効果的なユーザーインタビューのためのガイドライン

Sarah Khan

Sarah Khan氏は、メリーランドのボルチモアに拠点を置くUXコンサルタントであり、ライター、編集者です。彼女はいつも新しいアイデアや日々のもののユーザーエクスペリエンス向上のための機会を探しています。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

A Guide to Interviewing Users

私は、新聞記者として自分のキャリアを始め、亡命中のチベットの首相から街頭の人々まで、何百ものテーマのインタビューを行ってきました。インタビューを通して新たな視点や立場を発見し、考え方が大きく変わったこともあります。

そして、比較的近年に登場した仕事であるWebデザインとUXデザインにおいても、新聞記者と同じインタビュースキルが役立つとわかったのは嬉しい驚きでした。人々にとって役立つ製品を作りたいと考えるプロダクトデザイナーにとって、ユーザーインタビューは情報の宝庫です。人間中心設計においては、最終顧客にとってなにが効果的かということがすべてです。そのため、複数のエンドユーザーと1対1で話すことは大事なことです。

たとえば、私がUpwork(編注:フリーランスのクラウドソーシングサービス)のリデザイン案を作ったとき、まずサービスを利用しているフリーランサーとサービスに興味を持っているフリーランサーの3人にインタビューをしました。これは、現在のシステム上でもっとも大きな欠点を見つけることを目的としていました。Upworkで困っている点をフリーランサーたちに聞く中で、彼らは自分たちが人間ではなく商品のように扱われていると感じていることがわかりました。そして、私はこの問題こそがデザインによって最初に解決すべきであると結論付けました。

フリーランサーたちへのインタビューがなければ、このような重大な結論に至ることはできなかったでしょう。そして、インタビュー後に私はカスタマーサービスとテクニカルサポートの改善もUXデザイン計画に含めることを決めました。これはインターフェイスとは関係ないですが、体験をより良いものにしてくれるでしょう。

この記事ではインタビューをするメリットと正しいインタビュー方法を紹介します。これを知ることで、デザインの発見段階でもっとも重要な情報を得ることができるでしょう。

なぜUXデザイナーはインタビューをするのか

ユーザーインタビューはユーザー調査の1つの方法に過ぎませんが、大抵の場合はほかの調査方法よりも質の高い知見を得ることができます。

インタビューは、データセットや調査レポートからは分析しにくい実際のタスクや状況に関する知見を、ユーザーの思考や感情、不満、エピソードといった豊富な定性的情報によって提供してくれます。

クライアントとの仕事や私自身の個人的なプロジェクトにおいて、私はUXデザインを行う前に、少なくとも2人の既存または潜在顧客と話すよう心掛けています。そうすることでまずは製品とその顧客を確認します。製品ごとに顧客は異なる課題を抱えており、実際に顧客と話さないと課題を解決するのは困難です。

そして、インタビューは意識をステークホルダーから顧客へと向けるのにも役立ちます。人々が見たいだろうと自分が思っているものをデザインするのではなく、インタビュー調査結果によって裏付けられた改善策に焦点を当てることができます。

次にインタビューを設定し、インタビュー時間を最大限に活用する方法について話しましょう。

インタビューを最大限に活用する方法

以下のステップは、各インタビュー時間を最大限に活用するのに役立ちます。

  1. まず、ユーザーのインタビューに入る前に、自分自身にいくつか質問をしてください。インタビューを通してユーザーから得たい情報を確認し、さらにその情報がUXデザインプロセスにおいてどのように役立つかを明確にしましょう。
  2. 次に15分ほどかけて、参加者への質問リストを作成しましょう。もし参加者が事前に絞られていないのであれば、職業や住まい、年齢層、教育レベルなどが最初の質問になるでしょう。残りの部分は、改善しようとしているタスクやシステムに焦点を当てた質問になる可能性が高いでしょう。たとえば、システムやプロセスにおける弱点を発見しようとする場合、以下のような質問が重要な出発点になるかもしれません。

    ・コンテキストを把握する:あなたは何をやろうとしていますか。
    ・ワークフローを分析する:あなたは現在どのように行っていますか。
    ・機会を探す:どうやって行うのが良いですか。

    また、質問はバイアスを避けるために中立的であるべきです。企業やインタビュアーが聞きたいことに誘導してはいけません。さらなる質問が必要な場合は、ハーバード大学の、 starter questions for user researchを参照してください。

