優れたデザインは、完璧なユーザーリサーチから始まります。十分なリサーチをしないと、単に見た目が優れているだけのプロダクトなのか、実際のユーザーの問題を解決してくれるプロダクトなのかを判断することが不可能だからです。
新しいプロダクトをローンチするのか、既存のプロダクトをリデザインするのかに関わらず、まずは実際のユーザーとの交流が不可欠です。この大事なステップを飛ばして、デザインや制作にすぐに取り掛かっているのなら、あなたは勘によって決断を下しているのと同じです。これは、コストの高いギャンブルでしょう。
プロダクトを市場に出してから、推測が間違えていたと気づいたら? 無駄な時間やリソース、お金をかけて、また振り出しに戻らなければなりません。正しいタイミングで正しい方法で実施したユーザーリサーチだけが、これを避ける唯一の方法なのです。
本記事では、いくつかの基本的なユーザーリサーチの方法を紹介し、UXリサーチのバリューを最大限に引き出す方法を紹介します。
ユーザーリサーチとは?
usability.govで説明している通り、「ユーザーリサーチは、観察やタスク分析などのフィードバック手法を通して、ユーザーの行動やニーズ、動機を理解することに重点を置いています」。UXデザイナーであり研究者、著者でもあるMike Kuniavsky氏は、それを「聴衆に与えるデザインの影響を理解するプロセス」と述べています。
まず、本記事ではユーザーリサーチではなく、UXリサーチについて論議していきます。2つの用語はよく区別なく使用されていますが、必ずしもUXリサーチは反復プロセスだとは思われていない点において、わずかな違いがあります。
ユーザーリサーチの段階において、UXデザイナー(あるいはUXリサーチャー)は、エンドユーザーを知るため、さまざまな方法と技術を採用します。
UXリサーチ方法は、定量・定性のどちらかに分類されます。定量的リサーチは、測定可能な数値分析をもたらします。一方で定性的リサーチは、ユーザーの行動の裏にある理由や動機に重点を置いています。
たとえば、何人のユーザーが、あなたのWebサイトのCTAボタンをクリックしたかを知るために、定量的リサーチを実施します。そして、なぜそのユーザーはクリックをして、ほかのユーザーはクリックしなかったのかを知るためには定性的リサーチを実施する必要があるのです。
要するに、定量的リサーチは何が起きているのかを教えてくれますが、定性的リサーチは、なぜそれが起きているのかを教えてくれるのです。詳しくは、Do Not Be Scared Of Quantitative Dataに書いてあります。
もっとも一般的なUXリサーチの方法には、Face to Faceでのインタビューやユーザー調査、質問票、カードソート、コンセプトテスト、ユーザーグループ、ユーザビリティテストがあります。
詳細なUXリサーチのテクニックはこちらで学ぶことができます。しかし、すべての異なる方法を理解することは、UXリサーチのほんの半分に過ぎません。UXリサーチから最高のバリューを得る方法がここにはあります。
どのようにUXリサーチからバリューを得るか
私たちは、ユーザーリサーチを実施するだけでなく、それを正しく得ることがどれほど重要かに触れてきました。それがあなたの組織やエンドポイントに、実際の影響を及ぼすことを確認する必要があります。これらの5つのヒントにしたがって、UXリサーチの成果に見合った報酬を手に入れましょう。
1. はじめにUXリサーチを正しく実施する
ユーザーリサーチは、デザインプロセスのどの段階でも有益です。けれども、早く実施すればより多くのことを最終プロダクトに反映できます。デザインチームがしがちな最大の過ちは、UXリサーチの段階を無視することです。同様に始めるのが遅すぎれば、重要なインサイトを見落とすリスクもあるのです。
聴衆を知る前にデザインを始めてはいけません。プロセスのはじめに、広範なユーザーリサーチを実施し、集めた情報を利用して論理的な決定しましょう。こうすることで、最初からユーザーにフォーカスしたプロダクトになるので、後戻りしたり変更したりする必要が減ります。
2. 具体的な目標を決める
あなたはユーザーリサーチ実施の必要性を知りました。ユーザーリサーチの方法や技術も知っています。リサーチから最高のバリューを引き出すためには、具体的な目標と明確なミッションを設定する必要があります。つまり、適切な質問をまとめ、仕事のスコープを設定するのです。結局、あなたは何のために何を解決しようとしているのですか?
