「無料」がありふれた現代におけるフリーミアムの長所と短所

Lesley Wasserman

Lesleyは、Appseeのインバウンドマーケティングマネージャーです。UXやテックのトレンドを追いかけ、人生をより良くする革新的な方法を探すことを好んでいます。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Is Your Freemium Strategy Harming Your App’s UX?

世の中は「無料(free)」という言葉で溢れています。フリートライアル、フリーダウンロード、フリーミュージックのように制限なく利用できるサービスならば、私たちはすべて手に入れようとします。一方「無料の」コンテンツが増加したことで私たちは懐疑的になり、本当に無料のものなど存在しないと思うようになりました。

その結果、モバイルアプリ戦略でフリートライアルは捨て去られ、新しい戦略が生まれました。フリーミアム(freemium)戦略です。「フリー」と「プレミアム」が混ざったフリーミアムは、ご想像の通り、無料とプレミアムの両面を備えたものです。最初この手法は、素晴らしいアイデアだと考えられていました。しかし私たちは「ただで食える飯はない」ことを思い出したのです。言うまでもなく、フリーミアムもフリートライアル同様にモバイルアプリのUXを損なう可能性があります。

そもそも、アプリはなぜ存在するのでしょうか? アプリは私たちのニーズに応え、幸せにし、楽しませ、やる気にさせるためにあります。しかしアプリは究極的に言えばビジネスです。企業が存続し続けるためには、資金がなければなりません。したがってアプリ内広告や有料ダウンロード、定期購読、そしてフリーミアムといった利益を生み出す戦術が必要になるのです。

フリーミアムは無料なのか

フリーミアムとフリートライアルは同じ手法ではありません。フリートライアルのコンセプトは古くからありますが、必ずしも優れたものではありません。購入する前にユーザーに試してもらう戦略は確かに画期的なものに見えるでしょう。しかし、近年のユーザーは悪徳商法に敏感になっており、フリートライアルには別の思惑があることを知っています。

フリーミアムには、ユーザーがフリーアカウントで受け取ることのできるサービスを限定するといったような、一定の制限が存在するものもあります。プレミアムアカウントにアップグレードするとすべての広告が消えて、初めてこうした制限が存在していたことに気がつく場合もあるでしょう。

どのような種類のフリーミアムやフリートライアルを用いるにせよ、それらはオンボーディングプロセス、リテンション、解約率に影響を与えるでしょう。この記事を通してフリーミアムの長所と短所を検討し、アプリの戦略にどう取り入れるのが最適か考えてみてください。

オンボーディングでの選択

App StoreやGoogle Playでは、あなたのアプリがたとえ100%フリーミアムのアプリであっても無料だと表示されます。運良くユーザーがあなたの 「無料」アプリをダウンロードしたならば、今度はフリーミアムな体験をともなうオンボーディングプロセスを無事通過してくれることを祈りましょう。

無料でも有料でも、たいていのアプリでは簡単な登録プロセスが必要です。たとえばメールアドレスや名前を記入したり、ソーシャルメディアのアカウントと連携したりしなければなりません。個人情報を手渡しすぎていると考えるユーザーもいるかもしれませんが、ほとんどの人はアプリの利用に必要な簡単なプロセスだと捉えるはずです。

たとえばBlinkistは、名目的には「ずっと無料」のアプリですが、それでもフリーミアムモデルに基づいています。というのも、フリーアカウントでアクセスできる書籍が制限されているためです。1日に利用できるのはBlinkistが選んだ1冊の要約のみで、冊数の制限を外しプレミアムアカウントに変更するときには 79.99ドルもかかります。

オンボーディングのUXはシームレスで、ユーザーはBlinkistのアプリをダウンロードして登録したあと、新しい書籍を読むために何度かアプリに戻ってくるでしょう。Facebookアカウントを使って素早く登録し、アプリを利用することができます。しかしユーザーは自分で、読みたいノンフィクション書籍を選択して楽しむような使い方はできません。最終的にユーザーはBlinkistが選んだ本で毎日発見を続けるか、プレミアムアカウントにアップグレードするか、あるいはアプリの利用を完全にやめるかを選ばなければなりません。

ユーザーの関心を引いてアプリをダウンロードしてもらうことに成功しても、フリーミアム戦略をとるアプリの利用はユーザーにとって扱いに困る選択でしょう。なぜならユーザーは、アプリを使用し続けるだけの「価値」を提供しない無料版か、高額のプレミアムアカウントかの2つしか選べないためです。

払うべきか、使うのをやめるべきか

支払いが要求されているか(無料で登録できるのか、すぐに支払う必要があるのか)によって、アプリに制限があるかどうかは最初から明らかなのかもしれません。多くのユーザーは、無料で登録できてもアプリ内のすべてのサービスは使えないことを知っているため、途中で登録をやめてしまいます。

