UXリサーチャーが気をつけたい15の原則

Interaction Design Foundation

Interaction Design Foundationはグローバルにデザインレベルの向上を目指す、デンマーク発の非営利団体です。 。

この記事はInteraction Design Foundationからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

15 Guiding Principles for UX Researchers

多くのUXリサーチ初心者が抱いている共通の疑問や不安を解決するために、今回はUXリサーチ初心者にとって、ガイドブックとなるような疑問や不安の解決策を紹介していきます。もちろん今回の記事はUXリサーチの完全ガイドではありませんが、UXに関して常に絶えない疑問を解決するための手立てとして役立ててください。

1. 複数のツールを組み合わせる

よいリサーチャーは、単一のツールだけを使うのではなく、複数の技法やツールを持っていて、それらを組み合わせます。こうすることで、リサーチの課題を見つけやすくなり、すぐに改善を行えるようになります。

2. 「間違っている」とわかりやすくなる

リサーチを通してなにか間違いを見つけたときこそが、リサーチが手っ取り早く役に立つときです。たとえば、新しい機能を導入したとき、最初の5人のユーザーが使い勝手が悪いと感じたら、恐らくその機能には問題があるといえるでしょう。しかし、100人のユーザーが使ってなんのコメントも出ないからと言って、問題がないとも言えません。

3. すべてのリサーチにおける適切なサンプルサイズはない

残念なことに、すべてのリサーチに適応することのできる共通のサンプルサイズはありません。そのため、リサーチごとにリスクを加味して計算し、リサーチのタイプに応じてサンプルサイズを決める必要があるのです。すべてのリサーチに対して同じサンプルサイズを適用することは、不適切なリサーチ方法であると言えるでしょう。

4. 1人だけのユーザーに対してテストを行うことは的外れではない

たとえば、新しく文書処理ソフトを作成している際、はじめてのユーザーと一緒にドキュメントを保存するテストを行ったものの、処理が実行できなかったとします。この場合、さらに何人のユーザーでこの機能をテストする必要があるでしょうか? この機能に問題があるのはわかったので必要ないですよね。

このように、テストにおいて共通して発生する問題は、たった1人のユーザーで明らかにすることができるのです。

製作者/著作権保有者:Luca Mascaro氏。著作権条項およびライセンス:CC BY-SA 2.0

5. 精度向上のためにサンプルサイズを拡大する

サンプルサイズが大きくなるほど、データもより正確になる傾向があります。

一般的な経験則では、正確さを2倍にするためにはサンプルサイズを4倍に拡大するべき、と言われています。

6. ランダム化によりリサーチデザインの欠陥を克服できる

質問や回答、プロセスの流れなどの順序を入れ替えられるのであれば、入れ替えましょう。プロセスがランダムであるほど、一貫性のある結果を得られて、リサーチデザインの欠陥を最小化することが可能となりやすいです。

7. リサーチ結果は誰のものでもない

収集しているすべてのデータは、あなたのものでもチームのものでもなく、企業のものなのです。より多くのユーザー体験に関するリサーチを会社に提供することで、会社はユーザーニーズを最優先事項として、焦点を当てて取り扱うようになります。ビジネスにおいて、自分本位にUXのサイロ化を進めてはいけません。データをきちんと然るべきところへ行き渡らせ、その恩恵に授かりましょう。

8. 質問の点数評価はそこまで重要ではない

Xの点数スケールの方がYの点数スケールよりも正確であるとか、中立性の高い評価をすべきかどうかなど、多くの議論があると思います。しかしこれらの議論には、5分も時間をかければ十分です。そのような議論をする時間があるなら、一刻も早くスケールを決めてリサーチをしてしまったほうがよっぽど有益です。

9. 被験者はペルソナを考慮した人物を選ぶ

誰もが製品のユーザーやユーザー候補であるわけではありません。ターゲット市場に適合するペルソナを設定し、それに合わせた人物を募集しましょう。こうすることで、実際のターゲットとなるユーザーに対して、より正確な結果を得られることができます。世の中すべての人々を常に満足させることは不可能であり、UXのプロでさえも挑戦しないでしょう。

製作者/著作権保有者:Nicolas Nova氏。著作権条項およびライセンス:CC BY 2.0

10. 人が言うこと vs 人がやること

ユーザーが言っていることとやっていることとでは、やっていることの方を重視するべきだとよく言われていますが、この意見にはあまり賛同できません。どちらもリサーチすべきことであり、2つの相違点の理由を明らかにすることが大切です。

ユーザーがやりたいと言っていることを本当に実行できている場合があれば、そうでない場合もあります。どんな時にそれぞれの条件が真となるかを知ることが、UXには重要です。

11. ツールキットを常に改良する

時が経過するほどに、新しいアイデアやメソッドが誕生してきます。これらを試すことなく破棄してはなりません。たとえ取るに足らないものだとしても、実際に取るに足らないと分かる方が、手も付けずにつまらないものだと思うだけよりも学びがあります。多くの場合、どんなに最悪なツールでも正確に用いることで洞察力をそれなりに深めてくれます。

12. ユーサビリティに気をつける

ユーザビリティを測定するのは不可能です。私たちが検証できるのは、その対象が使用できない(Usableでない)ときです。これらの検証は流動的で、製品ごと、ユーザーごと、そしてUXのリサーチャーごとに、手法は同じではありません。しかしそれもよいでしょう。問題を発見するのはリサーチという活動の一部だからです。しかし問題点を発見することより、問題が全くないことを示すことの方がよっぽど困難です。

13. レポートは簡潔に

「リサーチ手法は斬新で驚くべきもので、その結果も感激するものだった」

このようなこともあるでしょう。しかしそれらを網羅するような本を書くべきではありません。組織の中で広く価値のあるリサーチとしたいならば、最小限のレポートに収めましょう。しかしリサーチ環境で自分の学習用に使うツールまで、短く適当なものにならないようにしましょう。また商業出版の意図があるリサーチならば、本を書くことも考慮したものにしましょう。

14. 観察者はそれぞれ違う視点から観察することに注意

警察が目撃者の証言を、ある程度懐疑的な視点から扱うのには理由があります。人は自分の見ようとするものを見ていて、誰もが完全に同じように物事を見ていることはめったにありません。これは大々的な問題を示唆するのではなく、実際には観察者を追加することで、全体としてリサーチの成功度合いが向上するだろうということを意味します。もしそれぞれの異なる問題点をすべて見出すことができれば、その方がユーザーにもよいでしょう(もちろん、そのすべての問題を解消するつもりがあればですが)。

また観察行動によって、自分が得たい結果が変わる可能性があることも忘れてはいけません。

15. 特定人物の崇拝は禁物

世の中にはUXの達人と呼ばれる人が山ほど存在します。今は最先端の人物として崇められていても、明日には蔑みの目で見られる人もいるでしょうし、その逆もあるでしょう。UXのリサーチャーとなる上で、「正しい」方法は一つもありません。UXのアイデアに付属している人名は無視してしまい、基盤となるアイディアの方に着目しましょう。あらゆる事柄を、健全なる批判と関心の精神から取り扱うようにしましょう。


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