どんなデザイナーの市場価値が高い?最近のデザイナーの年収事情を聞いてきた

三瓶 亮

1983年東京生まれアメリカ育ち。ガラケー時代からモバイルコンテンツの企画・デザインなどに従事。現在はUX MILK編集長/プロデューサーとしてメディア、イベント、関連サービスなどの企画やデザインをしている。パンクロックとゲームが好き。Facebookはこちら

みなさんは仕事において、やりがいを重視しますか? それとも年収を重視しますか?

デザイナーはお金よりもやりがいを重視する方が多い気がするのですが、今回のテーマはデザイナーのリアルな年収事情についてです。

市場価値が高いデザイナーとはどのような人なのか、クリエイター専門の転職エージェンシーであるクリーク・アンド・リバー社の渡辺さんに聞いてきました。

左:UX MILK編集長 三瓶、右:株式会社クリーク・アンド・リバー社 執行役員 渡辺氏

登場人物
渡辺 和宏
株式会社クリーク・アンド・リバー社 執行役員 
クリエイター・エージェンシー・グループ グループマネージャー
プロフェッショナル・エデュケーション・センター センター長

2002年 中途採用で株式会社クリーク・アンド・リバー社 入社
クリエイティブ(Web、モバイル、ゲーム、映像、広告)業界特化型の人材紹介事業を担当。
自社Webメディア運営、教育事業部門のグループマネージャーを兼任。

デザイナーの年収は上昇傾向

── 今回は、主に「年収」にフォーカスしてお聞きしたいと思います。まず、最近のデザイナーの年収の傾向について教えてください。

渡辺:弊社にある求人データベースより、求人票の提示年収の中央値をもとに平均年収を出してみました。すると、Webデザイン関連求人の平均年収は2007年は492万円、2017年は542万円で約10%上昇しています。

あくまで求人票における提示年収の中央値ですが、国税庁の「民間給与実態統計調査」では全職種の平均年収が2007年と2016年を比較すると約1%下がっています。その中で10%も上がっているのですから、「Webデザイナー」という職種の価値は上がってきていると思います。

── よくデザイナーの年収が低いと言われますが、全体としては上昇傾向なのですね。

渡辺:全体としてはそうですね。さらにUXデザイナーに絞って調べてみると、「UX」や「ユーザーエクスペリエンス」という単語が求人票に出てきたのは約10年前の2007年頃からです。企業からUX関連のニーズが出てきたのは2007年前後からと言えそうです。

また、職種名にUXという言葉が入った求人募集に限ると、求人票に提示されている年収の中央値は591万円でした。これからはUXデザインが必要とよく言われますが、年収面から考えてもUXデザインのスキルが必要と言えそうです。

── ただエンジニアやディレクターと比べるとデザイナーはやや不遇な感じがするのですが、実際はどうでしょうか?

渡辺:その感は否めないかもしれませんね。本当に優秀なエンジニアは、一般的なエンジニアと比較して生産性が10〜100倍くらい違うとよく言われます。そういう意味で、エンジニアのほうが評価をしやすい=給与に反映しやすいですし、会社の業績に与えるインパクトが大きいと思っている企業さんが多いのではないかと思います。

── 評価のしやすさとで考えるとそうなりがちですよね。一方で、デザイナーがより経営に入っていくべきという話も増えてきましたよね。

渡辺:最近はデザインのトップとしてCDO(Chief Design Officer)などの役職を置く企業が増えつつありますね。

一方でエンジニアの場合は、だいぶ前からCTO(Chief Technology Officer)という役職が一般的ですよね。やはりそういった役職があったからこそ社内でのプレゼンスも高まり、エンジニア全体の給料も上がりやすくなったのではないかと思います。

── CDOは最近よく聞くようになりましたが、まだまだ一般的ではない気がします。

渡辺:まだ一部の企業のみだと思います。しかし、CDOのような役職が出てきたということが大事だと思います。UXデザイナーがここまで浸透したように、CDOという役割もこれから広まっていくのではないかなと。

CDOのような役割が必要であると多くの会社に認識されていくのは遠い将来ではないと思っています。そうなれば、いまよりもデザインの価値を認める会社が増えて、年収も上がるかもしれませんね。

企業が年収800万円を出すデザイナーとは

── 今回、デザイナーに高年収を提示している企業さんから事前にアンケートをとってきました。これを見ていかがでしょうか?

