ログアウトのUXを軽視してはならない

Roxanne Abercrombie

Roxanne はライブチャットやビジネスプロセス自動化を専門とする英国に本拠を置くソフトウェアハウスであるParker Softwareのオンラインコンテンツマネージャです。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The UX Logout Lapse
この記事は、過去に掲載した記事を再編集したものです。

ログアウトの体験は、ログインする回数が増えている中で見落とされやすいものです。素晴らしいUXほど、ユーザーを送り出すことよりも招き入れることに重点が置かれているのは当然かもしれません。しかし、重視されていないということは、ユーザーのログアウト体験が疎かになっていることを意味します。

最近、アカウントを作成したときのことを考えてください。そのブランドがWebサイトやアプリの入り口から、スムーズかつ素早くユーザーを迎え入れようと苦心しているのは間違いありません。アカウントを作成してアクセスするプロセスは、とても簡単で夢中になります。しかし、ログアウトに関しても同様に言えるということは、滅多にないでしょう。

ログアウトは最後のステップであり、ブランドとのタッチポイントの中でもっとも価値がないと見なされています。しかし、ログアウトが陳腐なものであってはなりません。ログアウトのプロセスは、ユーザーを引き込み、ブランドを支持してもらい、UXを最適化するチャンスになり得ます。この記事では、ログアウトにおけるUXの失敗を避けるべき理由と、その方法について解説します。

オンラインアカウントの氾濫

平均的なインターネットユーザーは、2020年には207個ものアカウントを持つだろうと予測されています。消費者は、サービスやアプリ、Webサイト、製品に埋もれてしまうでしょう。そのそれぞれに、独自のログイン情報とプロセスが存在するのです。

オンラインアカウントを作成してログインやログアウトをすることは、日常生活の一部になっています。ログインやログアウトは、ユーザー体験における収益の要ではないかもしれません。しかし、入口と出口のタッチポイントは重要です。あらゆるタッチポイントは重要なのです。

ユーザー体験は、「ログアウト」のリンクをタップした瞬間に終わるわけではありませんし、ログインした瞬間に始まるものでもないのです。ログアウトは単なる実利的なステップですが、軽視すべきではありません。実際には、ログアウトは毎日のデジタルプロセスに欠かせない行為であるため、もっとも修正を加えるべき場所です。

コミュニケーションの機会

Paco Underhill氏は、著書『Why We Buy: The Science of Shopping(邦題:なぜこの店で買ってしまうのか-ショッピングの科学)』の中で、顧客とコミュニケーションするあらゆる機会を重要視すべきだと強調しています。また、コミュニケーションは「ゾーン」と調和している必要があり、「それぞれのゾーンでは、1種類のメッセージのみが適切で、ほかのすべては不適切です」と述べています。

たとえば、点滅するセールスバナーはヘルプのエリアにふさわしくありませんし、スプラッシュスクリーンに詳細な情報を表示すべきではありません。また、検索機能をログインページに追加しても、何の価値もないでしょう。つまり、コンテキスト内におけるユーザーの目的と行為を考慮し、それぞれのタッチポイントで適切なメッセージを伝達することが何より重要なのです。

ログアウトのプロセスは、数秒しかない末端のステップかもしれません。しかし、それでもそれ自体で1つの「ゾーン」であり、関連性のある受け入れやすいメッセージを円滑に表示するきっかけになります。そのゾーンの中でコンテキストに沿った便利な体験を作成するために、まずUXデザイナーは、ユーザーの思考の形態を分析しなければなりません。

ユーザーを理解する

ログアウトに関してユーザーが期待しているのは、多くの場合シンプルで機能的であることです。メンバーサイト、アプリ、サービスのいずれにせよ、ログアウトしようとするユーザーは、ブラウザの閲覧を切り上げようとしています。つまり彼らは、体験を飛び出して日常生活を継続したいのです。

よって、ユーザーは簡単でアクセシビリティのあるログアウトのプロセスを求めているということはほとんど自明です。ユーザーは、ログアウトのリンクを探さなくてはならないようなナビゲーションの迷路も、階層化された複雑な体験も望んでいません。

