チャットのUX向上のために初心者が気にしたい8つのこと

Roxanne Abercrombie

Roxanneはライブチャットやビジネスプロセス自動化を専門とする英国に本拠を置くソフトウェアハウスであるParker Softwareのオンラインコンテンツマネージャです。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Live Chat Software: The Quick & Dirty UX 101

チャットは、Webサイトにとって当たり前の存在になりつつあります。最近のほとんどのWebサイトには、ページの1番下に新しいチャットウィンドウを表示するボタンがあります。しかし、このウィンドウの提示は必ずしもその体験と一致するわけではありません。

実装が不十分な場合、チャットは補助ではなく迷惑になる可能性があります。Webサイトと連携ができておらず体験が止まってしまったり、リアルタイム性のない機能になってしまったりすることもあるでしょう。

では、チャットを通して良い体験を提供できているかを企業はどのように確かめればいいのでしょうか? ここでは、初級編を紹介します。

配置

まず何よりも、チャットボタンの配置が重要です。チャットボタンを、ユーザーが自分でスクロールしてヘルプにアクセスしなければならないような、コンタクトページの奥深くに配置しないようにしましょう。チャットは、すぐに利用できるようにしてください。これが重要です。

チャットにできるだけアクセスしやすくするには、見つけやすい一般的な配置にしましょう。サイドバーや小さなテキストのフッターリンクは避けてください。代わりに、すべてのWebサイトのページの右下に、固定のチャットボタンを置きましょう。

UXに関して言えば、チャットを使用するまでに要する努力は少ないほど良いでしょう。事実、世界中の消費者の78%が、インタラクションに必要な時間と労力が少ないブランドからより多く購入しています。78%という数字は、チャットを設置するときに覚えておくべき統計情報です。だからこそ、チャットは一般的に有効な場所に配置して、訪問者にとって馴染みあるものにしてください。

チャットボタン

Webサイトの訪問者は、どこにチャットがあるかだけでなく、どのような見た目かを知る必要があります。最近のデザインでは、チャットボタンにチャットだとはっきりわからない曖昧なアイコンを使う傾向にあります。視覚的には、浮いているスピーチマークのアイコンは格好いいかもしれません。しかし、実用性の面では、必ずしも共通の意味や認識をユーザーに伝えられないかもしれません。

サイトの訪問者がデザインの意味を理解できると決めつけないようにしましょう。「チャット」と書かれたチャットボタンは、謎めいたアイコンと比べると魅力的ではありませんが、はるかにわかりやすいです。また、Thomas Byttebier氏は、記事で次のように述べています。「疑問に感じたら、いつでも思い出してください。最高のアイコンとは、テキストラベルだということを。」

要するに、良いUXデザインとは推測を必要としないものです。最適なチャットボタンは、美しく実用的であり、なおかつチャットの場所をわかりやすく示すものです。「チャット」と書かれたチャットボタンがシンプルで上手にデザインされていれば、間違うはずがありません。

Webサイトとの統合

Webサイトとの統合は、デザインに関係しています。チャットボタンを最適な場所に配置し、適切にラベルが貼られていることが確認できたとしましょう。しかし、質の低いデザインだと、そのような良い体験が台無しになってしまいます。チャットは、Webサイトとシームレスに統合され、ブランドのルック&フィールに合わせて、自然にページに組み込まれているべきです。

チャットは、色からフォント、画像まで、すべてブランドのガイドラインに沿って調整する必要があります。Webサイトに立ち寄った訪問者が、チャットオプションを見てどのようなものか理解し、ブランドの個性を認識できるようにするべきです。まとまりのないチャットは、まとまりのないデジタル体験を生み出します。

ただ、チャットがWebサイトの壁紙の一部でなければならないと言っているわけではありません。チャット機能は直観的で、押し付けがましくないものにする必要があります。そのため、あなたの会社のカラーとスタイルを使い、チャットボタンに小さなモーションなどを追加して、エンゲージメントを高めましょう。

トリガー

チャットのエンゲージメントについて語る上で、積極的なチャットへの招待について触れないわけにはいきません。積極的(または動的)な招待とは、訪問者ではなく企業によって開始されるセッションです。カスタマージャーニーの重要な時点でチャットが開始されるもので、典型的な例は長時間滞在した訪問者に対するチャットです。戦略的に使用すると、積極的なチャットは、なんと105%のROIを獲得することができます。

残念ながら動的なチャットへの招待には、つねに優れたUXが適用されているわけではありません。多くのブランドには、新しいページに入るたびに自動的にチャットメッセージを表示するという不快な習慣があります。以前の記事で触れたように、このタイプの「エンゲージメント」戦術は、ユーザーを苛立たせます。

積極的なチャットを使ってWebサイト訪問者に良い体験をさせたいのであれば、招待が役立つと思われるときにのみ送信してください。つまり、訪問者が「デモの予約」ページを開いているときなど、もっとも歓迎されるタイミングでメッセージを送信するトリガーを実装しましょう。そうすれば、チャットのオファーは煩わしいものではなく、ユーザーにとって有益なものになるでしょう。

チャットウィンドウ

ここまでであなたは、チャットをアクセスしやすく配置し、ボタンとWebサイトの見た目をうまく統合し、慎重にトリガーを設定して、積極的ではあるが不快ではないサービスを提供してきました。現状、チャットのUXは良くなっています。

