リソースが不足し、予算が取れない中で、企業は成功のほどが不明な大規模のデザインプロジェクトへの投資に乗り気にはなりません。
そんな中Googleは、デザインプロセスを速くし、価値あるインサイトを提供する方法論を作り出しました。
必要最低限の機能を持った製品(MVP)のことは一旦忘れて、1週間以内にプロトタイプを作り出し、テストすることにフォーカスしてみましょう。
Googleデザインスプリントプロセスの概要
Googleデザインスプリントは、5段階のプロセスで構成されます。各段階のプロセスは実行するのにおよそ1日(8時間)かかり、5段階すべて実行するにはおよそ40時間かかります。
素晴らしいデザインプロセスでは、繰り返すこと(イテレーション)が重要です。実際には、最初のスプリントで修正案をつくり、そのあとに少なくとも2回のイテレーションを回すことが強く推奨されています。
また、自分のアイデアに期待していたほどの成長の兆し(トラクション)がなければ、前の段階に戻って繰り返すことも可能です。
Googleデザインスプリントは、以下の5段階です。
- 情報を共有する:Unpack
- スケッチする:Sketch
- 決断する:Decide
- プロトタイプを作成する: Prototype
- テストする:Test
情報を共有し、スケッチし、決断して、プロトタイプをしたのち、テストをする。これが、Googleデザインスプリントの5段階です。
それぞれ1つずつ見ていきましょう。
情報を共有する:Unpack
Googleのスプリントプロセスは、個人よりもチームで進めるように作られています。つまり、メンバー全員で同じ目標に向かって進んでいく必要があります。
理想のチームは、あらゆる職務や地位の代表者が参加するチームです。たとえばスポンサー、シニアマネージャー、マーケター、デザイナー、デベロッパー、カスタマーサービス、営業、ユーザーサポートなど、さまざまな分野における代表のことを意味します。
アンパックの段階では、メンバーを集めてチーム内でその問題に関する情報を共有します。
こういったミーティングは、外部からのファシリテーターに進めてもらうのも効果的です。そうすれば、メンバー全員が問題に関して集中することができ、十分な理解を促すことができます。
アンパックでは次のことも含めると良いでしょう。
- なぜこの機会がビジネスにおいて重要なのかをまとめた、シニアマネージャーによるプレゼンテーション
- 競合分析
- 問題のデモンストレーションと、利用できるいくつかの解決策
- 提案した解決策の詳細な手順
- ユーザーのペルソナ
- 分析データ
- 成功に導くための指標 (役に立つビジネス指標。根拠のない指標は使用不可)
情報共有のプロセスでは、チーム全体を巻き込み、参加させることが大事です。個人や個々のグループだけで進めていかないようにしましょう。
全員が共通認識をもつことが目的で、それはメンバー全員が参加することによってのみ保証されます。
スケッチする:Sketch
メンバー全員が共通認識をもつことができたら、チームをいくつかに分け、解決策の考案に取りかかります。スケッチは個々の作業です。
CEOを含めたメンバー全員で、問題に対しての具体的な解決案を提案するべく取り組みます。
スケッチは、紙で作業すると良いでしょう。理由は、以下の2つです。
- 素早く作業でき、変更箇所が見つかればすぐに変えられる
- メンバー全員がワイヤーフレーム作成ツールを使いこなせるわけではない
複雑で、大規模な問題解決を取り扱う場合があります。そのときは、問題を丸ごと解決しようとするのではなく、問題を「管理できる単位」に分けてメンバーに割り振ると良いでしょう。
スケッチの目的は、できるだけ多くのアイデアを出すことです。
大きなチームであれば、アイデアもたくさん生まれます。1日の最後の1時間を使ってアイデアをまとめ、管理できる数までアイデアを減らしてから、次に進みましょう。
決断する:Decide
「決断する」という言葉の通り、どのアイデアを次のプロトタイプの段階へ持っていくかを決めます。
しかし、この段階には単に決断するという以上の意味があります。考案した解決策が、目的や能力、リソース、ユーザーなどと対立する可能性があるかを明らかにする段階でもあります。
まずは、障害が起こりそうな事柄を仮定し、リストアップしてみましょう。
- 予算
- ユーザー