Headspaceは良い例です。Headspaceは有料オプション(逆に言えば 「無料」オプション)の存在を明示しています。ユーザーは登録プロセスを進めると、フリーアカウントには制限がありすべてのHeadspaceライブラリにアクセスするためには定額を支払わなければならないことを知らされます。無料版でもたくさんのフリーセッションを通して、食事への配慮、不安や悲しみ、怒りへの対処といった、さまざまなジャンルを1通り利用することができます。しかし定額を支払わなければ、各ジャンルのサービスを深く利用することはできません。

フリーセッションを軽く味わうだけで、マインドフルネスを始めるには十分だと感じるユーザーもいるでしょう。またHeadspaceの美しいUIは、有料版の利用がベストな選択に違いないと感じるだけの十分な説得力があります。

容量の追加を迫る

アプリの中には、製品の構造とアプリのUIが十分優れているため、ほとんどのユーザーは追加でコストを支払う「必要」がないものもあります。しかし使用頻度や必要性が向上すれば、長期間利用したユーザーが、強制的にではなく自らプレミアムユーザーになることもあるでしょう。

たとえばEvernoteは完全に無料で使用できますが、容量を増やしたりニッチな機能を追加するためにはお金を支払う必要があります。

モバイルユーザーはつねに詐欺にあわないよう警戒しています。些細なことでもユーザーの怒りを買ってしまえば、ユーザーは2度とアプリには戻って来ません。たとえば、名目的には無料でもアプリ内でしつこくメッセージが表示されるアプリは、あらゆるユーザーを不快にさせるでしょう。フリートライアルを始めてからすぐにメッセージやポップアップを表示したり、登録後すぐにアップグレードを求めるのは、タイミングを間違えています。

広告が表示されない

「有料版にすれば広告が表示されない」という戦略は、ユーザーを説得して料金を支払ってもらうための古典的な方法で、たくさんのアプリが活用しています。たとえばSpotifyは、月額料金を払ってプレミアムアカウントに登録、アップグレードしてもらうという単純なプロセスを提供しています。

Spotifyではたくさんの音楽を聞くことができますが、無料版では曲の再生手段が制限されています。

  • 曲をリピートすることはできない(アルゴリズムに基づいて作られた15個のSpotifyプレイリストにある曲を除く)
  • プレイリストでスキップできる曲の数が制限されている(同じく、Spotifyが作成した15個のプレイリストでのみ)
  • 必ず広告を聞かなければならない

一方Duolingoでは、アプリのすべての機能を無料で利用できます。オランダ語を学ぼうと思えば、すべてのレベルのレッスンにアクセスできるのです。すべてのレッスンの最後にはポップアップ広告が表示されますが、広告の存在によって無料で受講できることをユーザーはよく理解しています。もちろんユーザーがプレミアムへのアップグレードを選択すれば、広告が表示されないようなります。

Duolingoでは、大多数のユーザーにとって魅力的なソリューションが用意されています。 Duolingoが誠実で確かなユーザー体験を生みだすことで、より多くのユーザーが自由に語学学習を成功させることができます。

本当に輝く発見は、UX観察の中にあります。最終的には、努力の結果アプリで成功した点と成功しなかった点を知ることができるでしょう。

ユーザーはフリーアカウントで何をしているのか

新しいユーザーは、アプリにログインするとすぐに無料機能を使おうとするでしょう。彼らは有料のロックされた機能にも興味をもっているのでしょうか?  再訪したユーザーや、何度も訪れているユーザーはどうでしょうか? ユーザーはアプリでなにをしているのでしょうか?

ユーザーがどのようにアプリを操作しているのか知りたい場合は、ユーザーフローユーザーレコーディングを用いて分析しましょう。これらの機能を使えば、ユーザーの行動やユーザージャーニーを通じて彼らを理解し、ニーズやウォンツに基づいてアプリを最適化できます。古くからのユーザーにとってアプリが新鮮であり続ければ、彼らは周囲にアプリを紹介してくれるでしょう。

結論

このようにフリーミアムには長所と短所があり、目的達成のためにフリーミアム戦術を活用しているアプリもあります。しかし適切に利用しないと、フリーミアムはモバイルアプリとその将来性に悪影響を与えかねません。

ユーザーはフリーミアムを好むかもしれませんし、逆に好まないかもしれません。ユーザーが本当に考えていることを知るためには、ユーザーの行動分析を通じてフリーミアムの手法をテストして記録することが大切です。そうすれば、ユーザーが求めるものを確実に提供することができるでしょう。


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