ケーススタディ:瞑想アプリCalmのUX

Sean McGowan

SeanはCodal社の技術ライターおよびリサーチャーです。UXデザインからIoTまで、様々な話題のブログを投稿しています。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

UX Case Study: Calm Mobile App

この連載は、UXケーススタディはUXデザイン制作会社のCodalにより定期連載されているモバイルアプリを徹底的に研究するシリーズです。アプリを詳細に調査して、UXのレンズを通してじっくりと検証することでアプリの長所と短所を明らかにします。

最終的な目標は、UXを調査して、さまざまなデザイン技術がどのように合わさって全体として機能するアプリなっているかを検証することです。私たちは今回、2017年Appleのアプリオブザイヤー受賞アプリであるCalmを研究することにしました。

Calmについて

Calmは、マインドフルネスとメンタルヘルスに関するアプリです。瞑想や睡眠の改善からストレス軽減、集中力の強化まで、ユーザーを助ける無料のエクササイズとプログラムを提供しています。Calmでは一連のASMR系の読み物や環境音楽、ヒーリング系の自然音などを提供しており、日常のセッションや定期的な実践を通して、ユーザーがよりマインドフルでいられるように手助けすることを目的としています。

いつもどおり、iPhone 7を使用して分析を行います。Calmのバージョンも最新版を使います。

オンボーディング

Calmを開く前に、アプリアイコンの外観のモチーフと、ビジュアル言語について取り上げます。背景は淡い空色のグラデーションで、アプリの名称は自然な細いフォントで書かれており、静かなイメージです。

アイコンをタップすると、Calmのスプラッシュ画面が表れます。「スプラッシュ」は大げさすぎるかもしれませんが。アイコンに使われているのと同じ、柔らかなブルーのグラデーションの画面で、水滴が1粒ぽつんと落ちるように「深呼吸しましょう」というフレーズが表示されます。長々しい退屈なオンボーディングのプロセスでないことを期待しつつ進めていきます。

標準的な「登録する/ログインする」の画面が表示されると思っていましたが、自分の目標を選択する画面が表示されました。ここでCalmは、このプログラムを使う利点を表示しています。「自尊心の確立」から「幸せを増やす」まで、あらゆるものが提供されています。

これは優れたマーケティング戦略です。また、アプリの価値を最初に示すことでCalmに登録すべき理由を提供しているので、UXとしても良くできています。また「100種類以上のプログラムとエクササイズ」のような言葉は使ったり、特徴や機能をリスト化したりするのでなく、アプリを使った場合の最終的な結果が示されています。より良質な睡眠、不安の軽減、ストレス解消などのアプリを使うことで得られる利益を約束しています。

目標はそれぞれ明確な色分けがされており、アイコンもきれいな見た目のものが選ばれています。いくつかの目標をタップして、「続ける」を選択します。

登録/ログインの画面に来ました。この画面では、メールアドレスとFacebookのどちらでも登録が可能な標準的なテンプレートを使用しています。画面でもっとも目立つ特徴は、絵のように美しい背景です。山と澄んだ水辺の風景に、空のようなグラデーションが広がっています。

メールアドレスでの登録を選択すると、オンボーディングにおけるよくある画面がもう1つ表示されました。Calmは、ここでもプロフィールを作成する理由として「進捗を記録するため」という価値を明示しています。

アカウント作成後、Calmはアカウント作成画面とホーム画面の間に2つのインタースティシャル広告を挟んでいます。最初の画面は、Calmのフルバージョンを7日間トライアルできるという提案です。そして、機能の長々としたリストが添えられています。

この機能のリストは、私にとってあまり役立ちません。私はまだ、「睡眠について」や「日々のCalm」などの、アプリ内の専門用語を知りません。また、アプリを楽しめるかもまだわかりません。しかし、公平に考えてみましょう。Calmは無料トライアルを提供しています。なので、完全版のアプリ体験から始めたいというある一定のユーザーは、ここでコンバーションするのでしょう。

