デザイナーであれば自分のポートフォリオを作っている人も多いと思います。しかし、ポートフォリオは特に形式も決まっていないため、どのように作れば良いのか疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は「ポートフォリオの作り方」について、ポートフォリオで企業と出会える転職サービス「ViViViT(ビビビット)」を運営する、田中さんと室内さんにお聞きしてきました。
登場人物
株式会社ビビビット デザイナー 田中 秀征 氏
株式会社ビビビット マーケター/就職アドバイザー 室内 あり紗 氏
ポートフォリオは仕事を得るためのもの
── すごく初歩的な質問ですが、ポートフォリオとはなんでしょうか?
田中:求職中のデザイナーの方に「ポートフォリオの定義ってなんですか?」と聞くと、「自分の作品をまとめた作品集」という答えがよく返ってくるんです。しかし、その定義ではアートブックと同じになってしまい、目的がややズレてしまいます。きちんと定義するのであれば、ポートフォリオとは「仕事を得るためにデザインされた作品集」だと思います。
なぜかと言うと、定義の中にデザインのターゲットが含まれているかどうかが重要だからです。仕事を得るための作品集と定義すると、ターゲットは仕事の発注者や採用担当者です。そして、そのターゲットを研究した結果のアウトプットがポートフォリオになります。
── 「仕事を得るため」という意識は大事そうですね。採用担当者の方はポートフォリオでどのような項目を重視しているのですか?
田中:以前、ViViViTに掲載してくれている企業の中の約100社に「ポートフォリオでよく見ている項目」をアンケートで聞いてみたのですが、その結果は以下の5つでした。
- 作品コンセプト
- ターゲットユーザー
- 工夫したポイント
- 制作時間
- 使用スキル
── 企業さんも割と細かく見ているのですね。こういった項目を踏まえて、どのようにポートフォリオを作ればいいのですか?
田中:最近は、プロジェクトベースでポートフォリオを作る人が多くなってきたと感じています。従来のポートフォリオは、作品のビジュアルを最初にドンと見せてタイトルが書いてあるだけのアートブックのような感じだったのですが、最近はプロジェクトベースで先程言ったような項目を書くポートフォリオが増えてきています。
その理由は企業さんがデザイナーに対してただ手を動かすだけでなく、企画など上流工程でのコミュニケーションを求めるようになってきていることにあると思います。
── プロジェクトの上流工程だけ担当する場合、最終的なビジュアルに関わってないこともありますが、そういうプロジェクトもポートフォリオに載せていいのですか?
田中:調査や企画フェーズで関わったプロジェクトでもポートフォリオに載せたほうが良いです。また立ち上げから携わっているプロジェクトと途中から入ったプロジェクトは、分けて考えた方が良いです。
立ち上げから関わっているのであれば、ビジネスニーズをしっかり汲み取ってデザインに落とし込んだということを説明するのが大切です。
具体的には、メインビジュアルやコンセプト、ターゲット、提供できる価値、フローの検討など立ち上げの過程がわかるように書いた方が良いと思います。ペルソナやカスタマージャニーマップなどがあれば絶対入れたほうがいいです。
── UIデザインのポートフォリオにおいて、特に気をつけるべきことはありますか?
田中:UIデザインの場合は、どのような思考過程でデザインをしたのかが重要です。ユーザーリサーチの結果などを踏まえたペルソナなどがあると説得力が増します。
あとは、載せることができるなら具体的なKPIは書いたほうがいいです。
── たとえば、担当したプロジェクトのKPIが悪くても書いたほうがいいのですか?
田中:悪くても問題ないと思います。KPIはもちろん改善されているほうが良いのですが、大事なのはKPIを見ながらデザインを作り改善のサイクルを回しましたというアピールをすることです。
ポートフォリオは見た目より情報設計が大事
── 先程、ポートフォリオでよく見られる項目についての話がありましたが、実際どのくらい採用担当者はポートフォリオを見ているのですか?
田中:同じく求人企業にアンケートで「ポートフォリオをどれくらい時間かけて読みますか?」と質問をしたのですが、過半数以上が「1つのポートフォリオにかけるのは5分以内」という結果でした。
室内:1日で何十冊ものポートフォリオを見ている企業さんもいるので、やはり見る時間は短くなってきますね。
── 見る項目は多いけれど、5分程度しか見ないものなんですね。
田中:チェックする項目が決まっていて、きちんと書かれていない作品はどんどん弾いているのだと思います。
あと当然ですがポートフォリオは最初のページから順番に見られるので、載せる案件の順番も大事です。たとえば、UIデザイナーになりたいたいのに、イラストを最初に載せていたら情報設計がなっていないということで弾かれてしまいます。行きたい会社と職種にあわせて、ポートフォリオの構成を変えるのがベストです。
── ポートフォリオの情報設計が大事なのですね。
室内:自分がデザインするサービスでは情報設計をきちんと考えるのに、ポートフォリオだとその視点が抜け落ちてしまっていることがよくあるんです。ポートフォリオの1ページ目はLPのファーストビューと同じで、見ている人の気持ちをキャッチできるように考えて構成しないといけません。
あとは、作品を時系列で載せるのは推奨しません。最初に載せるのは、一番自分のことをアピールできる作品にするべきです。
田中:もう一点、情報設計について付け加えると、ポートフォリオは面接で使うプレゼンツールでもあるので、話しやすい構成にすることも重要です。たとえば、相手に見せながらだと自分は逆向きに見ることになってしまうので、どこに何があるかを自分が把握しやすい構成にすると良いですね。
── 情報設計はその通りだと思うのですが、ポートフォリオ自体の見た目はそこまで重視されないのですか?
