませんが!)何か月もかけるリスクを冒す代わりに、Dropboxチームは、カスタマーエクスペリエンスを例示することがより簡単であると2008年に決定しました。同社のMVPは、上品でシンプルなユーザーエクスペリエンスを描写した、創設者であるDrew Houston 氏によるナレーションが入った、4分の動画になりました。ファイルがDropboxに同期される際に緑のチェックマークがファイル上に表示され、そしてファイルをクラウドの方へ移動することはドラッグ&ドロップと同じくらい単純です。業界用語または専門的な虚勢でもなく、 エクスペリエンスこそがその価値を物語るのです。
ローテックのMVPは利益を生みました。ほとんど一晩で、「Googleドライブキラー」と呼ぶほど影響力のあるオンラインコミュニティDiggを伴って、Dropboxの登録者数は5,000人から75,000人まで増加しました。
DropboxのMVPがDrew氏の仮説を証明した一方、それはさらに、優れたUXが彼らの最も強力なセールスポイントであると彼らに教えました。プロトタイプがユーザーに完全なDropboxエクスペリエンスを提供する最高の方法であったけれども、その動画は彼らに、彼らが何を知っている必要があるかについて教えました。数ヶ月後に、 Drewのチームがシームレスなエクスペリエンスという約束を追求したので、Dropboxはすでに飽和した市場に参入し、成功しました。
この場合、百聞は一見に如 かずです: 元のMVP動画は、2008年から2013年までずっとDropboxのホームページ上の最重要要素として位置していました。
10X MVPプロセス
『ランニング・リーン - 起業家の成功をサポートする』の著者であるAsh Maurya氏は、彼のスタートアップ企業であるCloudfireのためにMVPの構築と市場への流入を同時に行い、その際に10xプロセスを使用しました。Ash氏は、次の3段階に沿ったプロセスを作成しました:
①10人のユーザーグループを特定して、彼らの痛点を見つけるために、顧客インタビューを行う。
②速いソリューションを提供し、それを顧客の最初の一群に提示するために、コンシェルジュMVPを構築する。
③次の100人の早期採用者のためにEメールを集めることを目的として、効果的なメッセージ発信を伴うランディングページを作成するために、顧客データを利用する。
この早期顧客の第2の群は、より多くの候補を顧客インタビューに提供してくれるため、マーケティングウェブサイトのためにメッセージ発信を仕上げるのをサポートしてくれます。そして、それはより多くの顧客を誘致します。このように、10xプロセスは、MVPプロセスの各々のステップでユーザーベースを10倍にするのをサポートします。
10xプロセスの鍵は、MVPが本物の製品とみなされるということです — テストされているベータ製品とは対照的になります。これは、価格設定がステージ1(Bufferの方法と同様に)で議論されることを意味します。そしてそれは、早くから収益性の問題に取り組むのを助けます。MVPはさらに、無料のソリューションと競争するということを覚えておくことは非常に重要であり、そのため何がMVPがわずかな隙間を埋めるのを助けるかについて理解するために、顧客の話を聞くことが大切です。
10x製品展開は、MVPプロセスの変種です。コンシェルジュMVPが他のMVPよりもはるかに労働集約的である一方、チームは最初の製品展開後、製品を反芻し、精製し、そして調整し続けます。インタビュー、調査とユーザビリティーテストを通して、最終目的はより広いユーザーベースを獲得し、時間をかけてより良いMVPを構築することであり、それでいながら、実行可能性を最大化しつつ、リスクを最小限に抑えるというMVPの目的も保持しています。顧客インタビューは誰が問題を抱えているか、そして最小のソリューションがどのようなものであるかを確認するのを助け、そして製品リスクを軽減します。顧客インタビューはまた、価格設定と競争に対する反応を測定し、市場リスクを軽減します。ボーナスとして、ランディングページ数、Eメールリスト、およびマーケティングウェブサイトの訪問数もまた、顧客関心と市場実行可能性を測定する測定基準として用いられます。
完全な機能の代わりに、完全なエクスペリエンスを
ランディングページ、動画、非デジタル製品、および10x製品展開は、同じ目的を達成するための、各々の明確に異なる方法です。MVPプロセスは、スタートアップ、期間、または社内であるかどうかにかかわらず、すべてのUXデザイナーにとって有益です。ユーザーから学んで、実行可能性を最大にし、リスクを最小にすることは、常に価値がある目的です。
おそらく、MVPのことを考慮する最高の方法は、 Brandon Schauer氏のカップケーキ論です。それは、方法の各段階における完全なエクスペリエンスを強調しています。ケーキにとってカップケーキが1杯の小麦粉より良い(そして、より望ましい)MVPであるように、MVPが常に製品の価値を伝えることを確認してください。MVPがランディングページであるならば、コピーはメッセージを伝えなければならず、CTAは明白である必要があり、そしてUIは直観的でなければなりません。MVPが効果的なプロトタイプであるならば、それは実際にうまくいかなければなりません。小さな何かを構築することは賞賛に値しますが、劣った何かを構築することは許しがたいです。