UXとは何でしょう? 多くの人は、UXとは製品がどのように機能するかというユーザビリティのことを指すと思いがちです。しかし、UXは「有用性」より、「使用感」が全てなのです。ユーザビリティに加えて感情的な関係性を考慮することで、満足のいくUXを作り上げることができるのです。
UXは、ユーザビリティではなく感情的なもの。
「楽しい(Delight)」という言葉は、製品を使う上で心地よいと感じる瞬間について表すためによく使われます。楽しみがあれば、製品をより魅力的にできるのです。これはデザインをする際に配慮すべきコアな要素です。この記事では、楽しく、わくわくするようなUXを作り上げるためのコツをいくつか紹介します。
楽しいひとときを作り上げる
ユーザーを楽しませるようにデザインすることはつまり、ユーザーと感情的なつながりを築き、デザインの背後に実際に人間が存在することを思い出させることです。
素晴らしいUXでユーザーを喜ばせる5つのコツを紹介します。
1.パーソナライズされた体験
アプリ内で素晴らしいUXを作り上げるために重要な要素として、ひとりひとりに合わせて作られたコンテンツが挙げられます。Webサイトやアプリを開いたときにユーザーが欲するのは、自分自身のニーズに合わせて作られた体験なのです。
例:世界でもっとも訪問者が多いWebサイトやサービスが、どのようにパーソナライゼーションを使っているか考えてみてください。たとえば、Amazonは購入履歴や閲覧履歴に基づいて、オススメ商品をリストアップします。

amazon.comは、過去の購入品や閲覧パターンに基づいて個人の好みに沿った商品を提案します
パーソナライゼーションの良い例として、YouTubeも挙げられます。YouTubeのアプリのホーム画面では、過去に閲覧したビデオに基づいてパーソナライズされたコンテンツを見ることができます。パーソナライズを前面に打ち出しているAmazonに比べ、YouTubeはおすすめされているということに気づかれないようにコンテンツを提供しています。
アプリやWebサイトだけではなく、プッシュ通知もパーソナライズされ関連性のある情報を含むべきです。Netflixは良い例です。新しい番組や新しいシーズンが公開されたとき、視聴履歴を把握しているNetflixは、すべてのユーザーに通知するのではなく、そのユーザーが気に入っている番組の新しいシーズンが視聴可能になったときにだけ通知をしています。

Netflixは、ユーザーのお気に入りの番組が視聴可能になったときにプッシュ通知を表示します
2.ブランドの個性
アプリやWebサイト内で個性を見せることは、ユーザーに一体感を持たせたり共感させたりするために役立ちます。書籍『Designing for Emotion』の著者であるAarron Walterは、「個性とは、ある人を寄せ付け、ほかの人を遠ざける不思議な力だ」と述べています。
例:MailChimpの例を見てみましょう。MailChimpは、メール配信のプロセスにおいてユーモアを用いてユーザーにちょっとした報酬を与えています。それはなぜか? MailChimpは、メール配信のプロセスが決して簡単ではないことを理解しており、こういったちょっとした楽しみをプロセスに散りばめることで、メール配信のストレスを減らそうとしているのです。

メールを使ったキャンペーンを展開したことがある人は、送信ボタンを押すときのストレスを理解できるでしょう。しかし、MailChimpはそんなストレスを緩和するためにユーモアを使っているのです。
3.アニメーション
美しさと機能性を両立するために、アニメーションはさまざまな場面や文脈において使われています。もちろん、アニメーションは何より機能的でなければ意味がありません。しかし、前述の通り人間は感情的なので、インタラクションにおいてアニメーションを活用するためには、ユーザーの感情へ焦点を当てることが必要です。
アニメーションを使えば、下記のような効果があります:
- インターフェイスをより活発な印象のものにする

アニメーションでユーザーをびっくりさせることもできます。画像元:tubikstudio
- ユーザーの注意を引く
- エラーが起きた際に、ユーザーを元気付ける

空の状態でも、愉快なアニメーションで埋めることができます。画像元:Material Design
例:カメラアクセサリーのECサイトであるPhotojojoは、記憶に残る楽しいショッピングエクスペリエンスを作り上げています。Webサイトは、ユーザーが自分で選択できるような遊び心溢れたサプライズでいっぱいです。たとえば、「引っ張らないで」と名付けられたレバーがあります。好奇心をそそられそのレバーを引っ張ると、アニメーションの手が画面上部から降りてきて、製品詳細へ導いてくれるのです。

Photojojoは、意外なところでユーザーの笑いを誘います。画像元:uxmag
4.音のフィードバック
デザイン産業は、常に主に視覚的な体験に焦点を当ててきましたが、聴覚的なエクスペリエンスもUXにとって同じように重要だということを忘れがちです。
- 音は、効果的かつ便利なフィードバックになりうる
- 音をデザインすれば、よりパーソナライズされた製品になる
例:Clearというタスク管理のアプリでは、タスクを一つ完了しチェックするとベルの音が鳴るようになっています。そうすれば、達成感がちょっぴり増すからです。製品に人間味を加えるだけでなく、視覚的要素では伝わらないようなブランドの個性を伝えることができるのです。
5.障害物を減らす
面倒なことやイライラを最小限にすることで、UXの過程の障害物を減らせます。ユーザーの気持ちになってみることが最重要です。ユーザーがどのような質問をするか予測し、プロセスのどの部分で心配になりそうかといったことを見極め、ユーザーを喜ばせることのヒントにしてみましょう。
例:Twitter連携を求める際に、「自動的にツイートしません」と表示することは良いマーケティング担当者にとっては当然のことかもしれませんが、ユーザーにとってはそうではありません。Timelyのマイクロコピーは、短い文章でユーザーの心配事を解消してくれます。
まとめ
UXを改善する際に、快適さや楽しさの要素がどれだけ重要か忘れないようにしてください。製品そのものではなく、ユーザーが中心なのです。機能ではなく、感情なのです。機能と感情をうまく繋げて、楽しいアプリを作り上げてください。