ユーザー体験を作り出す上で絶対に必要になってくるのがユーザーに対するリサーチです。ですが、プロジェクト内で実際取り入れる際に、どういうタイミングや手法で実施すればいいのかわからないときはないでしょうか。
今回は手軽なリサーチから本格的なリサーチまで支援するサービス「UXリサーチャーオンデマンド」を提供するポップインサイトさんにUXリサーチについてお伺いしました。
UXリサーチとは?
──まずはじめに、「UXリサーチ」とはどのようなことをするのでしょうか?
インタビュー、プロトタイプテスト、ユーザーテスト、アンケートの4つがメインの手法です。リサーチの段階や課題に応じて使い分けたり、組み合わせたりしますが、UXリサーチでは主に定性調査を重要視しています。
──定量調査と定性調査の使い分けで迷う人も多いと思うのですが、どのように使い分けるべきなのでしょうか?
定性調査は「ユーザーはどうしてそう思うのだろう」といった心理的な部分を把握するときに必要です。たとえば業界や商材特有のユーザー心理みたいなものがあると思うのですが、それを把握するときに定性的な調査はすごく価値があります。
一方でたとえば「猫が入っている写真と入っていない写真はどっちがいいですか」ということはアンケートなど定量的な調査ですぐわかるのですが、「なぜそうなのか」という理由までは見えてきません。数値だけだと、どこかで頭打ちになっちゃうのかなと。
──ユーザー体験を調べるという意味では、たしかに定量データだけでは不足ですね。
UIなどの改善とコンテンツレベルでの改善ではレイヤーが全然違うと思います。そういう意味で定性調査はコンテンツの改善などに有用です。
すごくデザインがきれいでも、中身に穴があるサイトの場合、ユーザーに聞かないとその穴は見つけられません。そういう意味では、「プロトタイプ検証」などでもよくあるバグやデザインの検証ではなくて、コンテンツやサービスの意図がきちんとコミュニケーションできているかを検証する、というのがUXリサーチの本質です。
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UXリサーチについて、より詳しく専門家に聞きたい場合は「UXリサーチャーオンデマンド」にお問い合わせください。
UXリサーチを検討すべきタイミングは?
──では、実際UXリサーチはどのような場面でどう活用すべきなのでしょうか?
プロダクトやサイトの成長プロセスに沿って考えていくと、「企画段階」「リリース前の検証」「リリース後の検証」「改善施策の優先度付け」の4つのシチュエーションが考えられます。
1. 企画段階
まずは一番上流の部分で、新しい企画やプロダクトを考えるときの段階です。ターゲットユーザーの潜在的なニーズを探ったりするフェーズなのですが、大きな方向性を決める上で、UXリサーチは必要です。ここではインタビューが主な手段となります。
たとえば、とある人材派遣サービスでは登録における電話対応のオペレ―ションコストがかさんでいるという課題があり、電話以外の方法で登録させたほうが良いのではないかという仮説がありました。
その会社さんは既存サイトに対してユーザーテストをやりたいということだったのですが、まずは電話インタビューを提案しました。実際に利用している方と競合サービスを利用している方に電話インタビューをして、普段どういうフローで登録しているのかを聞いたり、そのとき何を思っているのかを聞いたりしました。
──もっと根本からユーザーの声を聞きに行ったということですね。
はい。ユーザーにとって電話は面倒くさいという仮説があったのですが、調査した結果なんだかんだ電話は必要というユーザーの声が結構多いとわかりました。
その会社さんはサイト上でのユーザーのことしか見ていなかったところ、電話インタビューをしたことによってそういう仕事を探している人、業界や市場という観点からユーザーの動きを意識するようになりました。
──なるほど。より広い視野でユーザー体験を考えることができたわけですね。
そうです。もし初期の仮説の方向に動いてしまっていたら、開発コストがすごくかかっていたかもしれませんが、そういった無駄を事前に防ぐことができた事例かと思います。
2. リリース前の検証
次はもう少し先に進んだ段階で、企画がある程度固まってその検証をするフェーズです。ここではいわゆる「プロトタイプ検証」で、ProttやInVisionなどでプロトタイプを作ってプロトタイプテストをします。サービスのコンセプトや、用意したコンテンツがユーザーのニーズに合っているのかどうかなどを検証します。
──基本的にはワイヤーフレームに近いプロトタイプでの検証をするのでしょうか?