2つ目のインタースティシャル広告は、Calmに通知を許可するという、典型的な要求です。以前からの読者の方であれば、このタイミングが悪い妨害に対する私の個人的ないら立ちをわかっていただけるでしょう。通知の内容や通知を許可しなければならない理由を明かしてくれない場合は、特にいら立ちを感じます。

ホーム画面/チュートリアル

オンボーディングプロセスが完了したので、Calmのホーム画面に移動します。ログイン画面と同じ背景という簡素なページです。画面の右上に、アイコンが2つあります。1つは「自分のプロフィール」のように見えますが、もう1つはわかりません。

アプリの主要なナビゲーションは、画面下部に横並びに表示されています。オプションは音楽、瞑想、睡眠の3つだけです。瞑想がほかよりも大きいサイズで中央に置かれているので、瞑想が優先されていることが明確にわかります。ナビゲーションの上に「ジャーニーを始めましょう」というオーバーレイが出現しました。

アプリのチュートリアルは、モバイルアプリのデザインにおいても議論が起きるトピックです。チュートリアルが必要ならすでに失敗してしまっていると主張するデザイナーもいます。これはUXデザイナーの素晴らしい理想ですが、私は支持していません(CodalのUXデザイナーには、私に反対する人がいることも知っていますが)。

現状では、Calmのアプリ内チュートリアルは比較的面倒ではないです。プラットフォームの基本的なユーザージャーニーを必要最小限ガイドするもので、すべての機能や特徴の説明に時間をかけていません。下の画像のように、チュートリアルでは「Calmの7日間」という、初心者向けの瞑想プログラムを紹介してくれます。

Calmの最初のプログラムは、全部で4つのオーバーレイしかありません。しかし、私を夢中にさせてくれるものとして、うまく機能しています。UXデザイナーの中には私に賛同しない人もいるでしょうが、私はCalmのチュートリアルは優秀だと考えます。

音楽プレイヤー

ナビゲーションバーで表示されている通り、Calmはマインドフルネス向けに、瞑想、音楽、睡眠という3つの主要な機能を提供しています。これら3つには、目標ごとに別々のプログラムが含まれています。それぞれの音楽プレイヤーは同一のものを使用しており、UXケーススタディとしては完璧に近いものです。Calmの再生機能が評価に値するもう1つの理由は、標準的な音楽プレイヤーとは異なるという点にあります。

もっとも特徴的なのは、機能が非常に少ないという点です。ミニマリズム戦略にのっとり、Calmの音楽プレイヤーには再生/一時停止と停止の、2つのメインボタンしかありません。ボリューム調整や「お気に入り」機能など、必要なものはありますが、そのほかの機能はありません。

早送り機能がないのは、不便ではあります。Calmはプログラム中でスキップしてほしくないのでしょう。また、巻戻し機能は15秒間隔でしか使えません。このような機能不足は珍しいですが、Calmにとっては意味があります。

Calmの音楽プレイヤーは、一般的なユーザー体験からはかけ離れており稀な事例です。Calmは瞑想用アプリであるため、ユーザーがひっきりなしに早送りや巻き戻しをできるようにすべきではありません。

最終判定

私がCalmを使ったのは3日か4日間だけですが(瞑想が私には向いてなかったのでしょう)、全体的にCalmのユーザー体験には満足しました。コンテンツはうまく作成されており、カードベースのデザインの採用により、アプリ構成が良く行き来しやすいです。

初めて使うまで気付きませんでしたが、ヘッドフォンを接続すると、アプリの使用中に自然音が再生されていました。非常に気が利いています。

総合的に、CalmがAppleの2017年アプリオブザイヤーに選ばれた理由は、容易にわかりました。Calmのプログラムやコンテンツのユーザー体験はすべて、穏やかで瞑想的な雰囲気に包まれています。Calmの操作もシームレスな印象で、アプリのホーム画面を飾る湖に浮かんでいるかのようです。


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