ベンチマーク調査結果:ECサイトのUXに影響与える要因とは?

Jeff Sauro

Jeff Sauro氏は、統計とユーサビリティに関するコンサルティング会社である、MeasuringU社の創設者であり、1,000社以上の顧客を抱えています。彼は、統計やUXに関する、20ケ以上の文献と5つの本を執筆しています。

この記事はMeasuring Uからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

UX AND NPS BENCHMARKS FOR RETAIL WEBSITES

オンラインショッピングの売上が増えています。2016年のクリスマス商戦では、2か月間で1,000億ドル相当の製品が販売されました。

ネット販売の普及によって、消費者は簡単に製品の最低価格を見つけることができるようになりました。

もし消費者がWebサイトで必要な情報が見つからなかったり、簡単に製品が購入できなかったり、ブランドや情報が信頼できなかったりする場合、消費者は別のサイトに移ってしまうでしょう。場合によっては友人や同僚にそのサイトの不満を言い広めるかもしれません。

ECサイトの事業者にとって、Webサイトで得られる体験の質が重要な差別化の要因になっています。そのため、ユーザー体験のベンチマークを調査し、得られた知見に基づいてWebサイトを改善していくことの重要性が増しているのです。

ECサイト体験のベンチマーク

ECサイトでのユーザー体験の品質を理解するために、以下の有名な10社の小売販売サイトでUXのベンチマーク指標を集めました。

  • Amazon
  • Bed Bath & Beyond
  • Best Buy
  • Etsy
  • Nordstrom
  • Overstock.com
  • Staples
  • Target
  • Walgreens
  • Walmart

優れたベンチマークがあれば、競合のWebサイトと比べてどこが劣っているのかを見つけることができます。また、デザインの変更が販売量の増加にどの程度寄与するのか考える上で、ベンチマーク調査は必要なステップです。調査を行うことで、結果的にWebサイトで収益を増加させることにつながります。

WebサイトUXのベンチマークは、図1で示すように段階的なアプローチで構成されています。

図1:UXベンチマーク調査で収集されたデータの階層と関係

図1は2つのことを示しています。第一に、Webサイト全体への態度とユーザーが行うタスクの指標には強い相関があることです。第二に、Webサイトへの態度は、ブランディングやこれまでの経験などの、タスクを行う体験とは異なる変数の影響を受けます。

図1の3つの階層におけるすべてのデータを収集することが重要です。私達が提供するベンチマークレポートはWebサイトへの態度について調査し、ベンチマーク調査やユーザビリティテストに取り組む小売業者にとって有益な比較指標を提供しています。

調査

935人の参加者に、上記の10社のECサイトで2016年10月~11月内に行った体験を思い浮かべてもらい、SUPR-QNet Promoter Scoreを含む)の8つの項目に回答してもらいました。また参加者には、ショッピングカート、製品のフィルタリング、レビューなどのECサイトで購買につながった機能についても思い浮かべてもらいました。

調査結果の詳細はレポートでご覧頂けます。この記事では、結果で注目するべき部分を説明していきます。

総合的なユーザー体験の品質:SUPR-Q

SUPR-Qは、Webサイトでのユーザー体験の品質についての標準化された指標で、Webサイトへの態度(図1の外層)を測定するのに適しています。200のWebサイトから得たデータベースに基づいているので、スコアをパーセント値で順位づけて、ほかのWebサイトとの比較結果を示すことができます。 SUPR-Qは、詳細なスコアだけでなく、信頼性、ユーザビリティ、外観、ロイヤリティの項目に関する総合的なスコアも提供します。

今回調査したECサイトは、業界平均の78%と比べると、ほとんどの分野において高く評価されています。 2013年に、Amazonは調査した企業のなかでトップの99%を獲得しました。Amazonがオンライン小売業界を独占している状態を考えると、驚くべき結果ではないでしょう。一方で、WalmartはSUPR-Qのスコアがもっとも低い71%でした。

信頼性

ユーザーがWebサイト上の情報やブランドを信頼していないことは、購買する可能性やサイトを他人にすすめる可能性に悪影響を及ぼします。Amazonは、信頼性において最高値を示しました。Targetは総合的なSUPR-Qのスコアが低いにもかかわらず、信頼性に関してはAmazonと同等のスコアがあり、大型店舗の小売業者には一般的に高い信頼性があることが伺えます。

Amazonはすべてのスコアで高い評価を得ましたが、その中でもっとも低いスコアを記録したのは信頼性でした。調査の参加者からは、レビューが信頼できないことや、外部の小売業者や個人の売り手との取引が難しいことが挙げられました。 これについて、2人の参加者が次のような発言をしています。

「いくつかのレビューは信頼できません」

「外部の売り手との取引では、売り手ごとに得られる体験に一貫性がないため、難しいことがあります」

信頼性のスコアが2番目に低かったEtsyについても、同じようなコメントが挙げられました。

「売り手が違うと、製品の品質がわかりません」

「売り手の中には取引が難しい人がいます」

ユーザビリティ

ユーザビリティでも、Amazonは98%というもっとも高いスコアを示しました。SUPR-Qのユーザビリティのスコアから、SUSの点数を正確に打ち出すことができます。Amazonの98%は、SUSで85点になります。Best BuyとNordstromは、72%(SUSでは77点)でユーザビリティのスコアで最低値でした。

