検索はWebデザインの重要な要素であるにもかかわらず、ユーザビリティが悪いことがよくあります。このような使いにくい検索が及ぼす影響を認識することで、経済的な損失を防ぐことができるでしょう。
お客様が実際に店舗へ出向いたとき、スタッフが把握していない商品について尋ねたとしましょう。スタッフは肩をすくめて、商品がないことに関して謝罪するだけでしょう(もしくはそれすらしないかもしれません)。お客様はその店舗に不満を抱き、代わりに近くにある競合店舗へ向かうでしょう。
あなたがこの架空のビジネスのオーナーだとしたら、こんな対応をするスタッフには嫌気が差すでしょう。スタッフはお客様の役に立つ気がなく、お客様との関係を持ち直そうとすらしていません。そして、多くのWebサイトやアプリはこれと同じようなことをしています。
訪問者が「結果が見つかりません」というなんの役にも立たない画面に困惑する事態は、ユーザーテストを行うときに遭遇するもっとも一般的な問題のひとつです。この重要な問題を多くのチームが重視していないことに、私は非常に驚いています。
検索機能のあるサイトをデザインする場合、「結果が見つかりません」というシナリオもよく考える必要があります。不測の事態が起こったとき、ユーザーにただ謝罪する以上のものを提供する必要があります。
良い検索のケースを作る
大規模なサイトでは、訪問者には文字通り何千ものコンテンツの選択肢があります。特にオンライン販売サイトでは、ユーザーが特定の製品を見つけられるかどうかが、直接利益に大きく影響する可能性があります。
- KissMetricsの調査によると、40%の人々が特定の製品をネット上で探す際にテキスト検索の使用を希望していると答えています。
- DEMACメディアによるベンチマーク報告では、サイト検索を利用した買い物客はコンバージョン率が216%上昇していることが分かりました。
サイト分析を簡潔にチェックすることで、デザイナーは何人が検索しているのか、またどれだけの人が「結果が見つかりません」という表示に遭遇しているかを確認することができます。これは、クオリティの低い検索に対してどれだけの利益を失っているかを特定するのに役立ちます。
優秀なデザイナーは、ユーザーエラーをどのように扱うかを注意深く考えます。大抵は登録や決済、登録画面についてではありますが、フォームの最適化全般について書かれた書籍もあります。検索は他の種類のフォームと同じくらいの重要度で取り扱われるべきです。デザインプロセスでは、特殊なケースのシナリオやエラーへの準備に努力が必要です。
より良い検索経験をデザインする際に、いくつかのガイドラインがあります。
ステップ1「予防」:まず検索が失敗に終わらないようにする
ステップ2「リカバリー」:失敗が起こったら、ユーザーが戻ってこられるように手伝う
ステップ3「代替案」:エラーをチャンスに変える
ステップ1:予防
エラーを処理する最善の方法は、最初にエラーが発生しないようにすることです。
日本のポカヨケ(文字通り「失敗避け」)の原理は、私のお気に入りです。これは、エラーに対して安全なインターフェースをデザインすることを意味しています。この原理を検索に適応させると、「結果が見つかりません」の可能性を減らすために使える技術がたくさんあります。
検索サジェストの提示
ユーザーが入力する際、人気のある関連語を表示してユーザーの検索クエリを自動補完するようにしましょう。表示した関連キーワードのいずれかを選択すると、ユーザーは結果ページに直接移動します。
この機能は、時間を短縮させるだけでなく、スペルミスを防止します。そして何よりも、訪問者が適切な検索結果にたどり着けるよう誘導できます。
サジェストで特定のコンテンツや商品を宣伝する
サジェストに表示された検索クエリに加えて、いくつか特定の結果をプレビューすることもできます。
訪問者が何か特定の物を探しているなら、私たちはできるだけ早く提供したいものです。そのため、それらをすぐに表示させることで、余分なページを読み込まずに済みます。
役に立つ検索指示を与える
検索フィールドの周りに役に立つ指示や例をいくつか表示しましょう。指示によってコンテンツの特徴を強調し、より効果的な検索へとユーザーを導きます。
たとえば、雑誌を検索する場合、記事のキーワードや著者、または日付で検索するでしょう。前もって検索項目をヒントやツールチップとしてユーザーにわかりやすく表示することで、問題のある検索を防ぐことができます。
言語の違いや同義語への適応
人々の文化や地理的背景に応じて、同じ1つのものに数多くの異なる名前があります。極端な例を挙げると「drunk」という単語には2,985を超える同義語があります。
これらのバリエーションが検索クエリにどのような影響を与えるか考える必要があります。デザイナーは、重要なコンテンツテーマとカテゴリーの既に知られている別名を考慮します。オープンカードソート研究は、訪問者の情報を分類する方法を特定する際に役立ちます。
これらの分類は、コンテンツのメタデータに通知するために引き継がれます。メタデータは、コンテンツの内容を説明する構造情報です。メタデータはユーザーに直接公開されることはありませんが、ナビゲーションと検索に有効です。メタデータに数十、または数百ものコンテンツの代替タイトルを保存することができます。これらはサイト内検索で調べることができ、同じコンテンツをさまざまな検索クエリに変換することができます。
ステップ2:リカバリー
ポカヨケを考慮した検索を作成するために最善の努力を尽くしたにもかかわらず、検索結果に何も表示されないという可能性は常にあります。本当に結果が見つからないという場合、可能であればユーザーを元の位置に戻してあげるべきでしょう。
スペルミスを特定する
可能であれば、 サイトオーナーは検索結果ページに自動スペルチェックを追加すべきでしょう。自動スペルチェックの追加は、開発チームにとって大きな要求になるかもしれませんが。しかし、多くのコンテンツ管理システムは、より使いやすくするために拡張機能を提供しています。
