大学生が聞く:UXデザインについてリクルートに聞いてきた

UX MILK編集部

モノづくりのヒントになるような記事をお届けします。

この記事は、株式会社リクルートホールディングスの提供による連載記事の1話目です。

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UX MILK編集部でインターンをしている大学3年生の田中彩月です。

今回は、リクルートホールディングスさんがUXデザイナー志望の学生向けインターンシップ「WINTER INTERNSHIP 2018 UX DESIGNER」を開催すると聞き、リクルートのUXデザイナーさんにインタビューをしてきました。

「UXデザインってなに?」という初歩的な質問からいろいろ聞いてみたいと思います。

岩佐 浩徳
株式会社リクルートコミュニケーションズ 専門役員

IA,UXの全社横断組織にて、これまでに450サイト以上の立ちあげ支援、サイト改善に従事。現在はリクルートテクノロジーズにおいてサービスデザイン部門のシニアマネジャー、リクルートコミュニケーションズ専門役員としてUI/UX/ブランディングを担当。

紙の時代からおこなわれてきたUXデザイン

― まずは岩佐さんの仕事について教えてください。

リクルートグループのUX改善に横断的に関わっており、現在はリクルートジョブズのサービスデザインが主な仕事です。そこでは、タウンワークのアプリやスマートフォン向けページのUIレビューなどをしています。あとは、UXデザイナーの育成もですね。

― ありがとうございます。最初の質問なのですが、リクルートにはどのような事業がありますか?

リクルートにはさまざまな事業がありますが、消費者であるカスタマーと広告主であるクライアントを結びつけるというビジネスが多いです。2つの顧客のニーズに価値を加えてマッチングを創造しています。

リクルートではこれを図式化してリボンモデルと呼んでいます。

また、リクルートには「人生の転機」に関わる事業が多いです。就職して、結婚して、引っ越しして、車を買って、子供が生まれてという「人生の転機」ですね。こういった転機は、どのカスタマーにとっても初めての経験なので基礎知識や相場観がなく、みんなが困るポイントです。

この「人生の転機」に価値発揮をすることがインパクトとしては大きいので、これに関係した意思決定の支援というのを中心にやっています。

― リクルートにおけるUXデザインやユーザー体験はどのようなものですか?

ユーザーが不便だとか面倒くさいと感じていること、これをリクルートでは「不」を解消しユーザーの体験価値を変えていくこと、つまりユーザー体験を設計することだと思います。

リクルートは紙の時代から、中古車情報の「カーセンサー」や女性向け転職情報の「とらばーゆ」などの情報誌を扱ってきているのですが、当時はそもそもUXという言葉は存在しませんでした。

ですが、その頃から我々は「体験価値」や「社会価値」を起点としてサービスとして提供してきました。いまで言うユーザー体験のデザインを無意識的に行ったきたとも言えます。

― リクルートには昔からUXデザインの元になる考え方があったのですね。その頃のエピソードなどはありますか?

たとえば、先程の「カーセンサー」は1984年から続いているのですが、過去、中古車マーケットは課題を抱えていました。それは、実際には存在しないクルマを仕立ててメディアに掲載する"おとり広告"と呼ばれるものです。このような問題が中古車業界にマイナスイメージを与えて、体験価値を低くしていました。

2004年、リクルートはこの課題に真正面から向き合い、"おとり広告"を撲滅するという強い意志のもとで動き出しました。

自社の業績のみならずマーケット全体の売上に影響を及ぼす大きな決断でしたが、事業に携わるひとりひとりの中に、「正しいビジネスを、仕事を、誇りを持ってやりたい」という強い気持ちと勇気ある行動が、健全なマーケットの実現につながりました。

― 社会的にインパクトがある課題解決ですね。

ほかにも、1980年に創刊された女性向け転職情報を扱う「とらばーゆ」というサービスがあります。当時、女性は子供ができたら会社を辞めるのが一般的で、女性が「社会復帰をしたい」と思ってもなかなか戻れなかったんです。

とらばーゆは、この社会課題に向き合い「社会復帰をしたい女性でも働ける仕事を作ってください」と各企業に働きかけることで事業として成立しました。

また、一度東京などに出てから地方で働く「Uターン」「Iターン」という言葉がありますが、リクルートはこの言葉を就転職の様態に使いかえて、求人雑誌「UIビーイング」を作りました。これは東京に若い人や働き手が出てしまって、地方に全然戻ってこないという社会課題を、UIターンという言葉を作って「UIターンするっていうことはカッコいいことだよ」というメッセージを、より多くのカスタマーに受け取って考えてもらい、ムーヴメントを作っていくためにさまざまな施策をやっていました。

― 大きな社会課題を解決するというのは、リクルートだからできるUXデザインとも言えそうですね。

「イチゴ狩り」「鍵付き露天風呂」などもリクルートが流行らせたものですね。こういった流行りを作り出して体験価値とか社会通念を少しずつ変えにいくというをリクルートは得意としています。リクルートは事業会社なので、ある領域のユーザー課題に直接向きあって、大きなスケール感の中で、しっかりと解決するところまでUXデザイナーが一貫性を持って関わっているのは大きな強みです。

ユーザーの隠れた「不」を解消するUXデザイン

― リクルートにおけるUXデザインについてはわかってきたのですが、どのようなユーザー体験が大事なのかといった具体的なところがイメージできていないので聞いてみたいです。

まず、ユーザーの顕在化しているニーズを解消するというのもUXデザインであると思います。ただ我々が目指したいUXデザインは、ユーザーが直接的に求めていることではない体験を設計することです。

たとえば、リクルートのサービスに就活生向けの「リクナビ」というサービスがあります。就活をして会社に入ってキャリアを積んで、私くらいの年齢になってもこの仕事は適職なのかと悩むことがあります。もっと違う選択肢があって、もっと夢中になれる人生があったかもしれないと。この場合、人生の選択肢を知ることができずに、自分で選ぶことができないことが「不」だと思うのです。つまり、ユーザーが求めていることじゃない答え・体験っていうものも、答えなのかなって思っています。

― 潜在的にあるユーザーの課題の解決ということですか?

