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タッチポイントが機能していることを確認する
体験というステージの主役や脇役としてタッチポイントを見なす、「タッチポイントがその役割をうまく果たしているか?」という考えに自然となるでしょう。タッチポイントの中には、測定できるものがあります。特にデジタルのものに関しては測定がしやすいです。測定できるタッチポイントには、カート落ち率やメールオファーのクリック率、乗車券のデジタルと紙の割合、コールセンターとの会話後のサービスアップデート数などがあります。
そのほかのタッチポイントでも、顧客に対するアンケートや直接質問をすることで評価できます。「飛行機の安全に関するビデオは、面白かったですか?」、「問題解決のためのコールセンターとの会話には満足しましたか?」、「新しいパッケージの体験に、どのような評価をしますか?」といった質問に対するフィードバックを活用して、タッチポイントやフローを改善しましょう。
モーメントにおけるタッチポイント
カスタマーモーメントにおいて、タッチポイントが重要な役割を担うのは理解していただけたでしょう。タッチポイントは、インタラクションを促進して情報を伝達します。また感情の引き金となり、モーメントからモーメントへと橋渡しをします。
下図は、カスタマージャーニー全体にタッチポイントを設定するためのシンプルながらパワフルなフレームワークです。
ジャーニー:顧客は長い時間をかけて、製品やサービスを体験します。顧客の目的は、明示的なゴールを達成するものか、潜在的なニーズを満たすもののどちらかであることがほとんどです。このコンテキストにおけるジャーニーとは、顧客体験の最初から最後にまでおよぶ概念的フレームです。ジャーニーの例として、映画へ行くときや学費を貯めるとき、子どもを世話するとき、救急治療室へ向かうときなどが含まれます。
ステージ:ジャーニーは一枚岩ではなく、特定のニーズやゴールに沿ったモーメントの集合体です。体験をマッピングするとき、このそれぞれのモーメントをステージと言いますステージは、本質的にはカスタマージャーニーにおけるチャプターのようなものであり、一般的な顧客が必要とするものを作るために有用です。
モーメント:直線的なジャーニーであれ、非直線的なジャーニーであれ、そこにはモーメントが発生します。すべてのモーメントが等しい価値を持つわけではありません。もっとも重要なモーメントは、キーモーメントや真実の瞬間(Moment of Truth)と言われます。
タッチポイント:タッチポイントは、モーメントにおけるインタラクションを形づくるものです。それぞれのカスタマーモーメントのビジョンを決めることで、それぞれのタッチポイントが担う独自の役割を確認し、ほかのタッチポイントとうまく連動させることができるようになります。
タッチポイントをリスト化して提示する
タッチポイントを明らかにしたら、その結果をドキュメント化する必要があるでしょう。ドキュメントをどの程度詳細にするかは、製品やサービスの規模やゴール、かけられる労力などに左右されます。選択肢はたくさんあるでしょうが、ドキュメントはタッチポイントの完全なイメージを伝えられるものにすべきです。
ドキュメントには、リーンなドキュメントと詳細なドキュメントという2つの対照的なタイプがあります。
リーンなドキュメント
あまり時間がない人や、まずは最初のイテレーションだけを完璧に行いという人は、ステージとチャネル、タッチポイントという基本要素に集中すべきです。ステージには、顧客が理解しやすいラベルをつけるべきです。また、ドキュメントには最重要なチャネルについて書き、あまり利用されないチャネルは要約にするか統合してしまいましょう。そして、ステージやチャネルの交差するポイントに、タッチポイントを置きます。
下図は、別のリーンなアプローチを表したものです。この図は、新しいタッチポイントと既存のタッチポイントをどのように繋げるのかというビジョンを示すものです。それぞれのモーメントに対して、必要な画面やコンテンツ、伝達方法などの仕様が含まれています。これは、異なるチャネルを担当するチームのデザインプロセスにも使えるでしょう。
さらに無駄をなくす必要があり、オフィスの壁にスペースがある人は、ポストイットでインベントリを作るかワークショップの結果を写真にとって拡大して印刷しましょう。作業が見える形にすることで、戦略策定やデザインの際に参照できるようになります。フレームワークはほかの人たちと共有できる形にし、全員が顧客とのインタラクションの全体像を把握できるようにしましょう。
詳細なドキュメント
より詳細にタッチポイントをリスト化して、顧客体験における役割を記述することも可能です。このアプローチは、カスタマージャーニーやサービス体験の再考といった大きな変化が生じる仕事をするときに有用です。時間がかかりますが、より良い顧客体験とより良いオペレーションを提供できるので、投資対効果は高いです。
詳細なリストは、既に説明したものと同じ手法を使います。しかし、さらなる情報収集とドキュメント化を行います。コンテンツリストのようなスプレッドシートを活用することで、より効果的にかつ柔軟に作業の把握と分析ができます。このとき必要であれば、情報の種類の多さに応じて異なるドキュメントを作成することも可能です。タッチポイントのリストは、そのタッチポイントの計画や作成、変更、削除を行うため、「生きたドキュメント」でなければなりません。
以下のものは、デザイン作業中にタッチポイントを把握・追跡するのに活用できる共通的な属性です。
- チャネルステージ:タッチポイントがサポートするのはどのステージですか?
- モーメント:タッチポイントがサポートするのはどのモーメントですか?
- タッチポイントの名前:分かりやすく特徴的な名称にしましょう。チャネルや見た目が異なっても、同じタッチポイントであれば一貫性のある名称にしましょう。たとえば、Uberの「乗車確認」というタッチポイントは、プッシュ通知やテキストメッセージで使われるものです。
- ニーズ:そのタッチポイントはどのニーズを満たすものでしょうか? それは必要でしょうか?
- 役割:そのタッチポイントは、主役、ブリッジ、リカバリーの中のどの役割を担うものですか?
- 接続:タッチポイントの順序が決まっていたり、ほかのタッチポイントやチャネルを橋渡ししたりするものであれば、それらのタッチポイントをリスト化しましょう。
- クオリティ:タッチポイントは素晴らしいものですか? 基礎的なヒューリスティックや特定の原則に沿ったものですか?
- 測定:パフォーマンスの指標は、タッチポイントに関連するものですか?
- オーナー:企業の観点から見て、タッチポイントのオーナーとなるのはだれですか?
- ステータス:今後タッチポイントの変更をする計画はありますか?
これらすべての詳細を明確にすることで、スプレッドシートを活用した共同作業が可能になります。そして組織をまたがっての人々の貢献につながります。同時に、顧客の体験を実現する構造の生きたドキュメントを作成できます。このしっかりした基盤があれば、今後のタッチポイントや瞬間に関して集約的リサーチや考察、コンセプト化を行う上で利益をもたらせるでしょう。