質問:貴社が年収800万円以上のオファーを出すデザイナーには、どのような特徴がありますか?
(回答の要約)
  • マネジメントスキル
  • ビジネス志向を持っている
  • 経営戦略の議論ができる
  • 事業を生み出せる
  • 組織を立ち上げられる
  • デザインを啓蒙し社内外を巻き込める
*回答:デザイナーに高年収を出している企業6社

渡辺:こうなりますよね。経営側からすると、事業や組織をデザインできるとか、デザインの価値を社内に浸透させられるとかといったことを求めたくなるので、企業所属で上の年収を目指すなら、ここから目を背けてはいけませんね。

── 実際、どういう方が年収800万円以上をもらっているのですか?

渡辺:まず前提として、年収はスキルや経験で決まると考えている人が多いのですが、実際はどの企業・業界にいるかというほうが年収への影響が大きいです。なので、年収だけを考えるのであれば給与水準の高い会社に行くのが良いと思います。たとえば、外資の広告代理店にいる人たちは相対的に高いです。

ただ先程のアンケート結果からもわかりますが、一部の例外を除き、デザインスキルだけで年収800万円を目指すのは難しいです。年収が高いポジションにいる人のほとんどは、デザインに加えてマネジメントやマーケティングなどプラスアルファとなるスキルを持っていますね。

デザイナーがブランディングやマーケティングを担う時代

── 最近、デザイナーがプラスアルファのスキルを要求されることが多くなっていますよね。いろいろ求められて大変な気もしますが。

渡辺:なっていますね。実際、デザインからブランディングやマーケティングの方にキャリアが広がってる人たちもいますね。

でも、これはデザイナーの方にとってはチャンスでもあると思います。会社全体のブランディングにデザインの力で貢献していければ仕事の幅も広がり、年収が上がるチャンスも出てくると思っています。

── 最近だとデザイナーとして有名な割石(わりえもん)さんやタカヤ・オオタさんは、プロダクトデザインから始まりブランディングやCIデザインをするようになっていますよね。

渡辺:そうですね。ただ、現実的にはプロダクトデザインをやってた人を中途採用でいきなりCIデザインのチームに招き入れることはあまりないですね。

大きな企業だと、ブランディングやCIデザインの担当は基本的には広告代理店などで経験を積んだ人を探す人が多いので。

── そういう意味では、先ほど挙げた2人は夢があるロールモデルですよね。

渡辺:そうですね。なので、現在プロダクトデザインをしていて、これからCIデザインなどをしたい、仕事の幅を広げたいといった場合は、スタートアップなど比較的小規模な会社であればそういうチャンスがいっぱいあって良いかもしれないですね。スタートアップなら、それこそ名刺のデザインのような仕事もあるので。

デザイナーのキャリアパス

── デザインスキルだけでは難しいのはわかりましたが、実際のキャリアパスとしてはどのように考えればいいですか?

渡辺:答えとしてはつまらないかもしれないですが、年収を上げるためには管理職になるか、デザイン+αの仕事に幅を広げるか、スペシャリストのキャリアパスが用意されている企業に行くか、デザインスキルを突き詰めてフリーとして独立するくらいしかないですね。

ただフリーになる場合、それこそ定年の65歳までやる決意があるかどうかが大事ですね。転職支援をしているなかでも、20代で独立して10年間フリーでやってきたけど、最近仕事が減ってきていて社員になりたいという人が結構多いのですが、これはキャリアの築き方としてはあまり良くないです。

昔ほどではないですが、フリーランスの人は会社組織に馴染めずに辞めたという認識で見ている会社もあるので。あとは、単純に年齢を重ねているのに組織や人のマネジメント経験がないと評価はされにくくなってしまいますね。

── 企業所属の場合はやはり管理職を目指すのが一般的なのでしょうか? モノづくりが好きで、あまりマネジメントに興味がない人には厳しそうですが。

渡辺:マネジメントのラインに乗らないと給料が上がらない会社は多いです。

ただ、スペシャリストのキャリアパスがきっちりある会社もあるので、そういう会社に転職するのもひとつの手かもしれないですよね。

── いまマネージャーではない人もいると思うのですが、そういう人に対してはどのようにアドバイスをしていますか?