あなたがユーザーに聞く質問は、そのプロジェクト特有のものになるでしょう。既存のアプリをリデザインするのなら、ゼロから新しいアプリをデザインするときとは異なる質問をすることになります。要するに、信頼に足る計測可能な答えを導き出すためには、明確な質問をすることが非常に重要です。あなたの質問や目標が明白であればあるほど、答えを見つけるのはより簡単になるでしょう。詳しくは、フォーカスvsフォーカスしないリサーチの質問から学ぶことができます。
3. UXリサーチの方法を賢く選択する
目標と成果を念頭におきつつ、もっとも有用な結果をもたらすUXリサーチの方法を選択することが不可欠です。いつも使用している実証済みのトリックに固執することなく、プロジェクトの状況に基づいて賢く選択してください。
最適な方法をどうやって決定するのか?
Nielsen Norman Groupによれば、態度vs行動、定量vs定性という軸に基づいた三次元構造は利用可能な方法を考えるのに役立ちます。ディメンションについては、詳しくはこちらで探究できますが、ここでは簡単に考えてみましょう。
態度vs行動という軸では、人々が言っていることと、実際に行なっていることを区別しています。態度的リサーチは、ユーザーの信条や既存の精神モデル、つまり特定の状況において彼らが行動することについて、どのように考えているのかを調べます。一方、行動的リサーチの方法は、自己申告した行動から離れ、実際には、行動においてユーザーを観察します。
先に述べたように、定量的リサーチの方法は、そのユーザーが特定の状況ではどのように行動するのかを明らかにするものです。一方、定性的方法は具体的な数字や統計を与えるものです。コンテキストというのは、参加者があなたのリサーチの一部として、プロダクトやサービスを利用するかどうか、もしそうならば、その方法などすべてのことを言います。これは、自然またはごく自然に近い状態でのプロダクトや使用スクリプトを含みますが、プロダクトを全く使用しなかったり、それぞれを合わせたものを含んでいます。
ユーザーリサーチを急いではいけません。あなたが使用している方法が、特別なプロジェクトにとって本当に最も効果的なものかどうか考えましょう。
4. 結果をシェアする
ユーザーリサーチを実施し、ターゲットである聴衆のことを知るために必要なことすべてを収集することが大切です。次の課題は、これらの結果について意見交換し、同僚のデザイナー、プロダクトマネージャー、開発者など、主要なステークホルダーに価値を提供することです。
ユーザーリサーチの結果を分析したら、結論を出します。あなたは同僚にそれを提示する最善の方法を見つける必要があります。デザインプロセスに関わった人は、その結果を理解するだけでなく、それを信じて、どう行動するかを知っていることが重要です。
リサーチをすべて文書化してください。このように、ほかのステークホルダーが参考にできるよう、すべてのプロセスを配布可能なプレゼンテーションやファイルにします。結果を伝えるとなったら、誰にどのような状況で提供するのかを考えてください。簡単なメールの要約やプレゼンテーションは経営幹部には十分でしょうが、デザイナーや開発者にはもっと詳細な情報が必要です。
どのような配布方法でも、結果を提供する相手が誰でも、事実で仮説を確認する準備をしておきます。結果をより説得力を持って示せば、もっと簡単に他のチームにも提供することができます。
5. 覚えておくこと:ユーザーリサーチは続く
我々はすでに、いかなるデザインプロジェクトの始まりにおいても、UXリサーチがなぜそれほど大変重要であるのかを調べてきました。しかし実際は、ユーザーリサーチは決して終わることはありません。UXリサーチャーやデザイナーとして、お客様とブランドの間の橋渡しをしているのです。ユーザーから学ぶことを止めてはいけません。市場が進化し、技術が変化する中で、商品も維持する必要があります。聴衆でさえ時間が経てば変わるかもしれないのですから、もはや関係ない時代遅れの洞察に頼らないようにすることが大切です。
ユーザーとの継続的な対話を図り、UXリサーチを長期的デザイン戦略の一環にするのなら、UXデザインの基本をここで学びましょう。