田中:ビジュアルにこだわることももちろん大事ですが、まずは情報整理をきちんとすることが重要です。
あとは人事の方も「作品のクオリティがすべてなので、ポートフォリオの表紙を凝る必要はない」とよく言っているので、ポートフォリオに凝る前に自分の作品のクオリティに時間を割くべきです。
── 料理と皿みたいな感じですかね。皿に凝るのではなく、まず料理を頑張るべきという。
田中:そうですね。有名なフリーランスの方だと特定の案件を見た企業から仕事が来ることがあると思うのですが、社員採用も本質的には同じです。ある作品が採用担当者の目に留まり、採用されるということはよくあるので。
室内:企業さんは「あの作品を作った人だよね?」みたいな覚え方をしていることもあるので、自分の代表作は重要ですね。
ポートフォリオのよくある疑問
── 次に、よくある疑問についてです。面接には紙のポートフォリオを持っていくべきと聞くのですが、デジタルのポートフォリオでは駄目ですか?
田中:最近はデジタルでもOKな傾向がありますね。実際、アンケートで「ポートフォリオという形にこだわりがあるかどうか」と聞いたところ、「こだわりはない」という回答が68%くらいでした。
── 3割くらいの企業さんは紙のポートフォリオが良いと言ってるということですか?
田中:アンケート対象には、紙媒体のグラフィックデザイナーを募集している企業さんも含んでいるのでこのような数字になりました。Webやアプリのデザイナーを募集している企業さんであればデジタルで良いと思います。
室内:ただUIデザイナーが紙だけでWebサイトを紹介するのには限界があります。なので、紙のポートフォリオが必要な場合、サイトURLをQRコードで載せておき、直ぐアクセスできるようにしておくと良いです。
── アプリやWebだとインタラクションもあるので、なおさら紙だと難しいですよね。たとえば、プロトタイピングの共有URLでもいいのですか?
田中:そうですね、それがあった方が間違いなく評価高いです。
── 次に、守秘義務がある作品はどのように扱えばいいですか?
室内:守秘義務は守ってくださいとしか言い様がないですね。そういった実績は、ビジュアルや具体名は載せずに「大手飲料水メーカー商品LP」のような形で実務経験として載せておくと良いです。
あとは、そのプロジェクトで使ったスキルを駆使して、自分でサイトを作るというのもおすすめですね。
デザイナーが一生使えるポートフォリオサービス
── 面接ではデジタルポートフォリオでもOKとのことでしたが、ViViViTさんのようなサービスで作ったポートフォリオでも問題ないのでしょうか?
室内:ポートフォリオサービスでも問題ないです。先程の話にもありましたが、採用担当者が判断するのは作品のクオリティが大半なので。
ViViViTの場合、ポートフォリオを見られるのはViViViTを使っている企業さんだけなので基本的には非公開ですが、専用URLを発行してそのURLを知っている人だけに共有することもできます。
なので、ViViViTを使っていない企業さんにエントリーするときでも、どんどん使って欲しいなと思っています。
── ViViViTは学生の就活サービスというイメージがありましたが、現在は転職も扱っているのですか?
室内:はい、今では大半の企業が中途採用を行っています。今年の初めまで中途採用向けのサービスとして「ViViViT Career」を運営していたのですが、デザイナーが1回アカウントを作ったら一生使えるようなサービスにしたいと考え「ViViViT」に一本化しました。
いまは就職活動中の学生さんも居れば、ベテランデザイナーの方もいるサービスになっています。
── 今年に入って変わったのですね。そのほか、ViViViTならではの特徴などはありますか?
室内:仕事に関する相談ができるサポートアカウントというものがあります。たとえば、ポートフォリオに関する疑問についてアドバイスを差し上げたりといったことをしています。
ポートフォリオに関すること以外にも、「ブラック企業に勤めているのですが、どうすればいいですか?」みたいな相談もありますね。できる限り親身に考えて返信しています。
── 中の人は大変そうですが、気軽に相談できるのは良いですね。
田中:あとは、ViViViTを使う1番の楽しさは、企業さんから作品を評価されることで創作意欲が満たせるという点だと思います。
企業がポートフォリオの作品をお気に入りする機能があるのですが、一括お気に入りのような機能はないため、企業の方もしっかり作品を見た上でお気に入りしています。なので、自分の作品がお気に入りされるとやはり創作意欲が湧いてきますね。実際、そういう声はTwitterなどでよく頂いています。
── ちゃんと見られて評価されるのはアウトプットの楽しさに繋がりますよね。
田中:そうなんです。逆に作品のレベルが低ければ、全然アクションがこない場合もありますね。そういう場合は、改善をすることでアクションが増えるので、そういったPDCAを回すこともできます。
なので、いま転職を考えていない人にもぜひ使ってもらいたいサービスですね。
── 特にポートフォリオを作っていない人は使ってみると良いかもしれないですね。ありがとうございました。
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ViViViTとは?
「作品を投稿して企業と出会う」をテーマにした転職サイトです。
ViViViTの使い方
① ポートフォリオを作成
作品を投稿するだけで簡単にポートフォリオを作成できます。ポートフォリオの作り方で悩んだらサポートアカウントに相談もできます。
② 作品ベースで企業とマッチング
自分の作品を気に入った企業から「話したい」を押されます。気になる企業であれば、自分も「話したい」を押すことでマッチングとなります。
③ メッセージでやりとり
マッチした企業とざっくばらんに話せるチャットルームを用意しました。気になることもカジュアルに聞くことができます。
提供:株式会社ビビビット
企画制作:UX MILK編集部