- テクノロジーキャパシティ
- ビジネスドライブ
1つ1つのアイデアをレビューし、生まれてくる障害を見出します。そして、障害を解決できるアイデアを考えましょう。
レビューの際には目的を持って取り組まなくてはなりません。1つの素晴らしいアイデアだけをプロトタイプへ進めていくのか。または、トップ5を選んで、どのアイデアをユーザーが気にいるかを調査するのかなど、方法はさまざまです。
常にリストを整理して、うまくいかないと判断したアイデアは、早めの段階で削除していきましょう。
プロトタイプを作成するアイデアを決めたあとは、アイデアについてのストーリーボードを作ります。
ストーリーボードは、段階を踏むプロセスにおいて、ユーザーとのインタラクションを定めるものです。また、プロトタイプの仕様となります。
また、ユーザーストーリーを1つや2つでも定めておけば、仕様がより良くなるでしょう。
そして、最終日に行うUXテストの参加者をこの日に集めます。
プロトタイプを作成する:Prototype
ここからが肝心なところです。ユーザーが最終日にテストするプロトタイプを、1日で作り出します。
インタラクティブなプロトタイプを素早く作りあげるためのツールとして、Googleは、KeynoteとKeynotopiaにあるテンプレートの使用を推奨しています。
とはいえ、ツールの選択は自由です。ラピッドプロトタイピングのために、自分が十分使いこなせるツールを選択しましょう。
リサーチチームと協力してテストのスケジュールを最終決定し、インタビューの原稿を作ります。
テストする:Test
ご存知の通り、ユーザー体験を考えるときはユーザーの関与が必要不可欠です。
デザインスプリントの5日目では、最大20名(少なくとも6名)のユーザーを集め、プロトタイプを操作してもらいます。そして、1対1でユーザーを観察したり、意見を求めたりと共同で作業します。
どんな気付きがあったか、テストに関する全員がメモして記録しておくようにしましょう。
このメモを1日の終わりにまとめます。そうすることで、今後もイテレーションで回すべき点や改善点を決められます。
最後に
この方法論はGoogleによって試され、実証されたものではありますが、同時にアジャイル方法論を採用したまったく新しいコンセプトでもあります。
スプリントを5日以内に収めるまで、組織によっては何度か試行錯誤しなければならないかもしれませんが、それでも大丈夫です。
練習し、試行錯誤を重ねるにつれて、速いスプリントができるようになっていきます。
まとめ
Googleデザインスプリントを実行すれば、現在何ヶ月もかかっているプロセスが、短く効率の良いものになるでしょう。
すべてのデザインプロセスにおいて代用できるわけではないですが、素早くアイデアを作り出し、テストができます。
スプリントで作業する生産性の高いデザインチームは、よりビジネスの価値を創出し、大きな組織の中でも存在感を高めていくことでしょう。
参考文献
- Googleデザインスプリントで不安なことがある方は、ここに登録してGoogleのケーススタディのコピーを手に入れましょう: http://www.gv.com/sprint/。各ステージに取り入れられる、役に立つリソースが多く用意されています。
- Googleのリサーチ方法論はこちらのプロセスにも使えます。 http://www.gv.com/lib/the-gv-research-sprint-a-4-day-process-for-answering-important-startup-questions
- Fast Companyはこのプロセスのために、ストーリーボードを作るための最高のリソースを提供しています。 http://www.fastcodesign.com/1672917/the-8-steps-to-creating-a-great-storyboard
- スプリントのためのメトリクスをどう定義していいかわからない方は、Agile Marketingのこちらのアイデアをご覧ください。 http://www.agilemarketing.net/define-actionable-metrics/
- Googleスプリントメソッドについて役に立つほかの説明はこちら:http://www.agilemarketing.net/google-design-sprints/