ユーザーの検索クエリにスペルミスがあるのが明らかな場合は、すぐに正しいスペルでの検索結果を表示する必要があります。これにより、少し時間が節約されてユーザーのミスを解消することができます。ユーザーが求める検索結果へと導くことができるのです。
有益な提案をする
良いスペルチェック機能がなくても、ユーザーフレンドリーな指示を表示することがユーザーにとって素晴らしいスタートになります。表示する結果がないため、ユーザーが次にしたいことについてわかりやすい指示を表示するためのスペースが十分にあります。
たとえば以下のようなアドバイスはどうでしょう
- スペルを確認してください。
- もう少しシンプルで短い単語で検索してください。
- もう少し具体的でないものを検索してください。
- そのコンテンツがどこで閲覧できるかを教えてください。
わかりやすくフレンドリーな言葉を使用することが重要です。とりわけ、これらのようなアドバイスを表示しなくてはならないという失敗の責任が、ユーザーではなく私たちに課されていることを認識する必要があります。ユーザーが望むものを提供できなかったのは、ユーザーのせいではありません。役に立つエラーコピーを書くことは新しいアイデアではありませんが、確実に重要で忘れがちです。
ステップ3:代替案
ここまで、エラーを防止した検索の作成に全力を尽くし、ユーザーを元の位置に戻す対策も行ってきました。
しかし、問題は検索ではなく私たちのコンテンツにあったとしたらどうでしょう。諦めてしまいますか? いいえ、問題をチャンスに変える機会なのです。
「結果が見つかりません」ページのもうひとつの重要な使い道は、ユーザーから望んでいる行動を引き出すことです。
似ているものを提案する
ユーザーの望むものがない場合でも、まだほかに興味のあるものがあるかもしれません。ほかの人気商品や記事、または検索クエリを提案することで、検索に失敗した後にユーザーの離脱を防ぐことができます。
少なくとも、ユーザーの注意を引くことができるかもしれません。また、本来であれば探していなかった何かを発見することができるかもしれません。
ユーザーに相談相手を提供する
オンラインでユーザーの相談相手になる方法はないかもしれませんが、諦める必要はありません。企業は引き続きユーザーをオフラインでサポートすることができるでしょう。
本当に役に立つことが良ければ、メールアドレス、電話番号、またはメッセンジャー機能などを提供することもできます。ユーザーと直接話すことで、ユーザーの望むものを理解し、解決方法を見つけられる可能性があります。もしも企業が何もしなければ、恐らくコンテンツとの溝は深まるでしょう。
連絡先をすでにサイトのフッターなどほかの場所に記載していたとしても、訪問者はそこを探さないかもしれません。「結果が見つかりません」ページは、適切な場合においては、連絡先を目立たせて表示するのに理想的な場所です。
コンテンツが利用可能になったときにユーザーにお知らせする
ユーザーが検索したものが、今は存在していない可能性もあります。しかし、これから公開される可能性もあります。
すべての組織で機能するわけではありませんが、検索しているものが利用可能になったときにユーザーにお知らせすることは、ユーザーを取り戻すチャンスになります。
多くの不動産のWebサイトでは、この技術を最大限に活用しています。新しい地域の物件はしばしば購入可能になります。ある週においては「結果が見つかりませんでした」というページであっても、次の週にはコンテンツが詰まっている可能性があります。
Gumtreeに、もう一つ素晴らしい例があります。彼らの求人情報はつねに変化しているので、今のところ結果がなくても、ユーザーのニーズに合うものがすぐに追加される可能性があります。検索アラートを設定できるようにすることで、ユーザーは検索状態を維持でき、あとで売り上げに繋げることができます。
ユーザーが不足しているコンテンツを投稿できるようにする
場合によっては、検索の答えを提供するのに最適な人物がユーザー自身である場合もあります。「結果が見つかりません」ページの場合、ユーザーが見つけられないコンテンツをユーザー自身で提供または提案する機会を与えることができるのです。
これは、ユーザーが作成したコンテンツが、Webサイトやアプリで重要な役割を果たす場合にもっとも効果的です。私は現在、listmakerという新しいアプリを開発中です。このアプリでは、ユーザーがトップ10のスタイルリストを作成して共有することができます。「結果が見つかりません」ページは、コンテンツ戦略において重要な役割を果たします。私たちは、失敗した検索についてユーザーを良い気分にさせて、このリストを作成する最初の人になるよう促します。
適切に使用された場合、「結果が見つかりません」ページ上でユーザーが作成したコンテンツが提出できることを宣伝すると、ユーザビリティの問題がエンゲージメントの機会に変えられる可能性があります。
分析を使用してコンテンツのギャップを特定する
ユーザーを直接サポートできない場合でも「結果が見つかりません」ページは、依然としてコンテンツを拡大する大きなチャンスを提供できます。
ほとんどの企業は、分析データを定期的に監視しています。検索クエリや結果を表示できなかった検索クエリの報告は、つねに分析データ結果に含まれている必要があります。ごくわずかな設定は必要ですが、Googleアナリティクスではサイト内検索の動作全般に関するレポートが提供されます。
人々が何を探しているのかを完全に分析することで、私たちは何が不足しているのかを特定することができます。コンテンツを検索している人の数を見るだけで、追加すべきページを検討することができます。
まとめ
もっとも良い顧客体験は、たとえユーザーが望んでいるそのものを与えることができなくても、あらゆる機会においてサポートをしてもらえることです。
私たちはデザイナーとして、ユーザーの行き止まりを防ぐためにできることは何でもしなければなりません。「結果が見つかりません」のページは、体験における成功を左右する瞬間であり、少しの努力が大きな価値を生み出します。
あなたはそのような特別な瞬間のために設計していることを認識し、ユーザーの役に立つよう心がけましょう。