ユーザビリティは、ユーザーをWebやモバイルのデザインに繋ぎとめる接着剤と言えます。優れたデザインのUIも、ユーザーがその操作方法を理解できなければ意味がありません。UIは便利で信頼でき、さらに魅力的でもある必要があります。
ユーザビリティに取り組むインセンティブとして、ユーザー体験の向上だけでは不十分なら、こう考えてみましょう。ユーザビリティを最適化すれば、利益が増加します。便利なWebやモバイルアプリを作れば、コンバージョン率の上昇とサポート費用の削減が見込め、デザインと開発のやり直しを減らすこともできるでしょう。
幸運なことに、ユーザビリティの最適化は可能です。ユーザビリティテストを実施することで、ユーザーがどのくらい簡単にUIを利用できるのか測定することができます。これらの調査はデザイン戦略の調整に役立ち、ユーザーに利益をもたして、ユーザーがWebサイトに再訪するようになり、そしてコンバージョンに繋がります。
今こそ画面の外側を考えるべきです。ユーザビリティテストを実行する際に調査目標があれば、それを基に必要な質問を考えることができます。どんな指標で調査すべきでしょうか? 定量的調査をすべきでしょうか、定性的調査をすべきでしょうか? 被験者は何人必要でしょうか?
答えはWebまたはモバイルの最終製品次第ですが、心配は要りません。この記事では、あらゆるユーザビリティの基礎について説明し、効果的なユーザビリティテストの目標を定義する方法を紹介します。
ユーザビリティテストとは
ユーザビリティテストとは、あるタスクを完了する難易度をUXリサーチの専門家が評価するものです。Webデザインにおけるユーザビリティ調査では、商品の購入やニュースレターの購読など、特定のタスクをユーザーが完了するのを観察したり意見を聴いたりすることで、ユーザーとUIのインタラクションを評価します。
できる限り早くエラーを修正して完成品の構造に影響を出さないよう、調査はデザインプロセスの早期に実施されます。テストの結果が芳しくなくても、もう一度最初からやり直し、ユーザー体験すべてを改善するための時間がたくさんあるからです。
ユーザビリティテストは次の2種類に分類できます。
- 定性的テスト(定性調査):特定のUI要素における被験者の振る舞いを直接観察・評価し、問題のある要素を特定する方法です。
- 定量的テスト(定量調査):被験者によるタスクのパフォーマンス、またはユーザビリティへの認識(アンケートや投票)を基に、UIデザインを間接的に評価する方法です。
ユーザビリティテストでは、定量的と定性的データの両方を収集することをおすすめします。
ユーザビリティテストが完了すると、UXチームは被験者の態度や反応を基に、デザインを書き直したり、ワイヤーフレームやプロトタイプを練り直したりして、ユーザビリティの問題を修正します。
ユーザビリティテストの適切な目標を設定する
テストに取り掛かる前に、しっかりしたフレームワークと目標が必要になるでしょう。これらは次の質問に答えることで定義できます。
- 範囲:何をテストするのか。
- 目的:何のためにテストするのか。
- 日時と場所:テストの期間および実施する場所の設定。実験室が必要なのか、被験者は遠隔地でテストするのか。どんな頻度でテストするのか。複数の場所でテストを実施するのか。レンタル費用は発生するのか。
- セッション:サンプルサイズはいくつか。
- 設備:どのような技術、材料、リソースが必要か。
- 被験者:ターゲットユーザーは誰か。どこで調達するのか。被験者の時間または交通費を補償するのか。被験者の役割は何か。
- シナリオ:ユーザーは誰か。被験者は何のためにいるのか。ユーザーにはどんな目的があるのか。
- 指標:各シナリオにおいて、被験者の行動を測る指標を設定する。
では、こうした問いの答えはどう知ればいいのでしょうか。それには、目標を設定する必要があります。
ステークホルダーを目標設定に関与させる
何をテストすべきか明らかな場合があります。たとえばナビゲーションフローをデザインし直している場合、知りたいのはユーザーがA地点からB地点にどのように移動するのかでしょう。登録までのユーザージャーニーをテストしている場合は、登録の入力フォームなどをユーザーがどのように操作するのかでしょう。
しかし、特にユーザーリサーチの初心者はユーザビリティテストやその目標を理解しにくいことがよくあります。ユーザーテストもまた、これと大きく類似しています。
ユーザビリティテストの目標を設定する最初のステップは、ステークホルダーと話すことです。プロジェクトが始まったら、ステークホルダーと予備会議を開き、彼らの製品に関する知識を把握しましょう。これは、どういった高度な機能を構築するのか決めるのに役立ちます。
次に、それぞれの機能と手順について細かく掘り下げることで、ユーザビリティテストで何を見直すべきなのか特定することができます。デザインし直している最中なら、高い直帰率や離脱率などの過去の分析を見て、以前のデザインではどこを間違えたのか、それはどんな影響があったのかを正確に探りましょう。
ヒント:多くのUXチームが苦労するのは、ステークホルダーに多すぎる目標を立てられることです。ステークホルダーと早期に目標の優先順位をつけることで、大量にテストしたり、途中で目標を変えたりすることを防ぐことができます。
ユーザビリティの目標を分類する
一度目標を特定したら、それらを分類してグループに分けます。ユーザーとステークホルダーにとっての重要度に応じてグループ分けしましょう。Mutual MobileのBecky White氏は、目標の範囲を限定する便利な方法を例示しています。
チームを集めたら付箋を準備し、それぞれのチームメンバーにターゲットユーザーへの質問をいくつか書き出してもらいます。次に、その質問をグループに分類し、登場したテーマに応じて並べます。