そうですね。ここで出てくるインサイトや改善方針は、ごそっとシステムを変えたり、デザインをまるごと変えたりなどするよりも、情報が足りない部分を補ったりするようなスケールです。ひとつ文言を追加するだけで劇的に改善する例も結構あるので。
たとえば航空券を安く買えるサイトで「燃油サーチャージ込み」という訴求があったとき、ユーザーは「これ全部込みって書いているけど、燃料代とか入っているのかな」のようなことをボソっとつぶやいたそうです。そこで、その下に「燃料代込みです」って書いただけでコンバージョンが上がったという事例があります。
調査の中で見つけたいのはこういった改善で、要はコンテンツのコミュニケーションがきちんとできているかを検証します。
3. リリース後の検証
3つ目はリリース後の課題出しです。どんなにリリース前に検証したとしても、いざリリースしてユーザーに使ってもらうことでさまざまな課題が出てくるものです。ですが、Google Analyticsなどで数値が落ちていたりすることは気づけるものの、「なぜ落ちているのか」まではわからないこともあります。
ちなみに、日本で有数のアクセス解析の専門企業も、ポップインサイトのユーザーテストを併用されています。
──データだけだと点と点で因果関係を導き出すのは難しいことがありますね。
そうです。たとえばECサイトであれば、フォームの離脱率がやたら高いからフォームを直そう、となったりするのですが、ユーザーテストをかけてみるとただフォームを直せばよいわけでもないことに気づけます。
ふたを開けてみると、実はフォームの形が悪いからではなくて、買おうという意思を固める前にフォームに来てしまっている故に、離脱していることがわかりました。
そうすると、フォームに来る前の段階で「きちんと届くか」「欲しい色があるか」「何日後に届くか」などの不安点を解消しなければなりません。
──取るべき施策が全く変わってきますね。
はい、データではフォームの離脱率として現れてしまいますが、実際の改善ポイントはその手前ということになります。
4. 改善施策の優先度付け
最後に、ユーザーテストをして課題を出した後の話です。課題がわかりいくつか施策案が出てきて、優先順位を決める必要が出てきたときは、コアユーザーに絞ってインタビューをするというのもひとつの手です。
──施策の取捨選択をするためでしょうか?
そうですね。リニューアルによって既存サービスの良かった点をなくしてしまって大失敗するケースも結構あります。
そういう意味で、すごくたくさん使ってくれているユーザーさんたちに、プロダクトを使っている理由や機能の要望などを聞いたりした上で改善方針を固めていくといいと思います。
コアユーザーが語った魅力に新規ユーザーが気づいていないのであれば、まずはその導線を直すといった具体的な改善方針は、プロダクトが一定以上大きくなってきた段階ではすごく重要だと思います。
UXリサーチの失敗例
──ここまでUXリサーチの成功例はありましたが、よくある失敗例などはありますか?
リサーチで誘導的になってしまうというのはよくある失敗ですね。その後の分析や工程などにも影響してくるので、かなり大きな問題です。
いかに自然な状況でユーザー体験のリサーチができるかは、その調査設計にかかっています。
──たしかに、誘導をしてしまって本当の意味でのユーザーのインサイトが得られてないことも結構ありそうです。
その可能性はあります。そしてそれに気づくのも難しいですよね。
出てきたユーザーの声が果たしてそのまま課題かというと、そうでないこともあります。そこを間違えると、どんどんずれていってしまいます。
ただリサーチをやればいいというわけではなくて、あくまで隠れたユーザー心理を見つけようとする姿勢が大事ですね。
──これらをすべて自分たちでやろうとするのは難しそうですね。
リサーチのスキルというのはかなり尖っているスキルだと思います。片手間でリサーチをやるというのは相当難しいものです。どのような調査をするのか、何を質問するのか、という設計から実際の調査、分析、レポート作成とやることもかなり多くなってしまいます。
UXリサーチは自分でできる範囲のものもあれば、どうしても環境やコスト面で難しいものもあります。今回紹介したシチュエーションや手法をヒントに、よりよいUXデザインにつなげていただければ幸いです。
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ポップインサイトが提供している「UXリサーチャーオンデマンド」は手軽なリサーチから本格的なリサーチまで支援するサービスです。上記で紹介したような継続的なUXリサーチが自社では難しい場合に有用です。
独自のUXリサーチツールを多数持つ同社は現場のUXリサーチをさまざまな形でサポートしてくれます。気になる方はぜひ資料請求してみてください。
提供:株式会社ポップインサイト
企画制作:UX MILK編集部
素材: www.Vecteezy.com