正社員 or フリーランス、デザイナーがフリーランスになるときに考えるべきこと

三瓶 亮

UX MILK編集長。株式会社メンバーズ LXグループ所属。LX(ラーニングエスペリエンス)にまつわる新規事業立ち上げなどをしています。ゲームとパンクロックが好きです。 Facebook / Twitter

最近、副業OKな企業が増えたり、独立するデザイナーの方が増えたりと、正社員以外の働き方に注目が集まっているように思います。

そこで、前回の「大企業 or スタートアップ」という記事に続き、今回は「正社員 or フリーランス」という切り口で、クリーク・アンド・リバー社の成岡さんに話を聞いてきました。

登場人物
株式会社クリーク・アンド・リバー社 成岡 信享 氏
1985年生まれ。中途採用で株式会社クリーク・アンド・リバー社に入社。クリエイターをはじめ専門性の高い職種の方のサポートを得意としており、自身のWeb業界での就業経験を活かしてキャリアに関する提案をしている。

フリーランスは収入が増えるのか

三瓶:今回は「正社員 or フリーランス」というテーマで、エージェント目線でのお話をお伺いしたいと思います。

成岡:まず前提として、クリーク・アンド・リバー社はフリーランスのクリエイターの支援もしているので、エージェントではあるものの割とフラットな立場なのかなとは思っています。

三瓶:なるほど。では、まず一番関心が高いであろう「収入」に関して聞いていきたいと思います。独立するデザイナーが以前より増えている印象があるのですが、収入面を正社員と比べるとどうなのでしょうか?

成岡:フリーランスは自分の腕次第ではあるのですが、正社員のときより1.5~2倍ぐらいを稼いでいる方もいます。一方で、正社員は収入が安定しているのが大きなメリットですね。

三瓶:フリーに転向された方は、最初は収入が上がったと言う方が多いですよね。でも、それが続くのかという疑問があるのですが、実際何年くらいフリーランスを続ける人が多いのでしょうか?

成岡:私たちに相談にくる方という限られた範囲ではありますが、5〜10年間フリーランスを続けて正社員に戻りたいという方が多い印象はあります。ただ、実際続けている方はそもそも私たちに相談にこないので、その点は考慮する必要があると思います。

三瓶:人それぞれかもしれないですけど、5〜10年くらいがひとつの分岐点なのかもしれないですね。どういった理由で正社員に戻る人が多いのですか?

成岡:正社員に戻る理由は、「収入が安定しない」、「仕事が取れない」が多いです。あとは、フリーランスになるとデザイン案件をこなしながら、営業や会計処理をする必要があるので仕事が大変という理由もありますね。

三瓶:もっとデザインをしたくて独立したのに、デザイン以外の仕事のほうが多いということもありがちですからね。ただ、続くか続かないかは別として、最初の収入は上がる傾向があるのですか?

成岡:正直、スキル次第です。目標があってフリーランスになった方や個人で受けていた仕事が回りきらなくて独立した方は最初の収入が上がりやすいですね。一方、あまり考えずにフリーランスになったり、知り合いからの案件が1件だけでスタートしたりすると収入を上げにくい傾向があります。

三瓶:そうですよね。実は僕もフリーランスをした経験もあるのですが、案件をやりながら営業するのって大変なんですよね。営業の大変さはフリーランスが見落としがちな点だと思います。

成岡:実際、正社員よりもフリーランスのほうが大変な面は多いと思います。最近では副業や兼業OKな会社が増えてきているので、一番良いのは会社に所属しながら副業をすることだと個人的には思います。その副業が順調であれば、そのまま独立することもできるので。

フリーランスはスキルの消費に注意

三瓶:正社員でもフリーランスでもキャリアについて悩む方は多いじゃないですか。そういったキャリア観点で正社員とフリーランスを考えるとどうですか?

成岡:正社員でもフリーランスでも、キャリアパスを考えるのは難しいことです。ただ、フリーランスのほうが長期的なキャリア形成が難しいと思います。理由としては、新しいスキルに挑戦する機会が少なくなるからです。フリーランスは、自分がいま持っているスキルで仕事を取ってくるので成長機会が少なくなる傾向がありますね。

三瓶:フリーランスは自分の持っているスキルを消費するだけになりがちとは聞きますね。「成長できる案件を取れば良い」と仰る方もいますが、その方が飛び抜けて優秀だからできることなのかなと。

成岡:もちろん、新しいスキルをどんどん身につけているフリーランスの方もいます。ですが、どうしても目の前の案件に追われてしまい、成長機会を作れないというのはあると思います。クライアントも「ポテンシャルがありそう」という理由で仕事を振ってくれることはほぼないので。

三瓶:この業界は流れが早いので、自分のスキルが3年後も需要があるとは限らないと思います。そうすると、常に挑戦して可能性を広げておくしかないので、現在のスキルだけで仕事するのはリスクですよね。ただ、フリーランスは、まだ誰もチャレンジしていない将来的に需要がありそうな領域に挑戦しやすいとも思います。その領域の先駆者になれば、可能性はかなり広がりますよね。

成岡:そういう新しい領域への感度が高い人は、フリーランスに向いていると思います。新しいスキルにチャレンジするのは、正社員かフリーランスかを問わずに大事なことではありますよね。正社員でも基本受け身の場合、ずっと同じような仕事することになるとは思うので。