各グループに、問題の文章やシナリオと、調査目標の一覧が行き渡るようにしてください。それぞれの調査目標について、関連する被験者の行動や態度をリストアップしましょう。そして目標のグループごとに、実施するタスクに関して被験者に尋ねたい質問を書き出します。
- 機能や手順
- 目標、または目標のグループ
- 問題の文章やシナリオ
- 被験者への質問
UserZoomは、問題の文章やシナリオの概要を示す素晴らしいテンプレートを提供しています。
テンプレート:
記載例:
一度目標を設定したら、テストの骨組みを計画し、前の章の質問に答えることができます。
ユーザビリティの測定で用いるべき指標
ユーザビリティテストで何をすべきなのかは理解できましたが、テストから何を得るべきなのかについてはどうでしょうか? Jakob Nielsen氏は次のように述べました。
得られる助言に従わなければ、いくらユーザーデータを収集しても何のメリットもありません。
これは、ユーザビリティテストで多くの人が混乱する部分です。ユーザビリティを測定する指標は数えきれないほどありますが、どの指標を用いるべきかは、必ずしも明確ではありません。しかし、心配はいりません。何でもわかる魔法の「温度計」は存在しないので、ユーザーがWebやモバイル製品を利用する際には、指標が役に立ちます。
ユーザビリティの指標は、UX戦略がうまく機能しているかどうかを示す標準的な基準です。この指標は、時間と共に変化を記録し、競争力を測り、デザインインタラクションや製品リリースのベンチマーク、将来の目標を設定するのに役立ち、UIを改善することができます。私たちがユーザビリティを測るために利用する指標には、以下のものがあります。
- タスクの完遂:もっとも率直かつ重要なユーザビリティの尺度で、被験者が正しく完了したタスクの割合を測る
- 重大なエラー:ユーザーがワークフローから逸脱するなど、ユーザーがタスクを完了できなくなるエラー
- 重大でないエラー:被験者が自分で解消できる、タスクの完了に影響を及ぼさないエラー
- エラーフリー率:エラーなしにタスクを完了した被験者の割合
- タスクの完了時間:被験者がタスクを完了するまでにかかった時間
- タスクレベルの満足度:難しいタスクにフラグを立てる
- テストレベルの満足度:被験者の全体を通した体験の感じ方を評価する
ユーザーの態度に関するフィードバックと、指標から収集したデータを使えば、Webやモバイル製品のユーザビリティについて十分な情報が得られます。学んだことを応用してUXを改善しましょう。
ユーザビリティテストが重要な理由
壊れているのかどうかわからないものを治すことはできません。Susan Farrell氏は次のように言っています。
ユーザーリサーチをすれば、ユーザーのニーズに合わないものを構築する可能性が減ります。しかしそれは、ユーザーのニーズが何なのか知っているときだけです。
優れたユーザビリティは成功に繋がり、ユーザーはWebサイトやアプリから離脱しなくなります。しかし、ユーザビリティテストなしでは、ユーザーのパフォーマンスを評価できませんし、ユーザーがタスクを効率的に完了できるのか、タスクにどの位の時間がかかるのか、体験に満足しているのかもわかりません。
ユーザビリティ調査によって、エンゲージメントの障壁になるものを予測したり、学習可能性や効率、記憶しやすさを損なう、ナビゲーションやアクセシビリティの見落としを修正することができます。実際のユーザーの行動パターンを評価することで、ユーザビリティやアクセシビリティのエラーを見つけて修正できるだけでなく、ユーザーや、ユーザーの希望や目的について知ることができます。このことは、あらゆるユーザー満足度や、製品のユーザー体験を改善する手助けになるでしょう。
ユーザビリティテストのベストプラクティス
- ユーザビリティテストは早めに行いましょう。デザインプロセスの早期にテストを組み込むのは簡単です。しかも早く結果を応用すれば、大きな影響をもたらします。
- ユーザビリティテストの前に、QA(品質保証)テストを行いましょう。被験者にスペルチェックをさせたり、バグやクラッシュのせいで動作が遅かったりすることがないようにしましょう。
- Justinmindなどのプロトタイピングツールをユーザビリティテストで利用してみましょう。UXbert Labsの人々によれば、プロトタイプ段階で行うユーザビリティテストがもっとも効果的だそうです。これは、開発や最終的なビジュアルデザインに取り掛かる前に変更を実装できるためです。
- テストサイクルごとに膨大な被験者は必要ありません。Nielsen Norman Groupによれば、被験者は5人で十分です。
- もっとも正確な結果を得るために、実際のユーザーとデータを利用してテストしましょう。アーリーアダプターは、技術に精通していて効率よくプロセスをこなせるため、ユーザーとして理想的です。また、もっとも優れたユーザビリティテストのツールを利用し、実際のユーザーにデザインを評価してもらいましょう。
まとめ
ユーザビリティテストはWebやモバイルのUIの使いやすさを確かめるもっとも良い手段であり、市場での成長にも繋がります。どんな形式であれ、ユーザビリティ調査をデザインプロセスの早期に行うことで、リソースの無駄遣いや余計な手直しを避けることができます。
優れたユーザビリティテストは、実際のユーザーによるフィードバックを用いて製品を改善することができます。ユーザビリティテストを成功させる鍵は、計画段階にあります。テストの目標や指標を決める際には、チームだけでなくステークホルダーにも参加してもらうべきです。テストから何を得たいのかはっきり知っておくことで、プロセスがより効率的になり、有意義な結果が得られるでしょう。