しかし、ログアウトをクリックする前、ユーザーの関心がサービス以外の場所に移る前のタイミングも存在します。この時間こそUXデザイナーにとって、ログインエリアの中でよく考え、豊富な創造性を発揮する機会になります。

プロセスから始める

ではデザイナーは、どのようにすればログアウトのUXが崩壊するのを避けられるのでしょうか? 最初に考慮すべきは、ログアウトのプロセス自体です。もっとも共通する「ログアウト」ボタンやリンクの位置は、スクリーンの右上です。Windowsが閉じる機能の「×」ボタンを右上に配置して以来、この位置はユーザーにとって直感的な出口の場所になっています。

しかし右上のボタンは、決してユーザーにとって唯一のログアウトの選択肢ではありません。私たちのオンラインアカウントが膨大な量になるにつれて、ログアウトのプロセスはめちゃくちゃになってきました。ユーザーにとって一貫性のある体験を作るためのはっきりした慣例は存在せず、プロセスには大量のバリエーションが存在します。

たとえばあるサービスでは、「ログアウト」の選択肢はメニューの中に隠れています。他方で、アバターの背後やアカウントタブの中、歯車のアイコンをクリックした先、孤立したリンクとして存在していることもあります。あるいは、「サインアウト」という名前が付けられているかもしれません。ホバーのインタラクションでうながされたり、複数回クリックしなければいけなかったりもします。

些細な違いだと思うかもしれませんが、これはユーザビリティの根底にある「考えさせてはいけない」という原理に反しています。Amir Ansari氏曰く、「Webサイトの右上にアイコンやリンク、ボタン、アバターなどがありすぎるせいで、どれが魔法のログアウトリンクに繋がるのかわかりにくいことが多いです。」

作画ボードへ

このようにユーザーがログアウトする方法はたくさんあるため、唯一の絶対的なUXの法則は存在しません。右上の角は適切と言える場所ですが、ほかにも考慮するべき要素があります。まず、自分のサービスの性質とユーザーがアクセスする頻度を把握しましょう。

たとえば、ユーザーのプロフィールがパーソナライズされるサイトは、頻繁に使用される可能性が高いです。設計上、ユーザーはプロフィールをカスタマイズするとき、ログアウトリンクがどこにあるのか気づきます。この場合、より上位の階層のメニュー内にログアウトの選択肢を配置することは、ナビゲーションを崩さずにユーザーの管理行動を分類する便利な方法です。

あまり頻繁に訪れないサービスや、提供する選択肢の数が限られるような場合、この方法はあまり賢明ではないでしょう。このような会員数の規模が小さいサイトで、特徴のないドロップダウンメニューの中にログアウトの選択肢を詰め込んでしまうと、ユーザーの筋道をわかりにくくする意味のないレイヤーを増やしてしまう可能性があります。

位置と見つけやすさのほかに

些細なことに見えますが、ログアウトのプロセスでは、ほかにも次のようなことを考慮すべきです。

  • 文法:「log out」という2語は、行為を意味します。一方で「logout」は、アカウントから抜けるのに必要な項目を表す名詞または形容詞です。些細な違いですが、正しい文法は、わかりやすいUXの基礎になります。
  • 語用:「サイン」アウト(sign out)と「ログ」アウト(log out)にはわずかに違いがあります。前者は来訪者の名簿を通して、物理的な建物から外出することを指しますが、後者はオンラインのインタラクションにおいてより重要で価値のある言葉です。この部分でも「悪魔」は細部に宿ります。
  • セキュリティ:アカウントに機密情報が含まれる場合、ユーザーはページを消したら自動的に、あるいは一定時間後にログアウトされることを期待するかもしれません。(これは、ログアウトのリンクが目立ってはいけないという意味ではありません。)
  • 透明性:ログアウトの選択肢を見つけにくくしてしまうと、受動的にログイン状態を保持することをユーザーに強制しているように見えます。結果的に、Webの使用状態の観察やデータマイニングなどに悪影響を与えることになり、やがてユーザーを排除してしまうでしょう。

