ケーススタディ:Overcastのモバイルアプリ

Sean McGowan

SeanはCodalのテクニカルリサーチャー兼ライターであり、UXデザインからIoTまでのトピックに関するブログ記事を執筆しています。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

UX Case Study: Overcast Mobile App (2017-12-21)

新しいiPhone Xのノッチ、ヘッドフォンジャックの勝手な廃止など、AppleにおけるUXデザインの原則は、ユーザーの評価をいつも二極化させてきました。しかし、どれほどAppleの熱狂的な支持者であっても、悪名高いPodcastアプリにおける大きなデザインミスは認めるでしょう。

かつてはニッチなメディアでありラジオの名残であったPodcastは、いまでは大人気となりました。毎週、4,200万人のアメリカ人がニュース分析やエンターテイメント、学習の分野などさまざまなコンテンツを視聴しています。

Overcastのモバイルアプリ

Apple純正アプリのUXに失望して、多くの視聴者がよりフレンドリーなユーザー体験を求めて、App Storeでほかのアプリを選んでいます。このようなサードパーティーのPodcastアプリの中で、存在感が増しているのがOvercastです。

Overcastは、The VergeThe Sweet SetupMacworldなど多数のIT雑誌でもっとも優れたPodcastアプリとして紹介されていて、App Storeでも圧倒的な高評価を得ています。しかし、そのユーザー体験は期待通りのものでしょうか? それとも、Appleの冴えないアプリの穴を埋めるには事足りる程度の代用品でしかないのでしょうか? 今回のUXケーススタディでは、Overcastのユーザー体験を評価して、その答えを見つけていきたいと思います。

オンボーディング

まずiPhone 7の最新版のiOSを使い、Overcastのアプリをダウンロードしました。アイコンをタップすると、以下の画像のように最低限の色と画像だけのシンプルな登録画面が表示されました。「登録」、「ログイン」、「アカウントなしで先に進む」という3つの従来型の選択肢を表示しています。

ただ、Overcastでは、「Overcastは初めてです」「すでにアカウントをもっています」「アカウントを作りたくありません」というように、さらにカジュアルな言い回しで表現されています。このような会話調の表現は、全体の体験をより温かくフレンドリーに届けるために、アプリの使用中に何度も見ることになるのでしょう。

明らかにOvercastはユーザーに登録してほしがっています。「Overcastは初めてです」という選択肢が一番上に配置されていることや、「無料で、プライベートで、スパムのない」アカウントであると表示して、登録をスキップしようとするユーザーを安心させていることからも明らかです。私はアプリのUXについてもっと知見を集めたいので、「初めてです」を選択します。

必要最低限の機能を備えた登録画面が表示されました。2つの入力フィールドがあります。興味深いことに、オンボーディングのプロセスを短縮できるFacebookやGoogleでのログインオプションがありません。オンボーディング自体がフィールド入力2つという非常にシンプルなものなので、OvercastのUXデザイナーは不要だと判断したようです。私はメールアドレスとパスワードを素早く入力し、セットアップを完了できました。驚くほど簡単です。オンボーディングとはこうあるべきでしょう。

ホーム画面とナビゲーション

Overcastのホーム画面でも、オンボーディングと同じようにミニマルな外観が続きます。テキストのない4つの選択肢があるナビゲーションバーを使用していて、飾り気のないホーム画面には「Podcastを追加してください」というボタンが1つと、風変わりなコピーがあります。明らかにアプリはボタンに導きたいようなので、それに従って「Podcastを追加してください」をタップします。

続いて表示された画面を見て、私はアプリに引き込まれました。聞きたいPodcastにアクセスするために、多種多様な内容を提供しています。前回評価したSoundCloudのアプリをPodcatstアプリと見なすことはできますが、そのSoundCloudとは対照的に、Overcastは人気とジャンルの両方からおすすめを表示しています。また、Twitterからのおすすめを受信したり、ディレクトリを検索したり、URLを直接入力したりすることもできます。どのようなプログラムであろうと、Overcastは聞きたいPodcastが見つかるルートを提供してくれるだけでなく、似たものを検索することもできるのです。

早速面白かったPodcastをいくつか登録してみると、自動的にOvercastが最新のエピソードをダウンロードし始めたことに気が付きました。あとから知りましたが、これはWi-Fiに接続しているときは自動でダウンロードをする設定だったからでした。このオプションは設定タブで簡単に切り替えられます。いくつかエピソードをダウンロードして、ヘッドホンを装着し、オーディオプレイヤーの分析を始めました。