編注:SUS(システムユーザビリティスケール:System Usability Scale )とは、ユーザビリティを測定する指標で、平均点数は68点。

外観

Webサイトの視覚的な魅力は、ブランドに対する態度に影響を与えます。Webサイトのユーザビリティが見た目の良さに影響することが証明されていることを踏まえると、ユーザビリティで高評価を得ているAmazonとEtsyが、外観においてももっとも高い評価を得ていることは驚くべきことではありません。Bed Bath and Beyondは、外観に関する評価がもっとも低い業者の1つでした。

「Bed Bath and Beyondのデザインは乱雑です」

「Bed Bath and Beyondのデザインには魅力がまったくありません」

ロイヤリティ・NPS

Net Promoter Score(NPS)は、ロイヤリティに関する有名な指標です。10社のNPSの平均は10%でした。Amazonは67%で他社を大きく上回り、次に44%でEtsyが続きました。Walmartは、推奨する人よりも中傷する人が多く、NPSが-35%ともっとも低くなりました。ロイヤリティは過去の経験の影響を強く受けます。そのため参加者はAmazonでの経験が豊富である一方、Walmartでの経験がもっとも少ない傾向にあると言えるでしょう(このサンプルの詳細はレポートに掲載されています)。

閲覧と購入

一般的に、ユーザーは購入するために商品を探しています。古典的なセールスファネルを用いて購買プロセスを考えると、購買活動は、閲覧・絞り込み・購入に分解できます。

Webサイトにおいて、ユーザーの66%が閲覧だけをしていて、実際に購買した人は17%でした。この数値は、2013年の調査結果から変わっていません。つまり、ECサイトのユーザーは購買活動の4倍も閲覧に時間をかけているのです。この統計結果は、忙しい休暇商戦の間でも普段の購買でも変わることがありません。

また、絞り込み段階を深堀りすると、消費者の7%が売れ筋やバーゲン品を調べ、3%が実店舗の在庫状況も踏まえてすべての商品や価格を比較し、6%がWalgreensとWalmartにおいて薬剤処方を管理していることがわかりました。

UXの品質に関わる主な要因

SUPR-Qを使えば、Webサイトで得られるユーザー体験全体(広い意味でのUXの品質評価)について幅広く測定することができます。しかし、SUPR-Qは、多くの標準化された評価指標と同様に、サイトの診断に用いるためのものではありません。体験におけるどういった要素がSUPR-Qのスコアに影響するのかを突き止めるために、ECサイトの細かな「構成要素」について、主要因分析を実施しました。

参加者は、買い物や購買に関する19の「構成要素」について、5段階のリッカート尺度と7段階のブランド態度についての尺度に回答しました。その結果、19項目のうち9つがSUPR-Qを決める主要因であり、スコア変動の74%を説明しています。9つの主要因と19項目は以下の通りです。それぞれのWebサイトで各要素がどのようにスコア付けされたかについては、レポートをご覧ください

主要因の構成要素

  • ブランドへの態度、好感度
  • カートの見つけやすさ、使いやすさ
  • 出荷オプションの単純さ、わかりやすさ
  • 製品の見つけやすさ
  • 支払で個人情報を使用する上での信頼性
  • イメージ画像と名称で、製品を区別するのがわかりやすいか
  • 製品仕様書の見やすさ、カスタマイズのしやすさ
  • 製品がわかりやすい順序で並んでいるか
  • Webサイトが製品の価値をもっとも伝えているか

そのほかの構成要素

  • 購買情報の入力しやすさ
  • 正確に発注されていることを確認できるか
  • レジでのプロセスが全体を通して理解できるか
  • 購入の総額と内容をわかりやすく確認できるか
  • ニーズに応じて簡単に分類やフィルタリングができるか
  • 製品ごとの価格表示のわかりやすさ
  • 優れた製品を販売しているか
  • おすすめ商品や関連商品は役に立つか
  • 製品の比較が簡単に行えるか
  • 製品のレビューと評価が簡単に見つかるか
  • 製品のレビューと評価が役に立つか

図2:ECサイトのユーザー体験の主要因(SUPR-Q)

図2は、要因ごとのSUPR-Qスコアへの影響度を示しています。たとえば、「カートの見つけやすさ(Easy to find cart)」はSUPR-Qスコアの10%を決定づけていて「製品仕様の使いやすさ」の2倍影響力があります。

26%を占める「原因不明」は、9項目では説明されていない側面と、データを集める際に避けられない変動性や測定誤差を反映しています。しかし、わずか9項目で要因の74%を説明できたことは、行動科学において優れた結果です。また、SUPR-Qの8項目から、ネット購買体験の効果を突き止められることも示しています。

Webサイトによる主要因

また主要因調査は、それぞれのWebサイトの長所と短所を特定するためにも行いました。すべての要因は、レポートを参照してください。Webサイトの調査結果の一部は次のとおりです。

Nordstromは、Webサイトで簡単に製品を比較できないという弱点が見受けられ、これがSUPR-Qのスコアに著しく悪影響を与えています。回答者からのコメントもこの事実を反映しています。

「製品と価格を並べて比較することができません」

「カテゴリのどこにいるかわかりにくいです」

Staplesでは、回答者はほかのWebサイトより商品が見つけにくいと感じていました。回答者のコメントは製品が見つけにくい理由を示唆しています。

「広告が多すぎます」

「『今週の特売品』と『売れ筋商品』が閲覧者の気を散らしてしまい、サイトがちらかって見えます」

最後にWalmartは、「製品がわかりやすい順序で並んでいるか」という要因によって評価を落としていて、以下のような回答を受けています。

「アイテムを並べて比較するのが難しいです」

「カテゴリが整理されておらず、特定のアイテムを閲覧するのが難しいです」


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