デバイスのプラットフォームごとにユーザビリティのベストプラクティスがあるように、モバイルユーザビリティにもベストプラクティスがあります。ただしこのベストプラクティスは、ユーザーリサーチやユーザビリティテストの代用品ではありません。正しいデザインを考えるための「クイックスタート」として意図されたものです。ユーザービリティデザインに絶対的ルールはなく、ユーザーが中心になるようにデザインを決定するべきです。
Googleのモバイルチームは、Mobile App UX Principlesにおいて、モバイルアプリでユーザビリティを高めるための、ベストプラクティスのガイドラインを説明しています。これらのガイドラインは、モバイルアプリのユーザビリティを考えるうえでデザインの基礎となるものです。しかし、ユーザーが使いやすいものを見極めるためのユーザーリサーチやテストの代わりには決してなりません。
モバイルアプリにおけるユーザビリティのベストプラクティス
- コンテンツとすべての文章を読みやすくする必要があります。これは明るい日差しのせいで画面の文字が読みにくいような場合も含め、どんな状況でも行わなければなりません。フォントは小さくても11ポイント以上に設定して、統一しましょう。特に画面が明るい状態では、テキストと背景のコントラストが重要です。
- インターネットに繋がらない場合でも、コンテンツは利用可能でなければなりません。インターネット(3/4GとWi-Fiの両方)に接続できず、デバイスのコンテンツの一部が利用できないとしても、メインコンテンツは利用できるようにしてください。
- スペースとサイズを調節します。ユーザーが簡単にタップして操作できるようにしましょう。
- Androidアプリ - 目安サイズ48 dp
- iOSアプリ - 目安サイズ44 x 44ピクセル
- 通常のインターフェイスに含まれないようなマルチステップタスクは、モーダルビューで表示してください。
- アプリ内で最も重要なコールトゥアクション(CTA)ボタンは、目立つようにするか常に表示されるようにしましょう。
- 待ち時間が長いせいでユーザーが不満を持たないようにするため、画面上のコンテンツや遷移が素早く表示されるようにしましょう。
モバイルアプリのユーザビリティのためのフォームガイドライン
- フォームラベルは、フィールドの上に置くかフローティングラベルで作成して、ユーザーがフォームを入力する目的を確実に理解できるようにしましょう。
- フォームは、ユーザーのミス入力を避けるために、フィールドで必要な情報を伝えなければなりません。
- フォームはプロセスの最後ではなく、各フィールドが完了するたびに確認されるようにする必要があります。
- フォームは、最初のフィールドにカーソルが置かれ、適切な入力キーボードが表示された状態で開始してください。
- ユーザーがフォームの入力を完了したときに、下に隠れているCTAが自動的に上に移動してくるようにしましょう。
- 選択肢がリストで表示されるようなフォームでは、これらを縦に並べるのではなく、キーボードの上に水平になるように表示する必要があります。これにより、キーボードが表示されているとき、画面のスペースを有効活用することができます。
- 数値入力のフォームでは、入力時に数字のダイヤルパッドを表示しましょう。
- ユーザーが数量を調整する必要がある場合は、ステッパー(編注:「+」「-」と書いてあるボタン)が良いでしょう。これは買い物かご機能にも当てはまります。
- フォームと検索機能は、最大値と最小値を設定するスライダー・コントロールを表示しましょう。
- 日付/時刻入力を必要とするフォームでは、ユーザーが簡単に入力できるようにピッカー・コントロールを表示しましょう。
- カレンダー入力が必要なフォームでは、見やすいカレンダーを表示するように心がけてください。旅行/ホテルの予約アプリでは特に重要です。
- ユーザーがフォームを入力している間にアプリがクラッシュした場合は、入力されていたすべてのデータを自動回復し、クラッシュが発生したときの入力箇所にユーザーを導く必要があります。
モバイルユーザービリティの絶対にしてはいけない4つのこと
Googleはモバイルユーザビリティを考えるうえで、すべきことに加えてしてはいけないことも考えています。彼らはモバイルアプリ開発においてユーザーを困らせ、イライラさせる4つの分野を見つけ出しました。これにより、アプリとUXに関する全般的なクレームを驚くほど低下させられます。
- プラットフォーム間でUI要素をコピーしてはいけない:iOS、Android、Windowsのアプリをまったく同じ見た目にするのは良いことのように思えます。しかし、各プラットフォームにはそれぞれのルック・アンド・フィール(look and feel)が定義されているのです。これにより、ユーザーはそのプラットフォームならではの約束ごとを明確に思い描くことができます。異なるプラットフォームに似せてUIを変更するとプロセスが不明瞭になり、ユーザーにとっては利益になりません。
- 下線付きのURLリンクを使用してはいけない:下線付きのURLは、アプリとは異なるオンラインインタラクションの一部です。つまり、ブラウザを使ってアクセスしたWebサイトのインタラクションなのです。モバイルアプリはそのようには機能しません。モバイルアプリでは、ユーザは別のページへのリンクではなく、ボタンによって画面を変化させます。Googleもこの原則を踏まえて、次のように結論づけています。リンクをハードコーディングしてはいけない。リンクは手動で変更されるべきです。また、リンクはUXを低下させてしまいます。
- ユーザーをブラウザに導いてはいけない:ユーザーをアプリの中に留まらせて、他の場所に行かないようにしましょう。ユーザーをブラウザに送ってしまうとアプリに戻ってこない可能性がある上に、”不細工”なUXを提供することになってしまいます。オンラインのコンテンツにユーザーの注意を向けなければいけない場合は、アプリ内ブラウザを使用して配信しましょう。決してユーザーを別の場所に導いてはいけません。
- ダウンロード後にアプリストアですぐに評価を要求してはいけない:アプリケーションに良い評価がほしい場合は、ユーザーがアプリに慣れて、楽しんでもらうための時間をユーザーに与えなければなりません。アプリをインストールしたばかりのユーザーに評価を頼むのではなく、定期的なリピーターに評価をお願いする必要があります。彼らは確実にアプリに対して肯定的な内容を含んだ、高評価のレビューをするでしょう。
まとめ
モバイルアプリのユーザビリティは、他のプラットフォームのものとあまり大差ありません。ですので、上記のガイドラインに従えば、間違った方向に向かうことはないでしょう。しかし繰り返しになりますが、実際のユーザーリサーチやユーザビリティテストに代わるものではありません。各アプリのユーザーはユニークなので、自分のユーザーグループの好みを最優先で満たすべきでしょう。
参考文献:
Mobile App UXに関するGoogleの48ページにおよぶ記事はこちらで観覧できます。
https://storage.googleapis.com/think-emea/docs/article/Mobile_App_UX_Principles.pdf
モバイルアプリのユーザビリティテストについて知りたい方は、良質な参考文献のガイドがこちらで見れます。