ユーザー体験があらゆるWebサイトのデザインにとって不可欠であることに、疑いの余地はありません。
しかし、ユーザー体験が何よりも重要な業界があるとすれば、それはホテルを始めとしたサービス業です。
ホスピタリティとは要するに、顧客の期待に応え、顧客の期待を超えることであり、最初のタッチポイントから最後にいたるまで、顧客に優れた体験を提供し続けることです。
また、私たちが生きるデジタル時代において、ホテルのWebサイトは、ホテルが最初に提供する顧客体験の場であることが多いです。そのため、少なくともどのホテルも、直接予約の画面には力を注いでいます。ホテルのオーナーであれば、Webサイトでのユーザー体験はホテルでの顧客体験と同等に優れたものにしたいでしょう。
そのためには、まず初めに旅行者がWebサイトを訪れる理由を理解する必要があります。
旅行者の主な目的は何でしょうか?
この問いに対する答えがわかれば、その目的と合致した、ユーザーフレンドリーなWebサイトを作り、旅行者の期待に沿うことができるでしょう。
旅行者の行動を理解する
実際にコンバージョンに繋がる、考え抜かれたユーザー体験のフローを考え出すには、サービス業へのさらに深いインサイトと旅行者の行動分析が必要でしょう。
Googleが行った調査によれば、旅行者の約60%が、オンラインで旅行計画を立てる際に、ホテルのWebサイトではなく検索エンジンを最初に見ています。
つまり、ユーザーはホテルのWebサイトを訪問する時点で、既にある程度の調査を終えていて、さらに以下の4つの情報を求めているということです。
- ホテルのWebサイトと、Booking.comやExpedia.comなどのオンライン旅行代理店の価格を比較すること
- 追加のサービスや、より多くの写真やビデオなど、ホテルに関する詳細な情報を得ること
- 特定の日に、特別なキャンペーンやパッケージがないか確認すること
- 特別な要望や直接予約のために、ホテルに直接問い合わせること
一般的に、ホテルのWebサイトを訪れる顧客には目的があります。
そうしたニーズに応えるユーザー体験をデザインする具体的な方法を、以下に紹介します。
1. 予約フローを最適化してコンバージョンに繋げる
これは覚えておくべきモットーです。コンバージョン以外には、自分なりの美学や趣向、さらにはユーザーの好みでさえも重要ではありません。それではユーザー体験が機能しないのではないかと思うかもしれませんが、Webサイトのコンバージョンが良いのであれば、正しいデザインなのです。したがって、ホテルのWebサイトにおいて成功の法則はありません。
しかしながら、検討すべきいくつかのベストプラクティスが存在します。
第一に、予約画面はいつでも見える場所に設置し、より使いやすくデザイン性の低い、明確なものにしましょう。
次に、ユーザーがすぐに決断できるよう、客室や料金のタイプを簡単に比較できるようにする必要があります。料金の違いを明確にし、客室別に画像をたくさん掲載することで、ユーザーが決断しやすくしなければなりません。
最後に、支払い時に必要な項目は、可能な限り少なくすることも重要です。予約情報をわかりやすくまとめて提示し、数多くの調査やベストプラクティスに従って、支払いフォームを最適化しましょう。
2. モバイルを第一に考える
Webサイトをモバイルに対応させることの重要性は説明するまでもありません。しかし、モバイルを最優先に考えることのメリットを重視する必要があります。つまり、始めにモバイル画面向けにデザインし、その後、できる限り大きな画面に取り組みましょう。
ユーザーは外出先ですぐに決済や予約をしたいことが多いため、旅行業界においてモバイルファーストは特に重要です。つまり、最高の機能よりも最高のユーザビリティのためにデザインする必要があります。モバイルユーザーにもWebユーザーと同等の機能を提供できるに越したことはありませんが、難しい場合は完全なWebサイトを表示するリンクを貼るべきでしょう。
3. ビジュアルの重要性
ホテルの予約において、ユーザーは、客室やホテルの敷地、屋内、外観、施設などホテルのあらゆる場所の高画質な写真を求めています。ユーザーが予約前にさまざまなWebサイトを確認する理由の1つは、ホテルのもっとも正確な情報や、画質の高い写真や動画を見つけて、より確かな決断を行いたいからです。
欠点がないホテル体験の一環として、視覚的な魅力にあふれたWebサイトを作ることが重要です。しかし注意したいのは、大量の視覚的な情報が含まれるWebサイトはローディングに時間がかかるため、モバイルユーザーにとって大きな障壁となることです。Kissmetricsによれば、ローディングに3秒以上かかる場合、40%の人がそのサイトを立ち去ります。
よって、ローディング時間を短くするための手段はすべて実行するようにしましょう。
4. より優れた顧客体験を提供する
従来、ユーザー体験と顧客体験は密接に関係していると言われ、両者とも一方を欠いては存在できません。そのため、WebサイトのUXは、ホテル全体の顧客体験の質を左右します。よって、顧客との最初のタッチポイントであることが多いWebサイトから、格別の顧客サービスを提供しましょう。
これは、Booking.comやExpediaなどの情報収集サイトに対する、ホテルブランドのWebサイトにおける最大のメリットです。これらのオンライン旅行代理店では、ホテルのように、顧客1人ひとりに合わせたサービスをWebサイト上で提供することはできません。
まず初めにホテルと連絡を取るためのさまざまな方法(固定電話、Skype、問い合わせフォーム、ライブチャットなど)をWebサイトに掲載しましょう。
次に、ほかの販売チャネルでは利用できない、特別な追加サービスを提供しましょう。ウェルカムドリンクのような簡単なものでも構いません。オンラインで予約可能な有料サービスを少し割り引きして提供するのも良いでしょう。
これによって、ユーザーはホテルで直接予約を行う際、その違いを実感することができます。
5. 信用性と社会的証明
顧客の購入決定に影響するもっとも重要な要素は、社会的証明(Social Proof)です。社会的証明には、お客様の声、レビュー、ビデオブログ、SNSのフォロワーなど、さまざまな形があり、ホテルでの顧客も例外ではありません。TripAdvisorによれば、旅行者の77%は宿泊施設を予約する前にいつもレビューを参照しています。しかし、ここで注意が必要なのは、レビューの情報源です。
Webサイトの信用性を高め、顧客に社会的証明を示したいなら、信用できる有名な情報源からのレビューを示す必要があります。そして、それは間違いなくTripAdvisorです。
TripAdvisorのレビューをWebサイトのデザインに付け足すのはあまり美しくないかもしれませんが、ホームページや指定のランディングページにTripAdvisorのレビューのウィジェットを設置することで、自身のWebサイトにレビューを掲載するよりも説得力を持たせることができます。
結論
優れたホテルのWebサイトを構築することは、マーケティングとUXデザインという両面における課題です。コンバージョンのために最適化した、機能的でユーザーフレンドリーなWebサイトに仕上げるためには普通、何度も反復が必要です。よって、データに基づいて決定をして、常に実際のユーザーでテストを実施しましょう。