最初に見えていたほど、ログアウトのプロセスが些細なものでないことは明らかです。ユーザーは次の段階をタッチしなくても、「ログアウト」ボタンを押す以前から濃密に考えを巡らせています。

感謝とエンゲージメント

ユーザーがログアウトボタンをクリックしたあとに起きるべき事象を考えることで、次の段階に進むことができます。Sandra Niehaus氏は、「ログアウトページはデザインやマーケティングの観点からもっと注目されるべきです」と言います。ログアウトページはトランザクションが完了したあとに開かれるため、コンバージョンファネルの外側にある、重要視されない使い捨ての段階と見なされています。

しかし、この判断は間違いです。実店舗で支払いを終えた瞬間、ドアを目の前で閉められることはありません。オンラインのユーザーは、退室する際にファンファーレが欲しいわけではありません。しかし、冷酷なログアウト体験が提供しているような、ぶっきらぼうにドアが閉められる体験を期待しているわけでもないのです。

ユーザーがログアウトできたあとにも、UXを最適化するためにすべきことがいくつかあります。ユーザーはまだログアウトの確認と自分への感謝、そして適切に再訪をうながされることを必要としています。加えて、ログアウト後のプロセスを円滑にするために、これらの最後のアクションはブランドの画面やログアウトページの中でなされるべきです。

ログアウト画面のベストプラクティス

ブランドのログアウト画面は、5つの主要素を素早くわかりやすく提供する必要があります。

  • 一貫性:この画面に至るまで円滑なユーザージャーニーを提供してきたのですから、ブランドコンセプトから外れたひどいデザインのログアウトページのせいで、最後のハードルにつまずかないでください。ユーザーにとって後味の悪い体験になり、体験全体に悪影響を与えてしまいます。
  • 確認:安心できるシンプルなメッセージで、ユーザーがログアウトに成功したことを知らせましょう。
  • 感謝:ユーザーはサービスに時間を費やしてきました。そのことに感謝を伝えましょう。これは確認メッセージと簡単に結び付けられます。「ログアウトしました。xxxをご利用いただきありがとうございました。またお会いできるのを楽しみにしております。」
  • 案内表示:膨大な選択肢でユーザーを困らせることなく、できるだけ簡単にユーザーがアカウントにアクセスし直したり、サービスを訪問し直したりできるようにしてください。円滑にログインし直せるように、トップページやログインエリアにナビゲーションのリンクを配置しましょう。
  • エンゲージメント:ユーザーが退出する前に、何かまだユーザーに提供できるものはありませんか? ログアウトページは、退出し終わる前に興味を引けるように、関連製品やプロモーション、メディアなどを紹介する絶好の機会です。

あらゆるUXと同様に、ログアウトのフローやコンテンツを作る際には、注意深いリサーチとテストが不可欠です。以上の要素を考慮するのに時間をかけることで、どんなタッチポイントも見逃さないユーザー体験を作成できるでしょう。

ログアウトするということ

一般的に、ログアウトのプロセスはUXの中であまり関心をもたれません。ログアウトは、ユーザーのコンバージョンを得たあとの、サービスの最後で起こります。ユーザーはすでに慎重に構築されたログインエリアにアクセスして、提供されるべきものを体験し終わっています。それにも関わらず、なぜログアウトという周辺部にまで労力を費やすべきなのでしょうか?

答えは、これらの周辺部こそがブランドの姿を反映するからです。ユーザーが見て触れるすべてのものが彼らの体験に貢献し、提供したものに対する態度を形成します。体験を締めくくる際の印象は大切です。

詳細部分への気配りや関心、労力を忘れないでください。ログアウトへのファネルを通じて、ユーザーとの関係を良いものすることができます。ひどいログアウトプロセスのせいで、素晴らしい仕事が台無しにならないようにしましょう。


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