次は、チャットウィンドウ自体を検討する必要があります。チャットウィンドウは訪問者との会話が行われる場所なので、見やすく整然とした、使いやすいインターフェイスが不可欠です。さらに、統一された体験を生み出すには、ブランディングと一貫した外観が必要です。また、代理店の(実際の)画像や会社のロゴを加えることで、信頼性を高めることもできます。

チャットは、ユーザーのオンライン体験の一部であって、別物ではないということを覚えておきましょう。そのため、チャットユーザーがチャット内で会話を読むことができると同時に、サイトをシームレスに閲覧できるようにするべきです。つまり、ポップアップのチャットウィンドウではなく、インラインのチャットウィンドウを使用してください。インラインチャットとは、ユーザーが移動する各ページに埋め込まれていて、会話する際にWebサイトとは別のウィンドウに誘導する必要がないものを指します。

以上の要素をすべて組み合わせれば、チャットは最初から正しく機能します。Webサイト訪問者の33%は、質の低い問い合わせ機能や、反応のないものに不満を抱きます。しかし、代わりにチャットを導入することで、そのようなよくある不満に対処することができます。

セッション

これまでのことがすべて正しく行えていれば、Webサイトの訪問者はチャットで有益な体験ができているでしょう。良質な体験を維持するために、これまでのすべてと同じく、チャットセッション自体がスムーズに始まらなければなりません。

チャットセッションをスムーズにする方法の1つは、プレチャット調査です。すぐに会話を始めるのではなく、簡単なプレチャット調査によって、名前やニーズのような訪問者に関する必要な詳細情報を集めます。そこからチャットを関連部門につなぐことで、最初からパーソナライズされたサービスを提供できるのです。

ただ、訪問者との会話の間にあまり多くのレイヤーを設けないように注意しなければなりません。あまりにも多くの障害があるとユーザー体験を損なってしまいます。すると、長すぎるWebフォームがデータの入力を阻害するのと同じように、訪問者のチャットする気が失われてしまいます。不必要な詳細情報は求めないようにし、すべてのチャットリクエストを自動的に受け入れるようにしましょう。(チャットのユーザーは長い時間待つことを想定していません。)

訪問者がチャットの順番待ちをしなければいけない場合は、順番待ちの間待ち時間を更新するようにしてください。さらに、一度繋がったら、最長でも1分以内にはチャットユーザーに返信するように目指しましょう。

対話

次は会話です。会話はチャット体験のベースになります。ここでもっとも重要なことは、一貫したトーンを保つことです。一貫した体験にするために、チャットセッションで使用される対話は、訪問者がブランドとのほかのタッチポイントで感じるトーンと一致させる必要があります。

Mark Wheatley氏は著書『The Conversation Engine』で、「ブランドとはその企業のルック&フィールであり、チームが顧客とやりとりをする態度である」と著しています。チャットでは、もしブランドが楽しく風変わりなものであれば、チャットオペレーターは柔らかい口調で、GIFや絵文字を使うようにするべきです。一方で、ブランドがよりフォーマルなものであれば、静かで簡潔かつ要領を得た対応をするように訓練すべきです。(もちろん、チャットユーザーの気分と問い合わせの理由を念頭に置いた上で対応しましょう。)

トーン以外に、タイピングインジケータを使用するといった小さな気配りがあると、チャットユーザーはやり取りの中に留まり、相手が現在進行形でセッションに積極的に関わっていることを知ることができます。また、チャットアラートは賢く使用しましょう。あまりにも派手だとユーザーを苛立たせる危険があります。逆に、あまりにも控えめだとユーザーが新しいメッセージを見逃し、会話の流れが失われてしまうかもしれません。

難しい理屈ではありませんが、このようなあまり保守的でない注意事項は、チャットのUXを強固にすることもあれば、台無しにしてしまうこともあります。

サービス

たとえ素晴らしい技術があったとしても、高品質なカスタマーサービスによる支えがなければ、チャットUXは崩壊するでしょう。消費者にとってもっとも重要な事項は、企業にすばやくつながること(80%)と、質問が解決される速度(74%)です。

幸運なことに、チャットには一般的に、ユーザーにとって迅速で効率的な体験を保証するさまざまな機能が備わっています。たとえば、入力プレビューを使用することで、先手を取ってアクションすることができます。また、定型文の回答を使用することで、よくある回答や説明をすばやく送信することもできます。訪問者の既存のCRMデータを集めて、感情分析などの便利なツールを使用して、感情を特定することもできるでしょう。

しかし、チャットの最後には、やはり有能でフレンドリーなオペレーターがいなければ十分ではありません。チャットの見た目が洗練されていて、パフォーマンスが優れていても、サービス自体が不十分な場合、ひどいユーザー体験になってしまいます。この問題を解決するためのUXのショートカットや技術的なヒントはありません。ただオペレーターを訓練するしかないのです。

拙速な改善案

Jared Sinclair氏の言葉を言い換えると、優れたUXとは、プロセスであって製品ではありません。チャットソフトウェア自体は、Webサイト訪問者とはほとんど無関係です。ユーザー体験に影響を与えるのは、設定とその背後にあるサポートなのです。

優れたチャットであれば、Webサイトの訪問者とコミュニケーションを始めることができ、UXにとって有益です。逆にひどいチャットは、良くてユーザーを失望させ、最悪の場合ユーザーに大きな害を与える可能性すらあります。そのため、以上の簡単なまとめを駆使して、チャットUXのために手を動かし始めてください。あなたの体験はチャットで話す価値のあるものでしょうか?


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