会話型UIとは簡単に言うと、まるでほかの人と会話をしているかのように、言語を自然な形で処理するチャットボット体験です。テクノロジーにおける典型的な体験では、コンピューターが何かを実行するために、アイコンやリンクをクリックするような指示が求められます。私たちはある程度操作に慣れているとはいえ、これらは自然なコミュニケーションでも人間らしいコミュニケーションでもありません。
会話型UIは、インターフェースとの対話を人間同士が普通の会話をしているかのようなコミュニケーションの形へ切り替えます。現在、会話型UIを取り入れた、2つの人気な手法があります。1つはAmazonのAlexaのように、実際の会話を通して使用するものと、もう1つはFacebookの Messengerのように、チャットボットでのチャットやタイピングによって使用するものです。この記事では、後者のチャットボットを使用するタイプに注目します。
なぜ会話型UIが良いのか?
簡単に言えば、人間にとってテクノロジーを使うよりも話しかけることのほうが楽だからです。これはごく自然なことです。友人や見知らぬ人に話しかけるとき、もしわかりづらかったり間違ったことを言ってしまっても、簡単に訂正することができます。
私は以前、人間はクリックやタップを介してテクノロジーと対話することに慣れていると言いました。しかし言うまでもなく、その体験が混乱してしまうような例がたくさんあります。たとえばフォーム入力が不十分であった場合や、アプリ内で探しているものが簡単に見つからない場合にユーザーは間違いを起こします。
ユーザーテストは、機能やインタラクション、Webサイトを使いやすくするために頻繁に利用されます。会話型UIでもユーザーテストを軽視すべきではありませんが、一般的にそのユーザー体験は、従来のものよりもずっと簡単なものとなるでしょう(そもそもユーザーテストの方法が異なります)。結局、テクノロジーは私たちユーザーに合うように発展すべきなのです。
Facebook Messengerとコマース
少し前ですが、FacebookはチャットボットのAPIをMessengerに集約して、企業と会話型UIを通してユーザーがインタラクションをできるようにしました。とはいっても、実際の従業員と直接会話をしているわけではないのです。そのような場合があるとしても、いつもではありません。
直接会話をしているような気分になることこそが、この機能における体験なのです。KLMのチャットボットでは簡単な会話によってフライト情報を入手することができますし、最新のニュースをCNNにリクエストすることもできます。Nordstromのチャットボットではいくつか質問に回答するとパーソナライズされたギフトのおすすめを受け取ることができます。
Nordstromについて少し話しましょう。Nordstromがチャットボットによって見出したビジネスチャンスは特筆に値します。人々はますますモバイルのヘビーユーザーになってきているため、モバイルを使用したオンラインショッピングの体験をよりシームレスにすることは、素晴らしい考えです。Nordstromがこのチャンスに気付いたのは2016年で、チャットボットを開始し、休日のショッピング用にギフトのアイデアを見つけやすくしました。これは顧客がメッセンジャーアプリを入手しさえすれば使用することのできる素晴らしいビジネスチャンスであり、素晴らしいカスタマー体験です。
Nordstromの大成功以来、ほかのコマースやEC企業もNordstromにならうようになりました。Tommy Hilfiger、Everyone、Spring、Fynd’s Fify、Uniqlo、1-800-flowers、Burberry、そしてeBayでさえも、簡単にチャットをすることができます。これらのチャットボットのすべてがブラウジングやショッピングができるわけではありませんが、注文の追跡など、関連情報にアクセスすることは可能です。メールの受信箱に移動したり、アカウントにログインする代わりに、「配達状況はどうなっていますか?」とシンプルに尋ねるほうが、はるかに簡単な体験でしょう。
Slackと情報探索の新しい手段
SlackはSlackbotsといわれるチャットボットでも有名です。アプリには自分自身のボットがあり、簡単にやりとりすることができます。Google CalendarやHangouts、Maker、Intro、Giphyなどの異なるアプリをSlackと連携させることができます。また、Google AnalyticsやNew Relic、Mixpanelなどのほかのアプリとつながっているものとも連携できます。なのでSlackbotに話しかけると、リクエストに応じて必要な情報やgifを入手できるでしょう。企業やチームが日常業務を行う方法に、Slackは革命を起こしたのです。ただ尋ねるだけで、複数のソースから簡単に情報にアクセスすることができます。
これ自体でも大変画期的なものです。しかし企業は自分自身のボットとチームのSlackアカウントを結びつけたり、ほかのボットを彼らのアカウントにつなげたりすることも可能なのです。Taco BellのTacobotを例に挙げてみましょう。注文を確定している間に、Taco Bellから思いがけないコメントが送られてきています。
チャットボットベースの貯金アプリ「Digit」
お気付きかもしれませんが、この記事ではユーザーインターフェイスでなくユーザー体験について話しています。なぜなら、会話型UIはユーザー体験のことについてだからです。会話型UIという言葉は誤解されやすいでしょう。Facebook MessengerやSlackは独自のUIをもっています。そのようなUIは、ユーザーや顧客と交わされるであろう、チャットボットを使用したインタラクションや会話をデザインするだけです。ところが、独立型アプリの素晴らしい事例として、Digitがあります。Digitはユーザー独自のビジュアルデザインを集約するものです。ここで使用されている会話型UIはFacebookやSlackの事例のようなものとは大きく異なります。注意すべきことは、同僚から同僚へのチャットインターフェイスのようなデザインだということです。
Digitを知らない方がいたら、私は強くおすすめします。Digitは貯金アプリです。アプリを使って、支払いや残高確認、引き出し、預金、定期送金などのあらゆることを行うことができます。Digitのボットとインタラクションするには、2つの手段があります。1つはアプリ内です。アプリのメイン画面はチャットボットのインターフェイスです。しかしボット外でも、アカウントや設定のインタラクションなどいくつかのことを行うことが可能です。ボットに話しかけることを選択した場合でも、これらのことを行うことができます。ボットは非常に良く作られており、場合によってはキーボードの代わりとして一連のオプションから選択して使うことも可能です。ユーザーがまだ知らない会話の可能性を教え、ボットへのインタラクションをあいまいではなく、より具体的に行うことができるため、ユーザー体験の向上に貢献しています。
Digitのボットにインタラクションするもう1つの方法が、ナンバーのテキスト入力です。会話自体はまったく同じものですが、もしユーザーが会話機能をすべて把握していなければ、あいまいなものになる可能性があります。会話型UIの使用は、Digitユーザーにとってインタラクションが斬新で非常に簡単になります。アプリ内とテキスト入力のどちらでもインタラクションが可能になるので、ユーザーは自分にとって使いやすい方法でアプリを利用できます。先ほどこの記事で伝えた通り、会話型UIの目的とは、アプリ・サービスの使用やタスクの実行を簡単かつ自然な方法でできるようにすることです。Digitは、会話型UIを次のレベルに導く実に良い事例です。
結論
UIに関して言うと、会話型UIは多くの人たちが想像しているようなことではありません。根本的に、会話型UIとは、テクノロジーの振る舞いとインタラクションを、私たち人間同士がやりとりするような形にするものです。これはテクノロジーをより簡単なものに推進します。
また、会話型UIはインタラクションを統合させる方法として、より人気かつ流行のものとなってきています。驚くようなことではありません。なぜなら会話的なUIは、企業に多くの機会をもたらすとともに、顧客にもより良い体験を提供することができるからです。