  3. 適切な参加者を集めてください。通常、インタビューを3〜5回行うことで実用的な知見が得られます。参加者の募集方法は、過去の製品ユーザーやベータ版ユーザーから募るという簡単なものから、インタビューの報酬を与えることで参加者を募る複雑なものまであります。複雑な場合はインセンティブが鍵となります。はちみつがあるとより多くの虫が集まってくるのと同じことです。
  4. インタビューを実施する際は、参加者の同意を得てからその様子を記録し、先入観を持たずに1対1でのインタビューを行いましょう。元々の質問の台本から逸れても問題ありません。誤った反応を避けるために、「あなたはどのように感じますか」といったフォローアップの質問をしてください。ライターのNick Babich氏は、参加者と信頼関係を形成し、答えに正解や間違いは存在しないということを説明するためのリストをまとめています。参加者を最初にリラックスさせることで、自分の経験に関してより率直になりやすくなるでしょう。

非言語部分のヒントも確認してみましょう。ボディランゲージは、参加者が実際にどのように感じるかを解読するのに最適な方法です。なぜ参加者が呆れたのか、笑ったのか、嘆いたのか、またその他の反応の理由を聞いてみてください。参加者には、感情的な反応を伝えるための重要な話があるかもしれません。その話が何であるかを知ることはとても重要です。

このユーザーは、非言語的な方法で不満を表現しているのかもしれません。

インタビューでしてはいけないこと

多くのことは、ユーザーインタビューで役立たないだけでなく、情報を信頼できないものにしてしまいます。以下のような項目に注意してください。

誘導したり偏見を持った質問をしない

「この機能の何が問題ですか」や「何がきっかけで購入したいと感じますか」といった質問は、ユーザーの製品に対する感情や反応を誘導してしまいます。できる限り中立的な質問にしましょう。インタビューでは、あなたはオブザーバーであり、参加者の反応を理解するためだけの存在であることを覚えておいてください。

中断したり、沈黙を破ることはしない

カジュアルな会話にするのは魅力ですが、インタビューの目的は回答と知見を得るということを忘れないでください。沈黙を保ち、会話のほとんどは参加者にさせましょう。繰り返しますが、あなた自身はインタビューという状況においてオブザーバーであるということを思い出してください。私はこのルールを守ることで多くの個人的な逸話や物語を引き出してきました。その中には、不運な銀行の顧客が自分の銀行口座を解約するために、銀行に「私は死んだことにして」と言ったことなどもありました。私はその後ユーザーのオフボーディングの悪夢について書き、同じ話を引用しました。

参加者に入れ知恵をしたり、自分の意見を言ったりしないこと

インタビューされる人のバイアスの話に戻りますが、インタビューされる人に情報を与えようとすることは、裏目に出てしまうかもしれません。インタビューされる人々は、製品をはっきりと理解していないため、自分の意見に価値がないと感じてしまうかもしれないのです。

インタビューが終わったら

インタビューの成果は、ユーザーペルソナやユーザージャーニー、プロダクトデザインへ知見をもたらすでしょう。インタビューは、予想していなかった知見を提供したり、隠された課題を明らかにするでしょう。これによって、チームがこれまで考えられていなかった新機能に関してやる気を出すかもしれません。

私は、小規模なビジネスオーナーのためのアプリをデザインする開発者たちと仕事をしたことがあります。ユーザーフィードバックのインタビューをして聞いてみなければ、私はある重要なことを知り得なかったかもしれません。それは、顧客のほとんどがあまりテクノロジーに精通していなかったということです。多くの人々が知識不足のためにアプリを進めることに不安を抱いていたと知ったときは驚きました。データセットだけを使いユーザーがどのような人物なのかを知るのは難しいでしょう。

このユーザーの方々には、特別なデザイン解決策が必要でした。一貫した色とスタイルのボタンや、やりすぎでないUI要素ごとの十分なコピー、ソフトウェアを使用する際の全体的な安全性と信頼感を伝えようとするなどが挙げられます。また、定期的にユーザーからフィードバックを収集し、デザインを繰り返し改善することで継続的に体験を調整しました。

定期的に顧客からのフィードバックを求めることは、ユーザーとの強いコミュニティを構築するための鍵となります。チームとのやりとりを楽しんで、製品が成功することを心から望む顧客も同じく重要です。企業側が聞く姿勢を示してくれていると感じたユーザーはロイヤリティが高く、リピーターになる可能性が高くなります。

UXデザインとは実際にデザインをするのと同じ程度に関係を構築するものだと考えます。ユーザーと強い繋がりと信頼感を築くことで、そのメリットは双方に波及するのです。


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