調査業務というものは、デザインの現場などで不当に扱われがちです(特にマネジメントサイドから)。
調査は貴重な予算の無駄使いで、デザインのようなもっと価値があるものに費やすべきだと考えてしまいがちです。しかし、優れたユーザビリティをデザインしたいなら、調査を行うことは、ほかの要素と同じように重要です。
優れた調査を行うことで、ターゲット市場のニーズに対応し、ユーザーが必要としているものを提供する優れたデザインを生み出すことができます。適切な調査がないと、デザイナーはプロジェクトの目標が達成されているのか、正しいユーザー層のためにデザインができているのかを判断することができません。
ユーザー体験の調査に投資される1ドルが、100ドル分の利益をもたらすこともあるのです。
UXデザイナーの中には、デザインをするうえで、調査に価値を見い出せない人がいます。しかし私はそのような人に向けて、調査がプロジェクトの成功にとってどれほど重要であるかを説得できる自信があります。私が働いているCodalでは、調査は適切に行わなければ意味がなく、できないなら行う必要はまったくないと考えられています。
UXやデザインにはいくつもの調査方法がありますが、この記事では特に定量的調査と定性的調査に焦点を当てて、なぜその両方が必要なのか、またはどちらか片方をより必要だと考えるのかを説明します。
UXにおける定性的調査
多くのUXデザイナーは定量的調査と定性的調査の違いが、質問が自由回答かどうかだと思い込んでいます。しかし、この区別では完全に理解することはできません。
定性的調査は主に、サンプルがなぜタスクを実行するのか、どのようにタスクを実行するのかというような、行動の性質を表現するのに使われます。定性的データでは、ある重要な事実が何であるか、なぜ、どのように起きたのかについてデータを集めます。
デプスインタビュー
定性的データを取得するための方法はいくつかあります。 UXデザインにおいてもっとも有名な方法は、デプスインタビュー、アンケート、そしてフォーカスグループです。
Codalでは、インタビューがもっとも価値があると考えられています。随時質問ができ、ユーザーの思考や意見、不満を直に理解することができるためです。
そのような思考や意見の理由を知ることで、最高のユーザー体験を提供するデザインに必要な、インサイトを手に入れることができます。この種のデータ収集の欠点の1つは、非常に時間がかかるので、多くの被験者でテストすることが難しいことです。
タスク分析とコンテキストインタビュー
デザイン中のプラットフォームについて、被験者に簡単なテストを依頼することもあります。
ユニークだけど使いやすいデザインを作成するために、ユーザーが実行するタスクを理解することはとても重要です。被験者にいくつかのタスクを達成するように依頼してその過程を観察することを、タスク分析と呼びます。タスク分析からは、非常に有用なデータを収集できます。
コンテキストインタビューはタスク分析の一種で、あらかじめ用意されてた質問や目標によって、プロセスを実行する際のより明確な状況を調べるものです。タスク分析やコンテキストインタビューは、目標が最初から明確であるときに効果があります。
アンケート
以下のスクリーンショットは、Codalがあるプロジェクトで行ったアンケートの例です。私たちのUXチームは、消費者がなぜカスタマイズ品を注文する一方で、小売店に足を運んで「既製品」を購入するのか、という理由を突き止めようとしていました。
私たちは、できるだけ多くのデータを収集するために、アンケートを送ってそのデータを分析したあとに、一部の参加者と対面インタビューの日程を調整しました。
あなたがデザインしているプラットフォームを、人々がなぜ使用しているのかを理解するためには、定性的なUX調査方法が非常に重要です。
また、今まで考えたことのない新しい問題を理解するのにも役に立ちます。フォーカスグループやアンケートも素晴らしい手段ですが、実際にユーザーと対面しているときが、もっとも多くのインサイトを獲得することができます。
定量的調査
定量的調査と定性的調査は、母集団をできるだけ優れた方法で表現する、という同じ目標を持っています。UXデザインにおいても両者の目標は同じですが、目標を達成する方法が異なります。
定量的調査方法は、主に、どのくらいの人が質問に答えるか、またはどのくらい多くの種類の質問に答えるかに焦点があてられます。多くの場合、十分に大きいサンプルに質問することによって、定性的調査を定量的調査に変えることが可能です。
これら2つの研究形態のもっとも重要な違いは、データの信頼性と関係しています。定性的調査は、他の手段では滅多に得られないインサイトを獲得できる可能性がありますが、調査を信頼できる形で実施するのは難しいです。
つまり定性的調査では、テストした特定のサンプルの中で、確実な深いインサイトを見つけられるかもしれませんが、テストを何回も実行するか、非常に大きなサンプルからデータを取得するかしない限り、テストでサンプリングされた母集団全体に、定性的調査の結果を当てはめることはほとんど不可能です。
定性的データと定量的データは、本質的に双方向に結ばれています。定性的データは定量的な方法に適用されなければほぼ無意味であり、定量的データは定性的データなしで存在できません。
使える定量的データを収集するために、私たちのUXチームは通常多くの異なる方法から得た結果を、より大きな結果のプールに集約して、それぞれの結果を比較検討し、ターゲット層の正確な数値を構築します。
私たちのチームでは、カードソート、オンラインでのユーザビリティテスト、大量のサンプルデータを集めるためのアンケートなど、複数の手段を用いることが多いです。
定量的と定性的調査:同じプロセスの中の2側面
一般的なユーザーの実際の行動を表すデータを十分に得るためには、定性的データと定量的データの両方を組み合わせる必要があります。
また、十分なサンプルサイズを収集することも重要です。でなければ、実際のユーザーに匹敵するデータを集められていない可能性もあります。 定性的調査の3つのインタビューは直観的に実行できるかもしれませんが、それだけでは正確な情報を収集することはできません。
定性的なUX調査方法でよく行われる調査を利用すれば、定量的調査の土台を作ることができるでしょう。定性的調査によって行為の理由と方法を理解することが重要なのと同じように、定量的調査によって数や量を調べることも重要なのです。ユーザー体験の調査する際には、この2つを相互補完的に実行する必要があります。