音声技術が向上するにつれて、私たちはより多くの音声アプリをデザインしていくことになります。
この記事では音声技術のプロトタイピングにあまり親しみのない方向けの一般的な説明を行います。あまり複雑なプロセスではありませんが、Webサイトやアプリによく使われるUIプロトタイピングとは異なる部分があります。
1. 音声は新しいメディア
音声インタラクションはWebサイト内のユーザーフローほど、論理的でもリニアなものでもありません。会話はいつでもどこでも起こり得ますが、Webサイトではユーザーはこちらが許可した場所にしかアクセスできません。
これはユーザーが会話するときと読み書きするときとでは、コミュニケーションの仕方が違うことを意味します。会話はいつまでも続けられますし、会話は途中で前の情報に戻ることはあっても、常に進んでいくもので逆行するものではありません。
ピザ配達を調べるときにスマホを使うか、あるいはAlexaやSiriにオーダーしてもらうかでインタラクションは異なります。また、Google検索でピザを誤入力した場合とAlexaやSiriが反応しなかった場合も異なります。音声をデザインするときは、会話インターフェイスをデザインするということであり、人はどのように話すのかをデザインしなければならないことを心に留めておいてください。
2. ペルソナを作る
まず音声アプリはユーザーの体験においてどのような役割を果たすのかを考えましょう。その場合の役割とはなんでしょうか? 次に、アプリを使用するペルソナは誰かを自分自身に問い掛けましょう。そのペルソナは、どのようにアプリのブランドイメージを表していますか?
どんな種類の音声アプリでも、ブランドの延長線上にあります。まず最初に自企業のブランドについて振り返り、そこから導き出せる性格などを基に音声アプリのペルソナを定義します。ユーザーがブランドの象徴と対話することをイメージしてください。それはユーザーや顧客にとって斬新かつ楽しい、創造的な体験となり、企業とユーザーの結びつきを強める素晴らしい機会にもなるでしょう。
ぺルソナの特徴を決めることは、ユーザーが音声アプリと企業をどのように受け取るかにおいて重大な影響を及ぼします。たとえば音声アプリのペルソナは男性ですか? 女性ですか? 知的な人ですか? 愉快な人ですか? これらを考えることはとても重要です。
最後に、何をしようと音声のペルソナは、ユーザーに親しみのある人物ではなければいけません。ユーザーがどのような人かを知り、何がもっとも親しみやすいか考えましょう。
3. サンプルの会話を書いてみましょう
次に音声インタラクションがユーザーフローの中のどこで起きうるか、あるいは起こるべきかを示す必要があります。起きうるであろう状態を網羅したモバイルアプリのページを設計できないのと同じで、フロー内にすべてを書き込むことはできません。フローはあくまでフローでしかないということです。
インタラクションがどこで起こるかの想定が済んだら、シーンごとに起き得る音声インタラクションについて簡単な説明をしましょう。これにより、音声対話の明確な目的と、サンプル会話を書くためのより多くのコンテキストが得られます。各シナリオについて、サンプルの会話を作成しましょう。
下記はサンプルの会話の例です。
ユーザー:ピザをオーダーしたいのですが。
音声アプリ:こんにちは、ポーラ。問題ないですよ。見たところ過去の数回、同じものを注文をしているようですね。またLサイズのチーズピザをモッツァレラチーズスティック付きで注文しますか。
ユーザー:うん、そうね。
音声アプリ:かしこまりました。30分くらいになりますが、配達してほしいですか、それともお店に取りに来ますか? 取りに来るのであれば、10分程で準備できます。
ユーザー:家に配達して。
音声アプリ:記録されている家の住所は「123アルファベットストリート」ですが、合っていますか?
ユーザー:それで合ってるわ。
音声アプリ:かしこまりました。お会計は15.79ドルになります。登録済みのクレジットカードで支払いますか? それとも配達の際現金で払いますか?
ユーザー:現金で。
音声アプリ:注文が完了しましたので、確認メールをお送りいたします。配達は午後8:30頃に到着予定です。
4. 音声プロトタイピング
さて、ようやくプロトタイプを作り出せる段階まできました。さまざまなツールがありますが、音声デザインは比較的新しいメディアだと再度認識しておきましょう。数多くのWebサイトのプロトタイプ作成ツールに比べると、音声のものはまだ多くはありません。
下記のアプリを使うことができます。
・Thestoryline - Alexaアプリのインターフェイスマッピングツール
・Sayspring - AlexaとGoogleアシスタント両方の音声インターフェイスツール
・Botsociety - Messenger、Slack、Alexa、Google Homeなどマルチプラットフォーム対応の音声プロトタイピングツール
・Dialogflow - 自然な会話体験を作るためのアプリ
会話を文書化しましょう
プロトタイプとサンプルの会話はしっかりと文書化しておきましょう。会話を文書化することは、製品のほかの面を記録することと同じくらい重要です。
それぞれの会話は、少なくとも、ユニークな名称、会話のタイプ(注文、翻訳、キャンセルなど)、導入(何によってこの会話が始まるのか)そして結果(これによってユーザーに何を達成させるのか? ユーザーは次に何を望むか?)が必要です。
エラー表示
エラーは様々な理由から必ず起こります。音声アプリがユーザーの発言を聞き取れなかった、ユーザーが適切な情報を言わなかったなど様々です。
会話にも、オンラインフォームなどと同じようにエラー表示を含めておく必要があります。エラーに対して不服なユーザーにそれを示す一番良い方法は、その状況の打開に役立ち、進展につながる方法を示すことです。
問題を和らげつつ、代わりに的確な情報を聞き出せるようにしましょう。誕生日やクレジットカードなどの情報を聞くときは、ユーザーは数字だけ、または数字と単語の両方で情報を伝えられるようにします。たとえば誕生日は、1999年5月1日とも言えますし、99年5月の1日(ついたち)とも言えます(注釈:英語の場合です)。
さら、曜日をどのように伝えるかユーザーが困惑したときにはどうしますか? 長い沈黙や「えっと」、「う〜ん」などがあったらどのようにしますか?
下記は、Emily Grace Adiseshiah氏が示した例です。
音声アプリ:誕生日はいつですか?
ユーザー:えっと……。
音声アプリ:誕生月の2桁、誕生日の2桁、誕生年の4桁を使って生年月日を教えてください。
ほかにも考えないといけない問題はあります。ユーザーが強い方言をつかったり、どもったり、話し声が静かすぎたり、うるさいエリアにいた場合など…。繰り返しになりますが、これらの問題をそれぞれ考慮し、作ったプロトタイプでも対応できるように準備を用意しておきましょう。
プロトタイプをテストする
プロトタイプを作る意味とは、アイデアをテストし、それを実行に移すことに意味があります。実際の人にプロトタイプをテストしてもらい、音声アプリおよびプロジェクト全体がうまくいっているかを確認しましょう。
プロダクトの栄光までの道程は、仮説検証をしなかった、あるいはする必要のないと考えた人たちの死体で埋め尽くされている。―James Fox What's the Point of Prototyping?
まとめ
この記事では、音声インタラクションのプロトタイプの作り方についての一般的なプロセスを紹介しました。あなたは音声アプリのプロトタイプを作ったことがありますか? どのようなことを考えましたか? 初心者に向けて何かアドバイスなどありますか?