そういうことですね。あと、「不」を解決して、ユーザーが楽になるのは良いのですが、楽ばっかりで良いのかと疑問を持つことも必要だと思います。ただ、うまくやらないと説教くさくなるので難しいですが。

―実際にUXデザインをしていく上で意識していることや、大切にしていることはありますか?

リクルートのような事業規模だと、それこそ何千万人というユーザーにサービスを使っていただいています。そうすると、どうしても一人ひとりのユーザーを思い描くのが難しくなるんですよ。

ビジネスとして全体最適が優先度として高くなるのは受け入れなければならない。しかし、たった1人の意見でも、きちんと向き合うスタンスは忘れちゃダメだと思っていまして、そうしないとただのマスゲームになってしまうんですね。誰のなにを解決しようとしてるのかを常に意識して、向き合い続けるということを大切にしています。

リクルートだからできる将来を見据えたUXデザイン

― リクルートには既存事業から新規事業まであると思うのですが、その段階毎にUXデザインの仕方は違うのですか?

そうですね。社内では、そういった事業フェーズ毎のUXデザインのノウハウを体系化したスキームがいくつかあります。これはグロースハックやUXデザインと呼ばれるものをいかに組織立って再現性を高めつつ実行していくかという方法論を型化したものです。

UXデザインであったりグロースハックは、割りと我流でやっている人も多くて、属人化して成功確率が下がってしまうという問題があります。なので、しっかり型化して成果を底上げすることが目的です。

さまざまな事業フェーズのサービスがあり、フェーズに合わせて最適なUXの改善方法が型化されているのはリクルートならではだと思います。

― たとえば、リクナビのような大きなサービスの場合はどのようなことを考えているのですか?

日々、大小さまざまな課題を見つけて解決するということはしています。その上で、リクナビくらい大きなサービスの場合、いまあるサービスのその先の未来のことも考える必要があります。

たとえば、リクナビが扱う就活に関しては「キャリアについて学生が早い段階で考える環境ができていない」ということに我々の課題意識があります。大学3年生になっていきなりキャリアに向き合いなさいとか、自分がしたいことを見つけなさいとか言われても難しいと思うのです。大学の授業もあるし、インターンやアルバイトもあって忙しいのに、いきなり人生を俯瞰しろと言われても大変です。

― 確かに忙しいですし、キャリアについてどのように考えればいいかわからないです。

そうですよね。なので、本来はもっと前からキャリアについて考えておくべきなのですが、我々もあまりそういう機会を提供できていないという課題意識を持っています。いまだとインターンシップなどで社会との接点を提供できているのですが、もっと前からキャリアについて考える機会を提供すべきでないかと。

日本では受験に主眼が置かれていてキャリアについて考える機会が少ないのではないかと思っています。

そのため、リクナビはリクナビで成立させつつも、我々も微力ながらこのような社会課題に向き合う必要があると考えています。

― 聞いていると社会に影響があるような試みだと思うのですが、このような社会課題について実際にどのように取り組んでいるのですか?

社会課題をどのように認識して、課題に対して実際どうあるべきかということは、事業本部長から社長まで参加して考えます。リクナビであれば商売以前に「人材業」に向き合う上でなにを目指すのかをまずは話し合います。

そして、目指すべき位置に対して我々はいまどのような位置にあり、なにを言うべきなのかを検討します。次に、どういうアプローチをすべきなのかという「How」の話になってサービスにどう落とし込みましょうかと具体化されていきます。

― UXデザインというと新規事業のイメージが強かったのですが、既存事業のUXデザインも面白そうですね

そう思います。リクルートには、新規事業もたくさんあるのですが、既存事業に関わる人のほうが割合としては多いです。新規事業から成熟した事業まで、さまざまなUXデザインのノウハウがあるのはリクルートの魅力だと思います。

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株式会社リクルートホールディングスでは、学生を対象にしたインターンシップ「WINTER INTERNSHIP 2018 UX DESIGNER」を今冬開催予定です。

テーマは、「ユーザーの意思決定にどこまでの影響を与えられるか」。

14日間のチーム対抗コンペティション形式のインターンシップとなっており、UXデザインの業務フローを網羅的に実務レベルで体験できるそうです。リクルートのサービスが抱える数千万のユーザー、そして数億回のアクションに影響を与えるユーザー体験を設計することができます。

学年・専攻は不問なので、UXデザインに興味がある方は応募してみてはいかがでしょうか。

応募締切 2017年11月9日(木)
開催期間 2018年2月13日(火)~3月2日(金)
募集人数 15名程度
開催場所 株式会社リクルートホールディングス 本社 グラントウキョウサウスタワー 他


インターンシップの募集要項を見てみる
(締め切りました)

提供:株式会社リクルートホールディングス
企画制作:UX MILK編集部


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