渡辺:マネージャー視点を持つことですね。「私はマネージャーではないので」と言っているうちは一生マネージャーになれないと思うんですよね。

たとえば、後輩がいるのであれば「自分がもしマネージャーだったら」と考えて後輩と接すると良いと思います。勉強会をしてみるとか、マネージャーとの橋渡し役を担ってみるとか、マネージャーが担っている一部の仕事をメインで任せてもらえるように提案してみるとか、できることはいっぱいあると思います。

それを見た上司が「マネージャーもできそうだな」と思えば、そう遠くないうちにマネージャーになれるでしょう。仮にそれができない環境だったら、いよいよ前向きに転職を検討しても良いと思います。

デザイナーのキャリアの選択肢は豊富

── 「デザイナーのキャリア」と言っても、必要となるスキルやキャリアの積み方も多様になってきていますね。

渡辺:そうだと思います。言い方を変えれば、選択肢が豊富になってきているとも言えますね。

だからこそ、ご本人が気づかないキャリアのご提案を我々エージェントが行って、キャリア選択の参考にしてほしいと思っています。もしキャリアについて悩んでいるのであれば、我々のようなエージェントを使いどのような選択肢があるのかをまず聞いてみるのもひとつの手だと思います。

── エージェントに相談するにあたり、あまり良くないエージェントに当たってしまったという話を聞くこともあるのですが、ずばり「駄目なエージェントの見分け方」はありますか?

渡辺:そうですね、まず大量に求人を送ってくる会社は要注意です。要望をちゃんと踏まえて求人を選んでいるのであれば、何十枚も求人を提案することは本来あり得ないです。

さらに今回の転職だけでなく、もう少し先のことまで一緒に考えてくれているかですね。具体的には、面談で5年後10年後のキャリアまで考えてくれるかも判断ポイントになりますね。

── 何十枚も求人をもらって自分で選ぶなら、最初から求人メディアで応募すればいいと思いますよね。

渡辺:そうですね。単純に条件で検索するなら求人メディアのほうが手っ取り早いですよね。

なので、エージェントは条件を聞いた上でさらにその先の理由も聞くことが大事だと思います。たとえば、大手企業を志望している場合は「そもそもなぜ大手企業に行きたいのか」ということを聞いた上で提案するべきです。場合によっては現在の企業に残った方が良いですよねと提案することもあるので。

── 話している内に考えが変わるケースは多いのですか?

渡辺:よくあります。最近も、ある転職希望の方と話をしたのですが、結果、いまの会社で出来ることがたくさんあるので、あと2年くらい働いて結果を出してから転職を考えましょうとなりました。転職までの間は定期的にお茶でも飲みましょうみたいな。

── あまり転職を考えていない段階でも相談していいってことですよね。

渡辺:もちろんです。転職を考えてないときでも、お茶を飲みに行くカフェみたいな気軽な感じできて欲しいです。

転職支援といった視点ではなく、他社のことを知ってもらったり、横のつながりを作ってもらうことを目的に、同じ職種の人、例えば各企業のUXデザイナーの方を集めて飲み会を開いたりしています。そういったある種のコミュニティづくりもしていますので、そこに参加してもらうだけでも良いと思っています。

ただ、気軽にお茶を飲みに来てくださいと言っても構えてしまう人は多いので難しいところですね。

── 今回の記事では、「お茶を飲みに行きたい」という選択肢を作りましょうか。

渡辺:それいいですね。今日はいろいろとお話をさせていただきましたけど、あくまでも概要、一般論です。デザイナーに限らずキャリアは人それぞれなのでカジュアルに相談してもらえたら嬉しいですね。

── 本日はありがとうございました。

・・・

クリーク・アンド・リバー社では、気軽なキャリア相談を受け付けています。「お茶を飲みに行きたい」という選択肢も用意しているので、興味のある方は以下のフォームより相談のお申し込みをしてださい。

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提供:株式会社クリーク・アンド・リバー社
企画制作:UX MILK編集部


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