プレイヤー

ここまでのOvercastのUXは、非常にシームレスでした。たった数分で、アカウントを作成し、好みのPodcastを見つけ、新しくPodcastを検索し、その最新エピソードをiPhoneにダウンロードすることができました。インタラクションは直感的で、きわめてシンプルです。私はまだこのモバイルアプリにおいて、わからない部分や欠点がありません。

そして、Overcastが選ばれる真の要因であり、Appleの手抜きなPodcastアプリより好まれる理由はオーディオプレイヤーです。

上の3枚のスクリーンショットは、Overcastのオーディオプレイヤーの画面を示しています。中央のものは、聞きたいPodcastを選択したときのデフォルト画面です。多くのプレイヤーと同様に、スクリーンの大部分はカバーアートに充てられています。ここで、Overcastの色を抑えたUIが効果的となっています。Podcastのカバーアートとインターフェイスを並べることで、カバーにポップな印象が生まれています。特にこの画像のSong Exploderのようにカラフルなカバーアートでは、そのような印象が強まるでしょう。

画面の残りの部分は、タップミスしにくいくらい大きな再生/一時停止の機能とスキップボタンに充てられています。私が本当に感動した見た目の工夫は、ボリューム表示の役割も果たす一時停止ボタンです。そこまで機能的な価値はありませんが、Podcastを再生するたびに飛び出たり引っ込んだりするのはクールだと思います。

最後に画面上部には、オーディオのタイムラインがあります。これはAppleのPodcastやSoundCloudのものより小さくて抑えめです。とは言え、聞きたいPodcastの特定の部分を操作することに苦労はしませんでした。ただ、指が太い人や不器用な人にとっては使いづらいかもしれません。

カバーアートのすぐ下には、3つのドットが並んでいます。これは左右にスワイプすることで異なる画面にアクセスできることを示しています。このドットは、今どの画面にいるかについてのユーザーの手がかりです。右のドットは「i」という字を丸で囲んだもので、インフォメーションを表しています。左は設定への移動を表します。

しかし、これらのアイコンは小さすぎて、正直アプリを使い始めてから何日か経つまで私は気付きませんでした。ただ、ドットの並列という慣例に従うだけでも、スワイプをしたらほかにも見れるものがあるとユーザーに気付かせるには十分です。

インフォメーション画面について報告することはあまりありません。しかし、設定画面にスワイプすると、嬉しいことにOvercastが提供する異なる機能を見つけました。この機能はAppleのPodcastプレイヤーを完全に圧倒しています。Smart Speed機能は、コピーが示す通り無音の時間を縮めるものです。思わぬ幸運だと感じるPodcastもあれば厄介だと感じるものもあるでしょう。

Voice Boost機能は、普通のPodcastのオーディオにはもう戻れないと言っても過言ではないほど素晴らしい機能です。音質はクリアで歯切れよく、豊かな聴覚体験を提供します。最後に、Custom Speed設定は、Appleのものよりかなり安定しています。スピード調整については非常に高精度です。

プレイヤーについての最後のテストは、iPhoneでほかのタスクを行っているときのユーサビリティの確認です。上の画像のように、アプリ内ではプレイヤーは画面の下側に圧縮されていて、もっとも基本的な機能にすぐアクセスできるようになっています。アプリ内のどこに移動しても、プレイヤーはついてきます。ただ興味深いことに、「Podcastを閲覧する」という画面は例外です。ほかのプログラムを検索すると、プレイヤーは消えます。

アプリの外では、プレイヤーはiOSのコントロールセンターと途切れなく統合されます。iPhoneでほかのタスクを実行する間も、一時停止やスキップ、繰り返しなどの機能を使用することができます。

最終判定

Overcastをダウンロードする前まで、私はAppleの純正Podcastアプリを使っていました。この2つのユーザー体験の優劣は否定のしようがありません。ユーザビリティ、純粋な機能性、見た目など何であっても、UXのクオリティに関するすべての検証において、Overcastが勝っているのです。

アプリが一貫して装飾のない見た目をしていることはすでに述べましたが、その活字やフォントの選択についても触れておきましょう。巧みな専門的技術と温かくフレンドリーな印象のバランスが上手く取れています。

ほかのサードパーティーのPodcastアプリをまだ検証していませんが、Overcastが絶対的な高評価を獲得したのには理由があると確信しています。Podcastを聞く方は、ぜひOvercastのモバイルアプリを試してみてください。Podcastが好きではないという方も、全体的にしっかりと作られたモバイルユーザー体験の素晴らしい事例ですので、ダウンロードをおすすめします。