フリーランスに必要な横のつながり

三瓶:あとは、正社員とフリーランスでは働く環境や周りの人という違いもありますよね。

成岡:そうですね。先程の成長機会の話とも関連してくるのですが、正社員は周りに上司や同僚がいるのでアドバイスを受けやすい環境ではあるかと思いますね。

三瓶:フリーランスの場合、積極的に外に出ていかないと部屋の中で1人で仕事をすることになりますもんね。やっぱり自分ひとりで考えていると、視野が狭くなってしまうと思うんですよ。そういう背景もあってか、最近ではフリーランスのコミュニティが増えた印象はありますが。

成岡:フリーランスから正社員になりたい方に「何でですか?」と聞くと、「孤独を感じるから」と答える人が多いんです。人との繋がりが希薄になるのは、フリーランスによくある問題なのかなと思います。

三瓶:自分の周りのフリーランスの方は、完全に1人で仕事をしている方は少ないですね。成功しているフリーランスの方は、コミュニティや横の繋がりを大事にされているなと。

成岡:フリーランスになる上でネットワークは非常に重要ですね。また、自分ひとりでできることや仕事の規模に限界を感じる方もいます。自分だけでできる領域は狭いので、もっとプロダクト全体を見たいから正社員に戻りたいという相談を受けることもあります。

ポートフォリオが増えても評価されない

三瓶:うまくいくフリーランスの方は、新しいスキルに挑戦してたり、ネットワークを大事にしていたりという特徴が出てきましたが、一方であまりうまくいかないフリーランスの特徴ってありますか?

成岡:言い切ることは難しいですが、ちょっと副業案件があるのでフリーランスになったというケースは、うまくいかない可能性が高いように思います。そのまま数年くらいはフリーランスを続けるのですが、「正社員に戻りたい」となったときに苦労することが多いですね。

三瓶:どういった点で苦労するのですか?

成岡:先程も話題にあがりましたが、そういう方は現在のスキルで収入を得ているだけで成長が停滞してしまっているんです。そうすると、採用担当者からはブランクと見なされてしまいます。

三瓶:ポートフォリオが増えて、実績も積めていると思っていたのに、実際はブランクと見られるのは怖いですね。そう考えると、単にポートフォリオを増やすことには価値がないのかもしれないですね。実際、携帯(ガラケー)サイトやFlashを作っていましたとポートフォリオでアピールされても評価はしにくいとは思います。

成岡:5年前のポートフォリオがいくらあっても、あまり評価されない可能性はあります。流れが早い業界なので、常にキャッチアップしつつ実績を積む必要がありますね。あとは、トレンドに左右されにくい上流工程から入れているかも重要ですね。

三瓶:新しい技術やトレンドを吸収して、常にポートフォリオを更新する必要があるということですよね。でも、これは正社員でも同じことが起こりうるんですよね。同じ会社で同じ仕事ばかりしていると停滞しているのと同じですし。

成岡:その通りだと思います。フリーランスに限らず、現在の仕事を一度棚卸して、キャリアを考える機会はあったほうが良いです。正社員の場合は、異動願い出すとか副業をしてみても良いかもしれないですね。

集団競技か個人競技か

三瓶:ここまで正社員とフリーランスを比べてきましたが、自分が正社員かフリーランスのどちらが合っているか見極める方法はありますか?

成岡:例え話になってしまうのですが、正社員は集団競技、フリーランスは個人競技だと思います。野球などの集団競技では、役割が決まっていてチームワークが重視されます。一方で、マラソンや水泳などの個人競技は、自分との戦いなのでセルフマネジメントが重要です。

三瓶:確かにそうですね。ただ、個人競技でも1人で練習するのではなく、コーチやチームメンバーと一緒に練習しますよね。そういう意味では、個人競技も完全に1人ではなく、コミュニティやネットワークが大事なのかもしれないですね。

成岡:フリーランスになるには、セルフマネジメントとネットワークが必要だと思います。なので、自分がどちらの競技に向いているかを考えるのもひとつの方法かなと思います。

フリーランスになる前に

三瓶:この記事を読んでくれている方は会社員が多いと思うのですが、フリーランスになりたい方がキャリア相談にくることもありますか?

成岡:ありますね。将来的には独立したいけどまだスキルや経験が不足しているから、転職をして経験を積みたいという方がいますね。そういった方は、デザイナーとして上流工程から関われる企業や有名なプロダクトがある企業、独立を奨励している企業などを希望されることが多いですね。

三瓶:いきなりフリーランスになるより、自分のスキルを伸ばせるところで修行したいということですよね。ただ、そういった企業を見つけるのは大変ではないですか?

成岡:そうですね。求人票からは読み取れないことも多いと思います。私たちエージェントは、直接企業から求める人材のヒアリングをするので、求人票にはない情報を提供できるのが強みです。

三瓶:あと、副業の話が何度か出てきましたが、副業やパラレルキャリアをしたいという相談は増えていますか?

成岡:増えてますね。あとは、求人票には書いてないけど、ある程度融通が利く案件もあります。特にスタートアップの求人は、融通が利きやすいです。

三瓶:とはいえ、まだ少ないですよね。融通が利くということは、エージェントが企業と交渉してくれるのですか?

成岡:はい、企業側に提案します。正社員採用しかしていない企業でも「こういうスキル・経験がある優秀な人なので、週3日の勤務にしてもらえませんか?」といった提案をすると、承諾してくれる場合もあります。

三瓶:年収の交渉と同じで自分では言いにくいことを交渉してもらえるのはエージェントに相談する大きなメリットですよね。本日はありがとうございました。

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